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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
姫騎士なのだわ
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イージーモードの終わり



 突然のヒメの決闘宣言。

 その言葉にまず反応したのは、


「ん、なアッ……!?」


 キンキ王だった。





 キンキ・フッカツは国王である。

 そうなると約束されていた存在であり、生まれつき優れていた。

 だって、常にオートで魔法が発動しているのだから。


「こーいうのが視えないヤツって悲惨だよねえ」


 人生はいつだって、敷かれたレールの上を自動で進んでいくものだ。

 時には手動でやる必要もあるが、これらが視えない人間からすれば些細な事だろう。

 そう、視える。

 キンキには視える。

 視界のあちこちに、何をどうすればこの道に至れるか、が視える。


「かぁーんたん」


 王様になれる最短ルートがあった。

 キンキは一番バレない方法を選び、実行した。ちょっとしたお遊びみたいなものだ。成功率が百パーセントというわけではないから、成功したら良いな、くらいのもの。

 それは成功してキンキがやったという証拠も残さず無事に事故死の形で両親が死んだので、キンキは十代にして国王になった。


「えっへん」


 王様になった。権力を持った。国を得た。

 キンキには、夢があった。世界征服という大きな夢。力で押さえつけて好き勝手遊んで楽しく暮らすという、誰しもが夢見るような夢。

 ただの夢で終わるしかないもの。

 でも、キンキには攻略という魔法があった。


「方法はいっぱいあるけど、一番早くクリア出来そうなのにしちゃおっかなーっと」


 遠い目標の場合、攻略法は複数表示される。

 どれも時間が掛かるようだが、一番イージーな攻略法を実行する事に決めた。異世界人を手中に収めて、言う事を聞かせて、それで一気に世界征服をしちゃうルート。

 その通りに動き、キンキは無事異世界人をゲットした。


「お前、儂に対してちょっとうるさくなーい?」


 代々王家に仕えていて、王家らしくしろとか国の為にとか口うるさい役立たずの騎士を追放した。

 元々は強かったのかもしれないが、現役として前線で戦う事が出来ず、指導役なんていう天下り先でだらだら金をせびるようなヤツはもう要らない。

 何よりこのオウとかいう男は、


BAD END(詰み)にしてくるから、儂アイツ嫌ーい」


 視界に走る赤い背景と黒い文字。耳に響くのは警告音。そのまま進めばBAD END(詰み)になるぞと魔法が忠告してくるのは、大抵オウが動こうとする時だった。

 いちいち面倒臭かったから、適当に追放した。遠くに追放した。近場に居て変に動かれたんじゃ困ってしまう。


「んー、何か減った?」


 オウを追放したら、城の人間が三分の一くらい減った。

 何でかはわからないが、魔法で何でこうなったのかの確認をしたところ、代々使える家系の者、それも城内の人間から好意的に見られていたオウを追放したのが理由らしい。

 そうはいってもあんなに地雷だらけな男じゃ、居ても困る。

 城に居続けさせればBAD END(詰み)フラグ。追放すれば城内の人間が減るだなんて、存在自体が厄介なトラップだ。いっその事、行方不明か脱走かという扱いにして暗殺させておけば良かった。


「ま、良っか!」


 使い物にならない城内の人間が多少減るくらいは問題無しと思って良いだろう。

 だって、金と聞こえの良い文言を用意すれば人は釣れる。病気の身内、あるいは働けない年齢等で養う誰かが居る人間が狙い目だ。

 そういう人間は、逃げられない。


「儂ってとぉーってもお金持ちだしね!」


 ワルノ王国にはたんまりと金がある。

 まず両親が死んだ際、完全に移動先の国の過失という形だった。そう見えるように調節しただけだが、向こうも騙されてくれたようで膨大な額が支払われた。

 他にも幾つか、国を滅ぼした。

 魔法があれば、どこがどういう地形になっているかなんてすぐにわかる。勝てる国かどうかもわかる。裏切り者になってくれるかどうかもわかる。

 そんなものは、視れば一瞬でわかってしまう。

 あとはその方法のままに動けば、あっという間に国は滅ぶ。土地は手に入るし、安価な働き手だって増える。収入源だって増える。


「逆らうなら売れば良いし、王様って超楽な仕事だなあ」


 奴隷貿易をしている国にうるさいのを流せば、簡単だ。

 でもこの魔法であっても、ランダム性が高い相手はどうにも難しい。


「ハア!? 異世界人が死んだあ!? ちょっとちょっとそれどういう事よ!? うっそお、色々計画台無しじゃん!」


 騒いだ。思いっきり騒いだ。

 でも、魔法が、キンキの夢はまだ終わっていない事を教えてくれた。

 ストレス値管理がどうとかいうのは数字が細かくて対処不可能に近いもの。それが上手くいかなくて異世界人は死んだ。

 異世界人のストレス値を大幅に激減させるオウを追放したのも一つの理由のようだが、アイツは下手に残してストレス値減少に使用した場合、異世界人と共に反乱を起こしかねないので仕方ない。まったく、面倒臭い男め。

 さておき異世界人の体は幸いにも残っていたので、魔法持ちを金で集めて、何とかさせた。


「あーあ、時間掛かっちゃった」


 それでも異世界人は復活した。

 中身は異世界人じゃないみたいだけど、まあ良い。ここ以外の世界を知っているからと反抗するヤツよりは多少使いやすいだろう。


「異世界人の魔法を持ってるなら、それでオッケーだしね」


 求めているのはそれだけ。

 とはいえその力を十全に使う為には知識が要るし、人前に出して自慢と脅しに使うのだとしてもある程度見れるように整えておく必要がある。

 だから、整えさせた。


「えー、学園? しかもマナビヤ学園かあ」


 全寮制の学園。ワルノ王国の外。

 これじゃあ要らない知識を付けそうで心配だなあ、と思った。でも異世界人の記憶を刺激する為だとか、他の生徒の魔法を見て学ぶ為、と言われたらまあそうかなという気分になってくる。

 確かに、今のジンゾウじゃあんまり使い物にならない。

 異世界人の使う魔法の凄さ。

 その本質。

 それは、この世界の人間とは根本的に発想が違うようなイメージ力。どんな魔法も実現出来る凄さ以上に、そんな魔法を想像出来る、という素質こそが最重要。

 残念ながらジンゾウは発想力が乏しくて、反抗的だったり自殺しようとしないだけマシだけれど、有用性としては前の異世界人の方が良かった。

 そう思えば、発想力はそのままとしても、多種多様な人間の魔法を見る機会というのは有りだろう。


「特にマナビヤ学園なら有力な貴族、王族が多いし」


 名前、性格、持ってる魔法等をジンゾウに暴かせて、情報として確保しておくのは良いかもしれない。

 それがあれば邪魔な国をつつく為の切り札になる。戦争ではちょっと不利かな、みたいな国もまんまと手中に収める事が出来るだろう。

 BAD END(詰み)の文字も無かったので、キンキはその案に賛成した。


「うん、オッケー!」


 長期休暇には帰らせて、反抗心が芽生えてるようならちょっと脅かしてやれば良い。

 十歳にもなってないような兄弟でも捕まえてジンゾウの部屋に入れて、兄の方に弟を滅多打ちにして殺せとでも命じるか。逆らえば兄の方を殺せば良い。

 それを見せれば、外の世界を知ったジンゾウでも、


「いや」


 外の世界を知ったジンゾウだからこそ、逃げられまい。





 折角人間らしい負荷を取り除いて作ってあげたのに、卒業したジンゾウはそういうのがある体になっていた。

 色々と試したところ、痛覚は無いままらしい。回復力も据え置き。

 食事や睡眠もこれまでと同様、ほぼ皆無でも問題無さそうだった。汗や涙が出て、髪や爪が伸びるようになったくらいの変化。それもほんの些細な変化で、カメのように遅い。

 これじゃあ普通に老化しそうなのはちょっと嫌だけれど、まあ問題は無い範疇だろうと判断した。


「あーあ、残念」


 折角、折角儂が考えた最強の異世界人にしてあげたのに。

 身長が伸びて威圧感が増す分には良いが、筋肉が衰えて見栄えがしない体になったりしたら嫌だなあ、と思ってしまう。変化が酷く遅い事から、しばらくはその心配もしなくて良いだろうけど。


「でもしばらくしたら考えなきゃだよねえ。あーあ面倒臭い」


 そうやってジンゾウを調べるのに、半年掛かった。

 そこからの半年は、ジンゾウを使ってどこを攻めようかな、と考えていた。

 狙い目の国は沢山ある。ジンゾウを使えばどの国だって容易く取れる。ならどうするか。利益が大きいのは。他の国が連鎖的に手に入るような国は。これは欲しいと思わせるものがある場所はどこか。


「あれ? あれあれあれぇ?」


 そんな事を毎日楽しく考えていたら、ジンゾウ宛てに招待状が来ていた。

 オタク国の王家の印が封蝋に押されている。正式な国際パーティーだ。内容としては同窓会なんていう馬鹿げたものらしいが、これは面白い。

 何せ、保護者同伴可能とある。

 キンキが参加する事も可能。他の父兄も参加するだろう。成る程、間違いなく国際パーティー。同級生はさておき、その父兄相手にジンゾウの凄さを見せびらかし、自分からワルノ王国の傘下に入って来るよう誘導するのも有りかもしれない。


「アハ」


 いやあ、何て面白い催し物!

 幽閉されていた挙句に王としての権力を失った愚か者が開くに、相応しいパーティーだ。





 なのに、なのに、なのに!


「な、」


 何だコレは!


「ぐ、クソッ」


 視界に広がるのはBAD END(詰み)の文字。視界に広がるどころか、視界を埋め尽くす程のBAD END(詰み)。そんな馬鹿な。

 普通、一つの事象に関してのBAD END(詰み)

 こういった出方をするのは、この状況を改善する手段がどれもこれもBAD END(詰み)にしか繋がらない、という証。どこをどう動かしてもBAD END(詰み)


「そ」


 そんな事、認めてたまるか。

 あんな小娘一人に、BAD END(詰み)を確定されてたまるか!


「そんな野蛮な発言、あり得ないよねえ!? こんな国際的な場で何言っちゃってんのお嬢ちゃん?」


 焦るな。焦るな。キンキは必死に自身を抑えつけながら、頬がヒクつくのを感じつつそう告げる。馬鹿な発言だ、と皆に伝わるよう。

 でも、弱者にしか見えない小娘は、真っ直ぐにキンキの方へと視線を向けた。

 視線を逸らさず、誤魔化さず、射貫くような目が向けられる。


「国際的な場、なんてものが関係あるとでも?」


 小娘は笑う。目を細めて。


「タカラザカにおいて、欲しい物があるなら決闘で勝利し奪うがしきたり。私は彼を賞品として求めました。それの何に異議が?」

「あるに決まってるよね!? 普通にあり得ないでしょそんな蛮族の暴論!」

「ふむ? そうでもないが?」


 そう発言したのは、背の高い女。

 服の上からも筋肉が発達しているとわかる、女らしくない体の持ち主。

 その顔は知っている。ゴリラング王国の者だ。それも、王家の親戚筋。名は確か、マウン・テン・ベリンゲイ。


「私の祖国、ゴリラング王国でもそういった方法で意見を通す事がある。我が国ではそこまでの頻度というわけではないが、お互いの意見が完全に対立した場合、戦いでどうするかを決めるのは良い事だ」

「蛮族国家め!」


 優れた男を一人決めて王にし、その男の子種をバラ撒いて繁殖するという、男優位でありながら女系の国という異質な王国。

 流石、兵士として雇うには温厚で戦争を嫌う為断られるものの、いざ戦争になれば他国をすり潰す勢いで進軍する危険国家。何て嫌な追撃をしやがる。


「ニジゲン王さん!? ちょっとそっちも止めなさいよ! こんなところで決闘だなんて血生臭い事させて良いと思ってんの!?」

「うーん……」


 見ているだけで苛立つ程に呑気な面で、ニジゲン王は言う。


「でも、きっと本人達にとって大事なことなんじゃないのかな。場所は後で直せば良いし、人も避難すれば良いだけだよね」

「ふざけるなよこの……っ! 権力を失った癖に王位にしがみ付く敗北者が!」


 また視界にBAD END(詰み)が走る。先程まで、まだ傍観者に徹していた日和見菌みたいなヤツらからすらBAD END(詰み)が表示されていた。何故だ。


「ジンゾウをやすやすとくれてやれるか! そんなもの、ワルノ王国と戦争すると宣言すると同義だぞ! タカラザカの女帝! 貴様のところの民が勝手をほざいて国家間戦争の引き金を引こうとしてるのに無視するのか!?」

「それが?」

「そ、っ……!?」


 タカラザカの女帝は、どうでも良いという顔で後ろに居る巨体の老人に背を預けてもたれ掛かる。


「欲する物を奪おうとして何が悪い」

「わっ、悪いだろうが! ええいこれだから蛮族国家ってヤツは! 儂は知ってるぞ、その小娘が城に仕える女騎士だと! 上が上なら下も下か!?」

「何だ、知らんのか。ただの女騎士ではないぞ」

「は?」


 女帝の言葉に、キンキは小娘の方を見た。


「どうやら、ワルノ王国までは情報が届いていないようで」


 小娘はにこやかにスカートを摘まんで足を引き腰を下げ、微笑む。


「私、ヒメ・キシと申します」


 そのファミリーネームは、帝国タカラザカの、


「私、実は姫騎士なのだわ」


 女騎士ではなく、姫であり騎士。

 泡を噴きそうになるも、問題はそこじゃない。それを知らなかった事も問題だが、それを知らされなかった事こそが問題だ。


「ジンゾウ、貴様……!」


 ギッとキンキはジンゾウを睨む。


「儂に全ての情報を提示しろと言ったのに逆らったのか!?」

「っ」


 ジンゾウが怯えたように震える。それが何よりの証拠。


「ふざけるなよ貴様! ジュンがどうなっても良いんだな!? 儂にとってあんな女、お前を縛り付ける以外に用はない! 惨たらしく殺してやる!」

「そん、」

「それは早計というものじゃないかしら、キンキ王」


 手を伸ばすだけでジンゾウを黙らせ、小娘、ヒメが言う。


「今は情報の提示よりも何よりも、貴方の見せびらかしてた切り札が、私に負ける心配をした方が良いのでは?」


 警告音が耳をつんざく。それでも、ヒメの腹立たしい物言いはしかと聞こえた。


「そ、ん……な勝負、そもそも受けてやるわけないだろうが! 帰るぞジンゾウ!」

「おっと、そう早くお帰りになるものではないぞ」


 タカラザカの女帝の声。

 同時、視界が塗り替えられるようにして変化する。

 パーティー会場はそれよりもずっと広い空間に塗り替えられ、舞台と観客席が用意された空間となっていた。

 太陽の光が届かない、シャンデリアに照らされた空間だったはずが天井は消え、青空と太陽がまぶしく照らす。風が吹く。視界に広がるのは、パーティー会場とは似ても似つかぬ程広大な空間。

 何が起きたと目を白黒させているのは、キンキだけではない。

 そんな人々を見て笑みを浮かべ、女帝が言う。


「これは、わたくしの魔法。その場をわたくしの望む、本来とはまったく違う世界へと塗り替えるもの。現実的な物質等関係無く、そこに壁があろうと関係無く、望んだ空間へと完全に塗り替える」


 その言葉通り、塗り替えられている。世界ごと。


「ああ、この魔法を解除した瞬間に座標的に見て壁がある位置に立っていたとしても、壁に呑まれはせず弾かれるから安心するといい」

「き、貴様の娘が求めた者は儂の子! 一国の王子を奪おうとされ、黙って応じるとでも!?」

「嫌なら自国の腕利きを好きなだけ連れてくれば良いだろう」

「そうですよ、キンキ王」


 女帝に身を預けられながら言ったのは、


「き、っさまぁ……!」

「どーも、アンタに見捨てられて山暮らししてたうだつの上がらねえ男です。悪いなあ、事あるごとにアンタの邪魔をしちまってるようで」

「黙れオウ・チュウセイ!」

「その名はアンタに追放された時捨てた。今の俺はオウ・キシだ」


 苛立たしい。苛立たしい苛立たしい!

 キンキよりも下であるはずの男が、キンキをまるで見下すように見るなど。そんな屈辱、許せるものか。


「……国の兵士を連れて来るとしても、数日は待ってもらうよ」


 しかし、視界に広がるBAD END(詰み)の文字から、何をどう言っても無駄だとしてオウに噛み付くのはやめておいた。BAD END(詰み)相手に抗えば、より一層悲惨な事になるものだ。

 そうは言っても既に現状BAD END(詰み)だらけだが、気に食わない男はともかく、ジンゾウを手放すわけにはいかない。何とか活路を作らなくては。


「だからこの場を戻し、一時解散を」

「戻したら逃げるだろう? 兵士くらい呼びつけろ。この空間からは出さん」

「はあ!?」


 安心しろ、と女帝が言う。


「生活可能な設備くらい後から付け足せる」

「ば、馬鹿かお前!? この規模の魔法を使い続けたところで、数時間が限度だろうが!」

「普通の尺度で判断されては困る。わたくしは常に限界値をきちんと把握しているが、今のわたくしならば、三日三晩不休のままこの空間を維持し続ける事は容易いぞ」

「馬ーーーーー鹿!」


 脳筋ゴリラの馬鹿女めが。

 しかし不味い。

 ただでさえ視界はBAD END(詰み)に埋まっているし、ジンゾウに指示して脱出しようにもそこへ命じるルートすら、小娘が前に出ている限りBAD END(詰み)と表示されている。

 命じる事すら、封じられた。

 徒歩によるこの空間からの脱出も不可能。完全に空間を塗り替えられた。瞬間移動系の魔法持ちでもなければ、抜け出せまい。


「そ、んな状態でどうやって兵士を呼ぶと!?」

「そぉーう思ってデリバっちゃいましたぁん♡」

「あー、疲れた」


 男の声が二つ。

 その声に振り返れば、困惑した様子で立ったり転がったりしている、ワルノ王国の兵士達。兵士ではないが腕利きの者達までしっかりと居る。

 そしてそれらの前に居るのは、シャダイ国の、


「だっははは! 驚いたか? 驚いちゃったか? 驚いちゃったよなーあ?」

「ちょっとゴオ、やめましょうよそういうの」

「ゴオちゃんワープ、大・活・躍! 運搬特化の移動系が多いシャダイ国として、頑張っちゃったぜ! 俺様ちゃんすごーい」

「うん、まあ確かに一人ずつ運んだ私と違って、十人単位で運んだのは純粋に凄いと思いますけど」


 ゴオ・イング・マイ・ウェイ・セイジャク。そしてワガミチ・ペース。

 どちらも確か、シャダイ国特有の移動系魔法持ちだったはず。

 シャダイ国はその特性を活かして、あちこちに根を張り巡らせている。遠方への運搬をメインにした配送業は殆どがシャダイ国が関わっており、遠方の移動を各段に便利にした列車の作成にもシャダイ国が関わっている程だ。

 そんな魔法を使用し、キンキがこの場から逃亡する為の言い訳として使おうとした兵士達を全員、使い道にならないような新米兵士までこの場に運び込んでくるとは。


「あ、防具や武器とかの装備品はこっちで用意済みだから安心してね!」

「全体型に対応してるので、どんな体型、どんな戦い方の人でも問題無しに出来上がってますよ。数も沢山生産したので、在庫は大丈夫のはずです」

「今回ので壊れない限り、中古装備として全部売るからね! そうやって販売するの前提だから好きなだけ作っても良いの楽しかったー♡」

「ええ、イショウの言う通り。本物の武器の準備が出来ちゃうなんて!」


 楽しそうにきゃらきゃら笑っている女二人は、フクショク共和国の者か。確か名前は、イショウ・ズキとコモノ・ズキ。

 そして用意してあると出されたのは、確かに多種多様な装備品。

 まさか、これは作戦だったのか。ここに至るまで、全部、


「てかそれ何で準備してんの? こうなるのわかってた系? 双子マジでスピリチュアル系だったりするとか?」

「イマドキってば、私達にそんなのあるわけないじゃーん」

「単純に、そういうのを作って欲しいという指示があったのでやっただけですよ? 好きなだけ作って良いだなんて、詳細聞かずにやっちゃいますよね! 当然!」


 誰も彼もがグルというわけでは無さそうだが、頭のネジが外れたような事言いやがって。

 しかし、ならば、この場を用意したニジゲン王辺りが怪しいか。それとも差出人となっていた、マンガ・ドウジンシ・コミックか。アレは確か革命家の息子だったはず。

 クソ、革命家と仲良しこよしな王族なんて聞いて呆れる!


「お、王族間の戦い、なんて」

「わたくしは構いません」

「お前にゃ聞いてないんだよ蛮族女! ええいクソこの国の王も役立たない案山子だし……! 他の王族方も儂と同じく、こんな馬鹿げた荒事には断固反対でしょう!?」

「否」


 そう発言したのは、ブンガクという国の第三王子。確か、タイシュウ・ショウセツだったか。

 正直言って表立って活動している第一王子のジュンブン、第二王子のコテンなら顔もわかるが、彼らに比べて劣っているのか大して表舞台に出て来る事も無い第三王子の顔なぞ碌に覚えていない。


「俺も王家の者だが、挑まれたのも賞品扱いされたのもそこのジンゾウという青年だろう。そのジンゾウ本人が強く拒否していないのであれば、反対しない。部外者の乱入を許すと言っていたとしても、結局は彼らの問題なのだから」


 が、間違いなく王家の関係者としてこうして出て来られるのは、痛い。


「そもそもの話、貴様の態度と言動が気に食わない。王族として目に余る。何もかもが見苦しいぞ」


 よし、この件が終わったらブンガクぶっ潰そう♪

 必ずこの第三王子を見せしめのように殺す。絶対殺す。小国の癖にイキってんじゃないよ。


「トクサツ」

「え、何? どうしたのマッド?」

「トクサツも王族だろう?」

「…………? ……あ! そうだったわね! はーい、エンタメ国現女王、トクサツ・ヒーロー! ヒメとジンゾウの決闘に賛成しちゃいます!」


 マッド・サイエンティストとトクサツ・ヒーローも殺す。いや、マッドの方は生かして薬作りでもさせるか。絶対許さん。

 視界がBAD END(詰み)に埋め尽くされる中、キンキは口の端から血が出る程に歯噛みしてそう思った。絶対やる。心に決めた。マジ殺すから。


「私も、彼女と彼の決闘には賛成だ。若者の若者らしさくらい、見守ってやれば良いだろう?」

「ニクタイ王……!」


 どこかねっとりした声でそう言ったのは、チリョウ国の王、ニクタイ・イヤス。

 巨体に、ライオンの鬣の如くボリュームがある髪。穏やかな顔と柔らかな物腰。だが人を狂わせるような流し目に、間違いなく王者であると告げる圧。

 王族相手でも関係無く与えられる、不快な圧。

 細めるような流し目をキンキに向け、ニクタイ王は言う。


「好きなだけ、好きにさせてやれば良い。命に係わる怪我であっても、私が治してやろう。義弟と甥っ子もこの場に居るからなあ」


 穏やかなのに、ねっとりとした絡みつくような声。


「お前の軍勢が無様に負けても、助けてやれるぞ? どうせお前もここまで好き勝手にやって来たんだ。他人のちょっとしたワガママくらい叶えてやれ」

「勝手な事を、」

「先に勝手極まりない事をしたのはどこのどいつか言って見ろキンキ・フッカツ!」


 牙を剥くように、ニクタイ王は急に態度を一変させ、目を剥いてキンキを睨みつける。


「忘れちゃいないぜ、キンキ王さんよ。私の前の代でも、そして私の代の時も! お前は私の国の民を殺した!」

「そんなもの、向こうが勝手に死んだだけじゃないか! わざわざ雇ってお金を与えてあげて、挙句の果てに勝手に死んだ彼らの訃報を届けてあげたんだから感謝して欲しいね!」

「ッハ、勝手に死んだ? 馬鹿も休み休み言え! それとも馬鹿の自覚すら無い愚か者の脳みそか!? 貴様の勝手な目論見に巻き込み、一斉に処刑しておいてよく言えたものだなキンキ王!」


 こめかみにビキビキと音が聞こえる程に青筋を浮かばせ、ニクタイ王は叫んだ。


「愛する誰かの、身内の死を告げられた者の絶望がどれ程だったか! 遺体すら帰らず、遺品だけを遺された者の絶望は! 遺品すらも帰ってこなかった者の絶望は! 八年程度で消えはしない!」


 うるっせえなコイツ。

 キンキ王は視界を埋めるBAD END(詰み)と喧しい演説に苛立ち、密かに舌打ちをした。死にたくなければ処刑されても死ななきゃ良いだろうが。殺したら勝手に死んだんだから、ぎゃあぎゃあ言われても面倒臭いだけだ。


「ほぉら、さっさと準備しな? お前達ワルノ王国側が無様晒すのを、楽しみに見ててやるから」


 先程までの苛烈な勢いを一気に収め、ニクタイ王は流し目を向けながらそう笑う。

 ああクソ、やっぱりチリョウ国なんて早々に滅ぼしておけば良かった。





 Q キンキ王がめっちゃ焦ってるのは何で?

 A 常に攻略頼りで生きて来たからです。BAD END(詰み)が確定すると焦る。しかもBAD END(詰み)になると攻略法も浮かばなくなるので、完全に自分での選択になります。攻略本や攻略サイトをガン見してその通りにしかゲームをプレイした事ないも同然なので、完全に自分操作で手探り、はめっちゃ慌てます。正解わかんないから。


 Q 回想シーンでキンキ王の台詞だけなのは?

 A 自分だけが登場人物だから。その他は彼にとって、歩行に邪魔なNPCです。


 Q キンキ王の目的は?

 A 世界征服。子供の頃からの夢。邪悪なピュア心。思い通りになる道だけを歩いてきたので、諦めたりした事がありません。だから世界征服も本気で成し遂げようとしてる。成し遂げたら普通に今まで通り暮らしたり、時々市民に無茶苦茶言って困らせたりする。それがしたいだけ。今とあんまり変わらないけど、世界征服はロマンなので。


 Q オウの名字ってチュウセイだったんですか?

 A そうです。王への忠誠。でも追放されたので忠誠は捨てました。その後は王であり騎士、になりました。あんまり騎士っぽくないし表舞台にもほぼ出ないけど、女帝を守る必要が無いのはわかりきってるので民を密かに守ってる。酒場で愚痴聞いたり、舞台の新人のミスをアドリブ野次で助けたり。


 Q ニジゲン王への暴言で周囲からのヘイト稼いだのは?

 A オタク国はニジゲン王が解放されて以降、かなり多種多様な創作物を外の国に輸出してます。それだけで知名度は高い。加えて一部のオタクが、本国ですらもう残ってないような逸話を掘り出してわかりやすく現代語訳したのを出版してくれたりする為、失われた文化復活のキッカケを得る事が出来た国はニジゲン王への好感度が高い。そもそも国の集まりでも、権力関係無いと言える相手だし穏やかな性格なのもあって会話しやすいと評判の王様。創作物の話をすれば一発で仲良し。そんな方をあんま良い印象無いヤツが貶したら、そりゃあヘイトが向けられます。


 Q キンキ王、ちょっと性格が子供っぽい?

 A yes。オートで表示される攻略魔法により人生イージーモードだった結果、大人になるタイミングが無かったので。


 Q ニクタイ王ってどういう性格の方?

 A 見た目はおっきくて色気がある。性格は基本的に穏やかでゆったりした喋り。滲む色気。ただし本質としては苛烈な方が素なので、カッとなるとああなる。中々カッとなる事は無いけど、自分の大事なものを踏み躙るとかされたらカッとなる。弟貶されたり、自国の民を殺されたりしたらそりゃあカッとなりますよ。


 Q タイシュウ王子は何でキンキ王を嫌ったの?

 A タイシュウは第三王子です。これといった得意分野もありません。努力しか出来ないし、努力するしかない人。でも兄二人はわりと天才な才能マン寄り。自分が劣ってる自覚はあるけれど、だからこそ兄二人に劣等感と誇りを抱き、並び立っても恥ずかしくない自分であろうとしています。そんな風にひたすら真面目に何もかもと向き合って努力しているタイシュウから見て、民や他国の人間、というか自分以外を足拭きマットか何かとしか思ってないようなクソガキメンタルなキンキ王は酷く醜く見えました。



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― 新着の感想 ―
人格とたくさんの努力によって手に入れたであろう信頼の人脈を持っているニジゲン。 生まれ持った魔法で買った恐怖、恨みの人脈しかないキンキ。 大切な信頼できる人をひどく言った人にヘイト向きますね。 ヘイ…
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