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温暖化が地球に与える影響についての一考察  作者: ひとりぼっちの桜
「事件番号#2.妄想思考のエクステンデットゲーム」
11/18

<論戦パート(上)>

閲覧ありがとうございます(_ _)

例え最後まで読まれなくても、それでも、それでも…

幸せぇぇでずぅヽ(´o`;!!


今回は少し長かったので2つに分けました。

楽しんでもらえれば幸いですヽ(*´v`*)ノ



「時間です。 社君、用意はいいですか?」

「ピッカ!(もちろん!)」

「は?」

「いや、失敬。 ついついピカチュウ語が出てしまったようだ」

「あなたはモンスターボールの中にでも留学経験があるんですか?」

「ピッカピカぁ~!(まぁ~ね!)」


 ここで無音とは、いとおかし(ププッ)

 いかん。

 謳歌さんがムスッとしはじめた。

 お遊びはこれぐらいにしとこうかね。


「で、推理はお互い終わったわけやけど、どちらから推理を発表されはるん?」

「なんで急に祇園弁なんですか」


 なんて、シラっと聞いているが俺が先攻して自分の推理を発表する事はありえない!なぜなら自分の推理に自信がないからね。

 つまり、ここから問われるのは交渉力といかに空気が読めるかというKY力。

 発表を後攻にすることによって時間が足らずにところどころ虫食い状態の俺の推理を完成に持っていく。


「やっぱりここはレディーファーストで謳歌さんから」

「各事柄について交互に発表とします」

「は?交互?何が?」

「発表です」

「リアリィ?」

「ええ、まず1の事柄について私の見解を述べる、そしてあなたの見解を述べる。 そして2の事柄について見解を言い合うわけですが、その時はあなたが先に見解を述べてください。」


 その前に軽快にギャグをスルーされた俺の心の行く末を教えてくれ。


「なんの為にそんな回りくどいことを?」

「こうすることによって相手の推理を盗むという不正を無くします。 なにせ交互ですからね、盗みようが無い。 もし盗んでも自分の推理との間に矛盾が生じる。」

「完全に前のことを根に持ってるよな?」

「いいえ」


 しかしどう考えても、”どうですか?”そう言わんばかりの力強い黒目が僕を見てくる。

 有無も言わせぬその瞳、僕は空気を読むことにしました。


「仰せがままに女王様」

「ええ、くるしゅうありませんよ♪」

「あの…わたしは?」


 話しに取り残された痛いげな孫一さんことワトソン君。

 啜っているお茶の上から見える潤んだ子犬の目線は、自分の存在理由を問う。


「あなたは審判です。ですから」

「ですから?」

「待機です」

「たいきぃかぁ」


 出来ることなら変わってくれワトソン君。

 常に気持ちがファイティングポーズの君は分かってはもらえないだろうが、そのポジションが一番おいしいんだよ。


「いいな~、ホームズ君」


 なにが?


「そうですね。社君はもっと自分が置かれている幸福感に喜びを感じてしかるべきでしょう」

「幸福感の押し売りはやめて頂きたい」

「ふふふ、では初めましょう。」




≪この事件に真犯人はいるのか?≫



「ではまずはこの事件に真犯人がいるのかについて議論しましょう」


 考えるんだ、岩神社。


 この状況における一番の得とは何だ?

 本当に家頭謳歌の考えたこのルールは公平なのか?

 いくら謳歌さんが頭がいいといっても考えたのはついさっきだろ、どこかに穴があるはず。


「まずどちらから発表しますか?」

「…そうか!?」

「何か言いましたか?」

「いいや、いいや。 何でも無いよ~。で、発表だけどもちろん俺から言おう」

「レディーファーストの下りはいいんですか?」

「何を言っているだい?女性を大事にしているからこそ、先が見えない道は男である俺が先に行こうと言っているんじゃないか」


 それに何より両方とも『真犯人はいる』と言うに決まっている。

 決まっているなら先に言ったほうが”得”だろうよ。

 なら、問題となるのは答えよりもその解答に行き着いた理由だ。


「俺の答えはいるだよ」

「で、その解答に行き着いた理由は?」

「それは謳歌さんの答えを聞いてから議論する内容でしょ」


 俺の返答に納得がいかないのだろう、腕を組む謳歌さん。


「私もいると思いますよ。」

「そうか!ならここは議論の余地は無いね。だって2人共同じ答えなんだから」

「……まぁいいでしょう」


 よし!理屈をね回して俺のターンを1回スキップしてやったぜ。

 に、しても我ながら姑息な作戦だ。

 しかしながらそんな俺を俺は大好きだーー!!




≪では犯人は誰なのか?≫




「では真犯人は誰だと思うか、ですけど」

「えっ、いきなりそんなとこまで話が飛ぶの!?」

「ダメなんですか?」

「いや、ダメっていうか~物には順序というものが…」


 って言うか俺の推理だと、誰とかは言いづらいんですけど。


「私は園長だと考えています」


 あ~言っちゃったぁ~。


「社君は?」

「えっ、俺?」

「他に誰がいるというんですか?」

「ワトソン君?」

「わたし!? 言って言いの!?」

「ダメです。時間の無駄です。無駄無駄無駄」

「あうぅぅぅぅぅぅぅ」


 泣かすなよぉ。

 ワトソン君、安っぽいパイプ椅子の上で体育座りしてるぞ

 あっ、パンツ


「社君」

「はい!言うであります!!」


 まったくせっかちなんだから…。

 ちょっとぐらい遊び心がないもんかね?


「そうだね~。犯人の名前か~、分からないな♪」

「……」


 今怖かった!

 超~~~怖かった!

 部屋の隅っこで三角座りをしたくなるぐらい怖かった!

 夕焼け色に染まっていく男子高校生のお茶目な洒落だよっ!


「いやいやいや!違うよ、分からないっていうのは、今回のワトソン情報では出てきていない登場人物ってことだよっ!」

「ではあなたは佐藤雄一以外の第三者があの場にいたと」

「ピカピカピカピ~カ!!(はい!そうであります!)」


 家頭謳歌の高感度は真剣に戦いをすることでしか上げることが出来ない。

 そう確信した瞬間でした。夏




≪犯人はなぜ幼稚園を犯行現場に選んだのか?≫




「では次はなぜ真犯人は幼稚園なる場所を選んだかですけど、次は社君からどうぞ」


 結局な所、あんまり得が出来なかったな。

 ルールに少しの穴があってもすぐに突貫工事を施す女、それが家頭謳歌か。

 俺は損得感情という気持ちにアンチテーゼというかめはめ波を受けたような感覚だぜ。

 ならならならば、岩神社も本気出しますよ!

 サイヤ人でいうとスーパーだよ!


「共犯者の存在。自分の目的に即した場所だったから」


 謳歌さんは面白いと言わんばかりに「ほぅ~」と指の腹で頬をなでる。

 俺は先手必勝と言わんばかりに謳歌さんの推理を追求する。


「謳歌さんは真犯人である園長の職場だったからとかいう理由?」

「ええ、まぁ要約するとそうですね。やはり自身が良く知った場所で犯行を望んだほうが成功率が上がりますからね」

「しかしそれは警察も考える、いや、考えるかも。と、犯人である園長も考えるんじゃねーの?」

「考えたでしょうね。しかし疑われるよりも目的の成功率を取った。そもそもこの事件の犯人からは強い執念のようなものを感じます」

「強い執念?」

「ええ、犯人の性格は執念深く、理知的で計算高い。基本的な思考パターンは堅実。」

「基本的な思考パターン??」


 なんぞ、それ??


「ああ、私が人間観察をする時に重要視する人間の根本…う~ん。危機におちいった時に立ち返る、性格の中心みたいなものですね。根本だけあってなかなか変える事が出来ないので、人間観察にはとても重宝します」


 何、そのプロファイリングみたいの?

 カッコイイんですけど(☆○☆)!!


「それ、本か何かに書いてあったの?」

「いえ、納得のいくものが市場に流通していなかったので自分で作りました。」


 手作業!?


「私の座右の銘は無ければ作ろうホトトギスです」

「ホトトギスなんも関係ないよね?」

「物が作れなければ、ホトトギスの首を切り落とします」

「ただの八つ当たりじゃねーか!!」



「じゃあ聞くけど園長が犯人なら、謳歌さんは目的はなんだと思ってるの?」

「さぁ、なんでしょうね。 それは私の知る由もない事柄ですが、私怨でしょう」

「ならなんで犯行時にメディアはいたんだ?」

「メディア? なぜそこでメディアという単語があなたから出てくるんですか?」


 さて、ここから皆様ご期待の社マジックの始まりですよ♪

 観客の2人様ぁ~♪

 今からアリをゾウに変えて見せましょうぉ~♪


「いや~俺が犯人ならさ~、人を殺すときに証拠となるようなカメラは極力排除すると思うんだよね。だってさ!取られてんだよ!どうすんの?何か不都合な物が移っていたら?自分のテリトリーでわざわざ事件を起こしているのに、アウェー化させる意味って何?」

「それすらも自分に利用しようと考えた。」

「人の記憶なら捻じ曲げられるけど、記録媒体はそうはいかない。 作戦の達成確立が著しく下がるよ。 確か基本的な性格は堅実だったよね?」


 謳歌さんは脳に酸素を補充するように「ふぅ」と息を吸う。


「なるほど、軌道修正をしましょう。 園長はこう考えていたんです。 事件の内容上マスコミをシャットアウトするのは難しい。汚らわしい児童に危害を加えることによって警察を威嚇、同時に無理な進入計画を防ぐストッパーの役をカメラにやらせる。 これなら問題ないでしょう」


 なぜこの女はこの数秒でその返しを思いつくのだろう?

 考えたところでそれはせん無きこと。

 この女の頭がいいからなんて安直な答えしか出てこなさそうだったから、この無駄思考は終了ガラガラだな。


「それは…そうだけどぉ、カメラは無いにこしたことは」

「その論理は犯人が第三者でも同じでしょ」

「それは違うよ! 俺の第三者説にはカメラはいるんだ」

「ほぅ、カメラが」


 えっ、まだ言うつもりじゃなかったのに


「違う違う!間違えた! あの…」


 論戦はタイミングだ。

 ここぞというところででっかい大砲を打ち込んで相手を沈める。そういうゲーム。

 しかしタイミングを間違えれば隙を与えてこちらが痛手を負う。

 俺の秘密兵器をこんな序盤で使えるか。


「俺が言いたかったのは、俺の説では私怨じゃないんだよ。 だってさ、ワトソン君の話だといい人っぽいよ、死んだ人」

「カメラは?」

「とりあえずカメラは置いとこう」

「置いておくところがありません」

「ポケットにでもいれておいてっ!」

「ふふふ、お遊びはやめて本題に戻りましょうか」


 お遊び…


「次の議題に行く前に社君はなぜ第三者の犯人が幼稚園を犯行現場に選んだと考えているんですか?」

「あ、そういえばそういう議論だっけ。」

「ええ」

「俺は共犯者、その人物が”そこ”にいてもおかしくない場所だったから、それが大きいと思ってるよ。」




≪無理やりですが共犯者は誰なのか?岩神社は考えたのです≫




「そうですか。あっ、そういえばカメラ」

「勘弁してくれ~、今はぁ~」

「ふふふ」


 楽しそうに含み笑うね謳歌さん。

 どんなけドSなのさ(>。<)汗


「で、あなたは誰が共犯者だと思ってるんですか?」

「先生質問があるあります! 次って俺が先に言う番だっけ?」


 謳歌さんは「あー」と宙に目を移す。


「別にどっちでもいいんじゃないですか?」


 ルールは!?


「ルールを決めたのは謳歌さんじゃなかったっけ?」

「ルールとは人が決めるものです。 人の気持ちが反映されない法などに存在価値などないのですよ」


 どんな独裁政権だ


「ハイハイ、おっしゃるとおりです、精神論と正義感の合わせ技で一本だよ。 でも出来れば今回は謳歌さんから言ってもらえないかな? そのほうが俺のプレゼンテーションが盛り上がる」

「そうなんですか? ですが私の提示は早いですよ。」


 俺が「別にいいよ」と言うと謳歌さんは、「ならー」と唇から指を離す。


「私は死んだ佐藤雄一が共犯者だと睨んでいます。 死んでいたのは犯人である園長に裏切られたから」


 やはりそうきたか、面白みは無いけど、それゆえに説得力がある。

 これと同等の説得力を今から言う説明にこめることが出来るか?

 いやいや、出来るか?どうかなんて問題じゃない、やるんだ。


 なんか、今、俺かっこいいかも♪


「俺の考える共犯者はね、共犯者はね、共犯者はぁ~」

「遅漏は嫌われますよ」

「女の子なんだから言葉は選ぼうよ。 まぁいい、俺はね」


 さて、腹をくくって自信を持って言おう。


「園児です」

「ん? 何ですって?」


 聞きなおすなよ、俺の心が折れちまうだろ。


「園児です」

「えんじ?」


 馬鹿なのか?そう言っている謳歌さんの呆れた視線。

 園児って何?そうか「演じ!」っていう的外れにも口を開けるワトソン君。


「ええ、そうですとも!! 園児ですよ!園児!!幼稚園児が共犯者だと僕ぁ考えとるんですよぉぉ!!」

「なぜ逆切れ?」

「逆切れにならないと言えないでしょ!こんなこと!」

「いたいげな子供が犯人なわけがないではないですか」


 汚らわしいのではなかったのか?


「いたいげだろうが可能性はある。いや、高いと俺はふんでいるよ」

「そこまで言い切る根拠はあるんですか?」

「根拠は新聞記事だよ。」

「新聞記事?」

「園児の一人が言っていたあれだよ。」



5人目(園児)

「ぼくもたのしかったのかって? ふふふ~ん♪ ぼくぐらいになるといくつもの、みっしょんをうけているからね、たのしいだけじゃだめなんだよ、こうしょうのおじさん♪」



「まさかこのくだらない妄言を信じるというのですか? ミッションを請け負っているという、これだけのことで?」

「注目するのはそこじゃないよ謳歌さん。 俺が気になったのは、最後の一言。 交渉のおじさんだよ」

「交渉の…あっ」


 どうやら、俺の推理の方向性がわかったようだね謳歌さん。


「クソガキが”なぜその警察官を交渉役”と知っていたか。そういうことですね?」

「その通り。その警察官が交渉役をしていたことをしっていたのは交渉の時、まさにその場にいた園児だけ。 ただのクソガキが…さっきは流したけど、クソガキってあんまりじゃね?いたいげは?」

「そんなことは今はどうでもいいことです。早く先を説明しなさい」


 キラ☆キラした目で要求するから流しますけど

 どうでもいいのか?


「ただの園児が言った証言なら妄言の可能性も高いだろうが、それが交渉のときに犯人と同席した園児なら?嘘ではなく真実と考えられるんじゃないのかな? そしてそうなってくると話はさらに違ってくる、危害を加えられそうになったのも演技、つまりは園児が演じたに過ぎなかった。」


 まくし立てたい俺の舌

 謳歌さんは俺の舌技にこの上なくうれしそうに笑う。

 まるで難しい問題を嬉しそうに解く天才学者、エジソンのようだった。

 まぁ会った事ないし、嬉しそうに問題を解くかわ知らんけどね。


「面白い発想です。もはや推理というより人を騙す奇術、マジックと言い換えてもいいほどの奇想天外。しかし、果たしてそううまくいきますかね? 子供は予期せぬ行動を取りますよ。」

「だからこそ、警察にもマークされなかったのかもね。 無意識に犯人から子供をはずしてしまった、今の謳歌さんのように」

「汚らわしい子供だからといって私は容疑者からはずすマネはしません、しかし今回は子供といっても園児。 なにが出来るわけでもない矮小な存在に何も出来はしないでしょう。 それより確実に計画を成功させたいなら、全員出勤していた職員、共犯者は職員の誰かと考えていいでしょう。」


 確かに言っていることには利があり理にかなってる。

 でも、なにか急いで推理したかんがあるな。

 付け入るならここかな?


「犯人は車が出発した後も園内にいたんです。いえ、言い直しましょう。 私の考えでは犯人は園内にいるしかなかった。」


 いるしかなかったか。

 なるほどそれで…


「犯人は園長です」

「事件発生後に入ってくる警察、生徒や職員に声を覚えられている可能性もある、本当にて園内に犯人は居続けられるのか?」

「その疑問は同時に、社君の言うところの第三者である真犯人が警察やカメラを持ったメディアの包囲網を突破する神経を疑うという疑問に直結すると思いますよ」


 うむむ、ああ言えばこう言うな。


「園長が犯人だとすると、わざわざ裏口から犯人が来たなんていう? 俺なら言わないね、だって共犯者だと思われる」

「では園長が裏口から来た犯人と出くわしたのは偶然だと?」

「ああ。」

「そんな偶然あるものですかね?」

「裏口を使うのは基本的には職員、5名しかいない職員の1人である園長であってもそう不思議なことじゃないな。それに繰り返しになるけど、本当に園長が犯人もしくは中に引き入れたなら、わざわざ新聞の取材で”裏口から来た”なんて言わない」

「犯行を成功させた安心感、安堵感からつい口から漏れたとは考えられませんか?」

「それは謳歌さん自身の説明否定になるよ。」


 俺は謳歌さんの言ったことをそのまま口にした。


「確か犯人は慎重で理知的でしっかりものだったよね」

「執念深く、理知的で堅実的です。」


 今日ほど自分の記憶力と、それに依存した決断力を呪ったことはありませんでした。


「ああ、うん、それね。 まぁ、それだとしてそんな人間がミスしたと?」

「どれだけ堅実的でも人間です。機械ではない、ミスもする」


 くそ~譲らんな。


「じゃあ言い方を変えよう犯人が入って当時、園内はお昼寝中だったとしてもかい? 園児が一箇所に集められ、寝る。 このときばかりは動けるのは職員5人、5人の内の1人が裏口を開けて犯人と鉢合わせる、確立は20%」

「お昼寝?あなたの頭がですか?」

「いやいやいやっ! 今俺が寝ながら喋っているように見える!? アメンボアオイナアイウエオ! もし寝てたらこんな軽快に喋れないよね!?」 

「新種の夢遊病があなたの脳内だけで流行しているのかと思いました」

「俺の脳内だけで流行するってどういうこと!? 俺が言いたいのは女の職員が言ってたやつだよ。」

「冗談です。もちろん覚えていますよ。」

「本当に?嘘から生まれるのは更なる嘘しかないんだよ謳歌さん、自分の非を認められる女性って僕は素敵だと思うな」

「私の人生において非と総称すべき事柄などありませんよ」


 うそつけよ!

 あるんだろ!! 恥ずかしい~思い出

 言ってごらん~、言ってくれたらその思い出をいじって!弄ってやんよ!


「陳腐な自尊心保護だと思われるのは癪なので証拠として言いますが、その証言をしたのは男性職員ですからね」

「え!?」


 ワトソン君をチラリズム的にチラッと見るとうなずいていた。

 家頭謳歌…なんて恐ろしいやつだ。


「まぁ、それは置いといて。」

「置くのですか?」

「ああ置くとも、仏壇の上にでもなっ! それはともかく、お昼寝中ならカーテンは閉まっているじゃないのかな? だから犯人は子供をつれて外に」

「お昼寝中だからといってずっとカーテンを閉めていたとは限らないんじゃないですか? 私は寝るときも電気をつけていますよ」


 それはあんただけだろ…ってわけでもないだろうが、大多数は暗くないと寝れないだろ。


「犯人の思考からすれば、わざわざ警察に屋内を見せる必要なんてないだろ? それとも謳歌さんは今までに警察24時でそんな映像を見たことがあるとでも言うのかい?」

「あなたは人質事件の知識を警察24時だけで得ているんですか?と切れのあるツッコミをしたい所ですが、確かにそんな犯人は私の記憶でもいませんね」

「僕は謳歌さんが切れのあるツッコミをしたところを見たことはんないよ。」

「何を言ってるんですか、毎回ワトソン君なんてゲラゲラですよ」


「!?」


「おたくの助手さん、アメリカ大陸を発見したコロンブスぐらいビックリしてるよ」

「…話を戻しましょう。ではあなたはカーテンで日差しを遮った室内で皆が人質ごっこなる、訳の分からないことをしていたと主張するつもりですか?」


 訳の分からないって…

 まぁ、確かに実際の状況を考えると間違ってはいない、というか実に的を射た表現だけどぉ、言い方っていうかぁ


「園長が年に100件の人質事件を起こしている人間ならいざ知らず、普段と同じように冷静に事柄に取り組めると考えるの方がおかしいと思いますよ。それを考えれば園児が共犯というのは奇天烈としか言えない」

「自分が共犯であることを意識していたのか、無意識にそのように操られていたのか? それは分からないけど、共犯を演じていたのは園児、唯一動き回れた存在なんだから」

「唯一?」

「唯一だよ、だって人質ごっこをしていたんでしょ?ねっ♪園長が主犯っていうのが疑わしくなってきたでしょ? だって先生の1人が新聞の証言で言ってたじゃないか、みんなで固まって1つの部屋にいたって。外の状況が分からないほどに」

「ではそこには、あなたの主張である、共犯の子供もいたということになりますよ」

「職員5人に対して、園児は数十人、1人いなくなっても気づかれないのは?」

「職員は園児を見るプロですよ。気づくのでは?」

「当時、園内は平常時ではなかった。普段どおりの能力を職員が発揮できたかは疑問だな。それにそもそも職員は園児を見るプロじゃないでしょ。見守るプロではないかな?」

「屁理屈ですね」

「なら、屁理屈を屁理屈で崩してみなよ」

「私のは理屈です」


 それを屁理屈というのだ。


「ワトソン君、途中ですがどちらの意見が正しく聞こえますか」


 目を点にさせたワトソン君は潤んだ瞳を左右にぶんぶんと首ごと振った。

 

「どうやら引き分けみたいだね」


 謳歌さんは「こんな奇天烈案に…」と眉間にシワを寄せた。


 俺はその表情に顔が緩む


 分からないのかな?謳歌さん。

 こんな案だからこそあなたに並んだんだよ。

 平行線の戦いだと君の思考も高速回転する。

 しかし考えも及ばない事柄を提示されれば、いかに回転速度の速い君の頭も「聞くこと、理解する」ことに重点を置く、そこから起こるのは反論が出来ないという結果とそれを見た第三者(ワトソン君)の俺が勝っているという誤解。


 この結果は必然だホームズさん。




≪真犯人が第三者だった場合、犯人はどうやって逃走したのか?≫




「犯人は第三者ということは、あなたは犯人は運転席でしゃがんでいた、と考えているんですか?」


 これは!?いわゆる謳歌トラップだね。

 効果効能は無知のやからに無能というレッテルを貼り付ける。

 なんて恐ろしきことかな。

 さっきの奇天烈案に怒りを覚えた腹いせとしか考えられない。


 いつもの俺、つまり考え無しに話していたならここで「うん」と言ってしまっていただろうが。

 甘いな謳歌さん。

 謳歌さんじゃないがこの返答は読んでいた、カレーの王子様ぐらいの甘ちゃんだぜ。


「それはないよ、ハヤシライスさん。いえ、謳歌さん。」

「名前の間違え方に悪意しか感じませんが、ここは感情を押し殺して聞き役に徹しましょう。 社君、車の車内にいないというのでしたら、犯人はどこにいたんですか?」

「車と表現するから考えの幅が狭まる。軽トラックっと考えれば答えは割と簡単に思いつく。 そうです!犯人はー」

「やはり荷台ですか」


 やはりと言われてしまった。

 謳歌トラップは思ったよりも奥が深い。




≪エンジンをかける方法って?≫




「私は寝ている佐藤を運転席に積んだ車、社君はプラス荷台に自分が乗ったままの車、つまり2人ともエンジンをかける方法が問題というわけですね」

「そういうわけだね、これが一番難解な」

「エンジンをかける方法、これは簡単な方法があります。」


 あるの!?


「トリックですらない方法です。 社君はキーレスという言葉を聞いたことはありますか?」

「もちー」

「知らないですね。」


 なぜ分かったんだい?

 まだ「もち」しか言ってないよ。


「ふぅむ~。そうですね、まったく知識が無い人間にどう伝えたものか…」


 人のことを初めて電気を見た原人みたいに言わないで欲しい


「簡単に言うと車の外からエンジンをかけることが出来る機械です」

「そんな便利なものがこの世界に存在するというのか、謳歌さん?」

「ええ、あなたが生まれるはるか昔からあったのですよ社くん。車のサイドガラスが数センチ開いていたのはその機械を車内に放り投げなければならなかったから。」


 そんな時代になっていたのか…

 車なんて都会じゃ乗らなかったからな


「事件があったのは10年前。そのキーレスだっけ? 本当にそれはその時代からあったわけ?」

「ボタンといっても、現在販売されている車内のキー部分、それを押してエンジンを起動させるタイプではありません。 警備システムのサービスの一環で外でボタンを押すことで車のキーが外れて、同時にエンジンがかかるというものです。」

「それは10年前から?」

「ありましたよ」

「でもその警備会社と契約してたかなんて謳歌さんに分かるの?」

「分かりませんよ」

「だからどうして分かるんだ…え!?」


 え、わかんないの!?

 それなら仕方ないね。うん。


「しかし私が言いたかったのは、つまりは機械に精通していればそういった警備会社との契約無しにでもエンジンはかけることができるという一点。 いえ、睡眠薬や花火などを事前に用意していた犯人です。警備会社という足がつく行動を避けたかもしれませんね」

「一つ聞きたいんだけど、謳歌さんは花火は誰が上げたと思ってる?」

「時間経過を考えると、私の推理だと既に佐藤は寝かしつけられている。 つまり花火を上げたのは犯人の園長ですね」


 ?


「そこなんだ、俺が共犯を園児だと考えたのは」

「?」


 ま、本当はこれぐらい突拍子の無い答えじゃないとあなたと張り合えないからなんだけどね(笑)


「囚人監視の中で行う脱走は成功しない。って言葉を知ってる?」


 謳歌さんは記憶を探るように首を捻る。


「…知りませんね。」


 でしょうね。

 今、俺が考えたんですから。


「脱走するなら人が見ていない時を選べ、今回の事件も同じだよ。 人質ごっこを囚人監視の状況と仮定する。この時の監視員は自分以外の全員、花火を上げるためにその中を出る。5人しかいない職員では目立ちすぎる」

「なるほど、先ほどからあなたが共犯者の必要事項に動き回れることを重要視していたのはこのためでしたか。」


「言いたいことは分かります。いえ、分かろうとしましょう。 ですが本当に幼稚園児にそのようなことが可能だと思いますか? そして犯人は一世一代の賭けでそんな信頼のおけない人間に頼るでしょうか?」


 そうなんだよね。

 冷静に考えれば分かる話、俺の言っていることは机上の空論に違いない。

 でも、ここで引くと負けるんだよね。

 まぁ、既にあなたは勝負の勝敗に興味は無いんだろうが。

 視線を横に流すと、一生懸命に話についていこうと頭から湯気を出している金髪の美少女。


 評価は下げたくないな。

 評価ばかり気にする俺、その先に何があると言うのだ?

 あっ、金髪美少女とのデートか!?

 俺、ガンバルンバ!


「謳歌さん。 いくらありえなかろうが、可能性が0じゃない限りその事象はありえた。それを反論できるかな? あくまで理論的に」

「警察やメディアの人間の目をくらましたいから花火を上げたのはわかります。しかし、現場にはメディアの人間が持っていたカメラもあった。取材規制が敷かれていたでしょうから生放送ではないにしても、その後に警察もその映像を見る。もし裏口の砂場近くにある青いビニールシートに入るところを撮られたら? そう考えると園内からの脱出などするわけがない」

「その論理で言うと、開いた窓に鍵を入れるためにビニールシートを被った軽トラックに近づくときに撮られたら?って考えない謳歌さんはどう説明するの?」

「説明するまでもありません。 私の推理だと車に近づいてはいない。」


 近づかない?

 まさか!?

 俺の頭は、たった1つの可能性であろう答えを導き出した。


「糸を使うのか」

「糸? ああ、まぁいくつか方法はありますが一番簡単なのは糸ですね。」


 いくつかあるのか。


「糸の場合は佐藤本人を支柱にして糸を輪のように回す、それに鍵を取り付け引く。車内に鍵が入ったことを確認したら糸を切る、これで完成です」

「それだと鍵が鍵穴に差し込まれないだろ」

「車内の映像に鍵は無かった、新聞記事にもそのことには記載されてはいなかった、つまり鍵は”鍵穴に入っていなかった可能性が高い”」

「つまり少し開いていたサイドガラスから水が流れて満水になった時にでも外に出たと」

「その通り。警察は犯人が焦って鍵を抜いてそのまま死んだと考えたのでしょうね」


「アクセルは…あっ、仮面か。」

「そうです。絡み付いていたので」


 やばい、謳歌さんは一歩も二歩も先を読んでいる。

 つか今の会話でワトソン君には俺が押されているように見えたかもしれん。

 逃走術だけでも付け加えて、さも俺も知っていたんだよ、という印象を植え付けよう。


「てことはー」

「アクセルは固定、つまりエンジンをかけた時点で後はほおっておけばいい」


 ムググ。


「無人の車は両幅のコンクリートをコース代わりに進む。そしてそのまま川に落下。終了です。社君は犯人は荷台に乗っていた説ですよね? 川に突っ込んだ犯人はどうやって逃げたんですか? すぐに警察は来ますよ…ふふふ」

「あの~なんというか。 酸素ボンベみたいなのを使って対岸に泳ぎきる的な」

「時間は昼ですよ、誰も見ていないのはおかしいのでは?」

「じゃあちょっと素潜りをの足を伸ばして、下流まで行ったら…」


 やべぇ、どんどんこっちの荒唐無稽さが露骨にワトソン君に露呈しちまう。

 反撃の時は今なのか?

 いやでも…

 まだだろうな


「そんなに攻めることないでしょ!じゃあ言わしてもらうけど、謳歌さんは犯人は園内から出てないってことは1000万円の入ったアタッシュケースはどこにいったのさ?」

「犯人の園長がどこか、自分にしか見つけることが出来ない場所に隠した」


 どこか?

 こういったアバウトな解答は付け入るチャンス。


「どこかってどこ?警察が園内を調べて無いなんてことでも言い出すのか? 日本の警察は優秀だと思うよ。アタッシュケース1つ探せないほど無能とは、とてもとても」

「無能だからまだ解決していないのでは?」

「ああ、まぁ、そういう見方も出来る…ね」

「ちなみにアタッシュケースの中の1000万、やはり身代金としては安すぎることから、犯人の目的は金では無かったと推察できます」

「やはりフェラーリは関係なかったわけか」

「フェラーリ?」

「いやいやっ、こちらの話だよ」


 1000万円に関しては俺も同意だな。

 ただし目的は金では無いとは思わないけどね。


「1000万円は重要では無かった。問題だったのは警察が進入してくるのを防ぐこと?」

「そのとおりです。犯人は警察にこう思って欲しかった。”この犯人はちょっとしたことでカッとなり、何をするかわからない”とだから形だけでもこだわったんですよ1000万円という、はした金にね」


 1000万円をはした金と言い切るとは

 今度、謳歌さんに「いくらから大金だと思う?」って聞いてみよう。



閲覧ありがとうございました。

頑張って、全く違う2人の論戦模様を描けたならいいのですが…。


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