#29 唯佳はエスパー!?
「みんなおかえりなさい」
「「ただいま〜」」
「かれんさんただいまです」
「可憐さんただいまです。戻って早々ですけど、こいつの従魔登録お願いします」
「雪うさぎ?どうしたの?この子」
「春斗っちがテイムしたの〜、名前はアタシが付けたんだ〜」
「春斗くん、テイムスキル覚えたの?」
「ええ、一昨日覚えました」
「また、レアスキルを簡単に...それで、この子の名前は?」
「雪兎だよー」
「いい名前ね」
「でしょ〜」
「はい。登録したわよ」
「ありがとうございます。かれんさん」
「じゃあ、換金もお願いします。唯佳」
「はーい」
「え~と?小魔石が20個、デザートウルフの牙が4個、除湿剤が2個、雪うさぎのモモ肉が3個、デザートウルフの毛皮が1個、雪うさぎの毛皮が1個、合計で55,500円よ。20階層台のレアドロップは+1,000円で計算されるわ。魔石の数が少ないのは、その子が食べたのかしら?」
「うん!7個食べたのー」
「そんなに食べたの?普通はそんなに食べないって聞くんだけど...兎に角、これからは魔石の数は減りそうね」
「ええ、こいつの餌なので」
「分かったわ。それじゃあ、私達もご飯に行きましょうか?」
「「「は~い」」」
俺達は、いつもの中華屋さんで昼食を摂り、ダンジョンに戻った。
因みに、俺はホイコーローを食べました。
あそこの店、どんどんメニューが増えてる気がする。
今日は、25階層で狩りをする事にした。
「この階層は、スノーゴーレムが基本的に10体で、パンテラ・アンシアが最大3体、アルクス・アルクスが1体で出てきます」
「呪文が2つ聞こえたよ?」
「雛ちゃん、呪文じゃないよ?パンテラ・アンシアはユキヒョウの学名で、アルクス・アルクスはヘラジカの学名だよー?」
「ネットで調べると他にも言い方があるみたいだから、どれがホントか分からなかったけどな」
「...2人共何でそんなの調べたん?」
「「動物好きだから?」」
「...どんだけ好きなんよ」
「ふふっ息ぴったりですね」
「キュッ?」
俺達のやり取りを、よく分かってなさそうな顔で見ていた雪兎を連れて、狩りに向かう事にした。
「そういえば、雪兎っちってこの階層で戦えるん?」
「キュキュッ!」
「任せろって言ってる様だけど...一応様子見しながら、戦わせてみるか」
「1階層違うと、強さも違いますからね」
「うん。そうだね~」
「ゆきくん、ムリしないんだよ?」
「キュッ!」
雪兎を連れ、最初に遭遇したのはアルクス・アルクス。デカくないですか?普通のヘラジカは大きくても3m位って聞いていたけど、こいつは5mはありそうなんだけど。
まず、雪兎が果敢に突進する。
脚にしか攻撃してないけど、アルクス・アルクスは鬱陶しそうに鳴きながら、脚をジタバタと暴れさせるだけで、雪兎に当たる気配はない。
でも、何で雪兎は脚ばかり狙ってるんだ?見る限り、有効ではありそうだけど。
そう思っていると、雪兎がウィンドアーマーで空中を駆け出した。
伝わってくる感情は、(忘れてたっ!)って感じだな。
テイムの影響なのか、テレパシーの様な感じで、俺は雪兎の思っている事がなんとなく判るし、雪兎は俺の思っている事が大体判るようだ。
空中を走れる事を思い出した雪兎は、アルクス・アルクスの腹部に攻撃を集中、そこから2分弱でアルクス・アルクスを倒して見せた。
「ゆきくんすごーい!」
「キュッ!」
「あんなに大きさが違うのに倒しちゃった~」
「でも、何で最初は脚ばかり狙っていたんでしょうか?」
「空中を走れる事を忘れてたらしい」
「キュッ!?」
雪兎から、(バラさらされた!?)という感情が伝わってきた。
ご、ごめんね。ダメだった?
「アハハッ雪兎っちはうっかり屋さんだね~」
「ご主人様に似ちゃったの?」
「唯佳?俺がいつ、うっかりやらかした?」
「ん?知りたいの?」
「いえ、大丈夫です!」
「ふふっゆきとくんも戦える様ですし、連携面も練習しましょうか?」
「そうだな。雪兎、周りの動きを見て、お前は相手を撹乱させる事に徹しろ。あと、俺の攻撃とほのかの魔法の時は距離を余計に避ける様にする事。いいな?」
「キュッ!」
「判ったのかな?」
「頭いいねー」
「どの位の知能があるんでしょうね?」
アルクス・アルクスを立て続けに見つけ、俺の攻撃とほのかの魔法の威力を見せたせいか、その後の戦闘時にはきちんと距離を取って避けていた。
「雪兎もなんとなく判って来た様だし、ペースを上げようか?」
「うん。そろそろ本気で暴れたい!」
「分かった。雪兎は1回参加しないで、見ていてくれ」
「キュッ!」
「じゃあ、行くぞ!」
「「「はい!」」」
近くにいたスノーゴーレムを瞬く間に狩り尽くし、更に近くにいた別のスノーゴーレムの群れも流れで狩り尽くした。
「ん?食べたいのか?」
「キュッ!」
「いいぞ。どれくらい食べるか判らないから、食べれるだけ食べていいぞ。あとで調整するかもしれないけど、適量が判らないからな」
「キュッ!」
「その間にコアⅡを融合しておくか」
「はいどーぞ」
「ありがとう唯佳」
コアⅡを融合してコアⅡ★☆☆にして、雪兎が小魔石10個を平らげたのを見て狩りを再開した。
「スノーゴーレムをメインにして狩って行こう」
「「「はい!」」」
「キュッ!」
サーチと鑑定でスノーゴーレムを狙い撃ちにして、小魔石と通常ドロップの雪の結晶、レアドロップのゴーレムコアⅡを荒稼ぎして行く。
トイレ休憩の時に、雪兎に魔石を上げているのだが、上げれば上げるだけ食べて行く。
小さな身体の何処にそんなに入るのか不思議で仕方ない。
因みにトイレは、簡易式のテントみたいな物が市販されていて、女性探索者の必需品となっている。
「また、雪兎っちは魔石食べてんの?」
「ああ」
「何処かの小柄な大喰いの女の人みたいー」
「分かる〜そういう動画観てると凄い気持ちいいよね~」
「でも本当に、この小さな身体の何処に入ってるんですかね?」
一瞬、また心の声が漏れたのかと思ったけど、どうやら単純にほのかも同じ事を思っただけの様だ。
よかった~もう、治ったのかもしれない。
「春くん何がー?」
治ってなかった...
「ああー、思ってる事を声に出しちゃう曲のことー?それなら直ってないよーそれと、なおるの字は直接の直が正解だよー」
何で声で字の間違いまで!?エスパーか!?
ずっと間違ってた。今まで、人が喋ってる時も治るで脳内変換してたわ...そうか、そっちなんだ。気を付けよ。
結局今日は、ほぼスノーゴーレムを狩って帰還した。
「可憐さんただいまです」
「おかえりなさい」
「換金お願いします」
「可憐ちゃんお願いしまーす」
「ふふっはい。久し振りに多い気がするわね」
「最近は、ずっとボス狩りしてたので、討伐数が少なかったですからね」
「そうね。あら?魔石は換金しないの?」
「ええ、こいつが底なしで食べるので、魔石は換金しない事にしました」
「そんなに食べるの?普通は、1日1個上げるだけって聞くわよ?」
「そうなんですか?じゃあ、こいつもそうした方がいいのかな?」
「キュッ!?」
そう言って雪兎を見ると、全力で首を横に振っている。
「プッふふっ嫌みたいね」
「みたいですね」
可憐さんが思わず吹き出しちゃったじゃん。
「じゃあ、ちょっと待っててね。換金しちゃうわね」
「はい」
雪兎に魔石をあげながら待っている。カワイイな~
「お待たせ、雪の結晶が301個で692,300円ね。今日、レアドロップはどうしたの?」
「ちょっとやりたい事があるので、持ち帰ります」
「そうなの?また何か、とんでもない事をやる気じゃないでしょうね?」
「いや、ただの実験ですよ」
「それが怖いのよ...」
可憐さんが何を恐れているのか分からずに、首を傾げつつ帰路に着く。
帰路に着くの着くってこれでいいのか?唯佳に字の間違いを指摘されて、他も気になってきちゃったよ。あとで調べとこ。




