#3 トラブル
7月1日(月)
「お待たせしました。無事にスキルも取得出来ました」
俺達は今、全員でほのかの探索者講習に付いて来ている。
まあ、ほのかが講習を受けてる間は表を散歩したりしていたんだけど。
「それじゃあ、パーティー登録をしに行こうか」
「「「は~い」」」
それにしても、この3人かなり目立っているな~、タイプは違うけど3人共かなりの美少女だからな~、面倒事にならなきゃいいけどな〜
そう思っていると
「お姉ちゃん達新人かい?よかったら俺達が先輩として色々教えてやろうか?何ならレベル上げも手伝ってやるぜ」
「俺達こう見えてDランクの探索者パーティーだからよ、仲良くしといて損はないと思うぜ」
「取り敢えず向こうで話でもしようか」
早速ナンパされてるじゃん。
先輩方?俺もいるんですけど?見えてます?
取り敢えず止めに入ろうと思ったら
「はあっ!?こんなとこでナンパとか馬鹿なん?」
「おー雛ちゃんズバリ言うねー」
「ご厚意感謝します。ですが、下心丸出しの下品な顔で近付かれても気持ち悪いので、ご遠慮させて頂きます」
雛でキツッて思っていたら、ほのかはもっと辛辣だった。
「はっ?て、てめぇらちょっと顔が可愛いからって調子に乗ってるんじゃねぇぞ!!」
「新人がDランクの探索者ナメてるとどうなるか教えてやろうか!?ああっ!!」
「調子に乗ってる新人には教育が必要だよなぁ!!」
あ~あ、怒り狂っちゃったじゃん...
間に入るの嫌だけどしょうがないか...はあ〜
「先輩方すいません。うちのパーティーメンバーが失礼な事を言ったみたいで、よく言っておくので許してもらえると助かります」
今の俺達では、Dランクの探索者には勝てないかもしれないので下手に出た。
「ああっ何だてめぇ!?こいつらの仲間か!?」
「俺達はそっちの3人に用があんだよ!引っ込んでろ!!」
「なよっちぃ兄ちゃんは、怪我する前にどっか行っとけ!邪魔だ!」
聞く耳なしか〜しょうがない。通用するかは分からないけどやるか〜なよっちぃかもしれないけど、俺だってカチンとは来るんだぞ。
「唯佳、お前達3人の周りに結界を張ってくれ、こいつらは俺1人でやる」
「分かった。結界」
3人の周りに結界の膜が現れた。
「なっ!?結界!?新人じゃないのか!?」
結界は光魔法Lv1で使える魔法だ。光魔法は通常、取得し難いスキルと言われていて、探索者になって経験を積んだ適性のある人だけが取得出来る希少性の高いスキルだ。しかも結界は、光魔法Lv1を覚えても使える人と使えない人がいる。それは、才能の差と思われており、結界を使える時点で優秀だと判断されるらしい
だから普通は新人が使える様な魔法ではないのである。
「でも、俺達を1人で相手するだと?ガキが女の前でイキってるんじゃねぇぞ!」
言い終わると同時に殴り掛かって来た男の拳が届く寸前。
「纏雷」
『バチバチバチッ』
「ギャアアアーーー」
纏雷によって生み出された雷の膜に触れた途端、男は悲鳴を上げ床に倒れた。
ぶっつけ本番だったけど、どういうスキルかは、ある程度は理解出来るから心配はなかった。
威力の面の心配はあったけど、弱すぎず強すぎず丁度いい感じでよかった。
「な、何だ?今、何しやがった?」
「てめぇのスキルか?何しやがった!?」
「先輩方すいません。敵対している相手には自分の事は教えられません。常識なので覚えておいて下さいね?」
「てめぇ...ナメるなよ!!」
煽りすぎたか?残った2人が剣を抜いた。
纏雷は消費MPが今の俺にとっては多いので、一瞬だけ使っただけだけど、あっ!纏雷は1回しか使えないんだった。
どうしよう〜
「そこまでにしとけ」
そんな声が聞こえ、いつの間にか協会の職員さん達に囲まれていた。
俺が声の方に振り向くとそこにいたのは、
「父さん」
「騒ぎが起きてると聞いて来てみれば、お前か春斗」
ダンジョン協会のこの支部で、警備部の部長をやっている父がいた。
「父さん?えっ?剣鬼の息子!?」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ん?剣鬼?父さんの事かな?物騒なあだ名だな。
周りにいた探索者だけじゃなく、職員さんにも驚いている人がいる。
「父さんごめん。絡まれて口で言っても引いてくれなくてついやっちゃった」
「まあ、話は向こうの部屋で聞く」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
春斗達がいなくなったロビーでは
「何か凄かったな」
「なあ~新人で結界を使える女の子に驚いていたら、そのパーティーメンバーは新人なのにDランクを瞬殺しちまうし、しかもあの剣鬼の息子だって言うんだからな~」
「何したのか見えなかったんだけど、あいつが何したか見えたやついるか?」
「一瞬だけど、雷みたいなのが見えたぞ。でも、雷を使えるスキルなんてあったか?」
「いや、聞いた事ないな」
「今回、手を出さなかった2人もヤバいのかな?」
「分からんけど、手は出さない方がいいだろうな。あの2人は普通でも、剣鬼の息子は新人離れしてるし、何より息子の仲間に手を出されたら剣鬼も出てくるかもしれないぞ?」
「俺、手出さない...可愛かったのにな~」
「俺はあの結界を張った子のファン1号だ!」
「「「「「!?」」」」」
「じゃあ、俺はあのギャルの子のファン1号だ!」
「俺はあのお嬢様っぽい娘のファン1号だ!」
「お前らずりぃぞ!!」
「おい各1号!ファンクラブ作れ!俺入るから早く作れ!」
「そうだ!1号名乗るなら早く作れ!!」
女性探索者や女性職員の冷やかな視線に気付けない男達の喧騒が広がっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「話は分かった。お前達は自分達のランクを笠に着て新人の女の子をナンパしようとした。が、きつい返しを食らって頭に来て、止めに入ったこいつの言葉に耳を貸さずに返り討ちに遭ったと、そういう事だな?」
「「「はい」」」
「取り敢えず、唯佳ちゃん達3人はお咎めなし。但し、今後は言葉には気を付けて、こういう輩もいるんだから、いいね?」
「「「はい」」」
「それから春斗。お前は諍いにスキルを使ったが防御スキルの一種だと判断出来る為、今回はお咎めなしとする。但し、今後は無暗に相手を煽るなよ?」
「はい」
「お前達3人も今回はお咎めなしにしておくが、Cランク以上になる為には、人格も求められる。普段から考えて行動しないといつまで経っても、上のランクに上がれないままだぞ!」
「「「はい」」」
「それじゃあ、解散。なんだが、春斗達はちょっと待ってろ」
「「「「はい」」」」
Dランクの3人が出て行き、父さんが内線で何処かに連絡している。
直後。
「待たせたね〜!」
「いや、はえーよ!!内線に出ねえと思ったら、何処にいたんだよ!」
「あんまり褒めるんじゃないよ春輔」
「褒めてねぇわ!」
「お前達かい?春輔の息子とその仲間は」
「「「「は、はい」」」」
「アッハハ。吶るとこまで一緒とは、息が合ってるじゃないかい。あんたらにちょっと聞きたい事があるんだよ。スキルに関する事なんだが、教えてくれないかい?勿論、聞いた事は一切他言しないと誓うよ。どうだい?」
「話す事で私達にメリットはあるのでしょうか?スキルの事は、たとえダンジョン協会に対しても詳細を教える義務はないと聞いています。鑑定のスキルでも魔道具でも、詳細までは見れませんよね?」
「詳しいねお嬢ちゃん。スキルの事を教えてくれたら、専属を付けて上げようじゃないか。どうだい?悪くない話だと思うよ?」
「お、おいババア。新人に専属を付けるのか?そんな話聞いた事ないぞ」
「それだけあんたの息子とそのパーティーメンバーには、可能性を感じるんだよ」
「いや、自分の好奇心を満たす為としか思えねえぞ?」
「ハア〜、元Aランク探索者でも、息子の事となると目が曇るのかい?」
父さんと突然現れたおばあさんが話してる間、こちらも相談をする。
「どうしますか?専属を付けてくれるというのは、破格の対応だと思います」
「専属って何なん?」
「専属っていうのは、優秀な探索者に協会が付けてくれる専属の職員さんの事だな。専属専用カウンターを使えて、態々並ばなくて良かったり、困った時に相談をしやすかったりと色々メリットがある。普通は新人に付けられる事はないと思う」
「おーVIP待遇だー」
「アタシは別に教えてもいいよ?」
「私もー」
「私も構いません。まだみんなに教えてないのが少し引っ掛かりますけど」
「俺も教えていいと思う。ほのかは俺達も一緒に聞くんだし気にしなくてもいいんじゃないか?」
「そうですね。では、話して専属を付けてもらいましょう」
「決まったかい?」
「はい。お教えします」
「ありがとうよ。それじゃあ、教えてもらう前に専属に付く娘を呼ぼうかね」
おばあさんはそう言って内線を掛けた。