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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
2章 目指せSランクパーティー
55/129

#55 武器の進化

 8月30日(金)


 今日は、放課後に武器を買いに来ている。


「春くん、どれ買うのー?」

「別にどれでもいいよ。実験なんだし」

「そうですね。安い剣で実験してみるのがいいのではないでしょうか」

「そうだね~安い剣なら、失敗しても痛くないし〜」

「実験ですか?」

「ええ、ちょっと面白そうなアイテムを手に入れたので試してしてみたくて」


 お店に来たら、偶々柏木さんがいた為、案内は柏木さんがしてくれている。


「その実験は、僕も見させて頂く事は出来ますか?」

「えっ?ええ、いいですよ」

「本当ですか?でしたら、お好きな物をお持ち下さい。代金は僕持ちで構いませんので」

「えっ?それは悪いですよ」

「いえいえ、お気になさらずに。本来は、探索者の方の実験などは、関係者以外見る事が出来ないですから、見せて頂けるだけで有り難いです」


 それが分かっていて、よく見せてくれと頼めたなこの人。


「春斗くん、すみません。柏木さんは悪い人ではないのですが、好奇心に勝てない人でして...」

「まあ、いいよ。他言はしないで下さいね?」

「勿論です!例え会長にでも言いません!」


 それはそれで、この会社報連相は大丈夫なのか?


「柏木さんだけですので、他の方々はきちんとしているんです...」

「声に出てた?」

「うん。出てたよー」

「ていうか、普通に話してるレベルだったけど?」


 俺のくせ、直るどころか悪化してない?


「そんな事より、早く実験をしましょう!」

「ああ、はい。じゃあ、この剣でお願いします」


 俺が選んだのは初心者用の安い剣だ。


「これでいいんですか?もっといい物でも構いませんよ?」

「いえ、このレベルの剣でどうなるのかを見てみたいので」

「そうですか?では、こちらへどうぞ」


 柏木さんはそう言って、俺達を奥の部屋へと案内してくれた。


「それで、実験というのは?」

「ああ、はい。唯佳」

「はーい」


 唯佳に豪炎の塊を出してもらい、剣と一緒に手にして説明しながら融合してみる。


「これは、一昨日ドロップした新発見のアイテムを使って作ったアイテムで、豪炎の塊と言います」

「錬金術で作ったのですか?」

「いえ、これも内緒ですけど、アイテム融合というスキルで作りました」

「アイテム融合ですか?聞いた事がないスキルですね」

「ええ、未確認スキルですからね」

「未確認スキルですか!?それは、黒木様がお持ちなのですか?」

「ええ、そうです。あの、様は付けなくていいですよ?緊張しちゃうので」

「いや、ですが...」


 柏木さんはほのかの事をチラッと見た。

 報連相とかは気にしないのに、そこは気にするんだな。


「柏木さん、構いません」

「で、では、黒木さんとお呼びしますね?」

「ええ、お願いします。アイテム融合っていうのは、こうやって2つ以上の物を1つのアイテムに融合するスキルで、形は融合したどれかの形のままで、錬金術の様に形を変える事は出来ません。どの形を残すかは、僕が任意で決められます」

「なるほど、融合したあとはどうなるのですか?」

「融合した物の特性も合わさりますし、場合によっては新たな特性も加わります」

「新たな特性は任意で?」

「いえ、そこは自動的にですね。それじゃあ、やりますね」


 そう言って、初心者用の剣に豪炎の塊を融合していった。


 〘豪炎の剣(劣悪品)〙

 〘攻撃時に炎の追加効果。炎に耐えられず、10回くらい攻撃をすると壊れる〙


「失敗ですね...」

「追加効果は付きましたが、10回で壊れるのはちょっと使えませんね...」

「そだねー」

「もっといい剣ならどうなんだろうね?」

「桃井様の仰る通り気になりますね。今、持って参ります」

「えっ?か、柏木さん?流石に代金払いますから、ちょっと待って下さい」


 部屋を出て行く柏木さんを追い掛け、売り場で一緒に武器を選んだ。


 選んだのは中級者用の鋼鉄の剣、中級者用とは言っても、中級者になりたての探索者が使う物で、値段はそこまで高くはない。


 奥の部屋に戻って、融合してみた結果。


 〘豪炎の剣(劣化品)〙

 〘攻撃時に炎の追加効果。武器の素材のせいで本来のポテンシャルは発揮出来ない〙


「劣化品ではあるけど、本来のポテンシャルを発揮出来ないだけで、壊れたりはしなさそうだな」

「そうですね。これなら使う分には問題ないですね」

「そだねー」

「でも、流石に50階層台では使えないんじゃん?」

「50階層台では無理でしょうね。って、えっ?50階層台で使える武器をお探しですか?」

「いえ、メイン武器は持っているので、これは単なる実験です」

「そうですか。よかったです。もし50階層台で使える武器をお探しでしたら、もっといい武器をご用意しなかった事を後悔していました」

「ハハッ大丈夫ですよ。それよりもこのランクの槍と短剣を二振り頂けますか?」

「分かりました。すぐにご用意します」


 待つ事5分、別の店員さんが注文の槍と短剣二振り持って来てくれた。


 それらの武器にもサクッと融合を済ませ、柏木さんに査定してもらったところ、45万〜50万円くらいの売値になるらしい。


 劣悪品の剣だけ柏木さんに渡し、鋼鉄の剣と槍と双剣の代金を払い、お店を後にした。


「それじゃあ、学校のダンジョンの5階層に行こう」

「はーい」

「オッケ~」

「ふふっやはりフォーフレン用の武器でしたか」

「ああ、貸出用のね」


 唯佳の転移で学校の支部へと移動して、可憐さんも紗奈さんもいない為、普通に並んで入ダン手続きを行った。


「何か新鮮だったね~」

「そだねー」

「並んだのは初めてですからね」

「そう言われるとそうだな」


 5階層の転移陣に移動して、フォーフレンを探す。


 道中で武器を試して、問題がない事を確認しつつ移動する事10分。

 魔物と戦闘中のフォーフレンを見つけた。


 戦闘終了を待って声を掛けると、一様に驚いた顔をされてしまった。


「そんなに驚かないでよ」

「いやいや、何で春斗達がここにいるんだよ」

「クローバーは山中湖に行っているんじゃなかったのか?」

「ああ、勇斗の言う通り、普段は山中湖に行ってるんだけど、渡したい物があってさ」

「渡したい物?黒木くん、また、茜の武器みたいな凄い物を持って来たりしてないわよね?」

「あそこまで凄いのはそうそう出ないよ。今日持って来たのは、俺が作った武器だよ」

「春斗が作った?」

「白坂さんの武器みたいなやつじゃないだろうな?流石に受け取れないぞ?」

「いやいや、だから、あのレベルの物はそうそう出来ないから」

「春斗には実績があるからな」

「まあ、確かにそうだけど、今日はこれを渡しに来たんだよ」


 そう言いいながら、勇斗に剣を、廉に槍を、橘に双剣を渡した。


「今渡した物も、石井さんの弓と同じく貸し出すだけだからね?通用しない階層まで行ったら返してね?」

「これもいい武器なんじゃない?」

「中級者用ってレベルだね。貸し出す条件は死なない事、誰かが死んだらお金取るから気を付けてね」

「お前...ああ、分かった。その条件で貸してくれ」

「お、おい!勇斗!?」

「まあ、黒木くんも引かなそうだし、廉も諦めなさい。黒木くんありがとう。約束は絶対に守るからね」

「ああもう!春斗、ありがとうな。有り難く使わせてもらうよ」

「うん!頑張って!」


 その後、フォーフレンが試しに使うところを確認して、問題がない事を確認出来たので、帰還報告をして、山中湖支部へと移動した。


「やりたい事は終わったの?」

「ええ、終わりました。なので、今から潜って来ます」

「分かったわ。気を付けてね?」

「はい」


 紗奈さんに見送られ、54階層に転移した。


「さて、行くか」

「「「は~い」」」


 炎の塊を手に入れて、自分達の武器にも融合する予定でいるので、それまでは入り口付近で狩りをするつもりだ。


「そろそろ階段に戻って融合するか?」

「さんせ〜い。アタシだけで7個あるし足りるっしょ~」

「ああ、俺も4個あるから大丈夫だ」


 階段に戻って、糸絡り狢のレアドロップである炎の塊を、アイテム融合で豪炎の塊に変え、自分達の武器にも融合して行く。


「まずはアタシの影丸からやって〜」

「ああ、いいぞ」


 雛の影丸に豪炎の塊を融合し、鑑定で見てみる。


 〘雛の影丸〙

 〘桃井 雛専用武器〙

 〘攻撃時に空気抵抗を大幅に軽減して、力と敏捷に大幅にプラス補正、器用にプラス補正。攻撃成功時に風魔法と激しい炎による追撃を行う。影を攻撃する事で本体にダメージを与える〙

 〘等級:レガシー〙


 等級は変わらなかったけど、激しい炎による追撃が加わった。


「早速試して来るね~」


「次は私の杖にお願いします」


 ほのかが珍しく積極的にお願いして来たので、次はほのかの杖に融合する事にした。


 鑑定の結果


 〘吸魔の火星杖〙

 〘青山 ほのか専用武器〙

 〘装備時MP2倍、MP回復速度2倍、火魔法威力2倍〙

 〘等級:レア〙


「私の杖も専用武器になってくれたんですね」


 ほのかは、感慨深そうに自分の杖を抱き締めている。


「ほのかちゃんよかったね~」

「はい。ありがとうございます」


 ほのかの杖だけ専用武器になっていなかったからな。

 等級では、まだ1番低いけど、そこは気にしていない様だ。


「春くーん、私の武器もー」

「分かってるよ」


 続けて唯佳の武器にも融合した。


「私も雛ちゃんみたいに名前を付けてあげよー」

「「ふぇっ!?」」


 思わず、俺とほのかから変な声が出てしまった。

 唯佳のネーミングセンスは独特なので、おかしな名前を付けやしないか不安になった。


「この子の名前は、サラマンドラ。火の妖精から思い付きましたー」


 唯佳がらしくなく、凄く真っ当なというか、格好いい名前を付けた。

 鑑定で結果を確認してみる。


 〘サラマンドラ〙

 〘白坂 唯佳専用武器〙

 〘光魔法の効果に大幅にプラス補正。白坂 唯佳の任意で、杖と弓に変形可能。弓形態時、MP5使って、魔力で作ったダイヤモンドの矢を射てる。攻撃成功時に激しい炎の追加効果。ダイヤモンドの矢は使用後消滅。弓形態でも、魔法発動体として使える〙

 〘等級:レガシー〙


 雛の影丸同様、等級は変わっていないけど、攻撃成功時の追加効果が付いた。


「おー!私も試して来るー」


 そう言って、唯佳が魔物を狩りに行った。

 気付けばほのかも試し打ちをしていた様で、満足そうな笑顔で、雛と話している。


「さてと、俺の刀にも融合するかな」


 最後になったが、自分の刀にも豪炎の塊を融合して行く。


 〘春斗の群狼豪炎凍結刀〙

 〘黒木 春斗専用武器〙

 〘攻撃時に力と敏捷に大幅にプラス補正。攻   撃時に追加で、本攻撃とは別に任意の方向に斬撃を2つ飛ばす事が出来る。与えた傷口を任意で凍らせる事が出来る。確率で斬った相手を麻痺させる。攻撃成功時に激しい炎による追加効果。凍らせた場合、その氷には影響を与えない〙

 〘等級:レガシー〙


「名前が長くなっちゃったな〜俺も愛称付けるか~」

「おっ?春斗っちも名前付けるん?」

「ああ、名前が長いと邪魔臭いからな」

「どんな名前にするんですか?」

「みんなで考えようかー?」

「いや、自分で付けさせて下さい」


 流石に自分の刀の名前は自分で付けてやりたい。


「そんで、何て名前にするん?」

「そうだな~、雷神にしようかな」

「雷神?雷の神様の?」

「ああ」

「春くーん、麻痺は与えるけど、氷と炎の効果の方がイメージ強そうな武器だよー」

「元の名前にも豪炎と凍結って付いてるしね~」

「雷神は、雷の神様だけど、水神と火神として、天と地を繋ぐ存在としても知られているって、前に何かで読んだ事があるんだよ。こいつは、水じゃなくて氷だけど、なんとなく雷神っていうイメージが消えなくてな」

「春斗くんは纏雷が最大威力の攻撃手段ですし、春斗くんのメイン武器の銘としては、ぴったりだと思いますよ」


 名前を付けた後に、鑑定で確認すると


 〘雷神〙

 〘黒木 春斗専用武器〙

 〘攻撃時に力と敏捷に大幅にプラス補正。攻   撃時に追加で、本攻撃とは別に任意の方向に斬撃を2つ飛ばす事が出来る。与えた傷口を任意で凍らせる事が出来る。斬った相手を確実に麻痺させる。麻痺効果は相手の耐性によって変わる。攻撃成功時に激しい炎による追加効果。凍らせた場合、その氷には影響を与えない〙

 〘等級:レジェンダリー〙


「レジェンダリー?何か等級が変わってるし、麻痺の効果が確実に与えられる様になったぞ。まあ、相手の耐性によって効果は変わって来るみたいだけど」

「おー!何か凄そうー」

「ね~よく分かんないけど凄そうだよね〜」

「レジェンダリーですか?聞いた事がないですね」

「ほのかでも知らないのか?」

「珍しいねー」

「ほのかっちは何でも知ってると思っていたよ~」

「知らない事の方が多いですよ?」

「取り敢えず、俺も試し斬りしてみるかな」

「見てみたーい」

「アタシも〜」

「私も興味があります」


 3人に見られながら行った試し斬りで、雷神はとんでもない切れ味を披露した。


「この階層の魔物を一撃必殺って...」

「春くん、すごーい!」

「お〜!凄い威力だね~」

「神の名を冠するに相応しい切れ味ですね」


 その後、2時間程攻略を進めて、支部に帰還した。


 武器の進化に伴い、明日からの攻略がスピードアップするだろう事を考え、全員ウキウキした気持ちで家路に就くのだった。


まあ、明日から通常授業だから攻略時間が短くなるんだけどね。

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