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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
新女帝
89/89

愛犬な駄犬



 ヒメはジョテイの剣を弾き飛ばし、その喉に切っ先を突きつけた。


「これで、っ、私の、勝ちなのだわ!」


 タカラザカの女帝の座。

 その座を得る為の、決闘。

 ヒメはようやく、その座を勝ち得た。


「……お見事」


 目を細めてにんまりと微笑み、ジョテイはそう告げる。

 まだ余裕があるようなジョテイに対し、肩で息をするヒメ。まだ実力差は大きいと言えよう。

 それでも、負けは負けであり勝ちは勝ち。

 例えそれがまぐれであろうが何であろうが、結果が出たならそれが全てだ。


「まぐれだろうが運もまた強み。それを味方につけても勝てない程の実力差があるならともかく、それを味方につければ勝てるのだと証明したも同然。なら、その強さに間違いはあるまい」


 そう、そういうこと。

 運を味方につけようと、実力が無ければそれでも負ける。

 運を味方につける事で勝てたなら、最低でもそれだけの実力はあるという事。何より、それを味方につける事が出来たのならば、その強さを否定するものではない。


「これで、わたくしもようやく引退か」

「やったねヒメちゃん!」


 見守っていたジンゾウが、わあ、と喜色満面の笑みを浮かべて剣を引いたヒメを抱きしめる。


「850回敗北したけど、ようやく勝ちだよ!」

「要らん事言わなくて良いのだわ!」

「あだっ」


 ヒメはジンゾウの眉間を小突いた。本当に要らない事ばかり言う。

 とはいえ、それも事実。

 ジンゾウを勝ち取ってから毎日のように挑み、二十三にしてようやく一度の勝ちを得た。


「それだけの数敗北したとしても、敗北の数は諦めなかった数でもある。恥じる事無くその不屈を誇れ」


 見守っていたオウに無言で手を差し伸べられたジョテイは、そう語りながらオウの手に引かれ立ち上がった。


「まったく……女帝の座を狙い決闘を挑む他の者も、ヒメと同じく毎日のように挑んで来れば良いものを。たった一度で諦める者の気が知れん」

「そりゃ普通は実力差に心が折れるだろ」

「わたくしは折れませんでした。ヒメも折れずに挑みましたよ」

「諦めさせなかった俺が悪いのか……?」

「諦めさせなかった貴方のお陰です」


 にこやかにそう告げられ、オウは何とも言えない渋い顔をする。


「……そもそも、マジでヒメの頻度で挑んで来るようだったら、政治も回してるお前があまりの忙しなさに弱っちまうんじゃねえのか」

「それを狙うくらいの根性が欲しいのですよ。小手先の小細工にまで気合いを入れてこそ狙う座でしょう。その程度もせずに一度の負けで諦めるなど、嘆かわしい」

「あー、まあ言いたい事はわかるがな」

「さておき、ヒメ」


 ジョテイはヒメに向き直る。

 ヒメもまた、ジンゾウの腕を叩いて自身を下ろさせた。


「よくぞわたくしに勝ってみせた。戴冠式やら色々あるが、これで晴れて女帝の座はお前のものだ」

「ええ。ありがとうございます、お母様」

「というわけで、早速わたくしはオウと共に旅に出るから後は任せるぞ。引継ぎに関しては既に殆どを済ませてある」

「お母様?」

「ははは」


 ジョテイの性格上わざと負けるわけもないが、ヒメが勝つ前提で色々と進めてあったらしい。

 ありがたい限りだけれど、単純に諸々の手間に忙殺されるのを面倒臭がったような気配もする。というか、完全に旅立ちをスムーズにする為だろう。

 元よりタカラザカにおいて女帝の座を決する決闘に関しては、現女帝の首を獲るという過激版の場合もある為、引継ぎがどうとかいう余裕が無いまま次の代に受け継がれる事もある。なのである程度が簡略化されているのは間違いないし、あらかじめ纏めておくのも無理ではないだろうが、


「……お母様、まるで前から予定していたかのような言い方だけれど、一体どこへ?」

「オウの友人を巡りに」

「待て」


 オウがジョテイに待ったを掛ける。


「あちこちを巡りたいってな話は聞いてたが、何だそれは」

「おや? 言っていませんでしたか」

「聞いてねえぞ」

「まあ、オウに告げてしまうと拒否されかねませんからね」

「つまり意図的に黙ってたんじゃねえかお前……」


 このやろう、とオウは顔を顰めた。してやられた、という顔だ。


「他の人達も……オウの友人達も、オウに会いたいと思っているそうですよ」

「俺が会いたがってるような言い方すんじゃねえ」

「ギフ達が教えてくれました。オウが友人達の様子を気にしていること、友人達がオウは元気にしているか心配していること。けれどオウと違って生涯現役というわけではない彼らは、移動も出来ない程に年老いてしまったこと」

「…………」


 オウは思いっきり口をへの字に歪ませる。


「故に、わたくしが女帝の座を奪われたなら、その時は隠居を楽しむついでにオウの友人達を巡ろうと思っていました」

「隠居だけ楽しんでろ」

「ええ、だから行くんです。ただ世界を巡るよりも、貴方と世界を巡りながら貴方の友人に会い、貴方の昔の話についてを聞く方がずっと楽しい」

「………………」


 それが嫌なんだが、という副音声が聞こえる顔だった。


「というわけだ、ヒメ。お前の治世を考えれば、しばらくわたくしがこの国を離れるのは理に適っている。止める理由は無いな?」

「それは、確かに無いけれど」

「だろう。ああ、戴冠式ついでに結婚式もやるつもりだろうが、子が産まれたらその時は連絡を入れなさい。その時だけは戻る」

「……何だか、色々とバレている気がするのだわ」


 確かに結婚式は女帝の座を得たその時に、と思っていたが、誰に言った覚えも無いのに見抜かれているとは。

 いや、元よりヒメにそんな気が無い頃からヒメの隣にはジンゾウが立つ事を察していたような人なので、その辺りの先読みに長けているのか。


「では、早速旅立ちの準備でもするか。オウはまずどこから行きたいと思いますか?」

「既に帰りたい」

「わたくしと共に居たいと思ってくださるとは光栄ですね」

「そういう意味じゃねえ」


 クスクス笑うジョテイに腕を引かれ、オウは渋々といった様子でジョテイと共に出て行った。

 それでも強く否定をしなかった辺り、友人と会いたい気持ちがあるのは本当なのだろう。


「……あの、ヒメちゃん?」


 恐る恐る、といったようにジンゾウが身を屈め、ヒメの顔を覗き込むようにして問う。


「結婚式って、その、相手は僕だよね」

「他に誰が居ると?」

「ううん。居ないと思うし、居てもヒメちゃんの記憶から消しつつ存在を抹消する方向に走るけど」


 重い。

 実際出来るだけに重い。これだからこの男は。ヒメは軽く引きながらそう思った。勝ち取って以降、ジンゾウは素の過激さを前に出すようになった気がする。


「でも、なんか……既に僕はヒメちゃんの物だから、改めて結婚するってなんだか変な感じ」

「あら、所有物の称号の他に私の旦那という称号は要らないの?」

「要るよ! 絶対要る! 要る要る要る! 他の誰にも渡さないし奪おうとするような人が居たらすり潰すからね!?」

「それだけの熱量が出せる癖に、よくもまあ言えたものなのだわ」


 結婚というワード自体には反応しないのに、旦那というワードには反応するとは。

 まあ、ジンゾウの中で結婚という概念自体が縁遠かったのだろうけれど。


「……ただ、あの、子供って」

「ああ。本当はもう少し早くに作っても良かったけれど、妊娠状態でお母様に挑むのはどうかと思ったから。幾ら治せるとはいえ、腹の中に居る状態で母体が死ぬ寸前になる状態を何度も味わわせるのも可哀想だものね」

「それは妊娠中は挑まないって事にすれば良い話じゃない?」

「挑めないわけでもないのに?」

「……ヒメちゃんってそういうとこあるよね」


 やたらと穏やかな顔で言われたがどういう意味だ。仏みたいな顔をされても反応に困る。


「……僕、子供作れるかもわからないよ?」

「そう?」

「だって、ほら、皆のお陰で僕は人間らしくなったし……成長も、劣化もするようになったけど、だからといって子を残すっていう生き物らしさの集大成みたいな要素までは、どうなってるか」

「その場合はマッドに頼んで、単体生殖という形で子を産めるような薬を」

「却下。例えヒメちゃん百パーセントだとしても、僕の要素が入ってない子供を産むのは駄目。許さない」

「……貴方、本当にここ数年で面倒臭さを隠さないようになったわね」


 元から面倒臭い面はちらちらと見えていたが、色々と吹っ切れたのか何なのか、思ったよりも重い面が思いっきり表面へと浮き出ている。

 ジンゾウが自分らしさを出せるようになったのは良い事だけれど、ここまで色濃く出てるのは良いのか悪いのか。


「その時は僕の魔法を使ってでも僕の要素が混ざってる子を産んでもらうから」

「最初からそう言っていれば良いのだわ」


 やたらと重い癖に、変なところで立ち止まるから無駄な手間が増える。どのみち結果は変わらないというのに。


「さて、そうなると早めに戴冠式兼結婚式を開くとして……マッド達は最近子供が生まれたんだったかしら」

「ああ……」


 手紙で知らされた顛末を思い出してか、ジンゾウの目が遠くへ向けられた。


「トクサツさんの情操教育に役立ちそうだからっていうだけの理由で作った子……」

「ほんと、家族への憧れが強い癖に血の繋がりのある家族というものに強い拒絶が残ったままだから、というだけの理由でやる事じゃないのだわ」


 しかもトクサツを一時的に男にした上で作った子らしい。

 完全に無断だったようでその後祖父と母からド叱られたそうだが、トクサツ本人がその件に関しては特に問題視していなかった事と、祖父母が父を作った経緯よりはまだ辛うじてマシという事で何とか許されたそうな。

 よくわからないが、マッドの祖父母に一体何があったのだろう。


「ライトとフリョウの方も、結婚してたわよね」

「いやあ……凄いシンプルだったよね。もっと大きく祝っても良さそうなのに」


 その理由がフリョウが緊張し過ぎてしまう、なのだから笑ってしまった。

 他にもライトの友人を呼ぶとなると尋常じゃない広さの会場が必要となってしまうので、さらっと済ませた方が楽、という実にライトらしい判断だった。相変わらず何もかもに対してフラットなところがある。


「マッド達の方は子供の件からしても来る時間が確保出来るかわからないけれど……ライトとフリョウは大丈夫、で良いのかしら?」

「仕事の忙しさ?」

「いえ、マッドの薬を使ってとうとう子供を作ったかどうか」

「…………ライトのお姉さんとその旦那さんの間にようやく子供が出来たって話してたし、そろそろじゃない?」

「そうね。移動するのが厳しくなる前に素早く招待状を出しましょう」


 義兄へのプレッシャー用に結婚を人質に取り、子作りまで人質に取るのだからとんでもない。

 いや、義兄であるタイシュウ王子の方もそれくらいのプレッシャーが無いと中々進展しそうにない様子だったので仕方がないのかもしれないが。


「マンガさん……は、結婚してない、んだっけ?」

「トショかヨンコマ辺りかと思っていたけれど、未だにそういった話を聞かないものね」


 かと思えばヒメ達も知らない人間とあっさり結婚していそうなところもある。本当、ユニコーン頭を被らないようになったかと思えば相変わらず変なところで掴みどころのない男だ。


「テキトー先生とコワイ先生は、学校宛てで良いのかな」

「テキトー先生は学校を辞めたと聞いたけれど」

「えっ聞いてない!」

「教職は嫌いだけど人を導くのは好きだから、とか言ってアカに同行してるらしいのだわ」


 革命もまた、苦しむ人々を苦しまないで良い場所へと導くためのものには違いない。

 あれだけ警戒していたというのに、どの辺りで思想が一致したのやら。アカの魔法で定められただけかもしれないが、定められる以上、少なくともその可能性がゼロでは無かったということ。

 まあ確かに教職で無くとも青空教室なりで子供に勉学を教えたりは出来るだろうし、決まり事や悪習といったものを嫌っている様子のテキトー先生を思えば、意外と違和感はない。

 ヒメはそう思ったが、ジンゾウとしては驚きの情報だったらしく、恐る恐るといった様子で問われた。


「……どこ情報?」

「イマドキ」

「イマドキさんかあ~~~!」


 ザカの舞台演劇の衣装関係で働いているイマドキは、時々そういった情報を教えてくれる。


「でも確か、コワイ先生も確かあちこちをふらふらしてると聞いたのだわ。学校宛てじゃない方が良いでしょうね」

「いや、コワイ先生は非常勤になってたはず。一応保険医は継続してるってフリョウさんが言ってたから」

「ああ、そういえば」


 ライトの姉夫婦にオススメデートスポットとして紹介する用に下見デートをしている、とかいうよくわからない理由でザカに来た時に聞いた気がする。


「その辺りを私は詳しく聞けてないけれど、結局コワイ先生はどういう事に?」

「結婚したらここに行きたい、みたいな会話を全部覚えてるから、順番にそこを巡るつもりみたい」

「供養みたいなものかしら」


 キンキ王を一発殴っても未練を断ち切りきれなかったと思うべきか、キンキ王に一発入れた事で踏み出す事が出来たのか。

 恐らくは、後者だろう。


「他に、同級生達は当然呼ぶとして……先輩方は、無しで良いかしら」

「え、どうして? お世話になった人も多いから呼んだほうが良いんじゃないの?」

「…………」


 そう、確かに世話になった。

 しかし、だ。


「呼べば最後、ヒフク部長……ヒフク元部長にひたすら戴冠式用と結婚式用の衣装をあれやこれやと口出しされるのだわ」

「うわ」


 そうだった、とジンゾウが顔を引き攣らせる。

 しばらくの間しつこいくらい届いた手紙(と言う名の怨念)。そもそも劇での衣装作りの際に一番自由にして良いポジションだから、という理由でこれでもかと色々試着させられたのはジンゾウだった。思い出したのか、じわじわとジンゾウの顔色が悪くなる。


「……やめとこっか」

「直前でライト辺りから式についてを通達してもらえば、衣装関係に対する口出しの危険は無くなると思うのだわ。直前過ぎて参加自体の予定が合わないならそれも良し。他の先輩方は巻き添えになってしまうけれど、お母様が折角簡略化した式典をまた面倒な事にされたら困るもの」


 よくわからない儀式を長々とやるより、儀式をサッと終わらせて後は長い時間パーっと騒ぐ。それが母によって変えられた式典だ。

 また色々な着替えを用意して云々、なんて式典には絶対戻したくない。


「ああ、それと女帝の座が私になった以上、戴冠式では当然私の座を狙って決闘を挑む者が出ると思うけれど」

「その前に僕が心を折る?」

「ジンゾウがやれば再起不能になるのだわ」


 普段は好戦的じゃない癖に、変なところで好戦的なのは何なのか。しかもいまいち手加減が上手くない為、不要なオーバーキルになる事も多い。


「女帝の座を狙う相手は私が潰す。ジンゾウは皇帝の座……つまり、女帝である私の夫の座を狙って貴方に決闘を挑む者を」

「わかった。すり潰すね」

「原形は残してやってちょうだい」

「最終的に五体満足で生きてたらいい?」


 それはつまり、一度完全にすり潰してから回復魔法なりで復活させるという事では。


「……まあ、良いのだわ」


 実力を叩きつけるには丁度良い見せしめになりそうなので良しとした。


「えへへ……結婚、結婚かあ。僕が、ヒメちゃんと結婚……」


 じわじわと実感が湧いて来たのか、ジンゾウの表情がにまにまと緩む。


「……母さん、喜んでくれるかな」

「母であるなら、息子の晴れ姿を喜ぶでしょうね」


 息子の晴れ姿を喜ばない母も居るかもしれない。

 けれど、血の繋がりは無くとも母であろうと、せめてジンゾウを我が子と思おうと思った彼女なら、間違いなく喜ぶはずだ。


「とはいえ彼女、最近おかしな子供に付き纏われてるようだったけれど」


 二年程前から積極的に外へ散歩に出るようになったジュンだが、ここのところおかしな子供にやたら声を掛けられるらしい。おかしな、のところについての説明が不透明なので、どのくらいおかしいのかはわからないけれど。

 それについて知っているらしいジンゾウが、やたら気まずそうに視線を彷徨わせる。


「ああ、うん、何ていうか、あの……」

「何?」

「……その子、ステータスに転生者って書いてあって……えっと」

「…………まさかとは思うけれど」


 うん、とジンゾウは頷く。


「記憶有りの父さんだった」

「……招待客は身内限定になりそうだけど、ジュンの結婚式の準備もした方が良いかしら」

「う、うーん……どうなんだろ……?」

「というか、異世界人の復活は出来なかったのによくまだこの世界に魂が留まっていたものね」

「魂の状態でも異世界人のチート魔法は使えたから、絶対復活なんてしてやらねえって気持ちで拒否してたんだって」


 あれだけ自分は異世界人とイコールなのかどうかで悩み抜いていた癖にのほほんと言う事か。いや、のほほんと言えるくらいの事柄になったのは良い事だが。


「……その子にも、戴冠式兼結婚式の招待状を出すべきかしら。肉体的には無関係になってるのだとしても、魂で言えばある種貴方のお父様なわけだし」

「話してみたら父さん結構アクティブだったから、招待状出さなくても勝手に入り込んでそうだけどね」


 それなりに仲良くやれているのか、あはは、とジンゾウは笑う。


「チート魔法はもう使えなくなったみたいだけど前世と言えるワルノ王国でのアレコレのせいか、侵入、脱出、逃亡に関しての魔法持ちだったし」

「だったら尚更出すのだわ」


 無断で侵入されるよりは招き入れた方がマシ。


「一応聞くけど、後悔はないわね?」

「何に?」

「私の夫になる事に」


 言っておくけれど、とヒメはジンゾウの眉間に人差し指を突きつける。


「私、一度頷いた以上、二度と逃がす気は無いのだわ。ここで頷けば貴方は」

「うん、後悔しないよ」


 言い切る前にジンゾウは頷いた。


「ヒメちゃんに捨てられる方が辛いかな」

「そう」

「うん。そんな事があったらそんな可能性を全部焼き尽くした上で時間を巻き戻して無かった事にするね」

「そんな可能性は無いから安心するが良いのだわ」


 というか朗らかかつ照れ臭そうな笑みでさらりとそういう事を言わないで欲しい。いちいち重い。

 思わずため息を吐けば、ジンゾウは何やらこちらをチラチラ見ながらソワソワと体を揺らしている。


「……ね、ヒメちゃん。キスして良い?」

「自分から言えるようになったのね」

「いつまでもヒメちゃん任せにするわけにはいかないから」


 へにゃりと毒気の無い笑みを浮かべるジンゾウにもう一度ため息を返せば、ジンゾウはその唇をヒメの唇にそっと重ねた。

 一秒にも満たない密着は、すぐに離れる。


「…………えへ」


 嬉しそうに笑って、ジンゾウはヒメの頬を撫でた。


「……なに」

「ヒメちゃん、頬っぺたちょっと赤くなってる」

「いちいち言わなくて良いのだわそういう事は!」

「あいたっ」


 デコピンを食らわせ、まったく、とヒメはため息交じりに腕を組む。

 まったく、変わらず駄犬な愛犬だこと。





 これにて、閉幕。



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― 新着の感想 ―
よかったです。 お疲れ様でした。 毎日の更新を楽しみにしていました。 ワクワクする話を毎日ありがとうございました。
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