表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕達は我に返るシリーズ

僕達は我に返る(1)

作者: 秋月煉

また書いてしまいました。

今回は、副会長様視点と、後半、ご令嬢の視点と、最後に三人称があります。

それは僕が偶然、渡り廊下の窓辺でため息をついた時に、聞こえて来た事から始まった。


「えー! あれは絶対に乙女ゲームの逆ハーだよ!」


声のした方を窓から下を見ると、三人の女子生徒がいた。今はお昼休みだから、中庭でお昼を食べながら、会話をしているようだ。一人はショートカットの大人びた少女。多分、先の発言は、この少女のようだ。隣に居るのはふんわりした感じの少女。そして、一番右側、僕の真下にいるのがお下げにした少女。しかし、乙女ゲームとは何だ? 逆ハー? 一体なんの意味なんだ?


「確かに、そう見えるよね〜」


今度は、何処かおっとりした声が答えた。真ん中の子か。


「本人達、気付いてないのかな?」


恐らく真下にいるお下げの子か。しかし、何が気付いてないんだ? 気付けば僕は、この三人の話を聞き入っていた。


「気付いてないって! 気付いてたら、恥ずかしくて人前で口説くなんて出来ないよ〜」


何かグサッと来た。どこにって、自分の胸に。


「ほら〜、副会長なんて〜、眼鏡かけた秀才って感じで〜、本当に乙女ゲームに出てくるキャラそのものじゃない?」


…………………え?


グサッグサッと、また胸に突き刺さる。そうなのか? 身に覚えがないんだが。


「そうかな? 副会長って、普通に真面目で穏和な感じに見えたけど?」


お下げの子が、自分をそう見ていたのかと、ちょっと嬉しくなった。それだけ、大人びた少女とふんわり少女の発言に、ショックが隠せなかったのだ。というより、ショックのメーターが振り切れそうだった。


「甘いよ、みほりん!」


「そうだよ〜、みほりん!」


どうやらお下げの子は、みほりんと呼ばれているようだ。


「乙女ゲームで副会長って言ったら、難易度が高いんだよ!? それは我々が一番知ってるじゃない!」


「我々オタクがそれ言っちゃったら終わりだよ〜」


二人の言葉に、ようやくこの会話の意味を理解した。なるほど、先程からの疑問点、乙女ゲームとはどうやらゲームの事らしい。早速、スマホで検索して、意味を見て…………………固まった。つまり、自分達の姿が乙女ゲームの場面に見えていたと……………!!

あまりの恥ずかしさに、僕はその場に崩れ落ちた。

ヤバイ、恥ずかしい! 確かに、人前で口説くような真似をしたし、恥ずかしくなるような事も言った! 改めて考えて見ると、マジで恥ずかしい! 穴があったら入りたいレベルである。


「確かにそうだけど…………、何かね? リアルで乙女ゲームの逆ハー見たら、攻略対象者の人達が可哀想になっちゃって…………」


また、みほりんの言葉に、少し僕は浮上する。可哀想は余計だが、本当に優しい子なんだろう。その優しさが、今は胸に嬉しい。


「あー、確かにねー」


「あれはゲームだから許されるんだもんね〜」


「でしょう? 選ばれなかったら、傷つくのは皆だもん、やっぱり嫌だよ、そういうの…………」


その言葉にジーンときた。何やってるんだろう、僕は。


「でもさー、今の生徒会の人達って、仕事サボってるんでしょう? 愛しい人を口説く前に、やる事やってからやれって思うんだよねー」


大人びた少女に、浮上した気持ちが一気に下降する。た、確かに。そう言えば、いつから仕事してなかっただろう…………。


「うん、仕事はキチンとやらないと、まわりが迷惑するからね」


グッサァァァ〜〜〜〜〜!


今迄で一番深く刺さった。あのお下げの子みほりんに、言われてしまった!!


ヤバイ…………立ち直れないかも。


「早く仕事してくれたらいいのに…………」


その呟きが聞こえた。間違いなくみほりんの声だ。なんだろう、彼女にだけは落胆されたくない!!


よし、仕事だ。溜まった仕事、全部片付けてやる!!


「やるぞ!」



◇◇◇◇◇



「何だ…………これは…………」


放課後。久しぶりに、いや1ヶ月ぶりに来た生徒会室。いつも整理整頓された部屋…………のはずが、今や自分達役員の机は全て、書類に埋もれていた。

1ヶ月、されど1ヶ月。この学校の生徒会が忙しいのを忘れていた。


「…………やるか」


自分の机に置かれた書類を一枚一枚確認し、判子を押していく。そして確認が終わりしだい、開いている場所が無いので、床に布を引き、そこに置いていく。

それを延々と繰り返し、どうにか自分の机の分を半分程終わらせた時、ガラリと扉が開いた。


「えっ!? 副会長!?」


「うそっ!?」


来たのは一つ下の学年の生徒会補助の係の、女の子二人である。生徒会補助とは、1年と2年の各クラスから一人選ばれる、生徒会の雑用や仕事の準備、時には掃除までやってくれる係である。この学校、生徒会の仕事が大量にあるために、こんな係があるのだ。


「良かったー! 副会長だけでも来てくれて!」


「もう私達じゃ、どうしようもなくて!」


二人が涙目になってしまい、慌てたものの、何とか落ち着いてもらい、終わらせた分の書類をお願いする。


「でも急にどうしたんですか?」


ギクッ。あの、みほりんと言う子に、落胆されたくない一心で来たとは、流石に言えない。


「う、うん、仕事がどうなってるか気になってね?」


これで納得はしてくれたらしく、彼女達が来てくれてお陰でペースが捗り、机の上の分を全て終わらせる事が出来た。


「ありがとう、手伝ってくれて助かったよ、鍵は此方で返すから、先に帰っていいよ」


二人を帰して、僕は戸締まりをして、職員室に寄り鍵を返す。その際、先生にぎょっとされて、かなり凹んだ。成る程、そんな風に見られていたのか…………。


ふと、僕は今更ながら気付いた。

あれ? 今日、姫の事を途中から考えて無かったな…………。

仕事の最中は、姫の事など片隅どころか、頭から吹き飛ばしていた。


…………何やってるんだろ。愛しい姫を忘れるなんて。


しかし、だ。あの庭にいた、みほりんには礼を言いたい。あの言葉のお陰で、生徒会室の現実を見る事が出来た。久しぶりにやりきった清々しい気分なのだ。明日、お礼を……………あっ!?


名前もクラスも知らない!


「そうだ、明日、補助の子達に聞いてみよう!」



◇◇◇◇◇



次の日のお昼休み。また、あの渡り廊下に来てみた。そして下の中庭を見てみる。


いた!!! あのオタク娘三人組!


実は朝、登校してすぐに、姫に会ったのだが、何故か違和感があったのだ。

あれ? 何で姫は、僕が他の生徒に挨拶する度に、険しい顔になるんだ? 他にも、生徒会メンバー達と一緒にいるのに、喧嘩みたいな事が起きても、姫は止めない。いや、止めているように見えるが、本気で止めてない。だって、頬が緩んでるんだ。嬉しそうに。

自分を取り合いされて、困るんじゃなくて、嬉しそうに笑う。


ゾクッときた。何で僕はこんな子の傍に、ずっといれたんだ?


姫との切っ掛けは、僕が疲れていた時だった。疲れても笑顔をしていた僕に、無理するなと、本当の自分を出していいんだと、そう言ってくれたのは、姫が初めてだった。だから僕は、姫に夢中になったんだ。初めて僕を、僕自身を見てくれる人に会ったのだから………。


でも、偽りだったのかもしれない。今の姫からは、優しさやそういったものが感じられない。

ねえ、姫? 君は僕といた時、気遣いの出来る優しい子だったよね?

生徒会長には怒ったり、会計には大人びた姿を見せたり、書記の子には無邪気に笑ったり………。

ねえ、姫。本当の君はどこにいるの?

そんなふうに感じたら、無理だった。傍にいる事が、怖くてたまらなかった。


あぁ、みほりんに会いたい…………。


既に定着したあだ名を心の中で呟き、僕はお昼休みに渡り廊下に向かったのだ。



◇◇◇◇◇



「そういえば、クラスの補助の子が朝に言ってたよ? 副会長が生徒会に戻ったって!」


「お〜、補助の子達、困ってたもんね〜」


もう、話題になってたのか。そんなに困らせてたんだな…………。何だか真面目に仕事をしていた補助の子達に申し訳なくなってくる…………。


「でも副会長が仕事を始めてくれて、本当に良かった………」


その一言に癒された。そういえば、みほりんの顔を見たこと無かったな。気になれば、もう見たくて堪らなかった。下にばれないように、急いで向かい側の窓から彼女を見てみる。


あ…………。


唖然とした。

凄い美少女だった。雰囲気は文学少女だろうか。長い髪をお下げにして流しているが、キチンと手入れをされているためか、野暮ったいイメージはない。清楚な姿に、目を奪われた。

まさに、一目惚れであった。



◇◇◇◇◇



「え? 中庭の三人組?」


放課後、補助の子にそれとなく中庭の三人組を聞いてみた。


「あー、それなら、中原さん達じゃないかな?」


どうやら、心当たりの子がいたようだ。


「中原さん?」


「はい、ショートカットの中原(なかはら)(あずさ)さん、ふんわりした雰囲気の大和田(おおわだ)友佳里(ゆかり)さん、髪を三つ編みにしてる河中(かわなか)鈴音(すずね)さんですね」


「皆、社長令嬢ですよ? 中原さんはファション界のブランド、RAIRAの始業一族で現社長令嬢ですし、大和田さんは大手の食品メーカーの大和田食品の社長令嬢だし、河中さんなんて、あの河中グループの社長令嬢ですよ? 凄くないですか!?」


「へぇ」


河中グループなら、うちの取引先だ。うん、良い事を聞いた! 家に帰ってから、父に聞いてみよう。勿論、無理強いはするつもりはない。少しずつ距離を縮めていけばいいのだ。今から楽しみだ!



◇◇◇◇◇



「お父様、お呼びとの事ですが…………」


困惑した顔になるのも、仕方ありません。あ、申し遅れました。河中鈴音と申します。家に帰ってから、いきなり父の書斎に呼ばれたら、誰だって困惑しますよ?


「あぁ、うん、お帰り、鈴音…………なあ、お前、橘グループの息子さん知ってるか?」


唐突な父の言葉。父も相当、困惑しているようです。


「はい、橘副会長でしたら、存じ上げておりますが…………話した事も無いですよ?」


「だよなぁ? 急にあちらから、好条件の事業提携と、お前の見合いの話が来てるんだよ」


「はい? お見合い!?」


「これは“ついで”でいいらしいんだが、相手方が乗り気でな…………」


父がついでの処を強調しますが、これを逃す父とは思えません。


「……………分かりました、受けましょう」


私も社長令嬢、政略結婚が来るのは分かってました。まさか相手が憧れの副会長とは、思いませんでしたが。

しかし、副会長はとある女子生徒に夢中だったはず。どうされたんでしょうか?

まあ、私は自分の役目を全うするだけです。



◇◇◇◇◇



二週間後、学校にある衝撃的な話題が走った。


“あの”副会長が、“自ら”婚約者を迎えると!!!


副会長と言えば、ついこの間まで、とある女子生徒に夢中になり、生徒会の仕事をサボっていたのだ。

なのに、な・の・にである!!

急に仕事を真面目に行うようになり、今迄が嘘のように真面目で温和な優しい彼に戻ったのである。

何があったのか、としか言い様がなかった。なんせ他の生徒会メンバーは、今だに女子生徒に夢中なまま。何故、彼だけが元に戻ったのか、全校生徒が不思議に思っていたのだ。

それが今度は、婚約者である。勿論、政略結婚………のはずなのだが、明らかに副会長が夢中なのだ。婚約者たる河中鈴音さんに………。

しかし、これで皆は納得した。河中さんが、副会長を真面目に戻してくれたんだと。故に、一部を除き、彼女との婚約はファンクラブからも正式に認められたのである。

そして彼女を認めない派………まあ、女のやっかみもあるが、一番は攻略対象者(ハーレム)に逃げられた女子生徒である。勿論、取り戻そうとしたけれど、そこに現れた副会長の惚気っぷりと、デロデロな姿に引いたのは、仕方ないかもしれない…………。


読了、お疲れ様でした。


まずは自己紹介から。秋月煉と申します。初めましての方も、お久し振りな方も、以後お見知り置きの程を。


さて、解説と参りましょう。


前提としまして、この学校の生徒会は、とある女子生徒に夢中になっており、忙しいにも関わらず、仕事をサボっています。

しかし、たまたま渡り廊下を歩いているときに、三人のオタク話等を聞いて、生徒会副会長は我に帰ります。そして、まさかの生徒会室の現状に、一人反省します。そして、姫と呼んでいた女子生徒の不自然な部分に気付き、一方的にではありますが、誠実で優しいみほりんこと、河中鈴音に一目惚れ。みほりんのあだ名は、とあるアニメキャラクターに似ているから付けられました。決して作者が忘れた訳ではありませんよ?

最後に無事、彼女を婚約者に出来ました。滅茶苦茶、溺愛してます☆ そして彼女も実は副会長が好きでした♪ 美男美女カップルで、ファンクラブもお祝いする程。いやー、熱々カップル、ごちそうさまですm(__)m


もしかしたら、違う人のも書くかもしれません。


また次回、お会い出来ますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 久しぶりに読み返していて気になったんですけど、河中鈴音という名前であだ名がみほりんなのは何故だろう みほってどこからきたのさ・・・
[一言] こんな物語も在るんだな、と思いました。 「改心」 素晴らしいと思います。 まあ、本当は客観的にムカつく奴が酷い目に合えばいいんですが。
[一言] 面白かったです♪ 副会長、良かったね~~~~(ドンドンぱふぱふ) 他の人たちのお話も楽しみにしておりますm(_"_)m。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ