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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
部活無所属組
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拒否却下



 ヒメとジンゾウのクラスから二つ隣の教室。

 そこにライトが居るようなので、ヒメは教室の扉を開け、近くに居た生徒にライトの所在を聞いた。


「失礼、ライト・ノベルは居るかしら」

「ん? ああ、居る居る」

「あー! ヒメっちじゃん! ヨソのクラス来るなんて珍しいねどしたん?」

「何々?」

「どした?」

「ほら前に話した異世界人系王子の飼い主!」

「「「あー」」」


 遊びに来ていたらしいクラスメイトの言葉に、成る程、という顔で複数人に頷かれてヒメはグッと顔を顰めた。とても不満。ジンゾウが背後で照れ臭そうに頭を掻いているのもユニコーン頭が大興奮でノートにまた何かを書き込んでいるのも不満。


「あっははヒメっち超嫌そうな顔」

「嫌だからなのだわ」

「そう言われてもヒメっちその見た目で運動系の成績も良いから目立つし、それで意識してみると毎回隣にデカいの居るしでやたら視界に入るから仕方なくない? 明らかに主導権ヒメっちだし」

「……あんまり掘り下げたくない話題なのだわ……」

「ヒメっちからしたらそうかもね。んで? 何か用事?」

「部活無所属の件でテキトー先生に呼び出されて、まあちょっと。それで同じく部活無所属組のライトに用があるのだわ」

「あーはん、成る程。あいつ色んな部活で見た気がするけどあれ助っ人扱いだから無所属だったか。無所属ならこのクラスもう一人居るけど……」


 いや、と彼女は首を横に振る。


「いきなりあいつに声掛けるよりはライトのが正解かな。ライトもあいつと仲良いし、そこ経由のが良いと思う。悪いヤツでは無いと思うんだけど怖いしさー」


 そこまで言って、おっと、と彼女は気付いたようにクラスの奥へ顔を向けた。


「ライトー! ちょっとこっち! うちのクラスの子が用事あるってさ!」


 はーい! という返事が奥から聞こえた。


「やー、無駄話しちゃってごめんね! すぐ来るから!」


 じゃ、と戻って行った彼女と入れ違うようにして、平均的身長と言って良いだろう男子生徒が姿を見せる。


「どうもこんにちは! ライト・ノベルです!」


 気持ちツリ目に見える、というくらいしかこれといった特徴の無い生徒だ。

 だがその気さくな口調と人の好さが滲み出ている笑みからして、人付き合いが得意なんだろうなというのは伝わってくる。


「何か用かな?」


 呼んだのがヒメだと察したのか、ライトはしっかりとヒメと目を合わせた上でそう問いかけた。圧を感じさせない視線の合わせ方だ。


「部活無所属についての話があるのだわ」

「えっと、俺達も部活無所属なんだけど、三ヵ月後の学園祭では部活別に出し物があるから」

「部活無所属組はその学年の部活無所属組で演劇をするように、ってなってたみたいでさ。ライトもそのメンバーだよ」

「もしかして、それで呼びに来てくれたって事?」

「ええ。担任にそう頼まれたのだわ」


 呼びに行くのを頼まれたというよりは諸々の説明ごと頼まれた形だったが。


「そっかァ、呼びに来てくれてありがとう。移動の手間掛けさせちゃったでしょ? ごめんね。あー、お詫びに何かって思ったけど飴すら無いな……本当ごめん。演劇についての話し合いとかお互いを理解する為の交流あるだろうし、もし町に遊びに行く機会があったらオレが奢るよ。本当ごめんね!」

「別に、そんなに気にする必要はないのだわ」


 思った以上に腰の低い態度を取られ、ヒメも慌ててそう声を掛ける。


「そもそも私達が呼びに来たのは、呼び出して一気に説明すれば良いものを、生徒に負担掛ける前提で素っ裸のまま泣きの一回をキメて惨敗したテキトー先生のせいなのだわ。もし町に出る機会があっても、奢るのはライトじゃなくてテキトー先生が適任なのだわ」

「待って飼い主そこ詳しく! テキトー先生が何だって!?」


 食い付いてきたマンガにヒメは再び顔を顰めた。


「その呼び方は不快なのだわ」

「わかった、ヒメと呼ばせてもらうね。それでテキトー先生が全裸で泣きながら敗北したってそれどんな状況!?」

「酔っ払いの飲み会で脱衣ジャンケンの末路なのだわ」

「あの、ヒメちゃんそんなハッキリ……ヒメちゃんの口からそんな破廉恥な言葉は、ちょっと、……恥ずかしくない?」

「破廉恥どころかただみっともない無様の話でしかないのだわ」

「テキトー先生総受け脱衣に破廉恥発言&辛辣発言!? これはもう今日から寝る時間も無い勢いで作業しないといけないな……!」


 ユニコーン頭うるさい。


「とりあえず、詳しい話を聞きたいから場所を移して……あ、部活無所属組って事はもしかしてフリョウも参加メンバー?」

「ええ。まだ声は掛けてないけど」

「だったらフリョウがよく居る場所知ってるし、案内するよ!」


 任せて! と胸を叩いてライトはニカッと笑う。


「他にもメンバー居るならその度に説明しないとだし、それだったらフリョウとオレは一緒に説明受けた方が手間が省けるもんね!」


 成る程、人に好かれるわけだ。





 屋上の隅に巨体がひっそりと小さくなって分厚い本を読んでいた。

 長い髪を高い位置で一つに括っている男子生徒に、ライトが笑顔で声を掛ける。


「おーい、フリョウせんぱ~い!」

「……誰が先輩だ」


 ム、と眉間に皺を寄せた顔が上げられ、低い声が不機嫌そうに返された。


「…………」


 そしてそのままライトの背後に居たヒメ達に気付き、男子生徒の目付きが一層険しくなる。


「ちょっと、いきなり押しかけたのは確かにこちらだけど、そんなに睨まなくても良いのだわ」

「そうだそうだ! めちゃくちゃ表情怖いけどよく見たら端正な顔付きでライトにだけ普通に交流を持つとこ本にするぞ!」

「え、さっきもうしてるみたいな事言ってなかったっけマンガさん」

「本にしてやったぞ!」

「その訂正要らないのだわ」

「っていうか三人共、フリョウ別に怒ってないから」


 もー、と笑ってライトが険しい顔をした男子生徒、フリョウの隣へ移動する。


「紹介するね、オレの友達のフリョウ・ヤンキー」

「…………フリョウだ」

「フリョウにも紹介しますね。彼女はヒメ・ミコ。あっちの背が高いのはジンゾウ・フッカツ」

「!」


 フリョウはジンゾウを見て、一瞬驚いたように目を見開いた。


「あれ、知り合いだった?」

「…………いや、知り合いではない」

「マンガの事は知ってるよね? ほら、前にフリョウがよくわからんって顔で読んでたあの作品の作者ですよ」

「こいつか…………」


 フリョウはギロリと目を光らせてマンガを睨む。


「クッ、な、何て睨み……! いやでも正直真正面からの睨み顔参考になるのでそのままでストップ」

「………………」

「無断で描いた事に一言文句を言ってやりたいって言ってたのに、指示されたら素直にその通りにしちゃうのどうかと思うなァオレは」


 やれやれ、とライトが肩をすくめた。


「ま、フリョウは見ての通り見た目は怖い? 印象を与えがちだけど、実際は結構優しいから心配しないでね」

「それは何となく理解したのだわ」


 律儀に睨み顔のまま動きを止めてモデルになってあげている辺りから人の良さが駄々洩れになっている。

 その姿を見ていると、確かに怖い人では無さそうだ、と思えて来た。ジンゾウと数センチしか違わないだろう高身長に、ジンゾウ程では無いとはいえ筋肉質な体。シュッと鋭い瞳。

 微笑めば人気も出そうだが、整った顔かつ巨体で突然相手を睨みつけるとなれば、怖い人だという先入観を植え付けるのは当然と言えるだろう。


「最初に睨まれたのはどうしてか、聞いても良いのかしら」

「ああ、あれ普通にフリョウの癖」

「癖」

「身内以外だと業務連絡くらいしかした事無いらしくて。だから会話の時、相手を傷つけたり嫌な気持ちをさせない言い方をするにはどういった言い方をするか、を考えちゃうんだってさ。それでこーんな怖い顔になってんの」


 こーんな、と言って目尻を指で釣り上げて見せるライトだが、顔が笑っているので全然怖くない。根本的に纏っている雰囲気も違い過ぎる。


「でねェ、困った事に怖い顔してる時の圧が本当に凄くって。話しかけられるとどう返せば良いかを考え出して怖い顔になっちゃうんだけど、フリョウがどういう返事をするか決める前に、声掛けた側がフリョウを不機嫌にさせちゃったって思い込んで謝りながら逃げちゃうんだなァこれが」

「それは、誤解が生じそうね?」

「進学組ですらフリョウを怖いって思ってる生徒多いくらいだからね! オレは普通に返事を待ちつつ会話したら思ったより話せるし、何ならノリが良い時もあるってのを知ってるんだけど、それ知らないと初手からあの顰め面だからさァ」


 実際、先程の睨みを書き終えたマンガが他にもポーズを指定しており、フリョウは険しい顔のまま律儀にそのポーズを取ってモデルになってやっている。

 慣れていないヒメからすると怒っているとしか思えない顰め面だが、あれは困惑している顔、なのだろうか。





 謎のスケッチタイムを終了し、改めてライトとフリョウに説明した。


「……俺は、居ない方が良いだろう」


 説明を聞き終わると同時、フリョウが静かにそう言った。


「フリョウ、どうしてそう思ったんです?」

「…………俺は」


 ライトが言っていた通り、前提情報が無ければ逃げるだろう険しい顔でフリョウが言う。


「俺は、あまり交流が得意ではない方だ」

「そう? フリョウと話すの楽しいですよ」

「…………ライト、お前がそう言ってくれるのは助かるが……」


 フリョウは難しい顔で一旦言葉を区切り、少しの間を置いて再び口を開く。


「……演劇は、複数人が協力し合って作り上げていくものだろう。俺が居ては円滑な人間関係の障害になる。勿論人手として作業はするし、指示通りこなすのは得意だが……」

「だ、駄目だよ!」


 消極的なフリョウの言葉に、ジンゾウが思わず立ち上がって叫んだ。


「これは皆でやらないと! じゃないと、テキトー先生がまほ」

「個人情報!」

「あうっ」


 ヒメはすぐ横にあったジンゾウの膝裏に手刀をキメて膝カックンし発言を強制キャンセルさせた。


「ジンゾウ、言って良い事と悪い事があるとあれ程、あれっっっほど言ったのだわ。しかもその情報のせいで色々と危うかったりまでしたのをたった少しの時間で忘れるなんてあり得ないのだわ!」

「ご、ごめんねヒメちゃん、つい……」

「フリョウを心配しているのはわかるけれど、だからといって全部を伝えるのが正解だとは限らない! 相手が自分から開示してないなら、例え知っていても言わない! 必要に応じて告げるのは大事としても、それは今じゃない事くらいわかるだろう!」

「はい……」


 自主的に正座して縮こまっているジンゾウに、まったく、とヒメはため息を吐く。危うく記憶を弄られる危険性すらあった事すらあっという間に忘れるなんて。思わずちょっぴり本気で叱ってしまった。


「捗る……!」


 口数は少ないながらもやたらテンション高いユニコーン頭については知らんぷりした。私は何も見ていないのだわ。


「あとフリョウ! 今の姿を見ればわかる通り、険しい顔してなくとも通常の交流が難しいようなメンバーばっかりなのだわ! そもそもメンバー内に貴方と円満な交流が出来ているライトが居る以上、仮に私達との交流がし辛かろうとライトを間に挟めばどうにかなるのだわ!」

「あっ場合によってはオレに一任される感じね!? 任せて!」

「……いや、だからそういった迷惑をだな」

「そっちも色々と思うところがあるし、考えた結果その結論なのは理解したのだわ。だからといって仲間外れにしてくださいなんていうサボりは許さないのだわ! サボりでなく自主的隔離であったとしても! そもそも部活無所属という外れ者しか居ない時点で今更なのだわ! それでもどうしても返答が遅いしその際の険しい顔が原因で交流が難しいと言うのなら、」


 ヒメはビシッとマンガを指差す。


「そこのユニコーン頭みたく何か被り物でもすれば解決する話なのだわ!」

「可能な限り全力で頑張らせてもらう」


 だからそれだけは勘弁してくれ、とフリョウは今までで一番の早口を放った。


「……わたしの扱い酷くない?」

「俺もそのやたらリアルな被り物はちょっと……」


 マンガとジンゾウが何か言っているのは無視しておいた。





Q フリョウって見た感じどれくらい怖いの?

A 上から睨みつけて来るラオウくらい怖い。会話出来る出来ないじゃない圧。



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