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温暖化が地球に与える影響についての一考察  作者: ひとりぼっちの桜
「事件番号#2.妄想思考のエクステンデットゲーム」
12/18

<論戦パート(下)>

閲覧ありがとうございます(_ _)

皆さんが少しでも、少しでもたのしんで頂ければ、それだけで幸せでございます。(´・_・`)



≪各々の結論≫




「あの、そろそろ、二人ともまとめを」


 ワトソン君は疲れ切って疲労困憊した足を引きずりながら語りかけてきた。


 心からの叫びだったのでしょう。

 目に生気がありません。

 頑張れワトソン!!


「そうですね。このままだとワトソン君が脳が兵糧攻めで疲弊してしまいますね。 どうでしょう社君、各々の最終結論を述べるというのは?」


 ここだね。


 隠しだま(1つ目は園児でした)第2段を使うところ。

 俺はこちらの思惑を悟らせないように明快に軽快に返答をすることにした。


「ああ、そうだな。孫一さんもといワトソン君の辛そうにしている顔を俺もこれ以上は見ていられないよ、ハハハ」

「何か隠しだねがあるようですね。 ふふふ、隠しだねが園児の共犯説だけでは面白みにかける。せいぜい楽しませてくださいね」


 エスパーかお前は?


「エスパーではありません」


 うそつけ!


「俺の心を丸裸にした、家頭けしからん謳歌さん。 先に自分の推理の結論をどうぞ」

「実に愉快なミドルネームですね」

「え、意外と気に入った? なんならこれからも呼ぼうか」

「二度と呼ばないでください」

「はい」


 きつい瞳の忠告に、僕はひざまずき服従のポーズで白旗を振った。

 謳歌さんはでは説明しましょうかと、ワトソン君の前にある長机の上、手で泥水を流すようにかたずけ、慎ましく?いや、ある意味堂々と座った。 


「私の推理だと犯人は園長です、これは譲るつもりもありません。 まず園長は共犯者である佐藤雄一を園内に引き入れるために門の鍵を開けておく。ちょうどお昼寝の時間になった頃に佐藤が車で園内の砂場に、ブルーシートを使って車を隠す」

「なんでお昼寝の時間に? 他の時間じゃ?」

「ワトソン君、あなたは私たちの話を聞いていましたか? お昼寝の時間に園内に入ったのは職員、園児が一箇所に集まるからですよ」


 ワトソン君は「あ~」と。

 正直本当に理解しているのかは謎。


「続けますよ? では、園内に入った佐藤は園長が集めた職員たちに自分の要求を告げる。おそらくこのときには打ち上げ花火の設置などは終わっていたと考えられます」


 そりゃそうだ、警察がいる中でそんなことをしていたら怪しすぎる、とんだお祭り野郎ですむわけがない。


「警察が到着し、園を取り囲んだ頃には園内では”人質ごっこ”という、まか不思議なことが行われていました。事件のことを知っているのは職員だけなので園児は騒ぎを起こさなかったと思います。 その後に身代金の受け渡しとなるわけですが、犯人の2人に予定外の事態が起こります。警察が身代金を渡すことを渋った、2人は焦りました。すぐ払うと思ってわざわざ1000万円という額という設定にしたのに。 ですから急遽、園児の1人を警察の前まで連れて行き危害を加えようとした。 もちろんフリですけどね」

「ホームズさん、なんで犯人たちは焦ったの?」

「時間をかければかれるほどマスコミのカメラが増えるからといったところではないでしょうか」


 異論なしだすよ。


「1000万を受け取った園長はあらかじめ佐藤に逃げる方法を言っていたのでしょう。その嘘にしたがって佐藤は軽トラに移動、園長は移動前にでもクスリそのもの、もしくは何かに入れた睡眠薬を佐藤に飲ませる。佐藤が寝ているのを確認して車まで近づき右足とアクセルを固定、ドアを閉めて糸などを使って鍵を車内に。 後は花火を上げてキーレスのボタンでエンジンを起動、アクセルが全開だったため車は門を突き破って川まで、左右のガードレールだか住宅の壁をコース代わりにしたので眠っていても問題はない。それはズタボロになった車の側面からも分かります。 園長はその後に1000万が入ったアタッシュケースをどこか…おそらく園内に隠す、かくして園長の佐藤に対する復讐が成功した。 以上が10年前に起こった事柄です」


 さてさて、正直俺も今謳歌さんが言ったことは正解だと思う。

 しかしそれを俺が認めることを何より謳歌さんが許さないだろう。


「さて、次は社君の番ですよ」


 不正解だと分かっていて解答を答案用紙に書くなんて…と、現実を振り返っても仕方ないので、仕方なく頑張ろう。 


「謳歌さん、まず俺は君のミスから攻めよう」

「私にミスは無いです」


 そう思っている自信家は世の中に結構な数で分布しているだろうが、本当に口に出すやつを初めて見た。


「謳歌さん、君の唯一のミスは佐藤の情報を軽んじたことだよ」

「軽んじた?言ってくれますね。 そこまで言うなら根拠を示してもらいますよ」

「佐藤は有名な会社の部長だったんでしょ?ワトソン君?」

「はい」

「そんな人間が1000万を欲したのか?」

「本当の目的は私怨ですよ」

「それは真犯人である園長側からの視点ではでしょ? 佐藤はなぜ協力したわけ?」


 そこまで言って俺は仕切りなおした。


「まぁつまるところ動機なんだよ俺が言いたいことは」

「その動機をあなたはネットの文面からだけで解き明かしたとでも?」


 ああと俺は頷く、謳歌さんはずっしりと重い視線を俺へと向けた。

 本当なのか?そう思っているな。

 だが本当なんだ

 しかも俺が推理したのはその先、佐藤が協力した先の真犯人の動機なんだよ。


「って言っても順を追って説明しないとワトソン君が分からなくなってしまうから、動機は最後に言うよ」



 先にここで記述しておくが、今から言う〔第三者が犯人で共犯は園児だ!説〕はまずもって間違いなく間違いだ。

 謳歌さんの推理を聞いて討論した結果、俺も園長が犯人だと思う。

 その仮定において園児がなにかしら関与した可能性は捨てきれないが、共犯なんて大事じゃないことは確かだと思う。

 だからこそ今の俺には人を騙すだけのペテン力が必要なる、そして最後まで持って行く。

 そうすれば犯人の動機についての説明にいける。

 これだけはちょっとばっかし自信がある。


「犯人はまず犯行前に園のことを調べたと思うんだ。いや、園児が共犯であることから知っていたんだろうね」

「園児から聞いた場合は直接聞いたんですか? 身代金、殺人事件を起こそうと思っているんだが協力してくれないか?とでも」

「おそらく両親、ないし両親の知人が真犯人ではないかと俺は思う。 そのほうが園児とのコンタクトが取りやすいから」


 この状況だとそうぼかして返答しないと突っ込まれたときすぐに頭打ちになって、推論が壁にぶち当たる。


「なるほど…、そういうつてから聞いたと?ではさらに質問を付け加えましょう、佐藤はなぜ協力したんですか?」

「逆に聞くけど、謳歌さんは金も名誉もある人間がなぜこんな人質事件に関与すると思おう?」

「それだけの情報だと協力する理由がありませんね」

「ああ、だけどさその情報にさっき俺と謳歌さんが話して出てきた佐藤は真犯人に殺されたを補足するとどう?」

「あなたが求めているであろう答えは、佐藤は脅されていた」


 さすが謳歌さん。

 言わずに伝わる読唇術。


「正解、佐藤は事前に真犯人に人質事件に協力することを強要させられていた。」

「なぜ佐藤はそのようなことに協力を?失うものが多すぎると思いますが」

「それは…その…うん。」

「うん?」

「いやいやっ!失うものよりも大きな何かを真犯人に握られていたから」


 いつものように俺はその場その場の口の中で推理を取り繕う。

 

「佐藤はその園児と何か関係があったのかもね。そしてその情報を盾に脅された、だからしぶしぶ協力した」

「ふーむ、たとえばその園児の父親が佐藤で、母親とは離婚、佐藤は実の子供であるその園児に自分が父親であることを知られたくない。」


 想像力豊かだな~。

 もっと待てばさらに泉があふれ出すのかな?


「さすがにその程度の理由じゃないだろうけど、そんな感じの延長線上だろうな」

「なるほどたしかに脅されていたという可能性は高いでしょうね。そこに異論も議論もなくなりました」

「じゃあそのまま続けるよ。 園内のことを知った犯人、当然園内に入って来るのはお昼寝の時間にする。佐藤と一緒に進入、人質事件を園児に知らせるなと職員に言い、警察、メディアに通報」

「メディアに?なぜ犯人がメディアに自分から通報するんですか?」


 俺はまぁまぁ最後まで聞きなよと鼻を鳴らす。


「メディア、警察が集まって来るまでに何かしらの理由をつけて佐藤に車に行くように指示して、飲み物か何かに睡眠薬を入れて眠らす。 ブルーシートをかけて花火を設置、そして警察が来たら交渉開始、園児が共犯なら泣き喚くようなことはないだろう。1000万を手に入れたら園児に花火を上げさせて自分は軽トラの荷台に移動して、後は謳歌さんと一緒で左右の家の壁をレーンに見立てて川にダイブ。犯人は寝ている佐藤を残して岸を泳ぎきれば完全犯罪だよ。それで動機なんだけど」

「ちょっと待ってください」


 やっぱり易々とは流してくれないか。

 嫌なところで会話を止めてくる。


「やはり犯人が警察の来た後、カメラに姿を見られずに荷台に乗り込むのは無理がある気がします。私の推理のようにエンジンをかけるだけ、鍵を車内に入れるだけならカメラに映らない可能性もありますがさすがに人一人が移動するには無理があるのではないでしょうか?」


 しかし残念ながらそれはさっきよい案が浮かんでしまったのだよ。

 まぁ、浮かんだといっても言い訳と書いて悪あがきのたぐいだけどね。

 きりきり返すよ、切り返すよ~。


「そんなのは犯人は園内から砂場までブルーシートを被っていたんだよ」

「ブルーシートは最初から既に車にかぶさっていますよ」

「だからそのブルシートを被っていたんだよ」

「日本語を理解していますか?ですからブルーシートは」

「どんな大きさ?」


 謳歌さんは質問内容を理解するように黒い瞳を視線を落とした。

 俺はその思考を待つことなくワトソン君を流し見る。


「ブルーシートの大きさに関してはネットに記述されていない。違うかな?ワトソン君」


 ワトソン君はその綺麗な青い目をパソコン画面に向けて少しカタカタ。

 そして答えた。


「書いてない」


 だろうな。


「つまりブ俺の推理だとルーシートは凄く大きかった。それこそ砂場から園に届くぐらい、だから犯人は長~いブルーシートに隠れて荷台まで移動できた。」

「それは、あまりにも妄想がすぎます」

「なぜ?」

「それだけ大きかったら、ネットに何も書かれていないのはおかしい。不自然すぎます」

「それは俺の言葉を遮るだけの理由にはならないな。書かれていないなら可能性があったと考えるべきだ。 もしも反論するなら論理的に証拠を明示してくれ」


 苦虫を噛むがごとく

 それがよく似合う表情の謳歌さん。


「最後に動機だけど、俺は謳歌さんとまったく別の視点から考えることにしたんだ。すると1つの可能性に行き着いた。」

「可能性?」

「犯人は佐藤に憎しみなんか持っていなかった。いや、最初は持っていたのかもしれない、でも犯行を行ったときには既にそれよりも重要なものがあったんだ」

「重要なもの?」

「謳歌さんもこの事件を聞いたとき思ったんだろうけど、人質事件で身代金が1000万円は安すぎる。だから謳歌さんは私怨だと思ったわけだろ? でも本当はその先があったんだよ。」


 思いついたのは謳歌さんの推理を聞いている最中だったけど…


「犯人の目的はあくまでお金、マネーだった。 しかし1000万円なんて額じゃない、おそらくは億単位じゃないかな?」

「おそらくとは曖昧ですね」

「謳歌さんに聞けばさらに詳しくわかるかもね」

「私に…ですか? 何を聞きたいんですか?」

「保険金の上限っていくらかな?」


 その質問に謳歌さんはなるほどと呟いた。

 答えがわかったのだろう


「結論から言いますと保健内容にもよりますね。それこそピンからキリまで」

「高ければ億いくかね?」

「いきますね。ということは犯人にとってメディアのカメラの使い道とは保険金を支払う保険会社が他殺などではないと思わせるため…ですね」


 俺が行き着いた答えってそんな簡単に…


「その通り、メディアのカメラを取ることを黙認したのはそれが一番の目的だったから。そしてその時1000万円が役に立つ」

「お金を手に入れた犯人が自殺するわけが無いということを保険会社に見せるためですね」

「そうだね、1000万円というのは数十人いる園児の親たちなら簡単に集まるだろう。 だからこそ犯人は焦って園児に危害を加えるという荒業にまで出て支払いを急がせた。それに謳歌さんがなんと言おうが1000万円は高額だからね。」

「ということは…」

「そう、俺の考える真犯人は佐藤の保険金を受け取った人間。もしくは受け取った人間とコンタクトをとることが出来た人間」


 詰まりながらも口から言葉へ次から次へと伝染していった俺の推理。

 最後に俺は重くなった脳細胞を熱放射するように天井を見上げ、ゆっくりと息を吐いた。


「以上、岩神社の証明でした」




 突然だが考え事をするときに俺は考えを口に出している。

 そのほうが耳からも考えが入って脳の理解が追いつくから。

 なんてかっこいい理由もあるが単純に自分にあっているからだ。

 これは最初、無意識だったが今では自覚して行っている。

 そんな他人の迷惑を考えない俺の推理法と違い、謳歌さんは全部心のうちだけで全てを完結、結論に行き着くハイブリッドモデルといえるだろう。 


 そんな謳歌さんが今、口から自分の気持ちを吐き出した。

 いや、正確に述べると吐き出したのではなく、漏れ出した、になるだろう。


「なるほど」


 これがどんな意味を持つかは今の俺には分からなかった。





閲覧ありがとうございました。(^_^)


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