第4話 神話。
エヴァは、丸2年、、、ほとんど北部から帰らなかった。
僕の所に月に一度、定期的に手紙が来る。近況報告書、みたいな内容だ。
僕はちゃんと返事を出していたよ。贈り物なんかもしたし。
お返しに、、、押し花にしたなんかの植物の花が送られてきたなあ、、、、
王子に、、、、押し花、、、、新鮮だよね、エヴァのやることっていつも。
一年目は土壌の調査と、気候の把握、作物の試作。
2年目は、前年の調査をもとに、耕作物を決めて作付け。
天気に左右されるので、軌道に乗るのは、あと2年くらい、、、、あと、、2年??
最初は面白がっていた大公殿も、さすがにしびれを切らして、、、呼び返した。
こちらに帰ってからも、現地の相談を受けているみたいだ。
久し振りに中庭でのお茶になる。
現れたエヴァは、背が伸びていた。まあね、、、成長期だものね?丸かった顔も、少しシャープになったかな?相変わらず、かわいい。
「あら?ベル様、少し会わないうちに、随分、身長が伸びましたね?」
(少し?、、、、、2年ね?)
エヴァは、健康的に日に焼けていた。貴族の御令嬢方が、白ければ白いほど美しいと思っている基準からは、、、、昔から外れている。金髪はきっちり三つ編みにしている。
「エヴァ、もう、王立学院の中等部に入る年齢なんだけど、どうするの?」
「・・・・ああ、、、、なんか、、、時間がもったいなくないですか?」
(僕は、、、通ってるけどね、、、)
「父上が、社会性を身に付けるのにちょうどいいとおっしゃって、、、、だから、、高等部から通います。」
「・・・・・」
エヴァが学院にいたら、毎日退屈しないだろうなあ、、、と、思っていたけど、、、まあ、、そうか、、、そうだろうな、、、
「今日のおすすめの本はこれです!!!」
エヴァが取り出した本は、この国の神話。王妃教育が始まったから、、母上が張り切っていたな。
「王城での教育が始まりまして、読んでおくように言われたものですが、、もちろんベル様は読破済みですよね?」
(そうね、、、別に面白くはないよね?)
「ここです!女神が槍を聖なる山に突き刺す。この山は今まで以上にこの国に富みと栄光を与えるだろう!ここ、ここです!」
「ああ、セント・アンブロス山、のことでしょ?」
「そうです。あの、、、なんてことはない、話題にも上らない、普通の山、のことですよね?」
「・・・・」
「神話には時折、真実が紛れ込んでいる場合がございますよね?このお話では、女神がどういう角度で、どこに槍を刺したのかを、見てきたみたいに書いていますよね?」
「・・・・・」
「何か、、、、そこにあるのでは?」
「何か?って、、、何?」
「・・・何か、ですよ。国に富みを与える物?温泉とかかしら?」
「・・・・・」
相変わらず、、、、面白いね、、エヴァ。君の着眼点。
「じゃあ、今度一緒に行かないか?セント・アンブロス山。」
「あら?素敵ね?」
嬉しそうだね。知ってる?君が忙しすぎて、僕たち初めてのデートだよ?
一日がかりかなあ、、、お昼を途中の湖のほとりで、、、いや、、あの山のふもとにある王家の別荘まで行けるかな?景色が良いんだよね、、、あそこ、、、
「お弁当と、、飲み物と、、、鉱物学に詳しい方、ですかね?」
「・・・・・」
そうだね、、、、二人きりのデートではなさそうだね?