Bパート後半
シグルドリーヴァ、表向きはエクストリームパルクールの運営を行う1グループのようにも見えなくはないだろう。
しかし、その実態は転売ヤーを一掃するために『真夜中のパルクール』事件の中心にいた人物を集め、結成されたと言ってもいい。
バーチャルアバター製作者である秋月穂村が他の3人を集め、今回のプロジェクトを動かしていると言っても過言ではないだろう。
その他の3人とは、音ゲーマーでもあり同人楽曲も作曲している夏川ライカ、そこそこ有名なゲーマーでもある冬川ハンゾウ、今は実況者ゲーマーとしても有名な春川マイア……。
3人に共通するのは、秋月が制作したアバターであるVTuberである不知火穂村に関係すること、秋月の製作したアバターを使って3人はVTuberとして活動していた、それに……。
基本的に4人以外はサブスタッフに近く、メインで動くのは4人だけと言うべきか。
パルクールの運営だったりコース設定と言う部分ではスタッフがメインで動くものの、4人が表舞台に出ることはあまりない様子。
『なるほど。これでも一握り、と』
午前10時も20分すぎた辺り、ある場所へ到着し、周囲で転売ヤーを確保するハンターの姿を見て、パワードスーツ姿の諸葛亮孔明は……疑問に思った。
転売ヤーが一掃されたと思ったら、まさかの裏ルートなどを通じて逆に増えていたという事実、これは別の意味でも言葉に出来ないような光景でもある。
孔明の今まで得た賞金総額は……測定不能。計算できる範囲でも5000兆円と言う規模だ。
明らかに孔明だけ数値がおかしいように見えるのだが、これは設定的な事情でもなければ、いわゆる主人公補正と言う訳でもない。
実際に摘発した転売ヤーとしては1万人にも及び、それを合わせた総額が5000兆円を超えるというものなのだ。
ある意味でも賞金を懸けた企業としては、これほどに素早く転売ヤーを確保してくれるような人物はいないので……と言うのもあるだろう。
孔明が到着した場所、それは家電量販店である。先ほどのデュランダルがある転売ヤーを発見し、確保した店舗でもあった。
孔明としては捕まえた転売ヤーが偽転売ヤーハンターと関連性がある人物であればよかったのだが、ガーディアンなどから情報を聞き出すと、そうではないらしい。
彼らは突発的に転売ヤーを始めたわけではなく、すでに別の転売案件などもあるような人物である。
例のショートアニメに関してはあまりにも転売ヤーが100万人規模で増えたともいわれているので、そういう事情もあるのかもしれないが。
『他のハンターがいたとは考えにくいが……?』
周囲を見回す孔明は、それっぽい外見のハンターが何人かいる事に対し、もしかすると……と考える。
しかし、今回のターゲットになった商品は様々なコラボも行われ、そのたびに転売ヤーが出没、オークションサイトも注意喚起を出すレベルだ。
本来の欲しいと思っている人たちに行きわたらないのは、コンテンツ業界としても致命的だろう。
(もしかすると、別口経由の転売ヤーかもしれない。最近は企業Vtuberコラボへ切り替えが行われているという……)
近年は各種ハンバーガーショップでも企業Vtuberコラボへ鞍替えを行い、転売ヤーも現れていないという話もある。
それまでは、先ほどの転売ヤーがターゲットにしていたショートアニメのキャラクターグッズも取り扱っていたが……転売ヤーが後を絶たないため、WEB小説作品コラボを始めた様子。
企業Vtuberの芸能事務所が転売ヤーの指名手配を行っているのもあり、こうしたコラボに関してはハニートラップな光景に見えなくもない。
そこまでの事をしなくては損害ばかりで企業のイメージにもダメージが入るため、転売ヤー撲滅をかかげる企業Vtuberとのコラボに踏み切ったのだろう。
孔明も、今回の転売ヤーは色々な意味でも需要のあるコンテンツで転売利益を……という低レベルな転売ヤーであるとも考えた。
実際、こちらの転売ヤーを捕まえた……。
(そういう事なのかなぁ……)
転売ヤーを引き渡したデュランダルは、自宅への帰り道でふと思っていた。帰りは自転車であり、ヘルメットも着用している。
自転車のヘルメットは努力義務の時代もあったが、今では必須となっており……赤切符の対象にもなっていた。
(転売ヤーの出現が、他のコンテンツにも悪影響を与え、それはジャパニーズマフィアに匹敵する、と)
様々なジャンルで転売ヤーの存在は社会問題となり、最近にも様々な転売ヤー対策などもニュースになったことがある。
とあるファストフード店が有名ソシャゲのデジタルコードを後日配布のようなパターンに切り替え、転売ヤーを減らしたという話もある。
その一方で転売ヤーが減らなかったことに対し、遂には……という話もニュースになっていた。
デュランダルは別の意味でも考えている。パルクーラーの中で転売行為に手を出し、不正なブラックマネーを生み出している存在がいるのでは……と。
(あの忍者構文が、真実だったとは思えないけど)
後に対電忍事件などと呼ばれることになった忍者構文を巡る一連の事件……。
あれを全てフィクションだと言って切り捨てるには、さすがに違うとデュランダルは思う。
「おっと……」
目の前の信号が赤になったので、デュランダルはそこで止まる。
自転車専用レーンを走っていたのもあり、横断歩道的な意味で止まった……と言えるだろう。
その後は様々な転売ヤーとは無縁なパルクーラーがフィールドを走るシーンが挿入されている。
その中には、しれっとだがコスプレイヤーの姿もあった。
エクストリームパルクールでは、こうしたコスプレをして走る行為を禁止はしていないが、推奨はされていない。
基本的にはARガジェット及びARスーツの着用が義務となっていた。
何故かと言うと、いわゆる事故防止の意味合いがある。実際、ARスーツの強度は、ある意味でも宇宙服のレベルを持つと言われているからだ。
しかし、パルクールでもビルからビルへ飛び乗るような危険なアクションを連想する人物もおり、そうした事例を踏まえ、安全なパルクールを……と言う事でガジェットの使用が義務化されている。




