どこからでも
「事実は小説より奇なり、ンッン~、名言だねぇ」
ウンウンと頷きながら独りごちる。
身じろぎするたびにジャラジャラと耳障りな金属音が鳴るが、それは大した問題じゃあない。
アタシの身に起こった「小説より奇な事実」の方が大問題だからね。
「悪役令嬢に転生……いや、憑依ってヤツかい? いやはや……驚いたもんだよ」
悪役令嬢転生モノ……それは、最近? かどうか知らないが「小説家になろう」ってサイトでそこそこ見かける話の作りだぁね。
たいがいは乙女ゲーとか? そんなゲームの悪役キャラに転生だか憑依しちまって、その悪役キャラは物理的に死んだり社会的に死んだりするという未来を持つキャラで、そんなキャラになったら自分の人生詰んでるじゃんッッッ!!! とか言って主人公が未来に降りかかる自分の死の運命に抗って、なるべく品行方正に生きようとしたらその結果で、原作の男キャラに惚れられて逆ハー作ったり、原作のヒロインキャラが逆ハー作ろうとしてバカやって主人公はそれを跳ね返したり、原作の修正力だかに押し流されてヤバイ目にあったり、とかだっけかねぇ。
他にもあった気がするが、だいたいそんな感じで原作に該当するシーンから逃れようとするところから始まる物語さね。
それが、今のアタシの状況。
つまり、アタシも今、とあるゲームの悪役令嬢に憑依しちまったって事。
それなりに長い事生きてきたけど、どんな年になっても初体験ってのはビックリしちまうもんだよ。
事実は小説より奇なりとは言うが、まさかWEB小説より奇になるとは思いもしなんだわ。
あぁ、ちなみにアタシは憑依前は80をすぎたババァだったんだよ。
ババァがンなサイト見てんなとか言っちゃいけないよ。老後は暇で仕方がないんだからね。
ま、それは置いといてだ。
前世……って言うには、アタシは自分が死んだ覚えもない以上は、突然の幽体離脱からの憑依だと思うけど、その場合は元々のこの体の魂をやってたヤツァどうなったのか、ちと気になるねぇ。
アタシと入れ替わっちまったってんなら、若い体から突然老女になっちまってて、ひょっとしたら気の毒かも知れない。
でもまぁこの体の記憶もアタシにある以上は、憑依したとかじゃなくて今まで自覚してなかっただけでアタシは転生者か何かで、今さっき前世の記憶を思い出したとか、そんなパターンの可能性もあるんで何とも言えないがね。
「それにしても……どうしたモンかねぇ」
アタシが憑依タイプにしろ前世の記憶をさっき思い出したタイプにしろ、今はちと大変な状態だからそれを考察するのは後回しにして今は身の振り方を考えるべき、と思ってジャラジャラ音を立ててウンウン唸っていると
「やかましいぞ!」
「無駄に音を立ててんじゃねぇ!」
と、ガシャガシャとアタシの何倍もでかい音を立てて鉄格子に金属をぶつけながら恫喝する声が鳴り響く。
「アー、はいはい済まないねぇ」
てめーらのがうるせえ、とでも言いたい所だが怒らせるのもバカバカしいんで、今はひとまず大人しくするさ。
ああそうそう。
アタシは憑依だか転生だかしたわけだけどね。タイミングがちと悪かったみたいだ。
ここは孫が高校生の頃やってた架空のファンタジー世界を舞台とした恋愛ゲームの世界で、アタシはそのゲームの意地悪キャラをやってる悪の伯爵令嬢の体に入っちまったみたいだが、この体の現在の居場所は牢屋の中だ。
なんつーか、アタシが乗り移ったこのキャラは設定上は高慢ちきな金髪ドリル女で、平民出の主人公に事あるごとに嫌がらせしたり不正したり圧力かけたりで、色々あって自分や実家の悪事がバレて家財没収お家取り潰し即逮捕スピード裁判で公開処刑っつー末路のキャラなんだけど、今のアタシの状況は「即逮捕」された直後の部分だよ。
ジャラジャラ音が鳴ってたのは両手にはめられた金属の枷の鎖の音ね。
転生でも憑依でもいいが、タイミングぐらいは選ばせて欲しいもんだね。
自分の人生をやり直すのならまだしも他人の人生をバトンタッチするタイミングなんてどこからでもOKとはいかないよ。
所でさっきチラリと考えてた「憑依っていうより魂の取り替えだったりして」って考え、もしこれが正解だとしたらこの体の持ち主は……悪事が世間にバレまくって自分を助けてくれた保護者も逮捕されて自分は全てを無くして、今まで見た事もないような不衛生な牢屋の中にぶち込まれた後、気づいたらババァの体に憑依、っていう事になるわけだけど……アタシとこの体の持ち主、どっちが不幸なんだろうねぇ?
と、そんな事を考えてる場合じゃないね。
今考えるべきはこれからの身の振り様なんだから。
えーと、なろうでよく見てた悪役令嬢モノなんかだと、原作通りの運命はイヤー! とか言って品行方正に生きて死亡ルートを回避するために頑張るべきなんだろうが……今から模範囚になってもアタシが死ぬのは変わらんよねぇ。
じゃあどうすべきか……アタシに実感がなくともこの体が罪人の物である以上は、この体の持ち主の死を願う人のためにも死ぬのが正しいのかもしれないけど、それはヤだね。
せっかく若く、それなりに整った容姿の体になったってのに殺されるなんてたまったもんじゃない。
「さて、どうしたものか……」
某ギャグマンガの死刑囚みたいに、拳足でもって牢の壁を掘り進んで脱獄ってやりたいところだが、目の前に見張りがいるんじゃ止められそうだし。
いや、止められなかったとしてもここは地下だから上に掘り進まなきゃならないけど、常識で考えりゃ途中で酸欠になりそうだからねぇ。
まぁ何はともあれ身動ぎに応じてガチャガチャうるさい手錠は壊しておくか? と思ったところで気配を感じた。
それも複数の。
その気配のうちの一つ、それはアタシの知るものだった。
いや、アタシが知ってるんじゃない。アタシの体が知っているんだね。
「はぁい、ご機嫌いかがァ~」
やってきた集団の中から、声をかけてきたのはひとりの女。
その女の正体は、この肉体の持ち主に今まで散々嫌がらせを受けていた女である。
とはいえ、だ。
それは相手の主観による所が大きい。
この体の持ち主の主観的には、相手も悪いところがるとかなんとか。
完全に第三者とは言えないけど、アタシの視点から言わせてもらうとどっちもどっち、かな。
この世界の元ネタかどうかしらないが、恋愛ゲームは相手の女主観で進むストーリーで、その視点で見ればこの体の元の持ち主は嫌な奴~、って感じだったがこの体の持ち主から見ると、相手の女の方が常識知らずの脳足りんだし。
同レベルだよ。
アタシの目で体の記憶を見る限り、おそらく相手も転生者とか、そんな感じだと思える。
ゲームにおいても主人公は元平民としての生活や習慣のギャップで周りとの摩擦が起きるキャラだったけど、そのゲーム以上に色々とやらかす女だからねぇ。
あとついでに言えば
「ここの暮らしはどうかしらぁ? 薄暗~くて不潔な牢獄の暮らしは?」
こんな嫌味なセリフを言いながらクヒヒと笑うような女が主人公のゲームじゃ感情移入しにくいだろうしね。
ゲームやってた限りだとこの子は本来は育った環境のズレで周りとのギャップに面食らうことはあれど、基本は善良な子だったし。
当然、そんなふうに考えて沈黙してる相手に
「なんとか言ったらどうなのよ!」
なんて言いながら牢獄の鉄格子に蹴りを入れる子でも無かったはずだよ。
だからやっぱ、この子の中身も原作とは別人なんだろうねぇ。
アタシと違って早い段階で転生してたみたいで羨ましい限りさ。
前世の行いが良かったから……とも思えないけどね。
「済まないねぇ、ちぃとばかし考え事してたんで口が遅れちまったよ」
「はてな? なんか口調が……」
まぁアタシがいま考えるべきことはここからの脱出をどうすべきか? って事に集約されちまうんで、目の前の女への対応が雑になるのも仕方ない。
どうも訝しんでるみたいだけど、気にするまでもないことだろうさ。
「ハハン! 普段はお高く止まってても極限状態に置かれて化けの皮が剥がれたのね! なぁにが貴族らしい振る舞いよ! この犯罪者の不正貴族!」
したら、相手は勝手になにか納得したようで、こっちに対する罵詈雑言とともに叫んだりしてる。
洞窟だから声が響くんでやめてほしいよ。
「はぁ、はぁ、はぁ……なんとか言ったらどうなのよ!」
「なんとか」
あんまりうるさいから対応もおざなりになったけど、その結果さらにうるさくなるという悪循環。
いかんね、中身ババアと言ってもアタシは所詮気ままに生きてきた人間、ゆえにそれほど人格形成が優れてるとは言えないからか、前世でもよく他人を怒らせていたんだよ。
よもや違う体になっても同じことを繰り返すとは……ま、そこは仕方ないか。
例えガワが変わってもアタシはアタシらしく生きることしかできんのだから。
アタシがそうやって自分の人生を振り返ってると、いい加減叫び疲れたのか、女はようやっと静かになる。
しかしその怒りが静まったわけじゃないのは目を見りゃわかるがね。何をする気なんだか。
「ふ、ふん! まぁいいわ……調子に乗ってられるのもそこまでなんだからね」
パチンと指を鳴らす。
すると、女と一緒にやってきた男たちがずいっと前に出る。
ここは地下とは言え、仮にも王城の施設だってのにやけに清潔感から遠い人たちだねぇ。
「うひひ」
「ふへへ」
「ぐふふ」
なんてニヤニヤと笑いながら股間でテントを作っているが……んー、この展開ってアレかね?
「あんたはクズの不正貴族のくせに身持ちは硬かったっていうじゃない? つまり処女ってことだろうけど、もうすぐ死ぬのにそれじゃかわいそうだと思って、あんたのためにふさわしい男を連れてきてあげたのよ!」
やっぱそういう事かね。
「あんたみたいなこの世のクズにぴったりな男を見繕ってきてあげたんだから、せいぜい死ぬまでの短い期間を、惨めに過ごすがいいわ! あっはははは!」
つまりは、家の権力全て奪われ逮捕され、薄暗い地下牢にぶち込まれすでに憤死寸前の屈辱を感じているであろう悪役令嬢に、さらなる追い打ちをかけたい、と。
原作のこの子は間違ってもそんなことを考えるような子じゃなかっただけに、ちょいとばかし驚くよ。
少なくともこの子が侍らしてる攻略対象の連中だって、原作の主人公の性格を好きになったはずで、中身がこんな残念賞な子は好きにならない気がするんだよねぇ。
今のところは上手く猫かぶってるのかもしれないけど、中身バレするのはそんなに遠くないねこりゃ。
「やれやれ、所であんたの王子様たちはこの事を知ってんのかい?」
「いまさら命乞いのつもりかしら? 私がここにいるのは内緒だからバレてないわよ! 助けなんて来ないんだからね!」
「そーかい」
とりあえず、アタシたちの会話をBGMにしてアタシに伸し掛ろうとしてきた男の心臓に一撃。
それだけでうめき声も出せずに心臓停止。
「え?」
突然力なく倒れ、アタシに押しのけられ横に倒れる男をみて、困惑の声を上げたのは誰か。
まぁ相手が何をしようがアタシが何をするのかはもう決まったことだけど。
「ふんっ!」
まずは動くたびに鎖がジャラジャラとうるさい手枷。動きは縛られてるけど、多少は動く遊びがあったので、手首同士を、正確には手首を固めている手枷同士をぶつけて砕く。
「なっ!?」
今度は困惑ではなく明確な驚きの声。
そりゃそうか。
手枷や牢の鉄格子に使われている素材は魔法金属のフシギニュウム。フシギニュウム製の鎖は吸血鬼だって壊すのに手こずるというくらいの信頼性のある物質なんだから。
そんなフシギニュウムを壊されたら、そりゃビビる。
「よっこらせ」
しかし、相手の驚きなんて無視してアタシは次々に男どもの心臓に打撃を打ち込み倒していく。
自分の体じゃないだけに無意識で動く、って事はないんで動作を常に意識しながらじゃないといけないのは煩わしい反面、体術の基礎のやり直しとしては悪くない。
「て、てめぇ!」
「この!」
アタシを犯そうとした男どもが倒れ、囚人のはずのアタシが拘束具を壊し立っているというのがどういう事なのかを気づいたらしい門番が、咄嗟にあたしに攻撃しようとするが
「せっ」
一人につき一撃で沈黙させる。
これであと一人。
「ひ、ひえー」
と、思ったけど残った女は突然のことに驚いて走って逃げていった。
悪くない判断力だね。
頭の中身は残念っぽいのに。
「さて」
どうするべきか……と、考える。
しかしまぁどのみち、ここまで来たら手は一つしかないかな。
「正面突破か。やれやれ、どこまで行けるかねぇ」
アタシは前世において、80すぎのババアだが、それはそれは強い拳法家だった。
それも表の世界で知られてるような奴じゃなく、裏の世界でも顔の利くすごいやつだ。
漫画やフィクションの中にしかなさそうな「気」を使った技とかが本当に使えるんだよ。
手からエネルギー波を出したり、秘孔をついて指先一つで敵を爆死させたり、素手で鋼鉄を引き裂いたりね。
とはいえ、気だって本来は体を鍛えて体内に蓄えなきゃ使いようのないモノだったりする。
しかしアタシは前世(?)で、外気功も使える達人と呼ばれるレベルにまで己を高めた拳法家だからね。
体内に気がなくても周りの気を使って体を補強するくらいは出来るのさ。
「しかし……この世界は前世に比べて空気中に気が満ちてるからか外気功の威力が高いね。慣れないと体のほうが壊れそうだよ」
前世が80すぎのババアだった事を差し引いても、この体は前世より弱いからね。
多少は気で補強できても、それは繊細な気の操作が必要になるから無茶な動きは好ましくない。
しかしやらねばならないのさ。
「い、いたぞ! 本当に出てきた!」
「きょ、許可は出ているんだ! 殺せ! 殺せー!」
体の中に気を満たしながら慣れさせるようにゆっくり歩いていると、城の兵隊たちであろう男たちが10人近くやってきた。
どうやらあの女が兵隊たちに報告したみたいだね。
何人かはボウガンを持っているのは、アタシが門番も含めた男数人を素手で倒した事にたいする警戒かね。
「撃てー!」
そしてボウガンの矢が沢山飛んでくる。
狭い通路ゆえに避けにくいし、そもそも素早く動くのがまだ難しいので、アタシは体に気を込めて硬質化させ、弾く。
「ば、ばかな!」
まぁわかりやすく言うと牙大王の技みたいな感じだ。体の色も黒くなっちまうからあんまり好きじゃないんだけど、気によって金属より硬くなったあたしの防御力ならボウガンの矢は防げることが確認できただけでも良しとしよう。
「お次は攻撃だね」
「くっ、死ねい!」
ボウガンの矢をものともせず歩くアタシはすぐに兵士たちの間合いにまで入る。
剣や槍で武装した兵士たちはボウガンが効かなくても剣や槍なら……とでも思ったのか攻撃してくるが
「せっ」
最小限の動きで避けながら、一人一撃で確実に倒していく。
一つ一つの動作を確認しながらだから、素早くは動けないが、それなりに戦えるようだ。
まぁ敵の数が増えればどうなるかわからないが。
いくら外気功で外から気を補充してるとはいえ、それを使い続ける事による疲労はどうしようもないからね。
それから歩き続け、ほどなく地下からの脱出はなった。
地下道を歩ききって、なんとか地上部分に出たのだけど、地下道よりも広い城の地上部分の通路には、たくさんの兵士でごった返しになっている。
まぁ結構ゆっくり歩いてたから、警戒する時間を与えちまうのは仕方がないことだけど。
「貴様、なんのつもりだ」
兵士の数を数えようかどうか迷っていたら、アタシに声がかかる。
この声は覚えがあるね。
アタシ本人じゃなく、この体の持ち主の記憶だけど。
「やあ王子様」
「馴れ馴れしく口を開くな! この犯罪者が!」
とりあえず声のした方を向いて返事したら、王子様の側近の、ゲームで言う「ほかの攻略対象」な騎士が忌々しそうな声を上げる。
いや、声をかけられたから返事したんだが……返事しなかったら無視するのは無礼だとか言うつもりだろうし、どないせっちゅうねん。
「まて。声をかけたのは俺のほうだ」
とか思ってたら王子様の奴は意外と冷静な判断。
まぁ冷静がどうとかじゃなく、丸腰の女が差し向けた兵隊たちをものともせずに地上まで出てきたことに対する警戒かも知れないけど。
むしろそういう冷静さは騎士の方が持ってなよ、って思うね。
大丈夫かねこの国は。
「もう一度聞くぞ。なんのつもりだ」
「脱獄するつもり」
まぁこの国の行く末なんてアタシが関わることじゃないだろうし、気にしても仕方ない。
今はとりあえず聞かれたことに答えてみるさ。
「脱獄だと。貴様、犯罪者の分際でか。罪は罰を持って贖わなければならぬのだぞ」
声こそ荒立てずに冷静を装っちゃいるけど、眉間にシワを寄せて激おこしてる王子を未熟と見るべきか、若いのにまぁまぁ大したもんだと評価すべきか。
ゲームだと完璧超人的なキャラの扱いだったけど、実物を見るとなんとも……って感じだァね。
まぁ同年代の頃のアタシはチンピラ並の性格だったし、若いのに大したもんだと思っておくさね。
「いやまぁ、この国の法律的にアタシ、ってかアタシの実家が色々やりすぎてアウト、貴族たるもの連帯責任はお常識って事で、アタシも公開処刑されなきゃならない、というのは理解してますがね」
「む」
そこまで言って、アタシの喋り方がこの体の持ち主の口調とちょっと違うって事にでも気づいたのか、なんか怪訝な顔をするやつが数名いるが、構わず続ける。
「やっぱ死ぬのは嫌だなー、って思ったんで生きるための努力をすることにしました。そう思っててくださいな」
流石に異世界の人間の魂が憑依したみたいな感じなので、体の事は置いといて中身が罪を償うのは嫌だと持った、っていう本音は言えないね。
言っても信じられる気がしないし。
「そんな貴様の勝手を許すと思うか。法は絶対のものなのだ」
しかしアタシの返答は結局気に入られるはずもなく。
王子は兵隊たちに命令を下す。
「こいつを殺せ!」
ま、そうなるだろうねぇ……むしろ弁舌の機会が与えられただけでも感謝かね?
しかし感謝しようがしまいが、アタシのやることに変わりはない。
生まれ変わる前も、後も、好きなように生きるだけさ。
「あたぁ!」
殺到する兵士たち。
その最前列の連中に強い気を打ち込み爆散させる。
なんとも無残で気の毒な殺し方だが、仕方がない。
これで引いてくれれば犠牲は最小限で済むんだし。
「こんな死に方をしたくなきゃ、道を開けな!」
アタシの啖呵にビビってくれれば……しかし、
「引くなぁ! この女を取り逃がせば、いずれこの国の禍となるぞ! 命を捨ててでもここで打ち倒すのだ!」
「おおー!」
どうやらこの国の兵隊は優秀なようだ。
もはや力尽くでの正面突破以外の道は絶たれてしまったと言えよう。
「はっ、それならそれで良いさ」
かかってくるのなら、アタシはただ敵を打ち倒すのみ!
「どこからでもかかって来な!」
主人公の戦いはこれからだ! エンドです。