第3話 冒険小説。
「今日の御本はこれです!」
「・・・・」
「読むと長いので、あらすじをお話いたしますね?
ある国に聖女がおりまして、いろいろあって追放されてしまうんですの。聖女と冒険者は隣国に逃れますが、隣国は不毛の地でして、、、二人は力を合わせて、そこに住む皆さんと一緒に、緑の大地に変えていく、、、、というお話なんですの。」
(知ってる、、、、時々、エヴァについていけなくなりそうになるので、彼女の侍女に、エヴァが今読んでいる本を教えてもらっている。追放された聖女と冒険者、、、読んだ。けっこう面白かった。)
「凄いと思いませんか?」
(来たな?どこだ、、、聖女か?まさか冒険者か?今度は、冒険者になって、七つの珠でも集めるのか?)
「農業改革ですよ!!!」
(・・・・そこかあ、、、、)
「意外とリアルなんですよ。まず、良い水。良く耕された畑。肥料となるもの。充分な日照時間。そして、、、、」
「そして?」
「その土地に合った耕作物、これが一番ですよね?」
「・・・・・」
(聖女の力です、とか言わないところが、この子の凄いところだよね、、、、)
エヴァは近衛の朝練の後、許可証を持って、王立図書館に入り浸っている。
午前中はそこで過ごすらしく、図書館のスタッフに可愛がられているらしい。
僕も、、、少し様子を見に行った。
薄暗く、静かな館内。差し込む光が筋のように見える。
本に埋まるように、閲覧室にエヴァがいた。
髪が邪魔にならないように高いところで一本に結び、真剣に分厚い本を読んでいる。
「エヴァ?」
小さい声で読んでみたが、僕の婚約者には聞こえなかったみたい。
間もなく、、、、エヴァは近衛の朝練に来なくなった。
近衛のみんなは寂しがっているぞ?
王都のはずれにある王立の農業試験場で働きながら学ぶらしい、と、彼女の侍女から報告が来た。エヴァ、、、、君って、、、、いつも僕の理解力を軽く超えていくね?
「ベル様!来期の、北部開発団の参加希望者に、、、、エヴァ様のお名前が、、、、」
「・・・・・」
(やりそう、、、、)
「あの子、、、まだ10歳くらいでございましょう?良い論文が上がってきたって、、、農業試験場からも推薦が取れているみたいだし、、、、ベル様?あの方は、、、どこに向かっておられるので?」
「・・・不毛の地の、、、、農業改革?」
「・・・はあ、、、、?」