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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
部活無所属組
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嫌な注目



 見た目の問題からあまりにも近寄りがたいユニコーン頭だったが、マンガは思ったより話しやすい相手だった。


「成る程、部活無所属だとそんな課題が……」

「そういうわけで、マンガにも演劇に協力してもらうのだわ。拒否権はありません」

「ああ、それは別に良いよ。面白そうだし。何より推しを近くで見れるチャンスを逃すわけないだろう? いやあ、楽しみだなあ演劇! この学園って推しに相当する生徒が多くて新刊執筆の手が止まらないっていうのに、また新しい可能性を見る事が出来るチャンス! 他のメンバーってどんな感じ?」


 ヒメはジンゾウに目配せをし、察したジンゾウが名簿を見せる。


「ふむふむ、このメンバーね。ライトは知ってる。彼はわたし相手にも臆さず話しかけてくれるし、わたしがどれだけ自分の好きな事についてを語っても嫌な顔せず聞いてくれる良いヤツだよ」

「へえ、知らないのだわ」

「そりゃあロリ人形美少女……じゃなくて飼い主はそこの飼い犬と一緒に行動し続けてるし、誰かと会話する事はあってもそこまで沢山と交流するってわけでも無さそうだからね」

「ちょっと! 後半は事実だからともかくとして、前半は聞き捨てならないのだわ。最初の呼び方も不快だけれど、飼い主扱いも納得いかないのだわ!」

「え? でも傍から見ててもリード持ってるのは確実に飼い主の方だろう? 既にペットプレイな二人のカプ本を三冊出して評判良かったからシリーズ化も目論んでたのに! あ、もしかして人目の無いところでは首輪つけられる側逆だったりする?」

「そもそも首輪を付けたりなんてしてないのだわ!」


 無許可で勝手にいかがわしい本を数冊出しているらしい事も業腹だが、とんでもない誤解の方が業腹だ。ヒメは思わず理解し切れていない顔で首をかしげているジンゾウを見る。


「ジンゾウ! 貴方もちゃんと文句を言うのだわ! 不健全極まりない妄想に使用されているのよ!?」

「え!? え、えーと、よくわからないけど、俺はヒメちゃんと一緒に居る人って思ってもらえてるのは嬉しいよ?」

「人どころかペット状態で認識されてる事に文句を言えって言ってるのだわ!」

「そうなの!? あ、でもヒメちゃんなら責任感が強いし、いつもの走り込みでも自分に甘くしたりしないとこから考えても、ペットの面倒見良さそうだよね。絶対捨てないし毎日ちゃんとお世話してくれそう」


 にへ、とジンゾウが笑った。


「そう考えると、ヒメちゃんのペットになれた子は幸せだね。羨ましいな」

「よっしゃあネタゲット! その発言貰った!」


 喧しいユニコーン頭が凄い勢いで懐から出したノートに何かを書き込んでいく。


「大好きな飼い主を見たような笑顔で微笑んだ彼は、最後にポツリと付け足した。「羨ましいね」と……! これはもうペット物をシリーズ化するしかないな、シリーズ名は『ヒメちゃんの可愛いペット』で行こうと思うんだけど良いかな良いよね!? ペット状態になる前の前日譚的な感じで新刊書いちゃうか! ペット側がノリノリとかこれはもう自分から首輪持ってきて「つけて」っていうおねだりプレイすらも」

「おいそこのユニコーン頭とデカチビコンビ」

「アッ」


 図書委員によってヒメとジンゾウは図書室を追い出され、ユニコーン頭に至っては思いっきり蹴り出された。


「盛り上がるのは良いが他の利用者の邪魔になるような騒ぎ方をすんじゃねえぞダボスケが! 新刊作成は尊い事だし良いネタにテンションが天元突破する気持ちもわかるがそれはそれ! 弁えるべき場所では弁える、これが読書家の鉄則だ馬頭! 新刊出たら買うから教えろよ! あとお前の場合は被り物のせいで顔色からの体調変化がわかり辛い! 極道進行してぶっ倒れた日にゃ民間療法クソマズ元気薬を口ん中突っ込んでやるから覚悟しとけ!」


 顔が良いのにやたら口が悪い図書委員が凄い勢いでまくしたてたと思ったらそのままピシャンと扉を閉めた。


「……随分と対応が手慣れてたみたいだけど、マンガは既に何回も追い出されるのを経験済みなのかしら」

「ああ、うん、まあね。クラス同じだし寮の部屋が隣だからかめちゃくちゃ容赦無くなっちゃって。最初のひと月はもうちょっと猫被った優しい言い方で追い出してくれたんだけど」


 それでも初期から追い出される勢いで騒いだりはよくあったらしい。

 言い方はともかくとして後半の言動、そして前科が何度もあるようなのに出禁にしない辺りから、あの図書委員は意外と優しい性格らしい。面倒見が良いんだろうか。





 結局追い出された勢いのまま、諸々がうやむやになってマンガもヒメ達と同行する事になった。

 正直ヒメとしてはマンガの言動、というか新刊がどうとか既刊がどうとかいう話をもう少し突っ込んで聞きたかったし、出来れば止めたかったし、それが無理なら一定のルールを設けさせたかったがそういう空気でも無くなったので仕方ない。下手に突っ込んでまたおかしな新刊のネタにされても困る。


「次に探すんだったらライトが良いと思うな」


 蹴り出された際に少しずれたユニコーン頭を直しながら、マンガがそう言った。


「さっきのトショもね、わたしの作品を楽しく読んでくれるんだ。面倒見が良いし隣の部屋なものだからよく部屋の掃除をしてくれたりするんだけど、まあそんな事があったらネタにするのが創作者というもの!」

「流れ変わってきたのだわ」

「おっといけない、ついパッションが。さておき彼は読書中毒のケがあって基本的にどんな作品も喜んで読む。わたしが書いた、彼とわたしのエッチな本でも喜んで読んで感想までくれる程だ」


 ヒメとジンゾウはユニコーン頭から一歩引いた。ジンゾウなんてヒメの耳を塞いでいる。


「引かないでくれる? わたしも流石に創作物と現実の境界線はわかってるよ。彼もわかってる。だから作品として楽しんでくれるし、あの時のやり取りが琴線に引っ掛かったんだな、とも理解してくれる」

「それとライトがどう関係するのよ」

「ライトもそういうタイプって事」


 ふふ、と被り物の奥から小さな笑い声。


「彼もまた、わたしが描いた作品を読んで喜んでくれた。楽しんでくれた。思いっきり彼と友人をネタにしたものだったし、何なら彼が一番最初に読んだのなんて彼が彼の友人達に襲われ、うん、まあそういうエッチなヤツだったのに、だ」

「幾らなんでも無許可で勝手に自分を使用されて、しかもそんな扱いをされていたら怒るものでしょうに」

「ヒメちゃんみたいに?」

「普通は貴方も怒るところだったのよジンゾウ!」

「実際に無茶な実験対象にされるわけじゃないし、作品の中でもヒメちゃんと居れるなら嬉しいよ? ……その、えっ……ち……というか、破廉恥な話は困るけど」

「良い……捗る……」


 キョトンとした表情から恥ずかしそうに頬を赤らめるジンゾウ、ひたすらノートに何かを書き綴っているマンガを見て、ヒメは深い深いため息を吐いた。何て最悪なパーティ。ヒメも常識から外れている自覚はあるが、もう少し常識寄りのメンバーが欲しいところだ。


「よし、大体メモるのはこんなところかな。にしても、わたしに声を掛けるよりも前にライトに声を掛けた方が良かったのに」

「単純に近い距離に居たから声を掛けたんだけど、そうなの?」

「コミュニケーション能力の化け物だから、ライトに聞けば大体の生徒について知ってるよ。ライトだけが知ってる情報も多いからよく参考にしてるし」


 何についての参考かを掘り下げるのはやめておいた。


「それじゃ、次はライトのところに向かいましょうか。ジンゾウ、ライトの場所はわかる?」

「ライトさんだね? うん、クラスに居るみたい。お友達と話してるのかな?」

「ん、そういう魔法……」


 いや、とマンガはユニコーン頭のまま軽く頭を振る。


「そうか、異世界人の魔法が使えるんだっけ。それ?」

「うん。周辺の地図情報と同時に、どこに誰が居るかの把握が出来るから」

「な、何て便利な……! じゃあどこで誰が誰とどういう事をしているのかも!?」

「え?」

「わかるの!?」

「い、いや別に、場所関係とかはともかく、地図上に小さい点で表示されるみたいなイメージだし……」


 ずいずいとユニコーン頭に迫られたジンゾウはたじたじになりながら引いていた。勢いよく距離を詰められるのもそうだが、前方に幅があるのに加えて上に向かって螺旋型の真っ直ぐな一本角の被り物による圧もあるだろう。身長差があるからこそ、角が中々危ない位置を狙っている。


「チッ! それじゃあ気になってるカップルがキスしてるかどうかまではわからないのか……惜しい!」

「わ、わかった方が良かったかな」

「当たり前だろう!? 普段仲が良くない二人が思ったより長く同じ場所に居る……その状況を見る事に意味がある! いや勿論一緒に居るって事実だけでも妄想の翼は飛び立つけれど! そこに加えてどんな表情なのか、無言なのか会話しているのか、会話しているならどんな内容なのか! そこを知る事が出来てこそ翼は大空に羽ばたくんだよ!」

「なる、ほど……?」

「理解しなくて良いのだわ、ジンゾウ」

「その点わたしの魔法であるスコープはどんな遠くだろうが壁に阻まれた室内だろうが観測可能! 音声も聞き取れるからどんな密室に居ようと無駄! 仲が悪いように思えたあの二人があの物陰でこんな会話を!? なんてのもバッチリ目撃!」

「明らかに有罪型の覗きなのだわ!?」

「あ、他の人の魔法を再現する事は出来るから、それならその魔法を覚えて使えば俺も同じ事が」

「出来なくて! 良いのだわ!」


 ヒメはジンゾウを正座させて緊急時以外絶対やらないようにと言い含めた。廊下だったので視線が痛いが致し方なし。

 王族(制服から察せる)な巨体を正座させてる低身長女子のお説教、の横で大興奮でノートに何か書いているユニコーン頭という珍妙なトリオなら視線を集めるのも仕方ない事だと諦めた。ヒメとて第三者なら思わず見る。当事者となると不快でしかないが、犬のしつけは問題が発生したその場でやらねば効果が無いのでそちらを優先した結果だ。





Q 何でマンガはユニコーン頭を被っているの?

A ビーチでオッサンがビキニ美女をバレないようガン見する為サングラスつけるのと同じ事です。壁を凝視して二部屋隣で起きている状況を手元のノートに書きこんでる姿も、ユニコーン頭一つでカモフラージュ!

Q それ目を逸らされてるって言いません?

A 言います。



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