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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
トクサツ誘拐作戦
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簡単な三択問題



「それでは、指示通りに」


 そう言ってヒミツは見張りが居るという扉を思いっきり開け、見張りが反応するまでの一瞬の間に()()出した。

 魔法だろう、宙を泳ぐように凄まじい速さで距離を取り飛んで行く姿に、見張りが慌てて走り出しながら連絡用の魔道具を作動させる。


「センタイ様脱走! センタイ様脱走!」

「お待ちくださいセンタイ様ー!」

「僕はセンタイじゃない! ヒミツ・ゴレンだこの誘拐犯共め!」


 足音が遠ざかり、五秒。ヒミツ経由で伝えられた()()()()()()()、近くに居たらしき使用人が部屋の前を通過。そこから再び五秒待って、


「よし、行くのだわ!」


 アカの指示通りにヒミツが作り上げた、ヒゲキ女王とトクサツが居る部屋までの道に誰も居ない状況。ヒミツが飛び出した事でこの部屋を覗く誰かも居ない状況。

 ヒメ達は部屋を飛び出し、トクサツが居る部屋へと走り出した。





「失礼!」


 あの時見かけた部屋に、ヒゲキ女王は居た。使用人が出払っているせいかヒゲキ女王に飲み物を持ってきたらしいトクサツも居た。

 扉を壊すような勢いで開け放った見知らぬ人間に、顔を上げたヒゲキ女王は怪訝そうに表情を歪める。


「え……ヒメ、ジンゾウ、マッド、ライト、フリョウ、マンガ……? どうして僕のお家に?」


 だが、困惑を露わにしているトクサツの言葉で察したらしい。

 確かに今は制服を着ておらずそれぞれ私服。一部デカいのが(一人やたら小さいとかは考えてはいけない)居るとはいえ、娘と同じ年ごろという事くらいはわかるだろう。加えて見た目に特徴があり過ぎるフリョウと、まともな会話は無かったようだが顔を合わせている事からも全く知らない相手というわけではない。

 そこに加えて娘が名前を呼べば、娘であるトクサツは手紙等で報告もしていただろう事を思えば、察せないはずもない。


「……不法侵入とは、随分と思い切った事をするのね。学園ではお城に不法侵入するような事を教えるのかしら」


 ヒゲキ女王がヒメ達に険しい視線を向けたまま、静かにペンを置く。


「ああ、本当に娘をそんな恐ろしいところから引き離して良かったわ。そう思うでしょう、トクサツ。許可も出されていない中で、お城に、一国の主が住まう場所に複数名で乗り込んでくるような極悪人を育てるだなんて。こんな悪い人間とお友達なんて事を続けていたら、私の娘が悪い子になってしまうところだった」

「あら、失礼だこと。ちゃんと真正面から突入したのだわ」


 ヒゲキ女王は顔も声も何もかもが美しい。思考を溶かす程に。

 だがそんなもの、表面に惑わされる人間にしか影響が出ないもの。清く正しく美しく、そして強くを体現している母を知っているヒメからすれば美しいだけの人間でしかない。

 美しい彫像が生きて動いていたとして、置き物止まりでしかないだろうに。


「……衛兵が居たはずよ」

「自分の美貌にばかり気を遣って、自身の美貌の衰えばかり気にしているからこうなるのだわ」


 嗤うように言ってやれば、ヒゲキ女王の顔が険しくなる。


「何が言いたいの」

「いえ、貴女が部下達の悩みにも親身になる女王であったなら、こうはならなかったでしょうにと言っているだけなのだわ。その悩みが解決していなくとも、親身に語れる間柄であったなら、彼らも貴女を優先したのに」


 ハ、とヒメは今度こそ明確に鼻で笑う。


「私達を通す事で起き得る万が一に目を伏せて自身の利益を得るよりも、自身の利益を捨ててでも貴女を守ろうという人で溢れたでしょうに、残念ね。人の心を奪う事は出来ても人の心を慮る事は出来なかったのかしら」

「他国の小娘が、一国の女王相手に喧嘩を売りに来たのかしら」

「あら、ここまで言われてもまだ喧嘩を売られていると認識出来ない程度の頭だったなんて想定していなかったのだわ。ごめんなさいね。そんな頭で政治なんて回せるのか心配になっちゃう」


 いよいよヒゲキ女王のこめかみに青筋が浮かんだ。思わずといったように立ち上がった彼女のその目は、今にも目の前の小娘を射殺さんばかりの圧を放っている。


「え、えっと、あの、これは一体どういう」

「今すぐこの無礼者達を追い出しなさいトクサツ!」

「学園に対して無礼を働いた女がこの程度の対応を無礼扱いとはよく言えたものだな!」


 甲高い声で叫ぶヒゲキ女王。その声に負けない大きさで、しかし低い声で言い返すヒメ。

 そんな二人に挟まれてどうしたら良いかの判断も出来ず涙目でおろおろするトクサツに、ジンゾウがちょいちょいと手招いた。


「トクサツさん、説明するからこっちこっち」

「じ、ジンゾウ、これって一体どういう、僕はどうしたら」

「うん、ごめんね」

「え?」


 ジンゾウは近付いてきたトクサツの肩をガッと掴んだ。

 そこでトクサツは、マッドとマンガがジンゾウの上着を掴んでいる事に気が付く。混乱のまま友人に縋ったというより、はぐれないように掴んでいるかのようだ。

 はて、どうしてこんな場所ではぐれないようにしているのか。

 トクサツがその事に気付く前に、ジンゾウと、ジンゾウと接触していた三人の姿がプツンと消えた。まるで映像が消えるように、一瞬で。


「な……っ!」


 それを見て、ヒゲキ女王の顔色が驚き、怒り、恐怖に紫色へと染まる。


「貴女、わたくしの娘に何をしたの!」

「純粋なあの子にキャットファイトなんて見せるわけにはいかないという気遣いなのだわ」


 笑みを浮かべたまま、ヒメはスッと目を細めた。


「それを見せる事であの子にプレッシャーを掛け、自分の味方をさせようなんていう姑息な貴様と違ってな」

「ぐ……っ、」


 図星なのか、ヒゲキ女王の顔色が変わる。


「誰か! 誰か! この不法侵入した無礼者を捕らえなさい! 誰かぁっ!」

「残念ながら、誰も来ないのだわ」


 使用人の殆どは囮となってくれたヒミツを追っていて忙しい。声が届く範囲には居まい。

 近くに使用人も誰も居ない事を察したのかヒゲキ女王が机の上にあった連絡用の魔道具を操作するも、


「……っ、どうしてこんな時に壊れるのよ!」


 魔道具は動かない。それもそうだろう。


「あっははァ……これオレ不敬罪とか諸々で殺されないかなァ」

「その時は俺の国で匿おう」

「助かるゥ……」


 部屋に残っていたライトとフリョウ。そう、ライトの魔法によるものだ。

 ライトの魔法は祓。(かた)きを祓う。何かを行う時、その対象の邪魔になる何もかもを祓い、障害物が一切無い道を作り上げる事が出来る魔法である。

 邪魔になるような誰かが来るという障害物は祓われ、魔道具が一時的に使用不可能になるという結果をもたらした。


「……わたくしの子を返しなさい」

「返さないのだわ」

「返しなさい」


 声が静かに響く。

 そう告げるヒゲキ女王の肌は陶器のようで、睫毛に縁取られた瞳は満天の星空よりも美しく、赤い唇は老若男女問わず視線を奪われる事だろう。

 だが、それは惑わされる人間の話。

 ヒゲキ女王の魔法についてアカから聞く事は出来なかったが、ステータスを見たジンゾウが教えてくれた。

 ヒゲキ女王の魔法はヒメの父同様、常に発動しているオート型。そしてその効果は、惑わし。つまり何もかもを惑わせる。目に見えた特徴が美しさだからこそ、人は彼女の美しさに惑わされ、まともな思考が出来なくなってしまう。

 けれど、それはあくまで惑わされる人間に効果があるというだけの話。

 惑わされないぞと心を強く持っていれば、容易く跳ねのける事が出来るちゃちな魔法だ。


「……美しさだって強みなのだわ。だから貴女が戦闘能力を持たずとも、自身の武器として美しさを磨き上げた事は称賛に値します。貴女の武器である美しさを利用し、魔法を合わせる事で人を惑わせるのも、それが貴女なりの戦い方なのであれば認めましょう。強い者が正義なのだから」


 けれど、


「私は貴女より強いのだわ。故に、トクサツを奪わせていただきます」

「思い出したわ……その顔」


 ヒメの言葉を聞いていないのか、意図的に無視しているのかヒゲキ女王がヒメを指差しそう言った。


「お前の顔、知っているわ。いつもいつも口うるさくて、外交をまともにする気があるのかを問いたい程自分勝手な国、タカラザカ。お前、そこの見習い騎士ね? お呼ばれした外国のパーティで、目を掛けられている見習い騎士として居たのを覚えています」


 ヒゲキ女王は机を避けるように移動し、ヒメとの距離を詰める。


「お前の家にこの事を告発して差し上げましょう! これは最早国家的な問題! 見習い騎士程度が、他国の姫を奪うだなんて蛮行、貴女の家が潰れても取り戻せない! お前にあるのは破滅だけよ、小娘!」

「まさか!」


 優位に立ったとでも思っているのか、それでもまだヒステリック混じりな叫びをあげるヒゲキ女王に、ヒメは歯を剥き出しにした笑みを浮かべた。


「貴様如きの程度の低い頭ではわからんだろうが、我が国は力で奪うのを良しとする国! 奪われるのが嫌なら抵抗なさればよろしい! 他人を惑わすしか能の無い貴様であっても、この喉笛に噛み付けば勝機はあるぞ!」


 首を傾け喉を晒し、ヒメはそこを指差して見せた。

 その挑発にヒゲキ女王は険しい顔で歯噛みする。そう、わかっているのだ。見習いであろうと、ザカで有望と言われている騎士。非力で美しくか弱い女として地位を築いたヒゲキ女王では、そんな真似は死に際だろうと出来やしまい。

 仮に出来ても、綺麗に削られ整えられた犬歯じゃ人の喉は噛み千切れない。


「返せと叫ぶばかりで奪い返そうと動きはしない。ただひたすらにお前のせいだと叫ぶばかりだなんて滑稽なのだわ! 被害者になりたければそれで良いが、今ここに嘆く貴様の味方をする者はいないぞ!」


 惑わされる誰かは居ない。この場でその美しさは通用しない。

 民衆の前であれば、政策で苦しめられていたとしても嘆くヒゲキ女王に同情して共に涙を流し、彼女に味方する者も居ただろう。だが残念、ここには誰もやってこない。

 アカの指示でヒミツが囮となり使用人を遠ざけ、ライトの魔法で万が一もうっかりも無くなった。

 一人で対峙する以外、ヒゲキ女王に道は無い。


「仮にここで逃がし、後で訴えて、さてどうする? この国でも他の国でも貴様の美しさは通用しただろう。だが我が国にそれは通用しないぞ。貴様の美しさで惑わせた強者でも連れて来るならともかく、ただ嘆くだけの弱者に我が国が何かをする事は決して無い!」


 何かをしてやるほどの価値も無い、と笑い物にされるのがオチだ。


「清く、正しく、美しく……そして強く! 美しく儚く強かにか弱くあることで立場を固めた貴女とは、根本的に考え方も重要視する部分も、何もかもが違う。さあ、どうする女王」

「……貴女の親に伝えれば、国際問題になる前の段階で秘密裏に」

「事を済まそうとする、のは貴様の美しさが通用する相手だけだと言っただろう。その程度も覚えていられない頭なのか、それとも新しい事が入らない容量の頭か?」


 頭を指先でトントンと叩いてヒメは嗤う。


「奪われたくないならその場で抵抗し、勝つ! それ以外にない!」

「他の国が貴女の国の敵になるとしても、まだそんな事を言えるのかしら? 見習い騎士がそんな厄介事を持ち込んだのなら、あの女帝が黙っているはずもないわ!」

「は、それこそ僥倖! 我が国の女帝であれば戦闘なら大歓迎だと、黙らせたいのならば勝って黙らせろと言うだけだ!」

「この……っ、蛮族国家!」

「国民から何もかもを搾り取って、自身と他国を満たす為に使っている女は言う事が違うな。赤子や病人が飲むはずだったミルクで保湿した陶器のような肌を自慢にしているようだが、蛮族よりも残酷な事をする」


 ギリ、とヒゲキ女王は輝く程に白い歯を食い縛った。


「……貴女の国がそういう考え方であっても、貴女以外が所属する国はそうでもないでしょう。国に喧嘩を売ったと知らされたら、どうなるかしら」

「げェ、こっちに矛先向いたァ」

「正直存在を忘れ去られたままで居たかったな……」


 ヒゲキ女王に視線を向けられ、先程から後ろで身を寄せ合いながら震えていた二人はそう零した。何を軟弱な事を。


「好きに伝えるが良いのだわ」

「まあ、お友達を見捨てるおつもり?」

「まさか。確かに王族には勝てない立場の者も居るけれど、帝国タカラザカとチリョウ国……その二つを敵に回す気があるなら好きにすれば良いのだわ」


 サッとヒゲキ女王の顔色が変わった。

 帝国タカラザカは戦闘国家。国内でも頻繁に戦っている異様な国。そして他国との戦いになった時、帝国タカラザカは一丸となって殲滅する。仲良くはしなくても良いが敵対だけは決してするな、と言われるところ。

 そしてチリョウ国。

 ここは大きいわけでもない国だが、医療関係が発達した国。国民の大半は医療関係者であり、どれだけ難儀する難病だろうとここに行けば助かる、と言われている。貴賤で患者を選ぶ事も無い為市民からの信頼も篤く、各国のお偉方も当然かの国の背後に居て、ここと敵対すればどれ程の敵を作ることか。

 対するエンタメ国は、外交が得意かつ貧困層に物資を分け与えてくれる事から人気は高いが、しかし国としてはあまり強く無い。外からの人気だって、命に係わるチリョウ国と命には係わらないエンタメ国を天秤に掛ければ、不利になるのがどちらかなど誰でもわかる。


「……お前、あの女の……あの女帝の娘なのね」

「さあ、どうかしら」


 ヒメはにっこりとした笑みを浮かべるだけで肯定はしなかった。

 だが、先程の言葉からすれば、間違い無い。


「それにしても、貴女の夫は随分と見る目が無かったようなのだわ。毒を入れれば痩せ細るのは当然の事。元々危うかったエンタメ国だけれど、貴女を娶ったせいで一層と痩せ衰えた」


 ヒゲキ女王のこめかみがヒクつく。


「惚れた以上はその人を求めるのは仕方がない。でも、自分一人で回せないとわかっていたなら、恋や愛よりも国を正しく回せる者を相手に選ぶべきでしょうに」

「わたくしの夫を」

「貴女の義母の息子、でしょう?」


 ヒメがにこやかに言うと同時、ヒゲキ女王はこれ以上は無いという程憎々しい顔を見せた。

 そも、悪く言われているのはヒゲキ女王だ。そこで夫が悪いという方向に責任転嫁して庇い、自分は悪く言われていない、なんて風に取り繕おうとしても無駄な事。


「でもそうね、貴女には後が無いと教えてあげましょう」

「は?」

「トクサツか、それともその兄であるセンタイか。どちらかを私に寄越しなさい」

「っ!」


 ヒゲキ女王は何かを言おうとしたが、その声は喉から出てこない。

 それもそうだろう。何故なら、叫ぼうとしたヒゲキ女王の柔らかで白い喉に、ヒメの人差し指が食い込んでいた。

 ただ指差すように触れているだけ。少し押してはいるが、強く押しているというわけではない。

 でも、それでも、容易くその喉を潰せるぞと示すにはそれだけで充分だった。

 これが戦いに慣れた者であれば、牙を剥いて戦闘に入るだろう。だがヒゲキ女王は戦いなんて無縁だった。危ない戦場には、着飾った自分が行って皆の前で微笑めば、あっという間に誰もが武器を捨てた。それだけだ。危険があるなら夫か娘が彼女にはかすり傷一つ付けさせないよう守ってくれた。

 戦いによる命の危機など知らないヒゲキ女王にとって、研ぎ澄まされたヒメの戦意は、どんな武器よりも恐ろしい。


「国としてはトクサツを選ぶべきなのだわ。だってセンタイは、この国の王子である彼は既に壊れている。貴女の義母の教育によって精神が崩壊し、王子という立場を嫌悪し、貴女達家族と距離を取り、自分は平民であると思い込む事で壊れた精神をギリギリの位置で保っている」


 そう、わかり切った事だ。

 国の為に選ぶべきがどちらか、なんてものはわかり切っている。国を想うなら、民を想うなら、未来を想うなら、壊れた方を選ぶ愚か者はどこにも居ない。


「さあ、どうする」

「そんな、どちらも、渡せるわけ」


 だが、ヒゲキ女王は選べない。

 ヒゲキ女王は逃げられない中、命の危機を感じる中で、その目を動揺に揺らしながら震える声でそう答えた。ヒメもそう答えるだろう、とは思っていた。

 要するに彼女は母親失格の癖に、女王ではなく、母親として今後の何もかもを判断しているのだ。

 国を想うなら親子の情を時には切り離して考える必要があるというのに、例え壊れても、嫌われても切り捨てられない。


「別にこちらは両方、でも良いのだわ」


 別に、それだけならヒメだって認めなくはない。親の愛は否定すべきではないのだから。

 けれど、母親に愛されたいと願うトクサツをあれだけ利用し、自分に都合のいいように育て、褒美も何も与えず縛り付けている。壊れた兄と壊れていない妹相手に、随分と差のある対応だ。

 拒否するセンタイには過剰な程構い、母を求めるトクサツには何も与えない。

 それは親子の情ではなく、自身の思い通りになる駒が欲しいだけで、自分が居なければ駄目な人間が居るのだと思いたいだけ。ただ、自分が可愛いだけの考え方だ。

 国を率いるには、相応しくない。


「勿論他にも道はあるぞ。お前が死ねば、私に殺されるでもお前が自ら死ぬのでも、そんな事が起こればトクサツは私を敵と見做すだろう。お前の命を懸ける事で、国の未来を、国を率いるトクサツという次代を守る事は可能だ」


 さあ、とヒメはヒゲキ女王の喉に食い込ませた指をもう一段階食い込ませる。


「お前の首が危ないぞ」


 ひ、とヒゲキ女王の息が乱れる。その呼吸は浅い。


「息子か、娘か、それとも自分か」


 貴様に拒否権等無いぞ、とヒメは嗤う。目を見開き、獣が今正に獲物を食い殺そうという気迫を纏って。


「そら、この国を離れる首を貴様が今この場で選ぶんだ!」


 ヒゲキ()()

 その立場に相応しい答えを寄越せ。





「ねェフリョウあれヒメですよね。めっちゃ怖いんですけど。オレもう体の震え止まりませんよ」

「……俺も同じだ。何故ここに残ってしまったのか……」

「オレらマジでこの場所に要らねェ~……でも祓の効果持続用には重ね掛けの為に居た方が良いし、立場云々になった時にフリョウがこの場に居た事実も要るとかいう地獄……」

「……というか、ヒメが怖過ぎる」

「わかります。本当それ。普段もっと明るくて優しくてリーダー気質で色々引っ張ってくれる子なのにあそこに居るの本当誰ェ? 怖いんですけどォ……」

「タカラザカの民であり、あの女帝の娘であるなら不思議でも無いが……口が悪いわけではないのに、口が悪くないか。……俺の言いたい事はわかるか?」

「大丈夫、わかりますよォ。口汚くは無いけど、口撃って表現が合うくらいには悪意と敵意に満ちてるっていうかァ……ヒメってあんなに煽るんだァって感じィ……」

「だな……」

「ハッキリ言う性格なのは知ってたけどさァ、これはもうジャンル違うよなァ。……てかフリョウ顔色最悪ですけど大丈夫です?」

「…………トラウマと、新しいトラウマが……怖い…………」

「あ、ああ……キャットファイトみたいなのや生々しい人間の悪意が駄目な感じかァ……聞いてなくても大丈夫そうだし耳塞いでて良いですよォ。オレそこまで駄目ってわけじゃないし。そういやフリョウってあの人にトラウマ抱いてたし、そこでヒメの口撃まで始まっちゃあ無理かァ」

「……まだ、まだ大丈夫だ」

「涙目になってるんで無理しない方が良いですよォ?」

「耐える……」

「んん、フリョウがそう言うなら良いけど……早く終わるのを祈るしかないっすねェ」



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― 新着の感想 ―
[一言] ヒメ・キシさん、完全に獲物を追い詰める猛獣のクロアシネコですね。 強い。
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