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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
2章 目指せSランクパーティー
86/129

#86 70階層のボス討伐

 10月1日(火)


「さあ〜て、今日も攻略始めるよ~」

「おー!」

「いつも以上にやる気だな」

「もう少しでSランクに昇格出来る所まで来ましたからね」

「前から気になっていたんだけど、何でそんなにSランクになるのを急ぐんだ?俺達なら焦る必要もないんじゃないか?」

「それはね~ヒ・ミ・ツだよ~」

「そうそう、ヒ・ミ・ツだよー」

「ふふっヒ・ミ・ツですよ?」


 どうやら教えてもらえないらしい...


「春くん?Sランクになったら分かるよ?」

「そうそう、それまで我慢してね~」

「ふふっ」


 まあ、そういう事ならあと少しだし、大人しく待つとしようかな。


 68階層を進む事40分、次階層への階段を見つけ、69階層へと降りて来た。


「あれがこの階層から出て来た魔物?」

「何だかかわいいねー」

「見た目は可愛らしいですが、見た目に反してかなり厄介な魔物だそうですよ?」

「そうなん?」

「ええ、動きは俊敏で攻撃が当て難い上に、ああ見えて耐久も高くて倒し難い魔物だそうです」

「攻撃も力はそれ程でもないけど、雪兎みたいに風魔法と雷魔法を爪に付与して攻撃力を上げて、傷を負わせた相手を麻痺させてくるらしい」

「それに水魔法も使えるそうで、各属性魔法を使って遠距離攻撃も得意としているそうですよ」

「凶悪だね~」

「あんなに可愛いのにねー」


 階段内にいる俺達の視線の先には、テンペストモモンガという15cm程しかない大きさの魔物がいた。


 雪兎がめちゃくちゃ警戒している...もう、従魔は暫くは増やすつもりはないんだけどな~有能そうではあるから気にはなるけど。


「アタシが試して来るね~」

「ああ」


 俺が暫くは従魔を増やす気がない事はみんなには話してあるので、可愛い魔物が出て来ても躊躇なく攻撃に移ってくれる。


「あっ!」


 雛が影移動で襲い掛かるよりも早く、雪兎が瞬歩で襲い掛かり、攻撃を仕掛けた。

 纏雷まで使った雪兎の一撃により、テンペストモモンガは光の粒子へと変わって行った。


 ドヤ顔で戻って来る雪兎を見て全員苦笑いを浮かべてしまった。

 雪兎、もう少しご主人様を信じておくれよ。


 戻って来た雪兎を撫で回し、スキンシップをたっぷり取ってから、70階層への階段を目指して移動を始めた。


「さっきの雪兎っち可愛かったね~」

「ゆきくんはヤキモチ妬きだもんねー」

「そう考えると、よくエレンくんの事を受け入れましたよね」

「あの時は気付いたらもう従魔になってたからね~」

「そうだったねー。そういえば、あの時何か話をしていたよねー」

「そうでしたね。何を話していたんでしょうね」


 全員に見つめられた雪兎とエレンは揃って首を傾げている。

 可愛いな~


 その後、全員1回はテンペストモモンガとの戦闘を経験して、全員一撃で倒せる事を確認した。

 唯佳がもう少し苦戦するかと思われたが、追尾スキルが効果を発揮しまくり、1回も外す事なく自信を深めていた。


 2時間20分くらい進んで来た辺りで次階層への階段を見つけ、階段を降りて行く。


「上手く行けば、今日中にボス部屋に行けそうじゃない?」

「そだねー」

「地図で確認した感じでは、69階層よりも階段間の距離は近そうですからね」

「今日は時間もいつもよりあるしな」


 今日は学校が短縮授業だった為、14時頃にホームルームが終わり、ダンジョンに来る事が出来た。


 学校ダンジョンの入ダン制限について、学校側とダンジョン協会側、近隣住民や行政も交えて話し合いを行うらしい。

 まあ、今のまま在校生しか入ダン出来ない状況だと、スタンピードの危険性もあるって事だし、近隣住民の人達が不安に思っているらしいから、最終的には学校側が折れる事になるだろうな。


 70階層に降りて来た俺達は、ボス部屋目指して全速力で移動を始めた。


 途中で遭遇したこの階層から出て来た魔物、エレメンタルディアーという4属性の魔法を操る鹿の魔物と戦闘を経験した。


 魔法による遠距離攻撃と魔法を付与した角による近接攻撃はどちらも威力があり厄介だったのと、耐久も高く一撃で倒せない事もあった。


「一撃で倒せない事もある様になって来たな」

「そうですね」

「ボスってどのくらい強さが上がるんだろ?」

「70階層台は60階層台と比べて、また一段と強さの上がり幅が増すと言われています。それこそ雲泥の差があり、だからこそSランク探索者ですら中々攻略を進められないのだとか。それを考えると70階層のボスもかなり強さが上がるものと思われます」

「Sランク探索者が少ないのは、ここまで来れる探索者が少ないのもあるけど、急激に強くなった70階層のボスを突破出来ない探索者が多いかららしいしな」

「そうなんだねー」

「すっごいわくわくするね~」

「ふふっ雛さんらしいですね」

「ねー」


 そんな話をしながら1時間くらい進むと、ボス部屋の扉が見えて来た。


「いよいよ70階層のボスですね」

「緊張して来たよー」

「勝ってSランク探索者になっちゃお~」

「ここに来るまでの間に散々言って来たけど、今までとは強さが全然違う筈だから油断せずに気を付ける事!いいな?」

「「「はい!」」」

「キュッ!」

「パオ!」


 再度みんなに油断しない様にと確認をして、ボス部屋の扉を開いた。


 ボス部屋の中には金色に輝く鹿がおり、こちらをジッと見つめている。


 〘神の遣い〙

 〘神より遣わされた鹿〙


 鑑定結果は至ってシンプルな物で、詳細は分からなかった。


 唯佳が張った結界内で鑑定結果をみんなに共有して、攻撃に移ろうとしたら、神の遣いがこちらに向かって悠然と歩き出した。


「何か余裕って感じだね」

「そだねー」

「こちらがそれに合わせる必要はない。行くぞ!」

「「「はい!」」」


 俺の合図に合わせて近接組が一斉に襲い掛かり、遠距離攻撃組も攻撃を開始した。


 最初に神の遣いに到達したのは3人の雛、神の遣いの上と右それと後ろから斬り掛かった雛達の攻撃は、あっさりと神の遣いに躱されてしまい、次いで攻撃を仕掛けた俺と雪兎の攻撃は、左右の大きな角で受け止められてしまった。

 更に唯佳の放った矢も口で咥えて防がれ、ほのかとエレンの魔法は、着弾前に神の遣いの魔法で相殺された様に見えた。が、ほのかの魔法だけは相殺される事なく、神の遣いに着弾した。


「キュオーーー」


 ほのかの魔法が着弾した瞬間、神の遣いが大きな悲鳴の様な鳴き声を上げた。


「手を緩めるな!攻め続けるぞ!!」

「「「はい!」」」


 俺の掛け声にみんなが反応するより早く、俺の思考を感じ取っていた雪兎とエレンが動き出していた。


 最初に雪兎の氷雪魔法が着弾、直後にエレンの火属性のマジックバリスタが着弾した。


 70階層のボスとはいえ流石に効いたらしく、足元がふらついている。


 そこに3人の雛と俺の斬撃、更に唯佳とほのかの攻撃も襲い掛かり、神の遣いは避ける事が出来ずに全て被弾した。

 だが、神の遣いはまだ生きており、反撃までして来た。


 狙われたのは俺。角による打撃攻撃だったが、俺も瞬時に纏雷を発動して迎え撃った。


「いつまでも油断して被弾する俺じゃあないんだよ〜!!」


 神の遣いに言っても分かってもらえない叫び声と共に振り下ろした雷神は、カウンターで神の遣いの頭に命中し、神の遣いを真っ二つに斬り裂いた。


 神の遣いは光の粒子へと変わり、大きな鹿の角だけを残して消えて行った。


「やったー!!70階層のボスを倒したー!!」

「これでアタシ達もSランク探索者だ〜!!」

「やっと...やっと目標が達成出来ましたね!!」


 女子達が抱き合って喜んでいる横で、雪兎とエレンを撫でて労う俺。手にした大きな鹿の角を鑑定してみる。


 〘神鹿しんろくの角〙

 〘神聖な力を帯びた神鹿の角。杖の素材として使えば光魔法の効果が上がる。また、万能薬の材料の1つでもあり、これだけでも癌に対して高い効用がある〙


 万能薬の材料?万能薬なんて存在するの?聞いた事がないんだけど...


 ほのかに聞いてみたいけど、今はそれどころではなさそうだし、後で聞いてみればいいか。


 それにしても、ホントにSランク探索者になる為の条件をクリアしちゃったな~

 後は俺達の人間性の部分が問題なしと判断されれば、俺達はSランク探索者になれるんだよな?ちょっと信じられないな...


 そういえば、女子達がSランク探索者に拘っていた理由は何なんだろう?Sランク探索者になれば分かるって言っていたけど、もう教えてもらえるのかな?それとも正式にSランク探索者になってからなんだろうか?そんな事を考えながら地面に大の字になって横になった。


 抱き合って喜んでいた女子達が、こちらにやって来て俺にも抱き着いて来たのでしっかりと受け止め、喜びを分かち合い、ボスのリスポーン時間が迫って来たので転移陣のある部屋に移動して来た。


「それでは支部に戻って報告をしてしまいましょう」

「「は~い」」


 ほのかに促され支部に戻り、専属カウンターで可憐さんに70階層のボスを討伐したと3人が嬉しそうに報告をした。


 カウンターの上に唯佳が出したドロップアイテムの中から、神鹿の角を手に取り鑑定で確認した可憐さんは、支部長のおばあさんに連絡を入れ、俺達を奥の個室に案内してくれた。


「今、支部長が来るから、ちょっと待っていてね。それにしてもこんなに早くSランク探索者になってしまうなんて、あの時は思いもしなかったわ」

「「えへへ〜」」


 今いるのは、初めて可憐さんとあった部屋なのもあって、少し感慨深く感じる。


「待たせたね。あんたらホントにこんなに早く70階層のボスを倒しちまったんだってね。流石はあたしが専属を付けると判断したパーティーだね。アッハッハッハ」

「支部長、こちらがクローバーから提出された70階層のボス、神の遣いのレアドロップアイテムの神鹿の角です」

「ああ、確かに確認したよ。あんたらの人格に問題はないし、Sランク探索者への昇格は間違いないと思うけど、Sランク探索者への昇格には、ダンジョン協会日本本部の認定が必要になるから、少し時間が掛かると思っておくれ」

「分かりました」

「おばあさん、どのくらい掛かるのー?」

「そうさね~早ければ明日の夕方頃には認定されると思うけどね。まあ、遅くても今週中には認定されると思うよ」

「今週中か〜」

「でもまあ、あんたらは今話題のパーティーだからね~その話題に乗っかって発表しちまった方がいいって、あたしから助言しといてやるから、恐らく明日には認定されると思うよ」

「ホントー?」

「任せときな」

「宜しくお願いします」

「「おばあさんよろしく〜」」

「ああ、ちょっとお待ち。嬢ちゃんは転移スキルを持っていたね?念の為、あたしを70階層のボス部屋に連れて行ってくれないかい?」


 帰ろうとした俺達に、おばあさんからとんでもない要求がされた。


「支部長!?それはいくら何でも危険です!!」

「そんな事は分かっているよ。でも、それが1番確実な証拠になるだろう?可能性は低いとはいえ、買って来る事だって出来るアイテムなんだからね。で、どうだい?連れて行ってくれるかい?」


 相談の結果、俺達はおばあさんを70階層のボス部屋に連れて行く事にした。


 おばあさんだけじゃなく、可憐さんも一緒に付いて来て、俺達が神の遣いを討伐するのを唯佳の結界内から見学していた。


「70階層のボスをこんなにあっさり討伐しちまうなんてね~」

「驚きましたね...」

「これでもアタシ達的には、苦戦してる方だよ?」

「ねー」

「とんでもないパーティーだね...」


 帰りも唯佳の転移でさっきまでいた会議室に戻り、おばあさんに宜しくお願いし、可憐さんに明日は休みにすると伝えて帰路に就いた。


 それにしても、こんなに早くSランク探索者になれるかもしれない所まで来れるとは思っていなかったな~

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