<推理パート(岩神社 編)>
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楽しんで頂ければ、それだけで…それだけでヽ(´o`;
どうやってこの場を適当に乗り切ろうか考えていたが、案外普通に推理できそうなキーワードを拾えたな。
これはペテンではなく正々堂々に方向転換しても戦える。
しかし…
真剣に取り組むのは面倒だな。
座ったカーペットを無造作に摘む。
だが俺が頑張ったところで勝てるかどうかは別問題だ。
なんて言ったって相手はあの謳歌さんだ。
「今も何を考えているのやら…。」
家頭謳歌は開けた窓から入ってきた桜の花びらを手にしている。
愁いを帯びた瞳、細く綺麗な指
まったくもって美人は絵になるな。
あのインテリジェンスな語り口もかわいいもんに思える。
この美人に嫌われないためにも勝てないまでも善戦しなければ…。
しかたない
気合を入れる為にバン!と自分の足を叩く
よし! 適度に頑張ってみますかっ!
× ×
狂ったようなピエロで有名な社メモをそっと開く。
ページをめくっていくと乱雑な字で1000万円、軽トラックと書かれていた。
自分の雑さに目を瞑りたくなる
「う~む。もうちょっとマメに書いたほうがよかったな? これだけ見ると軽トラックが1000万円で売り出されているとしか読み取れない」
もし1000万円ならそれはフェラーリのエンブレムが付いているか純金製だな。
「いやまて!」
軽トラックならおよそ100キロ。
100キロの純金!?相場価格を考慮すると1000万以上はする。
なら可能性はフェラーリしか…
しかしフェラーリ社がそのプライドを捨ててまで軽トラックを作るとは思えない。
つまり、答えは!!
「まずい、完全に脱線している。駅の姿が見えないほどに」
気になるあいつは1000万円。
ということで1000万円の処遇については後に回すか。
このままだとマジでフェラーリと軽トラックの関係性を謳歌さんの前で講演することになってしまう。
そしてそんなことを謳歌さんに言ったら、あの冷め切った瞳に氷付けにされる。
俺はいつものように自分自身に問いかけるように、ブツブツと考えを口に出していった。
「まず重要なことは、真犯人がいるのか? その一点だな。 いないなら、いないなりの推理が必要だが…、なんとなくだが取り囲まれた保育園からの脱出方法は検討がつくんだよな~。ということは俺の中では真犯人説が有力になるわけね」
”軽トラック”
これが俺の中では、他の車では成しえない脱出トリックが出来ると思った理由。
浸水していく車のドアをこじ開け、また閉じるという芸当は水圧の関係でまず無理だ。脱出できずに死ぬのが関の山ってもんでしょ。
サイドガラスの破壊が出来れば命は助かるが、写真を見た感じ、破壊のはの字も見えない。
なら犯人はサイドガラスを破壊しないで車の中から脱出したってことになる。
「不可能だ、なら答えは1つしか思いつかない。 しかし俺の考えではエンジンはかけれない、遠隔操作でエンジンをかけれるなら…しかしそんなことは可能なのか?う~~ん。」
ダメだ思いつかない。
いや、エンジンも所詮は機械、出来るかもしれん。
しかしそれを推理に組み込むのは難しいな。
”たぶん”おそらく”そんな知識で謳歌さんとは渡り合えない。
「遠隔操作という考えは捨てよう。それでも警察やメディアに囲まれている場所からの脱出は可能だ。裏口から海まで一直線に続く塀はコース、チョロQと同じ論理で俺なら出来る。 成功する可能性もかなり高いだろう。」
しかしそうなるとこれは計画的な犯行だ。
つまり車内に入っていた佐藤なんとかは事件発生後に睡眠薬を盛られた可能性の方が高い。
「だって1人でするより2人のほうがいいなんて誰でも思うだろうしな。うん。その方が効率的だ。しかし園長の証言は…たしか」
たしか1人が男で入ってきた、みたいな証言だったはず。
事前にいた?でもそうなると…
「犯人の数が合わない。後から入って来たのかな?でもそんな証言無かったし。」
そういえば家頭謳歌はなぜ職員の数を聞いたんだ?
考えられる可能性は俺も今考えている共犯者か。
あの時、謳歌さんは職員全員が出勤していることを聞いて満足そうだった。
ということは共犯者は…もしかして職員の誰か?
”では入ってきた男とはいったい誰なんだ?”
仮に園長が見た犯人をXとしよう。
そしてその仲間である睡眠薬を飲まされて軽トラックに乗せられた佐藤なんとやらをY。
共犯が職員ならそれをZ。
「じゃあ犯人Yはどこから来たんだ? 最初から3人組みだったのか? いや、でも複数犯ならそれを匂わす証言が有ってもいいもんだが…それも無かったし。 ならまず犯人は裏口からやってきた、砂場に軽トラを待機、その中にYはジッとしている。そしてXは職員の中にいる共犯Zに手引きしてもらって犯行を行い、その後にYを眠らして……Yいらなくね?」
Yの存在価値は眠る以外無いではないか!
Yは寝て死ねと? ひどくね!?
XとZの人格を疑うわ~。
というかよくYはそんな無慈悲な計画に乗ったな。
いや、この場合は騙されてって感じだろうけど。
「YとZは共謀して1000万を手に入れて佐藤Yを殺したかった、だからこの計画を考えた。」
そんな感じかな?
いやいや、そんな単純なものなのか?
謳歌さんなら
謳歌さんならこの結果に行き着いただろうか?
家頭謳歌の推理の思考は常に相手の考えを読むことから始まっている。
つまり謳歌さんなら人の言動からヒントを得ていく。
証言をした5人中に職員、というか大人は3人。
ここで他の出勤していた職員が、何かしらこの事件に関わっているなんて想像系推理を謳歌さんがするわけがない。
怪盗十二面相的が出てこないなら共犯はこの3人の誰かと謳歌さんは考えたはずだ。
「あの時、不自然な証言をしていたのは…。ふっ、なるほどな。 フハハハ」
証言忘れちった♪
「俺のばかぁ~~。常日頃から気になったことを書き込むためにメモ帳を持ってるんじゃないのかぁ~」
悔やまれ、パラパラとめくれるノートの切れ端。
エロい妄想、落書きしか見えませんでした(泣)
「とりあえず俺も共犯ありきで考えよう。うん、犯人は3人組みだった。そうすれば推理しやすいし」
ビバ!共犯説!
後は謳歌さんに先に推理してもらって便乗するように難癖をつければいいんだい♪
「いや、でも待て。 本当にこのまま俺もその推理に乗っていいのだろうか?」
一抹の不安がピカチュウ脳細胞に伝達する。
その案が事実であっても同じ論点で討論すれば負けるのは、知識量で劣っている俺。
いや、負けるのはいいんだ。
別段、悲しみも悔しさも愛しさも感じないさ。
だが
「嫌われるかもしれない」
なぜなら俺の第一希望は謳歌さんが勝ち、なおかつ俺が善戦することなのだ。
ならば俺が取る手段は
”謳歌さんが考えもしない推理をすること。”
つまるところ共犯説事態の否定、もしくは謳歌さんも考えがいたらない共犯。
「う~むむむむ」
脳細胞が焼け切れそうだ。
しかもたちが悪いことに焼け切れたところでいい案が浮かぶわけでもない。
「じゃあ意味無いじゃん!!」
ふと、本当にふと、謳歌さんを見てみた。
やつは紅茶を飲みながら本を呼んでいた。
はい、謳歌さん推理終了してたぁ~。
「まだ30分もたってないのに!? やばいな、体内時間が早く経過しているように思える、残り半分の時間もあっという間に過ぎてしまう。考えろぉぉ俺の脳細胞ぅぅぅ」
共犯者説は警察も考えたはず。
しかし警察は共犯者を捜しきれなかった?
「なぜだ? なぜ探しきれなかった? 計画が一部のミスも無く完璧だった、そんなバカな!?完璧なんてありえない。ありえるわけがない、どんなに事前に計算し尽くしてもミスはでる。それをハイエナのようにあら捜しする警察、逃れることは難しいと思うんだが…」
焦る気持ちが足に伝わり、貧乏ゆすりとしてガタガタと座ったじゅうたんに振動を与える。
「焦ったらダメだ。焦りは単純な推理を招くだけ。 トリックはなんとなく検討がつく、後は共犯者についての考える方向だけを変えるんだ」
いっそ1番可能性がない存在を持って来るというのはどうだ?
うん!そこから突破口を開いていけば…
「そういえば証言忘れたんだったぁ~」
ワトソン君にそっと聞こうかな?
左に見えるパイプ椅子に座っているワトソン君。
しかし右には、既に推理を終えている謳歌さん。
できるか?
できるのか、俺?
謳歌さんに知られないようにワトソン君から情報を引き出すなんて高等テクニックが!?
なんか目的が変わってきているが…まぁ、やるしかない。
だってこうやって考えている内にも証言を忘れていっているのだから。
「ワ~ト~ソ~ン君♪」
「な~~~にぃ♪?」
あら、いい返事♪
ちょこちょこ♪と金盞花のような長い髪が近づいてくる。
いや、金盞花が本当に金色をしているかは俺の浅い知識では知りようも無いが、なんかそんな感じってことだよ。
ワトソン君はスカートをつかむようにして、俺の視線までしゃがむ。
「何かな、ホームズ君」
「え~とね、もう1回、概要から教えてもらいえる?」
小声でワトソン君の小さな耳に語りかける。
ちょっとドキドキし…じゃなくて、謳歌さんに聞こえないようにするために!
「おけ♪ちょっと待ってね」
「忘れたんですか?」
聞こえるわけが無いだろうと思われる音量に返答をする呆れ声。
謳歌さんは視線を小説に落としたままそう呟いた。
「え!?いや!覚えてるよぉ!!確認だよっ、確認!」
どんな地獄耳だよ。
「静かな場所だと普段よりリラックスして神経が研ぎ澄まされ、小さな音でも聞き取れるんですよ。ちなみにこれを呼吸法と言います。」
その呼吸法とやらは心の声も拾えるのか!?
「無理ですね」
拾えとるがな!!
「えっとじゃあ最初から言う」
「お願いしま~す」
残り時間15分。
「あざーす」
軽快な謝礼と持っていた飴を持たせると、ワトソン君は定位置に戻っていった。
残り10分か
だがもう1度聞くことによって推理の方向性は見えてきた。
そして同時に顔を出した謎。
概要部分を聞いていたときにそれは俺の前に現れた。
”犯人が園児の1人に危害をくわえそうになったことにより身代金を払うことを決めた”
「つまりこれは警察から見える位置に犯人と園児が居たことになる。でもそうなるとな~、あの証言と矛盾が生じる。」
それに2人いた園児の内1人が言った”ぼくもたのしかったのかって? ふふふ~ん♪ ぼくぐらいになるといくつもの、みっしょんをうけているからね、たのしいだけじゃだめなんだよ、こうしょうのおじさん♪”
一見すると子供が状況を飲み込めていないKY台詞として完結させてしまえるが…。
果たしてそれで完結させていいものか?
「まず危害を加えられた園児とは誰だったんだ?全員1つの部屋で固まっていたはず。子供じゃなかった、いやそれはない。子供と大人を見分けられないなんて速攻眼科行きだ。」
警察の前に出て行った犯人、連れていたのは間違いなく子供だったと考えよう。
そしてその子供がミッション
ん?
「たしか証言のガキはこうしょうのおじさん、って言ってたよな? ずっとおかしいと思っていたんだ。交渉か、最近のガキはそんな言葉を使うのか、いや10年前だから最近でもないか。ん?なぜ交渉?…はぅ!?」
ピカ!! 俺の脳細胞がピカチュウ化したね。
やっと電光石火を習得しやがったか。
「ホホホ♪ とんでもないことを思いついたですことよぉ。」
自然とつり上がる口角と声色
「ムフフ♪ これはあの女も思いつかない。 つくわけない」
「時間だよ」
ワトソン君は淡々と時間の終了を告げた。
閲覧ありがとうございました(*'▽'*)♪
次回は家頭謳歌の推理編です。
頑張って社との違いが出せるようがんばりますん(*^^)v