#4 専属担当 源 可憐
トントン。ドアがノックされた。
「源です」
「お入り」
「失礼します」
「紹介するよ。お前さんらの専属に付く娘だよ。可憐、自己紹介しな」
「おいおい、ババア。専属って源を付けるのか?」
「専属ですか?」
「さっきの騒ぎは見ていただろう?面白そうなパーティーだったからね。スキルを教えて貰う代わりに専属を付けてやる事にしたのさ」
「支部長。流石に新人の子達に専属というのはどうかと思います」
「堅い事言うんじゃないよ!もう決めた事なんだから、あんたもそこに座って話をお聞き!」
「いい歳こいてわがままの治らねえババアだな!はぁ、源。諦めて座れ」
「分かりました」
「待たせたね。それじゃあ可憐、改めて自己紹介しな」
「源 可憐と申します。宜しくお願いします」
「あの、ムリに専属を付けて貰わなくてもいいですよ?」
あのやり取りを見てしまっては、気が引けてしまう。
そもそもこちらから言い出した事でもないしね。
「お前さんらは、遠慮しなくていいんだよ。早くスキルの事教えておくれ」
「春斗。こうなったらこのババアは言う事聞かないから諦めろ」
「見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした。話を進めましょう」
無かった事には出来ないらしい、早まったかな?
「じゃあ話しますね」
俺達は、自分のスキルの説明をしていった。
3人は、スキルの効果に驚きながら時折質問をしながら聞いていた。
「それでは、最後に私のスキルをお話します。私のスキルは、創造魔法、MP回復速度2倍、火水土風属性、消費MP半減の4つです。創造魔法は、私が思い描いた魔法を作れるスキルです。作れるのは、私の適正属性のみです。威力や効果によって消費MPは変わる様です。魔法を思いついても、MPが足りないと発動しません」
ほのかのスキルもとんでもなかった。
何でこんなにレアスキル持ちが集まったんだ?疑問に思ったが、答えはきっと出ないだろう。
「春輔の息子と結界のお嬢ちゃんだけじゃなく、全員がレアスキル持ちかい。こりゃ、よく集まったもんだね」
「レアスキルってだけじゃなくて、効果もヤバいスキルばかりじゃねえか...」
「これは、専属を付ける事にしたのは、結果として英断だったかもしれませんね」
「そうだろう。あたしの目は確かなのさ」
「偶々だろうが言い返せねえ」
「皆さんこれから宜しくお願いします。それで、パーティー登録はこれからでしたね?」
「はい。カウンターに行こうとしてる時にナンパされたから行けなかったんです」
「ではここでパーティー登録をしてしまいましょう。パーティー名はどうしますか?」
「パーティー名はクローバーでお願いします」
「クローバーですね?リーダーはどなたになさいますか?」
「春くんで」
「春斗っちで」
「春斗くんで」
「えっ?」
「では黒木さんで登録致します。登録されました」
えっ?相談は?俺抜きで話し合っていたの?あと源さん、登録されるまでが異常に早くないですか?
「あの、聞いてないんですが...?」
「ダメだった?でもリーダーは春くんだよー」
「春斗っち以外なくない?」
「春斗くんが適任です」
「春斗、リーダーは男がやってる方が舐められないからお前がやっとけ」
「春輔の息子がリーダーなら絡んでくる輩も減るだろうね」
「はぁ、分かりました。リーダーやります」
「既に登録も済んでいますしね」
いや、源さん?変更は出来ますよね?
「源さんにお願いが1つあるんですが、緊張するので口調を崩して貰う事って出来ませんか?」
「アッハハハ、大人としての対応じゃ緊張するかい。可憐、弟や妹に接するみたいに接しておやり」
「私一人っ子なんですけど。分かったわ。これから宜しくね」
「可憐ちゃん宜しくねー」
「可憐姉よろしく〜」
「かれんさん宜しくお願いします」
「可憐さん宜しく」
「ふふっ、一気に可愛い弟と妹達が出来たわね」
「それじゃあ仲良くおやり」
「源。宜しく頼む」
「黒木部長お任せ下さい」
「お前らはこれからどうするんだ?ダンジョンに潜るのか?」
「いや、装備もないから買いに行って帰るよ」
「そうか。気を付けて行けよ?金はあるのか?」
「初心者用の装備を買える位は持って来てるよ」
「そうか」
「剣鬼も息子の前じゃ親の顔だね。そういえば、お前さんらは何処のダンジョンをメインに潜るんだい?」
「専属を付けてもらってあれなんですけど、うちの高校に出来たダンジョンをメインにしようと思っています」
「まあ、その方が便利だから仕方ないね。今の期間なら、手続き上でもうちのダンジョンで問題なかったんだけどね。可憐、あんた明日からあっちに行きな。異動手続きはやっとくからね」
「分かりました。急いで引継ぎをしておきます」
「まあ、分からないことがあれば、連絡が行くだろうから対応しておくれ、同じ市内だし宜しく頼むよ」
「分かりました」
可憐さんは、向こうに異動して来てくれるらしい。なんだか申し訳ないな。
予定よりも大幅に時間が掛かったが、俺達はダンジョン協会の建物を出て、すぐ近くのダンジョン関連商品のお店に入った。
「いらっしゃいませ。お嬢様。本日はどうなさいましたか?」
「探索者登録をして来たので、パーティーの仲間と装備を買いに来ました。商品の説明をお願いします」
「畏まりました」
俺達4人それぞれに店員さんが付いてくれ、商品の説明を丁寧にしてくれた。まあ、経営者の娘とその友人だもんな。丁寧にもなるか。
防具は全員お揃いの革の装備になった。
「防具はお揃いだねー」
「まあ、1番安い防具一式だからね~」
「ほのかはそれで良かったのか?もっといいやつも買えるんじゃないか?」
「1人だけ浮くのは嫌です」
「そうか。そうだよな」
「春くーん...」
「春斗っちは鈍いね~」
「うっ。す、すまん」
「それでは武器はどうなさいますか?」
店員さんが空気を変える質問をしてくれたお陰で、残念な子を見る目から解放された。
武器は、俺と雛が刀、唯佳とほのかが杖を選んだ。初心者用の物なので安い物だが、それでも5万円。高校生にとっては大金だ。
「うう~早くダンジョンで稼がないと何にも買えないよ~」
「なんとか電車代は残ったー」
雛と唯佳が寂しくなった財布の中を見て、悲壮な声を出す。
俺もヤバいけど2人よりはマシっぽい。
「唯佳、俺は歩いて帰るな。1時間半位で帰れると思うから、ばあちゃんに伝えておいて」
「うん。気を付けてねー」
「ああ」
「私は甲州街道まで出てバスなので、2人とは別方向ですね」
「ほのかっちも別か〜じゃあ、唯佳っち2人で帰ろっか?」
「うん。そうだねー。雛ちゃんは北八だよね?」
「そうだよ。唯佳っちは小宮でしょ?なら八高線も一緒だね」
俺達が今いるのは、富士森公園の近くだから、2人は西八から電車で帰る。ほのかは、少し距離はあるけど甲州街道まで歩いて、バスに乗って帰るらしい。
「それじゃあ、ここで解散だな。みんな気を付けてな?」
「「「は~い」」」
俺とほのか、唯佳と雛に別れて帰路に着いた。
「春斗くんのお家まで、ここから1時間半で帰れるんですか?」
「地図アプリだと1時間15分って出てるから、たぶん平気だと思うよ?」
「なら、私の家までならもっと短い時間で帰れますね。私も歩いてみようかな?」
「おっ?ほのかも歩くか?」
「春斗くんのお邪魔じゃないですか?」
「邪魔じゃないよ。話し相手が出来て助かるよ」
「では、歩いてみます」
現在の歩数は、169,482歩、少しでも歩数を伸ばしたいけど、ほのかとのんびり話しながらでも歩数は増える。
甲州街道を抜け、16号に入り更に北へと進む。
「ほのかの家はどこら辺なんだ?」
「うちはこのまま真っ直ぐ行って、少し右に行った辺りです」
「そうなんだ」
「今度、みんなで遊びに来て下さい」
「分かった。お邪魔するよ」
ほのかと雑談をしながら進む。
浅川に掛かった橋を渡り、美味しいハンバーグ屋さんの手前に差し掛かった所で
「それでは、私はこっちなので、ここで失礼します。楽しくおしゃべりしながらだと、あっという間でしたね」
「そうだな。楽しかったよ。付き合ってくれてありがとな。それじゃあ、気を付けて」
「はい。ありがとうございます。春斗くんも気を付けて下さいね」
「ああ、ありがとう」
挨拶を交わしてほのかと別れた。
その後、大型家具店を過ぎ、高速のICを越え、滝山街道を右折して、ちょっとした山を登って家に着いた。
ほのかとのんびり歩いて帰って来たせいか、時間が予定より掛かったが楽しい時間を過ごせた。
「ただいま〜」
「おかえりー春くん遅かったねー」
「おかえりなさい春斗。予定より遅くなるなら連絡ぐらいなさい」
「春斗〜おばあちゃんを心配させたらダメだぞ~?」
「お兄ちゃん遅いよ!お腹減っちゃったじゃん!」
「あっごめん」
「凛その辺で許して上げなさい、春斗はお風呂入って来なさい」
「うん」
みんなに心配させてしまった様だ。妹の凛は、純粋に空腹で怒ってるようだが。
風呂から出たら、両親も帰宅しており唯佳のうちのおじさんもいた。おばさんは夜勤で帰らないらしいので、今いるメンバーで夕飯を食べ、自分の部屋で就寝した。
名前:青山 ほのか 所属:クローバー
年齢:16歳 誕生日:7月1日
Lv:1
MP:27/27
力:8
耐久:8
敏捷:9
器用:10
魔力:16
運:69/100
スキル:創造魔法、MP回復速度2倍、火水土風属性、消費MP半減
※創造魔法
・イメージした魔法を所持属性に限り創る事が出来る。
・最大消費MPは、イメージした時に自動で設定され、それ以上にはMPを込められない。
・最大消費MP以内であれば、自由に調整出来る。