第1話 絵本。
僕とエヴァが婚約したのは、僕が8歳、彼女が6歳。
僕は、毎日秒刻みのスケジュールで教育を受けていたので、、、まあ、第一王子なので。少し窮屈だった。
紹介されて、中庭でお茶になった。相手はまだ6歳だし、、、政略的婚約者だし、正直、何の期待もしていなかった。きれいなふわふわの黄色いドレスに、金髪くりくりのお人形さんみたいな女の子。
「ベル様?退屈でございましょう?私、絵本を読んで差し上げますから!!」
エヴァがごそごそと取り出したのは、よくある、王子がドラゴンにとらわれた隣国の王女を助けに行く話。お茶を飲みながら、微笑ましく聞いていた。女の子のあこがれの典型事例だね。
「いいお話でございましょう?」
「ああ、、そうだね。」
「まあ!!お判りいただけました?王女付きの女性騎士!!!かっこいいですよね!!どこまでも王女に寄り添いながら、諦めない!かっこいいですよね!!!」
(そこ?)
「私、筋トレを始めたんですの。お父様にお願いして、剣術の稽古も。今は、朝練にも参加させて頂けるようになりましたの!うふふ、、、」
そう言って、嬉しくてたまらない、という笑顔。かわいいねえ、、、
「機会がございましたら、お手合わせお願いしたいです!」
「僕と?いいよ?」
大公殿も、娘に甘いなあ、、、、そう、思っていた。その時は。
僕は近衛の朝練に参加している。結構厳しい。リーチが短いので不利ではあるが、腕前はまあまあかと思っている。
その朝も、着替えて出かけていくと、近衛騎士が人垣を作っていた。
「かっわいいねえ」
「え?お嬢ちゃん、練習に混ざるの?そう、、、」
「いいよお、、お手柔らかにね?」
かがんだり、しゃがんだり、中腰だったり、、楽しそうだ。誰と話してるの?
「あら、ベル様。おはようございます。」
(エヴァ?なんで?エヴァ?)
普通にランニングから始まり、柔軟体操をして、、、、
金髪をきっちり一つで結び、ブラウスにスラックスにブーツ。小さい女性騎士は、近衛の皆さんに囲まれている。
「へえ、、、こりゃ、、、」
「え?自分の家で練習したの?すごいね?」
「じゃ、お兄さんと打ちあうか?」
「はい。よろしくお願いいたします。」
僕は、少し離れて見学していたが、小さいエヴァは剣を合わせる。
どっと、笑い声が上がる。何?
「お前、、、修業が足りないなあ、、、」
「油断したな?あはは!」
近衛の一人が倒れ込んで、エヴァが手を差し伸べている。
(うまくあしらってくれたんだな、、、)
「中々やりますね、エヴァ様。ご覧になりましたか?自分より大きなものと戦う場合、正面からの戦いは不利な場合がありますからね、、、、隙を見て回りこんで、後ろから、まず、足を。体制を整えようとしている間に、とどめを。完璧ですね。」
「え?」
「しかし、、、あの戦い方、、、一体何と戦う気なんでしょうかね?」
「・・・・ドラゴン、、、だよ、、、」
「??」