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温暖化が地球に与える影響についての一考察  作者: ひとりぼっちの桜
「事件番号#3.冤罪のマリオネット」
17/18

<雑談パート(下)>

通勤中、寝起き、夜勤の仕事あけの方、その他もろもろの目を通していただけている方々:(;゛゜'ω゜'):

お忙しい中、閲覧本当にありがとうございます(_ _)


今回は最後の雑談パートになります、謳歌が少しだけ推理をしますが基本は推理無しのパートになりますので気軽に読んで頂ければ幸いです。


ヽ(・∀・)ノ



「ふ~む、しかしながらもしかして」

「どうかした?」

「たいしたことじゃないんですが…、さっきの有象無象うぞうむぞうたちが生徒会に私たちのことを言うのかと」

「おや、気にしてたの? あんな言い方してたのに」

「いえ、ハッタリの可能性も高いですが、あの勢いだと怒りに任せて本当に生徒会に行くかもしれないですね」


 それはあなたの自業自得ですよね。


「よし、先手を打ちましょう」


 少しの、しかし深い熟慮。

 思い立つ手は両足をパンと叩く。

 そして謳歌さんが取り出したは携帯電話、と言ってもスマホなんだが。

 俺はあまり詳しくないからそれが新しい機種なのかとかは分からない。

 なんにしても謳歌さんはそれを耳に近づけた。


「私です。 …ええ、少し話があります。 …ええ、わかりました。では、1時間後に」


「どこに電話をかけてたの?」

「生徒会長です」

「え?なんで!?」

「あと1時間後に会いに行きます」

「え?なんで!?」

「行けば分かります」

「俺も行くの!?」

「もちろん」


 もちろん!?


「いいじゃないですか、あなたは元生徒会員ではないですか」

「まだ第1章を根に持ってんの!? あれはフリ、フェイクだって。」

「似たようなものでしょ?」

「オバマとノッチぐらい違うわ!」

「どちらも黒いですよ」

「片方は偽造だよ!」

「積もる話もあるでしょう?」

「無いよ!積もるほどの接点も関心も無いよ!なんなら顔も知らないんだよ」

「入学式で私の前にスピーチしてましたよ」


 ニュウガクシキ?


 普通に寝てましたよ。

 だって入学式が全編通して3時間なんだよ、どんな大スペクタクルだ?

 前編でグッスリ夢の中ですよ、後編は存在すらも未確認生物だったよ。


「っていうか、さらっと言いよりましたけどあなた新入生代表だったのね。」

「彼の名前は冠銅王土かんどうおうど二年生です」

「二年生?二年生で生徒会長やってんの?」

「正確に言うと彼は一年生から生徒会長でしたよ」

「いちねっ!?そもそもなれるの?」

「まぁ、人望さえあれば」

「あるんだ、一年生から人望って」

「そうですね、人望もありますが…彼の特出すべき能力は人身掌握術です」


 人望と人身掌握術?

 人身掌握術があるから人望があるんじゃないのか? 


「一言で彼を表すのであれば、正義を愛し悪を憎んでいる。ですかね」

「立派な志しじゃないか」

「ええ、立派ですよ。彼の正義は説破過ぎるほどに立派過ぎる」

「説破過ぎる正義?正義で全て論破してしまうってこと?いいことのように思えるけど」

「全てを捻じ曲げる正義なんて本当の正義ではありませんよ、そのような考えは悪以外の何者でもない。それにそもそも自分の物差ものさしで測れるのは自分自身の価値観だけですよ。 まぁ、本人はそう思ってないでしょうが」

「??」


 何か歯切れの悪い言い方。

 それにいくら生徒会長といえどもパーソナル情報を知りすぎな気がする。

 謳歌さんはそこまで言うとまた眠るように俯き、本を読み始めた。



 ……………

 ………

 ……


「では行きましょうか」


 くそ~、いやだな。

 この気持ちは生徒会員と称したことから来る罪悪感かもしれない。


 あれから粘ったが俺の出頭届けは取り下げられなかった。

 俺とは対照的に光が充満している表情のワトソン君は、うきうきと足をバタつかせる。


「二人とも行ってらっしゃ~い」

「…ワトソン君、君も行くんですよ」

「はうっ!?な、なんで?」


 光の中に大きなクレータが出来た。

 焦ったワトソン君の青い瞳は、その震度を上げていく。


「…助手だから?ですからかね」

「あの人、怖い」

「そうですね。じゃあ行きましょうか」

「助手、辞める」

「いいですよ。ただし生徒会に行った後でね」


 ワトソン君は違う意味合いで足をバタバタさせた。


「はわぁぁぁあ~、いやぁぁ」





 生徒会室は俺達の部室がある汚い古臭い木造住宅、、、ではなく、俺達が毎日勉学や睡眠に明け暮れている5年ほど前に出来た鋼鉄造りのデザイナーズスクールだ。

 なんか無駄に広いリラクゼーションルームとやらを抜けた先に生徒会室はある。

 初めて訪れた生徒会室の扉は重厚に俺達を出迎えた。 

 ちなみにリラクゼーションルームの使用用途が僕にはまったく分からない。


「着きましたよ」


 生徒会は生徒の代表者が集まる場所、いわばエリート集団の住みかみたいなものだ!と俺は一方的な負の感情的に思っている。

 だからなのかどこの学校でも放つオーラってゆうか、まずもって扉が違う。

 威圧的とか豪勢とかそういうんじゃなくて、なんか根本的にドアノブにゴリゴリした突起部分が付いてる時点で貧富の差を感じずにはいれない。

 庶民なんめんなよ!っという反骨心を持ってドアノブに手をやる。


「これは…滑り止めかな?」


 じゃあ、この扉の模様はなんだろう?

 推察して見た。

 記憶の深淵を覗き込むが見た記憶は無い、あえて類似模様を挙げるなら無限大(∞)かな。

 この扉の中には無限大の可能性があるという比ゆ表現なのか?


「社君、なにを呆けているのですか」

「いや、たいしたことじゃないよ。 ただ生徒会という制度の特権階級から来る上から目線の理由は扉から来ているのかなと、そう推理していただけだよ」

「ずいぶんと壮大な内容だと思いますが」

「にしてもワトソン君、めっちゃ嫌がって抵抗していたな」


 ワトソン君は欠席。


「駄々っ子のようでしたね、彼女の人見知りにも困ったものです」

「最後なんて教卓にしがみついていたよ」

「ええ、半泣きでしたね。」 


 いや、完全に泣いてただろ。


「やはり無理やりにでも引っぺがすべきでしたか」

「やめときなよ、って言ってもやるの俺でしょ? 一歩間違えたら痴漢まがいの行為なんてやだからな」

「いいじゃないですか、強姦の予行練習だと思えば」

「ああ~なるほど~。そうだね♪とは言えねーよ?」


 ボケとツッコミを数回ルーティンワークのようにこなした俺達、謳歌さんは軽く打ち鳴らすようなノックと「私です。入りますよ」という言葉を中にいるであろう生徒会長様に投げ入れ謳歌さんは扉を押し開けた。


 まだ心の準備がぁ~。



 一面真っ赤なペルシャじゅうたんから視線を上げていくと仁王立ちした巨体が視界に入る。


「やぁ謳歌ちゃん」


 低重音のゴリラはヤンキーがつけてそうな尖がったグラサンの隙間からギョロリと俺達を見て軽口でそう言った。

 いやいや、ゴリラと言ったのは比ゆなんだけどさ、筋肉で武装した体つきに190cmはあろうという長身。

 正直、俺が5歳児なら威圧感で泣き叫ぶぞ。

 ドンキーコングが画面から出てきたて擬人化したらこんなやつになるだろうと俺は思った。


 …そのサイズの制服ってあるの!?


「おや?君の後ろにいる…その子がうわさの助手、ワトソン君かい? 聞いていた話じゃ金髪で青い目、僕は西洋人形のような子だと想像していたんだが…う~ん、まぁ見えなくもないか…な?」


 本気で言っているなら眼科に行くことを推奨します。


「いえ、彼は助手ではなく相ぼ…逢引あいびき相手の岩神社君です」


 そこまで相棒と言いたくないのかね?


「本物の助手は今頃、精神と時の部屋で引きこもってます」

「教卓の下だろ」

「ええ、彼女にとってあの場所の時間は止まっていると言ってもいい」


 深ぇ


「ん?まぁいいや。うん、立ち話もなんだから座りなよ好きな席に。 岩神君もね」

「あっ!はい!ありがとうございます!」


 大きな会議室を髣髴とさせるレッドカーペット、その上に左右対称に1ミリの誤差なく配置された机と椅子。


 好きな席と言われてもな… 


「座らないんですか?」

「えっ、謳歌さんもう座ってんの!?座る!座る!」


 俺は近場にある椅子を勢い良く引き下げ行儀良く背筋を伸ばした。


「それで話って? 人払いまでさせるなんて、よほど他の人に聞かれたくないことなのかな?謳歌ちゃん」

「ええ、私の部の横にある部を知っていますか?」

「ボランティア部の横……、今年出来た新設の地域貢献部か、鮮度保存部かな?」


 鮮度保存部!?

 何よ!それ?! もう、目的が分からんよ!


「地域貢献部のほうです」

「うん。それがどうかしたのかな~?」

「部員が今日私のところに来ました。 あなた達は部の設立に必要な人数を確保していない、黙っていて欲しいなら部室を交換しろ、だそうです」


 冠銅生徒会長は肩を震わしながら笑い声をこぼす。


「ぷっ、クックック。 謳歌ちゃんは脅されてしまったんだね。そしてそれが怖くて僕を頼ってここに来たと」


 その言葉に一瞬マユをピクッと反応させた謳歌さん。

 反論するように腕を組む。


「おかど違いもいいところです。 もちろん追い返しましたよ、私があんな脅しに怯えると本気で思っているんですか?」

「いやいや、思ってないよ。 少しからからかった、だ・け。 家頭謳歌がそんなことに屈するならよほどもってかわいいんだがね。 で、なら本題はなんだい?」

「やつらが面倒なんですよ、だから近々にそういったことを報告されたならあなたにもみ消してもらいたいんです。」


 それは無理だろ謳歌さん。

 俺は下斜め45℃の机の脚を見ながら首を小さく振った。

 生徒会長にまで上り詰めた男で、あなたが言うには正義の塊なんだろ?そんな一生徒に対してだけの優遇措置を良しとはしないでしょ。

 

「いいよ。他ならぬ謳歌ちゃんの為だもの」


 えーーー!?いいの?通ったの?

 どこの流星群に正義は流れていったの!?


「ただし条件がある」

「条件?」

「まず2人にはこれを見て欲しい」


 そう言うと冠銅生徒会長は銀細工で出来た綺麗な鍵手にした。

 カチッとなる重厚な机。

 そして配られたコピー用紙。

 目に入ったのはインクの滲んだような文字だった。



[8年前の4月1日を覚えているか? 罪は消えない…。 操られた人形はお前達を許さないだろう、孤島で待っている。来なければお前達は全てを失う。 冤罪のマリオネット]



「読んでみた感想はどうかな」


 チラッと視線が合ってしまったので、俺は緊張しながらも動揺した口で感想を述べた。


「えっと~、そうですね…気分は、、、よくないですね」

「ふふふ、そうだろうね。」 


 ……


「胸焼けもしそうです」

「……謳歌ちゃんはどう思った?」


 あっ、俺の回答ダメでした?

 率直な感想だったんですが


「私の知らない間にえらく恨みを買ったようですね」

「残念ながら僕が買ったわけじゃない。 そもそも僕なら恨みを買うようなことはしないし、もしも買ったならそれは相手に非がある逆恨み、ならばその場でその種を砕いて燃やしてチリも残さない」


 why?何言ってのこの人?


「そうでしょうね」


 そうでしょうね!?


「それでどう読み取る?」

「そうですね…前提として、これは分かる人にしか解くことができない文章ですね。」


 期待するように大きく頷く生徒会長。 


「それで?」

「”お前達”と言っていることからこの文章は複数人に送られている。 8年前の何かの事件のことを恨んでの文章でしょうが”消えない”という表現を使っていることから時効とは無関係、つまり誰かが捕まって解決した事件です。 ”許さないだろう”という表現から自分ではない第三者の気持ちを代弁していると想定できます、ここで述べた第三者とはおそらく捕まった人間。 断定はできませんが、捕まった人間は収監中か…」


 間を取るように足を組み直す謳歌さん

 

「死んでいます」


 おいおいおい

 この2行ほどの文章とも言えないものだけでどれだけ読み取るんだよ。

 俺なんて”胸焼けしそう”だぞ?

 なんならほんと恥ずかしさで胸焼けしそうだよ!


「そしてここで重要になるのは文章中に散りばめられている”操られた”と”冤罪”という単語、これは事実はどうあれ、文面を出した人間は捕まった人間を”無罪”だと確信していることを意味しています。 最後に”孤島で待っている”これは、このような文面を送っても狙いの人物達は来ると確信していると考えてまず間違いないでしょう。それは”全てを失う”にも続く意味です。 結論を言うと送り主が言いたいことは〔孤島に来なければお前達の築き上げたものを失う物を世間に公表するぞ〕ですかね」


 淡々と文面を読み取る謳歌さん

 冠銅生徒会長の口角は謳歌さんの推理力を再確認してつり上がる。 


「これは警察に送られた文章だよ。そして謳歌ちゃんの言ったと通り、狙い撃ちされたかのよう複数名の個人に向けられて送られた、ね」

「あなたの父親もですか?」

「残念ながら父は関与してないな、父も頼まれた側だ」

「そしてそれを頼まれたあなたは、私達に振ったと、、、お役所仕事のたらい回しもいいとこですね。」

「父にこの脅迫状めいた文章を送った人間を見つけて欲しいと言われたんだ。文面から分かるだろうが、おそらくこのパーティーに脅迫状を送った主は来るだろう。 それもただならぬ”目的”を持って」

「ではあなたが意気揚々とはせ参じたらよいのではないですか? たしかあなたは中学生の時にオーストラリアに留学してラグビー部に入っていたのでしょう? 体格から見るに下手な警察官より強そうです、ということは後は見つけ出すだけじゃないですか」

「簡単に言ってくれるね」

「簡単じゃないんですか?」


 そう言うと謳歌さんは上の方を指差していく。

 生徒会室と目の前の生徒会長に気おされた息を整えるように周りを見渡すと、壁の上段部にはビッシリと警察からの感謝状が敷き詰められていた。

 ワードを拾っていくだけで〔犯人〕〔逮捕〕〔協力〕がたくさん目に入る。

 

 すげー、ざっと見ただけでも10枚はある。

 そして全ての宛名に”冠銅王土殿”と記されていた。

 思わず俺の口は子供のように開いた


「すごいっすね!こんなにいっぱいもらったってことは、それだけ多くの事件を解決したってことですもんね!」

「ええ、そうですね。 何年前かな~?取材でこう答えてましたよね? 時にはテレビのニュースを見ただけで事件を読み解いた…でしたっけ?」


 冠銅先輩は煮え湯を飲まされたように答えた。


「まあ、そうだね。 そういうこともあったかな?」

「へ~、でもそれだけ頭がいいなら謳歌さんの力なんて借りなくてもいいんじゃないですか? 心細いっていうわけでもなさそうだし、、、冠銅生徒会長みたいなガタイならその脅迫状を送った人間も下手に手出しはしないと思いますけど」

「ええ、その通りです社君。 障子しょうじ紙より薄い防壁の私では、残念ながら力にはなれませんね。 あなたもそう思うでしょう?天才生徒会長」

「どうかな」

「謙遜はやめてください、それとも何かそうできない理由でもあるんですか?」

「さっきから、それを僕に言わすのが目的かい?」


 やわらかい物言い

 だけどなぜだろう?鳥肌がざわざわするわ。

 帰りたいわ


「やましいことが無いなら言えるのでは?」

「僕ぁ~生徒会長だよ、示しがつかない」

「人払いは出来ています。心配はいりませんよ」


 それを聞いた冠銅先輩は見開いた目をギラつかせながら唇を噛む。


「ここでそれを言う意味があるのかな?」

「あなたはどのようなボンクラだと思って彼を見ているかは分かりませんが、この件に同行するなら遅かれ早かれここにいる岩神社なら真実にたどり着く、それは間違いない、私が保障してもいい、その時困るのはあなたです。 私は親切心で言っているにすぎない、、、それに」


 見下ろすような高飛車な人差し指が、高圧的に冠銅先輩を指差す。


「私は少なからずあなたを評価している。 くだらないプライドと自分の考える正義、天秤にかけることなくあなたなら”正義”を取る、だからこそ私は今まで”協力”してきました、そう思っています。その期待を裏切らないでいただきたいですね」


 冠銅先輩はこれまで取った賞状を見上げた。

 少しの間

 諦めたように握った手がほどけていく。


「社ちゃん」

「えっ、!は、はい!」

「人に言わないと誓えるかい?」


 なにを?


 俺が「え、え~と」と戸惑っているとゴリラのような肉体から破壊光線とも言うべきビームが目と口から放たれた。


「誓えないのかい?」

「誓います!!」


 僕は貝になる。種類で言うとほっけ貝あたりに。


「ここにある賞状」

「はい」

「本当に取ったのは家頭謳歌なんだ」

「はい?」

「僕は手柄をもらったにすぎない」

「はい!?」

「分かったかな?」

「はぁ、、、い」


 つまり何か?

 謳歌さんは自分の解いた事件の手柄をこの生徒会長にあげていたと…。

 謳歌さんに視線を向けると、彼女は涼しい顔でたたずんでいた。


「謳歌さん的には、その、、、それでよろしいのでしょうか?」

「私ですか? 別に、関心がありません。 善意の協力の結果、取材陣に取り囲まれるのは嫌ですし、それに彼という人間に今のうちに貸しを作っていくのも悪くない」


 なるほど…謳歌さんらしい。

 そしてなんとなく分かってきた。

 謳歌さんはその貸しの恩恵としてあの立地条件の部室を手に入れたわけか。


「謳歌ちゃん、これで満足かい?」

「ええ、その勇気に及第点をさしあげますよ。ただ、そこまで自覚されているなら協力が始まってから2年は経過している、自分の推理力を鍛えようとは思わなかったんですか?」


 まっ、当然な疑問だよな。

 少なくとも【家頭謳歌】という弱みを冠銅生徒会長は生涯に渡って持つことになる。

 この巨人がそれをよしとするようには見えない。


 しかし冠銅生徒会長はそれはね謳歌ちゃんと大げさなジェスチャー付きで説明する。


「謳歌ちゃんも知っている通り、神は2物・3物を僕に惜しみなく与えたが、4物オプション、つまりこの世界で言う所の推理力だよね、そこまでは与えなかった。 これは神によるプライマリーバランスという枷だからね、僕も甘んじて受けているんだよ。 分かるだろ、謳歌ちゃん?」

「知りませんし、分かりません」


 謳歌ちゃん、一刀両断。


 俺は当然なりうる未来を予想して小ばかにするように言った。


「でもその脅迫状を送った人間もバカですよね、そんなのを警察に送ったら警備の人間がいっぱい来ますよね」


 すると生徒会長は首を振って俺の未来予想図を否定した。


「警備はないらしいよ」

「ないんですか? こんなの送られてものほほん気分でパーティー三昧ですか?」

「謳歌ちゃんの言った通り、何か後ろめたいことがあるのだろうね、この島で行われるパーティーに警備はなしだそうだよ」

「それは脅迫に対して、送られた警察上層部が何か後ろめたいことがあるということですね。」


 言いづらいことを謳歌さんはズバズバ言うな~。

 見習っ…たらえらい対人関係に障害がある人生を送る羽目になりそうだからやめとこう。


「そうだろうね、ただし入島時の事前チェックは念入りにするらしい。万が一にも”凶器”になるものを持ち込ませないためだろう」

「それでも脅迫状の主は探して欲しいと?」

「ああ、それも秘密裏ひみつりにと父から言われている」

「秘密裏というのは?」

「発見してもみんなの前で公表せず、もちろん自分で捕まえたりはせずに同行する父の部下に伝えて後は動向を見守る」


 ん?それって


 俺は冠銅生徒会長の言葉の意味を理解して目を細めた。

 謳歌さんは黙っていれなかったのか口を開く。


「つまりその人間の持っている情報をもみ消すのが一番の目的というわけですか」

「気に入らないかい?」

「それは私に聞いているんですか? それともあなた自身に溜まっているいきどうりを口にすることで解消しようとしているんですか?」

「…相変わらず、その信頼度が高い心理分析に感心しているだけだよ」


 脅迫状、秘密裏、凶器、鬱になるには十分だな。


「いつですか?」

「今度の日曜日、ちょうどゴールデンウィーク期間でしょ。 瑠璃色島という場所で兵庫県警の上層部が集まるパーティーがあるんだ。」

「瑠璃色島?」

「明石港から船で少し行った所だったと思いますよ」

「さすが謳歌ちゃんよく知っているね。君達にはそこに僕と一緒に行って欲しい」


 君達って、、、、

 知らない間に俺がメンバーに入っているんですけど。

 あれかな?商品を買ったらそのまま個人情報を打ち込まされてメンバーズカードを作らせられるやつ。

 なんてこった、速攻で消費者省と法務省に通報だ。


「ぼくも…ですか?」


「もちろんだよ」「もちろんですよ」


 納得は出来ない。が、ここで反論する勇気をどうやら俺は母のお腹の中に忘れてきたようだ。


 つまりは


 2人がそこまで言うなら、それもやむなしか(泣)


「じゃああの~心ばかりの質問なんですけど」


 俺の手は話の腰を折ることを恐れるようにあがる。

 だってこの人、でかくて怖いんだもん!

 ワトソン君、君の気持ちが今になってよく分かったよ。


「なんだい、社ちゃん?」


 社ちゃん!?

 もうその〔ちゃん〕プラスの呼び方はマストなんですか!?

 俺はよく社ちゃんと呼んでくる親戚のおばちゃんとこの進撃の巨人を脳内でシンクロさせるように、恐怖を和らげながらも思っていることを口にしていく。


「行かなきゃいいじゃないですか、ね?」

「ん??」


 怖い怖い怖い!

 そんな鋭い眼光でこっち見ないで!!!


「いえ、あの~そこにその脅迫状の人が来るなら、確かに警備やらも大切ですけどぉ、そもそも行かなければ危険は無いわけじゃないですか?」

「それは正義が悪に屈することになるんだよ。」

「いやいや、命のほうが大事じゃないですか」


 至極全うな反論、冠銅生徒会長はドラムのように自分の胸を大きく一度叩いた。


「それは一般論だよ社ちゃん。正義である警察が脅迫状なんて悪辣あくらつな手段をとる人間に負けてはいけない。 悪は根絶やしにしなければならない、それが正義なんだ」

「その正義が本当の正義なんですか?」


 冠銅生徒会長は「どういう意味だい?」と口にして目を光らせた。


「話を聞いている限り、この脅迫状の主は復讐を考えていると思います。 そしてパーティーの警備はせずに脅迫状を出した人間を探せと言って来る冠銅先輩のお父さん。ぼ、僕には警察が正義だとは、、、思えないんですけど」

「どれが正義か、か。」


 俺の伏し目がちな発言に冠銅生徒会長は自信に満ちた目で断言した。


「それは僕が決めることだよ。 僕の判断で正義と悪は二分され裁かれる。それが正しい世界のありようだ。 それはもちろん親子関係すら凌駕する」


 目が誠の旗印を映し出す。


 なんてこったい 

 本気でこの人は自分のことを正義だと、判断は正義だと思っているんだ。

 純粋であってそれは力強い、、、これが謳歌さんが言っていた人を惹きつけるってことなんだろう。


 俺はカルチャーショックで口がポカリと開いてしまった。


「それで今度の日曜日、どこに集まればいいんですか? まさか湾まで各自勝手に、なんて言いいませんよね」

「もちろん、協力してもらうんだ。 僕の家が車は出そう。場所は学校の校門に朝7時でどうだろう?」

「分かりました、では」



 重厚な扉は閉められる。

 歩行すること約1分、俺はとうせんぼするように謳歌さんの前に飛び出した!


「あいつ頭おかしくね!?」

「ええ、そうですね」

「正義が自分じゃないんだよ!自分が正義なんだよ!!いまどき幼稚園児だってそんなこと言わないよ!?」

「ええ、昔からそうですよ。 まぁ、風邪をこじらせて現在に至るとでも言いましょうか」

「風邪って、、、もう肺炎起こして死の境目を彷徨さまよっているレベルだろあれ。医者も両手を挙げて白旗も上げちゃうよ、どういう情操教育であれが育つんだ……昔から?」


 新校舎の真新しい鉄扉を閉めて渡り廊下を歩く謳歌さんは「あ~言ってなかったでしたか」と口をして歩を止めた。


「彼、冠銅王土は生徒会長であり兵庫県警本部長、冠銅警視監の息子であり」


 山風のように校舎と校舎の間に吹く風、俺は驚いて目を閉じる。

 謳歌さんの髪があざ笑うように冷たくなびく。


「私の親戚です」


 俺は突然の衝撃に閉じた目を開けられませんでした。

 類は友だけではなく親戚も呼ぶのか、、、


「なにか?」

「イイエナニモ(━。━)」



閲覧ありがとうございます(_ _)


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