死を喰らう男
初めて「死」というものにテーマをおいて、物語を作りました。内容も初めて書くような感じなので変なところもあると思いますが。そこは、感想でご指摘お願いします。
突然だが、都内の高校に通う「萩野信也」は廃ビルの屋上の淵に立っていた。理由は簡単である。自殺しようとしているのである。その原因は、今の世界に生きる意味を失くしたからである。学校ではいじめにあい。家では、父が仕事であまり帰ってこないし母は他の男と遊んでばかりである。こんなことばかりなので、生きている方がつらいのである。そういったこともあり、信也は誰もいないビルでひっそりと死のうとしているのである。
なのにだ・・・・
「あの、そこで何をしてるんですか?」
信也は、自分の後ろの屋上の入口の所に飛び降りようとした時にあらわれた男に聞く。
「いや、だからぁー飛び降りるなって。そんなことで死を無駄にするなって。」
男は、信也に言う。しかし
「止めても無駄ですよ。こんな世界生きていても意味なんてないんですから。」
「ちげぇよ。死ぬこと自体は問題ねぇんだ。問題は、飛び降りで死ぬなってことだよ。」
信也は意味がわからなかった。死ぬのは問題ないが、飛び降りはやめろ?
「どいうことですか?」
信也は気になり聞き返した。すると
「簡単だよ。どうせ死ぬのなら俺に喰われろっていうことだよ。」
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信也は、どうせ死ぬのだからということで男の話を聞くことにした。
男の名前は、「イルヴィ・リグナル」というらしい。イルヴィと信也は屋上の隅で話をしていた。
「イルヴィさん。さっきの話どういうことですか?」
「言っただろ、どうせ死ぬのなら俺に喰われて死ねばいいって。」
そう言われても、信也にはまだ意味がわからなかった。だから聞き返す。
「意味がわからないんですけど・・・」
「そうか?まぁ、簡単に言えば俺は人間じゃない。」
「えっ?」
イルヴィから出た予想外の言葉に、信也は戸惑いの言葉を出す。しかしイルヴィ気にせず続ける
「俺は、死喰者。死を感じている者を喰らう者さ。」
「デス・・グール?」
困惑する信也に、イルヴィは
「お前に何があったかは知らねぇが、自殺しようとしていたお前からは死の臭いがプンプンしてきた。だから俺は、それを喰らいに来たってことだ。」
信也は、まだよくわかっていなかったが一つだけ確信を持って訪ねた。
「それってつまり、イルヴィさんが俺を殺すってことですか?」
「まぁ、簡単に言えばな。」
その言葉を聞いて、信也はどうせ死ぬのだからと思い
「いいですよ。」
そう答え
「僕を喰ってください。」
と宣言していた。
「話が早くて助かる。では、いただきます!!」
と言うと同時に、イルヴィの感じが急激に変わった。
そして、その口がまるで狼男のように大きく開いた。
その時、信也は今までイルヴィの言っていたことは真実で、いまから自分はこの男に喰われて死ぬんだということを悟った。すると過去まで遡るように今までの思い出が一気に頭をよぎった。
(これが、走馬灯か。)
そう信也は思った。しかし、信也は知らなかった。これは死喰者であるイルヴィの力の影響であるということを。そうとは知らず、信也は過去の記憶を次々と思いだす。そして
「あっ」
とある記憶が頭に流れ込んだところで、信也は不意に声をだした。それは、自分がまだ小学1年生だったころの記憶だ。小学校に入り最初の参観日だというのに、信也の両親は来なかった。しかし、信也は悲しまなかった。なぜなら、代わりにおばぁちゃんが来てくれたからだ。おばぁちゃんは、信也が悲しんでる時いつもそばにいてくれた。しかし、そのおばぁちゃんは信也が中学に入る前に亡くなってしまった。そこから、自分の闇が始まったのだと。自分も今そのおばぁちゃんと同じところに行くのだと。しかし、信也は声を出した。それは、おばぁちゃんが来てくれた参観日の帰り道のことだ。
『おかぁさんも、おとぉさんもいなくってもいいや。おばぁちゃんがいてくれれば、ぼくはいいや。』
まだ幼かった信也は、そんことをおばぁちゃんに言った。すると
『そんなこと言うもんでないよ。今は、一緒にいる時間が減ったかもしれないけど自分の両親なんだから、そんなこと言っちゃいかんよ。』
今まで怒ったことのなかったおばぁちゃんが初めて怒ったのだ。
『自分が望むことをやめたら、その望みは叶わんよ。だから、どんなに苦しくても自分の望みをしっかり持って生きなさい。』
そこまで思い出したところで、信也は次の言葉を紡いでいた。
「・・・たくない。」
「あー?」
イルヴィは、少しけげんそうな顔になったが信也は続けた。さっきより大きな声で。自分の意志で。自分の望みを、自分を喰らおうとしている者に向って言った。
「死にたくない!!」
すると、イルヴィは元の人間の姿に戻り。先程までの感じも、元に戻った。
信也の目からは、涙がこぼれていた。
それを見てイルヴィは、
「ちっ。興醒めだ。」
それを見て信也は、訪ねた。
「喰わないのか?」
すると
「ん?やっぱり喰われたいのか?」
信也は、首を横に振る。
「だろ?今のお前からは〔死〕っていうのが、丸っきり感じられねぇ。そんな奴、喰う価値すらねぇよ。」
そう言い、イルヴィは信也に背を向け
「じゃぁな。また、お前から死を感じれるようになったら喰らいに来てやるよ。」
そう言い、突然姿を消した。
それを、見て信也は涙をぬぐい言った。
「帰るか。」
そんな信也の後ろから朝日が差し始めた。
今日も新しい1日が始まるのだ!!