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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
悪霊退治
59/89

その血は色濃く



 そっか、とライトが静かに頷く。


「お爺さんがそんな目に遭ったのが、許せなかったんだね」

『そうだ。許せなかった。おれのせいで。おれが。おれはずっと』

「ずっと?」


 ライトの問い掛け。

 それはとても静かなもので、しかし思わず答えてしまうような言い方で、ミサは一瞬ヒグッと喉を鳴らして口をパクパクさせた。


『…………』


 少しの無言を置いてから、ミサは言う。


『……おれは爺さんの助けになりたかった。恩を返したかった。でも、おれは爺さんの助けになるどころか、迷惑ばかり掛けて……』


 その言葉に、話を聞いていたトクサツが泣きながらマッドに抱き着いた。声を抑えているが、耐えられなかったのだろう。


「そのお爺さんだけどさァ」


 ライトは問う。


「お爺さんは、ミサに何て言ってた?」

『は? だから、爺さんは口を塞がれてて……手足も拘束された状態で、そんな中おれは暴走して、何もわからなくなっちまった。最後の最後まで、おれは』

「その時じゃなくて、その時まで。お爺さんはミサに、どうなって欲しいって言ってた?」

『……お前は強くなれる、って。誰よりも強く、誰よりも優れた、誰よりも幸せなヤツになれるって……』

「あー、うーん、そういう将来的な部分じゃなくてェ」


 困ったように眉を下げ、少し悩み、ライトは真っ直ぐミサを見た。


「……お爺さんはさ、ミサに何を願ってた?」

『は』

「その域に至れるだろうって話じゃなくて、ミサがこうなってくれたら良いなって、きっとミサが小さい頃から言っていた事があるんじゃないかなァ」

『そ、んな』

「オレなら、小さい頃からずっと面倒見てた子が他から指差されて貶されてたら、絶対言うね」


 絶対言うよ、とライトは強調する。


「楽しく笑い合える友達が出来て、気負う事無く身を預ける事が出来て、のんびり雲の流れを眺めていられるような。そんな穏やかな幸せを、この子が手に入れられますように」

『…………!』

「オレならきっと、そう願う」


 ミサの目から、黒に染まっていない涙が零れ落ちた。





「ミサ、ミサ」


 何だよ爺さん。


「私にもっと力があれば良かったんだが」


 何で?


「そうすれば、お前に酷い事を言う奴らにもっと強く言い返す事が出来た」


 要らねえよ、別に。


「そう言うな。私はお前を我が子のように想ってるんだ」


 …………。


「もし叶うなら」


 ?


「もし叶うのなら、お前に友が出来たらと思う」


 ……無理だろ。


「今のままではな。無理に作る必要も無い。だがいつか、いつの日か、お前が屈託なく笑って戯れに肩をぶつけ合えるような……そんな友が出来てくれたらと、そう思ってしまう」


 …………居るのかな、そんな相手。


「わからんさ。もし居てくれたら、と願うばかりだ」


 居ないかもな。


「かもしれん。だがもし居たら、お前の人生はきっと素敵なものになる」


 居るだけでそんなに変わるのか?


「今のお前にはピンとこないかもしれんがね。まあ、結局のところ、私はお前に幸せになってもらいたいのさ」


 まるで今が幸せじゃねえみたいに言いやがって。


「幸せと言い切れるのか?」


 …………。


「それみたことか。かけがえの無い友が居たら、こういう時、幸せだと屈託無く笑えるもの。私はお前が朽ちないよう保つ事は出来ても、それ以上の景色を見せてやる事は出来ない」


 ……意味わかんねえ。


「祝福あれと、そういう事さ。お前が思い悩む事も無く、ただ友人とボーっと毒にも薬にもならん会話で時間を潰し、穏やかな日々を過ごせたらなと思う。それが叶えば良いと、私はずっと願っているよ」


 その時のミサには想像もつかない荒唐無稽な夢を、爺さんは宝物を抱えるような顔で言っていた。

 ああ、思い出した。その時の目は、ヨクの隣で日向ぼっこをした時のような、そんな温かなものだった。





 ミサは泣いた。ボロボロと泣いていた。

 十代に見えたその見目は、いつの間にか二十代中頃の見目へと成長していた。


『……そうか』

「うん」

『そんな人を、おれのせいで』

「だァーから、その願いを自分から無下にしちゃ駄目だってェー」


 んもー、とライトはミサの背を軽く叩く。魂を理解し切れていないのか、叩けずスカスカとすり抜けていたが。


「幸せを願ってくれる人が居たならさ、嫌な事にしがみ付いちゃ駄目だよ。それだけ辛い思いをしたなら、尚更ね」


 ライトは優しい笑みでそう告げる。


「トゲに抱き着いたって痛いだけ。苦しいだけ。それならトゲからさっさと離れて、楽しい事を思い出さなきゃ。さっき話してくれた中にもさ、そういう時間はあったはずだろ?」

『……楽しい、こと』

「親友さんとの時間は、楽しくなかった?」

『んなわけねえだろ! 実のある話こそ少なかったが、それでも、アイツと馬鹿みたいな会話をだらだらしながら過ごすのは……』

「もしそれが楽しかったなら、苦しかった出来事より、そういった楽しい出来事と向き合わなくちゃ。お爺さんはミサの幸せを願って、親友さんはミサが苦しまないのを願った。大事な人だからこそ、その人達をこそ無下にしちゃあいけない」


 真面目な目が、ミサを見た。


「違うかい」


 ミサが苦しんでいれば、世話役と親友の願いを無下にするも同じ事。

 それにミサは一瞬目を見開くも、すぐに眉を顰めて俯いた。


『……だが、おれは……おれが暴走したせいで、爺さんを』

「こういう完璧なタイミングで登場しちゃうのが、この俺様ちゃんなんだよなあ」

『っ!?』


 予想外の声に全員が視線を向ければ、そこにはゴオが立っていた。

 いつも通りに大胆不敵なニッとした笑みを浮かべ、いえいいえい、と横ピースを顔の横で主張している。


「ゴオ、貴方何でここに」

「んあー? そりゃゴオちゃんワープだよ。俺様ちゃんの魔法知ってるだろー?」


 それはわかる。だが何故このタイミングでこの場に居るのか。

 そう怪訝な顔をするヒメに、ゴオはニッシッシと悪戯な笑みを浮かべた。


「ま、ここまで落ち着かせてくれたんなら、子孫として多少はな」

『子孫……』

「そーだぜお爺ちゃん。お爺ちゃんどころじゃねーけど! あんたのお陰で俺様ちゃんは随分と頑丈だ。一部あんたの脚が遺伝してるヤツも居るけどよ、そいつらも結構頑丈なもんだぜ?」

『遺伝!? いや、おれの子にも遺伝は多かったが……そんな……』

「おいおい、何を悲痛な顔してやがんだお爺様!」

『っ゛!?』


 ミサはゴオによって力強く背中をスパァンと叩かれていた。

 そもそもミサが大分正気とはいえ、祓も無しにこの場に元気な顔して居るのはおかしいし、ちゃっかり魂を理解しているのか物理ダメージを入れているのもどうなんだ。流石ダイヤモンド製ビックリ箱。


「うちの国じゃあ、あの脚は優れたヤツの象徴だってのに」

『……は?』

「あんたがめちゃくちゃ頑張って凄いヤツになったからこそ、その脚持ってる子孫は期待出来るヤツって状態になったんだぜ。脚がどうこうだからって諦める理由にゃならねーってな!」


 どやさ、とゴオは自信に満ち溢れたドヤ顔を見せた。

 お前がぐちぐち言っててもネガティブなイメージなんざ全然ねーぜ、という副音声が聞こえてくる。


「遺伝するような曲がった脚。そりゃ普通は嫌われるさ。でも、その遺伝を素敵な贈り物って形にまでのし上げたのは、あんたが生前に築き上げた数々の武勇伝によるものだっての忘れんなよ! じゃねーと子孫に失礼だろうが!」

『が、だ、ちょ、てめ……いい加減に叩くのやめろやテメェクソガキ!』

「お爺ちゃんのガラ悪くてウケる」


 怒鳴られても動じずにゴオはケラケラと笑い飛ばした。


「あんたの血を引くクソガキが、今もしこたま居るんだぜ。あんたの武勇伝だって語り継がれてる。俺様ちゃんたちは子守歌のようにあんたの武勇伝を聞いて育つし、あんたやその親友といった、俺様ちゃん達が終わらないようにと血を繋いでくれた人々にお礼をするって名目の祭りだってある」


 早々に死んだ爺さんにゃわかんねーだろうけど、とゴオはまたもや強くミサの背中を叩く。


「あんた、結構世界を変えたんだぜ? 少なくとも、シャダイ国の歴史はあんた達によって紡がれたと言っても過言じゃない」

『……おれがシャダイ国に行ってからやった事なんざ、ガキこさえただけだぞ』

「それも勿論だけど、シャダイ国前に積み重ねた功績があんだろうが」

『…………そうか』


 そうか、とミサは噛み締めるように頷いた。

 その顔は先程よりも年を取り、四十代といった雰囲気を纏っている。


『……誰にも評価されずに終わったと思っていたが、おれの、おれの頑張りは』

「無駄じゃなかった。つかあんたの頑張りが無駄だったら頑張った結果生まれたと言える俺様ちゃん達まで無駄になるだろ。ゴオちゃんそういうの大っ嫌ぁーい」


 ブー、とゴオが唇をつんと出して親指を下に向けブーイング。それを見たミサは思わずといったように笑いを零し、


『……だが、おれは全て無駄にした。おれが暴走して、爺さんを巻き込んじまったせいで……』


 再び曇った顔に、ゴオはきょとんと目を丸くした。


「あー、もしかして知らない系? 成る程成る程、やっぱりそうか。まあ暴走してそれっきりな辺りそんな気はしてたゴオちゃんです。俺様ちゃんやっぱてんさーい」


 ふんふふん、とゴオはにまにました笑みを浮かべる。


「ちゃんとその後会いに行けてりゃここまで長引く事も無かったかもだけど、元々老い先短くてここに来るのは難易度高かったみたいだしなあ」

『何の話だ』

「あんたの大事な人の話だぜ、お爺様」


 言い、ゴオは懐から取り出した古い本を複数取り出し手渡す。


『これは……』

「あんたの世話役直筆日記」

「え」


 思わず凝視するも、


「あれ、でも僕らが見たのと違うよね?」

「ヒメ達に見せたのは現代語訳された総集編タイプだし、そりゃあな。今渡したのはマジでガチなモノホンだぜ。ここ来る前に実家戻って無理矢理借りて来た」


 ゴオは目を細め、にやりとした笑みでミサを見る。


「それも、死んだあんたが暴走した後、シャダイ国に保護されて以降の日記だ」

『何っ!?』

「お爺ちゃんは自分のせいだなんて勘違いしちゃってたけど、そもそも当時の時点じゃ死んでねーんだよその世話役爺さん。結構元気に健康だったらしいぜ。読んでみ」


 その言葉に、ミサは恐る恐るといった様子でページを捲り始めた。





 そこには沢山が書かれていた。

 自分の不甲斐なさで死んだミサを苦しめる結果になってしまったこと。

 暴走したミサに会いに行きたくとも、老体では近付くだけで心臓発作を起こしかねない瘴気であること。

 ミサの親友だという男と話し、穏やかなミサとのじゃれ合いを聞き、嬉しさに思わず泣いてしまったこと。

 そして、いつか。

 いつかミサがあの呪縛から解放されてくれたらと願っていた。

 ミサの親友が死んでも意外にしぶとく生き永らえた爺さんは、そう願っていた。





 ヒメ達が見守る中、ミサはボロボロと透明の涙を零し、その古ぼけた日記を宝物のように胸に抱いた。

 黒い涙は、もう流れない。


『……そうか、そうか……! 爺さんは、生きてたんだな……!』

「そ。あんたが殺したりはしてねーの。寧ろ結構な大往生だったらしいぞ」

『良かった……!』


 絞り出すようにそう言って、ミサは泣く。

 今のミサはヒメにとって、最初程不快感を放つ存在では無くなっていた。

 最初こそ他人に八つ当たりをするような、折角の強さがあるのに向上心よりも他人に理由を押し付けてぐだぐだ言っているような気配を感じてキレてしまったが、今はそんな気配も無い。

 ただひたすらに、恩人の無事を喜ぶ男がそこに居た。


「ったく、お爺ちゃんがそうやって長年やってない事で悩んでる間、もう一人のお爺ちゃんはすっかり待ちぼうけだぜ」

『もう一人……?』


 ニヤァ、とゴオの口角が愉快そうに吊り上がる。


「あんたの親友の血も、俺様ちゃんに流れてる。この巨体と白い髪を見てもピンとこねーとか、お爺ちゃんちょっと節穴じゃね?」

『なっ……いや、おれがアイツのガキと子作りした事はあったから、そうか、あり得なくはないのか……!?』


 瞬間、ジンゾウの手によりヒメの耳が塞がれた。今までも散々種馬がどうだのという発言があったので今更ではと思わなくもない。


「そんなもう一人のお爺ちゃんからの遺言だ」


 コホンとゴオは一度咳払いをし、真面目な顔で背筋を伸ばす。


「彼はまだこちらに居るようですから、あちらで先に待っている事にします。そうすれば行き違いにもならないでしょう」

『…………!』


 そこに居るはずの無い人を見たように、ミサの目が大きく見開かれた。


「お爺様、あんまりもう一人のお爺様を待たせてやんなよ?」


 あっという間にいつもの調子に戻ったゴオがニヤリと笑う。


「待ち合わせに遅れまくりで、ひっでーの」

『……うるせえクソガキ。アイツが勝手に待ってるだけだろ』


 クソ、とミサは腕で涙を拭う。もう、その顔を爪で傷付けるような事はしなかった。


『返すぜ、クソガキ。粗末に扱ったらぶっ殺す』

「扱うわけねーだろ」


 日記を受け取り、ゴオが不満そうに唇を尖らせる。


「俺様ちゃん達の祖みてーなあんたの恩人だ。この人居なきゃ、俺様ちゃん達の存在だって怪しいくらいだぜ?」


 そう言って、ゴオはニヤリと笑った。


「国に十個以上この人の銅像建ってっからお盆にでも見に来いよ。もう一人の爺さんと一緒にさ」


 は、とミサは笑う。思わず笑ってしまったという、毒気も何も無い顔で。


『……おう。生温い作りしてたら夢枕に出て苦情入れてやるから覚悟しとけ』

「俺様ちゃんに言うなよそういう事を! ゴオちゃん銅像制作になんら関係してねーんだけど!?」

『それとそこのガキ。ライト。お前にも礼を言ってやる』

「あ、忘れられてると思ってた」

「こっちだって忘れられちゃ困るっつってんだろ!」


 ぎゃあぎゃあ騒ぐゴオを無視し、ミサは言う。


『恩人や親友との記憶を思い出させてくれた事、感謝する』

「……いーえ」


 真面目な声で告げられた言葉にライトは一瞬目を丸くし、安堵したように目を細めた。


「オレはちょっと話をしただけなんで。それを大事な物として持ち続けてたのはミサだ。大事に抱え込んでなきゃ、オレと話したところで思い出せやしないって」

「なあちょっと聞いてる!?」

『うるせえぞ子孫』

「いっだぁ! 何この先祖殴った! 俺様ちゃんの素敵なお脳みそ詰まった金色の脳細胞を! 酷いわ! 先祖を同じくする親戚兼親友に先祖は暴力系のひでーヤツだったってある事ある事吹き込んでやるんだから!」

『おれの子孫ってんならおれの狂暴性なんざ今更だろ』

「それはそう。正論」


 急にすんっと冷静になったゴオに、ミサは目を細めてケラケラと笑っていた。


『……じゃ、行くか。迷惑掛けたな』

「まったくだ。子孫以外にも迷惑掛けたクソ迷惑偉人ジジイ」

『黙れクソガキ』

「へへーん、どうせお爺ちゃまはもう一人のお爺ちゃまと会った瞬間に遅いって叱られるから何言われても気になりませーん」

『はん、甘く見るなよガキ。ヨクのやつは叱る前に微笑み浮かべたようないつも通りの顔で顔面狙いの蹴りを入れに来る』

「自業自得だろお爺ちゃん。いい歳してヤンチャするから」

『うるせえ。アイツの蹴り思ってるよりエグイ威力出るんだぞ。どうしよ』

「肉体無き霊体の身で肉塊にされるなんて可哀想な爺さん。爺さんともう一人の爺さんが収納されてるお墓に雑草供えてやっから頑張れ」

『テメェさっきから苛立つ事しか言えねえのかクソガキ! 金出して真っ当な花束供えろ!』

「うるせえなそんなもん常に溢れかえってるからつまんねーだろ! 道端に咲いてる可憐な花ってのは思ったより可憐なんだぞ! 雑草扱いだけど! そもそもクソガキクソガキ言ってるけど間違いなくテメーの血だわ!」

『ふん!』

「ギャッ」


 わりとエグめの拳骨を食らわされたゴオは頭を押さえてしゃがみ込んだ。あれは絶対痛い。


『さて、改めて。ライトにもその他にも迷惑を掛けた』

「いやァ、オレは話聞いただけだし」

「私も手首掴んで動きを封じて喉に食らいついて少し正気に戻るお手伝いをしただけなのだわ」

『おう。見た目以外お前絶対おれの両親に似てるぞ』


 喜びにくい。


「わたし達は傍から見てただけで何もしてないけど……」

『いや何かはしてただろ化け物。変な気配醸し出しながらペン走らせやがって』

「ノット化け物! 被り物による見た目で化け物認定出されたくない!」

『ほんと変なのばっかだな、この時代』

「ちょっと!?」


 ふは、とミサは笑う。


『こうも愉快なのが揃ってんなら、子孫のその後も安泰で良いこった』


 光に包まれてその輪郭を崩し始めたミサに、ライトが手を差し伸べて祓を使用した。


『! これは……』

「行く先に邪魔が入らないようにっていう、まあ、餞別かな?」


 ライトはへらりと笑っているが、ミサを縛り付けていたトロフィーの汚れが消える。ミサと連動していたトロフィーから汚れが消えたという事は、つまり、ミサを縛り付けていた器と完全に分離したも同然だ。


『……ありがとよ』


 そう言って年相応に深い皺を刻んだミサは、まるで子供のような笑みをその顔に浮かべ、光に溶けた。

 静かになった中で窓の外を見上げれば、月はすっかり深夜の位置に落ち着いている。





「おや、大遅刻。遅かったですね」

「うるせえ。……悪かったな」

「何がでしょう」

「……待たせた。死に際のお前にも要らねえ心配を掛けさせた」

「別に心配はしてませんでしたが」

「ああ!?」

「ブランケットでも耐えかねるような痛みに耐え切ってみせたミサなら、心配するだけ無駄でしょう」

「…………」

「とはいえあまりにも待たされました。何百年待ったやら」

「……悪かったよ」

「まったくです。供えられたお菓子が無ければさっさと行ってました」

「おいこら。デブらなくなったからって暴食してんじゃねえ」

「直球やめぇや心に刺さるじゃろが!」

「口調乱れてんぞ」

「う。……ゴホン、直球はやめてください」

「霊体でもぷよるぞ」

「なんて酷い嘘を! ……え、嘘ですよね? 数百年食べ続けても体型変化しませんでしたし。嘘ですよね?」

「しかし、本当によくまあこんだけ待ってたもんだな。嫌になって見切りつけてもおかしくねえだろ」

「まあ、待つだけでしたから」

「待つだけって」

「ミサのような激痛に耐えろと言われたら、私は二秒でリタイヤします。転生先で会えるのを楽しみにしてますね」

「薄情者!」

「ですが、ただ待つだけならいつまでだって待ちますよ」

「……、」

「ただそこから移動せず、ミサを待つだけ。それだけで良いなら楽なものです」

「……数百年は、楽じゃねえだろ」

「ミサの苦しみに比べればズルのようなものでしょう」

「…………そうかよ」

「ええ」

「……待たせて、悪かった」

「まったくです。私達宛ての供え物はしばらく食べさせてあげませんからね」

「お前それは話が違うだろ。それ絶対お前が独り占めしたいだけだろ。おいこら。ヨク。こっち見ろやヨク!」

「ははは」

「はははじゃねーし!」



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