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私、実は姫騎士なのだわ  作者:
不在のトクサツ
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王族



 脳天に拳を落とされてしょんぼりと反省しているジンゾウ、監督不行き届きに頭を抱えるヒメ、その他硬直するメンバー。

 その状態から一番最初に立ち直ったのは、流石と言うべきかライトだった。


「いやァ、何かちょっとすごいビックリしちゃった。フリョウって王族だったんですねェ」


 はへェ、とライトは気の抜けた声を漏らす。


「通りで休暇中に出す手紙も郵便局で留めるようにって言ってたわけだ。そういう意味での住所秘匿だったんすね。家族の話題も全然無かったの、納得……」

「ち、違う! お前には話そうと思っていた!」


 ライトが納得したと言い切る前にその肩を掴み、フリョウが必死の形相、慣れない人からすれば今にも人間に恨みを持った鬼が人間に襲い掛かろうとしているような気迫だが、ともかく必死の形相で弁明した。


「その、どう言えば良いのかと考えて、つい後回しにしてしまい……俺を恐れなかったお前には話そうと思って、だがタイミングも無く……いや、言い訳は見苦しいか」


 言葉を重ねる内に少し頭が冷えたらしく、フリョウは目を伏せてライトの肩から手を離す。


「その通り、俺は王族。本名はフリョウ・イヤスという。ヤンキーというファミリーネームは母の旧姓だ」


 だが、とフリョウは言う。


「俺は王族でこそあるが、王弟の子。王位継承権は無い。勿論立場や血筋に力はあるし、俺の地元であるチリョウ国は人々を治す事こそ最優先という治療特化国。そこまで大きくもない国だが、王族含め、住人の殆どが医療関係者。魔法も回復魔法持ちが多く、精神病にも対応している為、詳細を知れば俺達の味方をしてくれる……とは、思う」

「聞きたいんですけど、何でわざわざ旧姓で?」

「…………」


 ライトの問いにフリョウはぐっと顔を顰めた。


「…………王位継承権を持たない事もそうだが、ヤンキー家の者は表情と雰囲気から周囲に恐れられ遠巻きにされるという特徴がある。王族だと主張すれば、その権力も相まって今以上に恐れられるだろうと思うと、やめた方が良いのではと思い……」


 ああ、と全員が納得した。

 確かに今の状態でもフリョウはまだ怖がられている。演劇を良かったよと言ってくれる人も居るので去年よりは多少緩和した気もするが、新入生からすればデカくて厳つくて怖い人という印象しかないだろう。

 そこに加えて王族となれば、ぶつかりでもしたら不敬罪で即処刑、という妄想が迸ってしまう生徒もいるかもしれない。

 現在時点でもぶつかってしまって謝りながら泣いて逃げる生徒は居るそうだが、王族となると超えられない壁による圧が出てしまうので隠しておくのは英断と言えよう。

 まあ、隠しておいても素の威圧感はどうにもなっていないけれど。


「なんというか、マッドが医者の敵みたいな言動をする度に二人が反応していた理由がわかったのだわ」

「確かに。時々医者視点みたいな事言うなあと思ってたけど、両方医療関係者だったんだ。基本ぼっちな怯えられ系フリョウとその親友であるコミュ強ライト、しかもその間には医療関係者という繋がりがある為お互いにしかわからない会話も多々交えられ……新刊出来ちゃうなこれ!」


 自重しないなあのユニコーン頭。ヒメはマンガを白い目で見た。


「……では、私の方も説明させてもらうのだわ」


 ヒメは軽く挙手し、ため息を零しながら説明する。


「私はタカラザカの姫、ヒメ・キシ。ミコは臣下のファミリーネームを使用させていただきました。身分を偽っていたのは、母の言葉によるものなのだわ」


 そう、ヒメは母に言われている。


「上の立場とわかれば寄ってくる者も居るだろう。だが、そういったものが無い立場の中で親しくなった相手。それこそが一番大事にすべき存在だ」


 安全の為でもあるが、それ以上に、これこそが一番の理由だった。


「そういった理由で私は身分を偽りました。尚、ジンゾウには初日からバレていた上に危うく教室内で暴露されかけたのだわ」

「ジンゾウ、それはちょっと……」

「……素性が知れれば命の危険だからと学園に避難する形で入学した生徒という可能性もあるだろうに…………」

「ジンゾウの性格からすればやりかねない行動だが、ヒメの事情が公開されていないということは事前に防げたんだろう? なら問題は無いね」

「二人だけの秘密状態とか色んなルートに繋がるキー過ぎてこれは捗る」

「ま、別にバラされた事については良いのだわ。王族のバックが必要なら名乗り出るつもりもありました。ジンゾウが王族として戦力にならない以上、もう一人居ればと思っていましたが」


 ジンゾウがもう一段階しょんぼりとする。


「幸い、フリョウが居たので良しとします。驚いたしふざけるなとは思ったけれど、どのみち告げては居たのだわ」


 そう、とヒメは低い声で言う。


「ここに居る者は、私が王族だと知ったくらいで態度を変えるような人間ではないとわかっている。なら、告げてはならないという理由もない」


 目を鋭く、それでも笑うように細めながら、ヒメはジンゾウを見た。


「ジンゾウ、貴様を許そう。ただし今回限りだ。公衆の面前で今回のような事をすれば見限られる可能性も視野に入れろ」

「そ、それだけはヤだよヒメちゃん!」

「嫌なら徹底して口を滑らさないよう気を付ける! 返事!」

「はい!」

「よろしい」


 ぽん、とジンゾウの頭を一撫でし、これにて手打ち、というのを示した。

 そうしてヒメは息を吐いて肩の力を抜き、


「これで王族の力は二つ。一つの王家にちょっとヤンチャを仕掛けるくらいは出来るのだわ」


 そう言った。


「……タカラザカは協力してくれるのか?」


 おずおずといった様子でそう問うフリョウに、ヒメはニコリと微笑んでみせる。


「タカラザカの信条は、清く正しく美しく、そして強く。欲しいものがあるなら決闘で勝って奪い取る。そういうものなのだわ。相手と相対して勝利したのならばそれはただの戦利品。奪って良し。奪われた側が何を言おうと、そんなものは負けた側が弱かったのがいけないのだわ」

「ザカの言い分って結構暴論」

「いやでもライト、これは大変参考になるよ。決闘で勝ったらって事はつまり、人間も戦利品の対象内……!?」

「まあ、その通りなのだわ」


 寧ろ決闘に勝って強奪する方がスタンダードというくらいには常識。


「惚れた男に決闘で勝って恋人になる事もあるし、惚れた相手の恋人に挑んで勝ってモノにする事もあるから」

「公式でNTRが許される価値観ってこと!?」

「恋人が負けても惚れた相手である賞品自身が嫌だと主張するなら、賞品とももう一戦する事はあるのだわ。その上で賞品の方が負けたのなら、拒否権無しとしてそれが成立するのは確かよ」

「新しい風吹いちゃうな」


 ザカとしては当然のような価値観なので、ユニコーン頭が謎のエエ顔風の雰囲気を纏ってありもしない風に鬣をなびかせているのが意味不明。相変わらず変な生き物だ。いや、頭部は被り物で見るからに変だが、そうではなく思考回路や内面といった意味で中身が変。


「では、これでバックも揃って準備万端というわけだ。ヤンチャをしに乗り込もうか」

「待った」


 本当に早速という様子で立ち上がったマッドの肩を掴んで座り直させる。


「ザカに関しては事後報告でも良い、寧ろ事後報告くらいの勢いでやれ、といった傾向だけれど、チリョウ国は先に話を通しておいた方が良いという可能性もあるのだわ」

「…………ああ。圧力に対抗してはくれるだろうが、先に話を通した方が良いだろう。……誰かを救う為なら事後報告でも問題は無いが、可能なら先に伝えた方が良い」

「それと、どうせなら不審がられない休日に動きたいのだわ。トクサツと関わりある私達が授業を休んでどこかへ行ったらしい、という事実を残すのは良くないのだわ」

「まあ確かに、権力で諸々をもみ消せても変なスクープにされたら台無しか」


 うんうん、とユニコーン頭が頷く。


「じゃあ、最短決行日は二日後として、ちょっと知り合いに連絡しても良い?」

「知り合い?」

「プロの革命家」


 革命家にプロなんてあるのかと思うも、とりあえず続きを言うよう促した。


「わたしの父が革命を起こそうと奮起した理由の一つ、というか火付け人とも言うべき人でね。様々なところで悪政に革命を! って煽ってしっかり革命をやり遂げさせ、その後どうしていくかを整えたら颯爽と姿を決して次の革命対象の地へ行くさすらいの革命家なんだけど」

「さすらいの革命家なんてワード初めて聞いたのだわ」

「でもそういう人なんだよ。で、革命に関わった相手にどこどこで革命するけど協力してくれませんか、みたいな手紙もよく出す。かといって一度やったんだから協力しろ、みたいな脅迫じゃなく、余裕があって尚且つ彼らの状態を異常と思うのであれば可能な範囲で協力してくれると嬉しい、って感じ」


 その会話から、ヒメは何となくだが察してしまった。


「……その革命家からの手紙曰く、次はエンタメ国で革命を起こそうとしている?」

「何でわかるのヒメ!?」

「やっぱりそうなのね」

「あ、そういえばイマドキさんが教えてくれた情報の中にそういう話題あったね」


 その通り、とヒメはジンゾウの言葉に頷く。


「イマドキによる最新ニュースから得た情報と考えれば、既に革命の準備は整っているはずなのだわ。ならその革命家は現地に居て、尚且つ王家関係の詳細な情報も持っている可能性が高い。マンガが生まれる前のオタク国にて、バラバラに幽閉されていた王族をしっかり助けた事からも事前準備がしっかりしている方なのは察せるのだわ」

「……いやその通りだけど、ヒメの頭の中結構凄いね」

「戦いに関連する事なら何となくわかるのだわ」

「天性の戦士?」

「そんなに褒められてもザカでの観劇チケットしか出せないのだわ」

「褒めてないっていうかザカの観劇チケット!? あの!? クオリティが高くて世界中にファンが居るザカの観劇チケットを!?」

「要らないのなら」

「要る要る要る絶対要る!」


 マンガは奪取の勢いでチケットを確保した。

 ザカのミュージカルや装飾類は世界的にも有名なので、喜んでもらえて良かった。天性の戦士だなんていうタカラザカの民への特上の褒め言葉に対するお礼としては丁度いい物だろう。


「えーと、そういうわけで、その人に連絡を取ろうかと思って」

「いきなり行って、友人の為に貴方が持ってる情報くださいって言って、はいどうぞってしてくれるのかなァ。革命家なんでしょ?」

「大丈夫と思う」


 ていうか、とマンガは言う。


「わたしがあの人の事を思い出して連絡を取ろうとした時点で、あの人がその流れを望んでるって事だろうし」


 本当にその革命家とやらは信じて良い相手なのか不安になって来た。





マンガ「でもライト、実家が医者やってるなんて聞いた事無かったけど」

ライト「言わないようにしてるからね。うっかりで王族の主治医って漏らすとヤバいのに捕まる可能性もあるし。ほら、毒を盛りやすい立場だからって事でさァ」

マッド「よくある話だ。とはいえ主治医としてのプライドがありそうな父親の言動からすれば、例えライトが人質に取られても主治医である事を優先しそうだけどね」

ライト「そうだと思う。姉居るから跡継ぎ問題無いし。でもそもそもは! 医療関係は好きだし他の道も考えた事無いけど! それはそれとして! 親父についての愚痴を絶対言っちゃうから言いたくなかった!」

マンガ「えっそういう理由?」

ライト「そう。もー、子供相手に医療関係の話しかしないもんあの親父。子供へのお土産に図解完璧で本来なら十代後半かつそれらの分野を勉強していたら読めるだろう、みたいな医療本持ってくるかよ普通」

ヒメ「それで、あまり自分の家についての話題を出さなかったという事かしら?」

ライト「いやァ、それもあるけど、基本は話を聞く方が好きだからって感じかな。家の事になると親父の愚痴出ちゃって楽しくなくなるし。どうせ口に出すなら楽しい話題の方が良いよなァって」



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