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第54話 ドン・ハシビロとめぐみ

 めぐみの『試験』を合格したが――


 そこに現れたのは――


 四天王最古参であり――


 俺の親代わりの人――


 ――『ドン・ハシビロ』だった。




(――警鐘がずっとなってやがる)


 恩人であるはずの人が目の前にいるはずなのに――


 俺は、今――


 自分の女のために身を挺している。


(最悪……いや、どうやっても死ぬな…)


 それに加えて、今は身体が思い通りに動かない。

 四天王相手にこのコンディションじゃ、特に…な。


「――大牙よ。安心せい…」

「――!!」


(――いつの間に!?)


 いつの間にか、ドンは俺の肩を掴んでいた。


「儂はお前のことが気がかりで来ただけじゃ」

「……」


 ドンの言葉には嘘がない。


 いや…‘‘嘘をついていない‘‘と言うべきか。


「すい…ま…せん…」


 この人とは付き合いが長い。育ての親でもあるが、‘‘師弟‘‘の関係でもあるから――


「気にするな。寧ろ、邪魔をしてすまない」


 俺にそう謝罪する。そして――


「…お嬢さんもすまないね」


 めぐみの方にも謝罪した。


「い、いえ…」


 急に来たドンに警戒するめぐみ。


「ふむ…」


 めぐみを見て、何かを確認するかのような目をしている。


「…賢いお嬢さんだ」

「!」

「それでいて大胆な子だ」


「私を確認してから警戒は怠らず…しかし、手は出さないように統制している」


 どうやらドンは、めぐみと俺の周囲にいる護衛に気づいている。

 匂いで俺もわかっていたが、ドンはおそらくここに来た瞬間気づいたのだろう。


「…驚きましたわ。ここまで厄介な人は初めてですわ」


 めぐみも驚いている。

 個人的には、この人相手じゃ、めぐみであっても仕方ないとしか言いようがない。


「…お名前を聞いても?」

「おっと、これは失礼した」


 被っていた帽子を取り、胸に当てる。


「私の名は『灰鳥はいどり 元斎げんさい』」

「!?」


 めぐみが驚いている?


「まさか…あの名高い『ショービル』の会長様が目の前にいるとは…」


 『ショービル』――

 ドンが、地上での支配を円滑に進めるために作った企業。

 長い年月をかけて、政界や財政会、あらゆる企業に通じている。

 そのおかげで、俺たち怪人は地上での名義や戸籍なんかを手に入れることができる。

 俺の潜入任務にも使われている。


「――私を知っているとは光栄だね」

「ご冗談を…この世界で、あなたを知らないのは、もぐりか、お馬鹿さんだけですわ」


 さすが、お嬢様ってところか…。

 ドンの地上での名前を聞いただけで、すぐにたどり着くんだからな。


「それで…何の御用でここに?」


 ここに来た理由を問う。


「なに…」


 ドンは俺の頭に手を乗せ――


「久々に‘‘息子‘‘の顔を見に来ただけだよ」


 そう笑顔で、俺の頭を撫でる。


「ドン…やめてください。彼女の前なんで」


 俺は恥ずかしく、そう言ってしまう。

 だが、本心は嬉しかった。


 この人は、俺を‘‘息子‘‘と呼んでくれたことに――


「ははっ、すまんな大牙」


 ちなみのドンは字名みたいなもので誤魔化せる。


「お嬢さん」

「はい…」


 めぐみは、緊張はしているが、冷静にしている。


「…この子を頼む」

「「!?」」


 ドンが、めぐみに頭を下げた。


「ド…ドン…」

「……」


 どうやら、ドンは‘‘父‘‘としてここに来てくれたらしい。


「君は傑物になれる素質を持っている」

「!」


 ドンがここまで言うとは――


「だから、この子を頼む――」


「――儂のバカ息子をな」


 ニカっと笑みを見せ、そう言う。


「…バカは余計ですよ。ドン」

「はは、良いではないか大牙!」


 また、頭を撫でるドン。


「…灰鳥会長」


 そんな姿にめぐみは声をかける。


「言われなくても息子さんは任せてください…」


 めぐみは確かな意思を持ってそう言った。


「そうかい」


 ニコッと笑うドン。


「それに――」

「?」


 めぐみは、ドンに笑顔を見せ――


「逃がすつもりもないので」


 そう言い切った。


「ふ…」


 その言葉にドンは――


「――あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」


 大きく笑った。


「本当にすごいお嬢さんだな!大牙よ!」


 ここまで認められるとは、すごいけど――

 さっき言われた言葉に方が、俺にとっては恐怖だよ。


「はい…」


 …さすがに今は言わないでおこう。


「お嬢さんや、あと二人の彼女に会うのも楽しみだわい!」


 本当に‘‘父‘‘として来て、彼女めぐみを見定めていたらしい。


「それではお嬢さん!また!」

「ええ、また…」


 そう二人は挨拶を交わし、ドンは上機嫌でその場を後にした。




「………」


 俺は、ドンが去ったのを確認して――


 バターーーーーン!!


「大牙さん!?」


 限界が来て、ぶっ倒れたのであった。


「大牙さん!ちょっと!しっかり!」

「すまん…あとは…頼む」


 劇薬サンドイッチや、急にドンが来た緊張感で限界を迎えた。




「………ん?」


「――大牙さん!」

「大牙様!」


 目を覚ますと――


 そこには、めぐみと萩原さんがいた。

 めぐみは涙目になっていた。


「えーと…おはよう」


 俺は、そんな彼女にそう言った。




~めぐみサイド~

 大牙さんが、私の試験を超えて嬉しさかったのも束の間――

 まさか『シュービル』の会長様が来るとは思いませんでしたわ。

 前に言っていた‘‘親代わり‘‘とは、あの人のことだったわけですか。


「――予想外のことが多すぎますわ…」


 そう言うしかない。

 あんな大物が親代わりなら、過去など話せるはずがないですもの…。


「お嬢様…」

「どうしたの?萩原…」

「今回の件…お父上には?」

「……」


 今回の件をお父様に報告したら、確実に大牙さんを婿養子にできるでしょう。

 あの大物のパイプを手に入れれますし、何より私の試験をクリアしたわけですから――


 でも――


「――言わなくていいわ」

「……わかりました」


 まだ、この人には楽しませてもらわなくちゃ♪

 彼女は、利益より楽しみを取った。


「――それとお嬢様」

「何?」

「今日は、旦那様も奥様も帰ってこない日です」

「……」


 萩原の言葉は、あることを意味している。


「今日は…どちらに」


その問いに、めぐみは――


「――愚問ですわね。萩原」


 そう――


 彼女にとっては、ドンにあの言葉を放った時から決まっていた。


「大牙さんの家に泊まってきますわ!」



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