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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
1章 学校ダンジョン
18/129

#18 ほのかの母

 7月17日(水)


「おはようございます。春斗くん、唯佳さん」

「おはよう、ほのか」

「おはよーほのかちゃん」

「昨日の件、母に確認をしたらいつでもいいそうです。今日でもいいそうですけど、どうしますか?」

「今日でもいいなら今日がいいけど、こんなに急でご迷惑じゃないのかな?」

「母がいいと言ってますので、問題ありません」

「そうしたら今日、伺おうかな」

「ではその旨、母に連絡しておきます」

「よろしく」


 放課後


「お嬢様いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」


 店員さんに案内され、エレベーターで最上階へとやって来た。


 コンコン


「はい。どうぞ」

「失礼致します。会長のお嬢様とお嬢様のご友人がいらっしゃいました」

「ありがとうございます。あとはこちらで引き受けます」

「宜しくお願い致します。では、失礼致します」

「お嬢様、黒木様、いらっしゃいませ。秘書の桜井 萌と申します。どうぞこちらへ」


 コンコン


「どうぞ」

「会長、お嬢様と黒木様がいらっしゃいました」

「ありがとう。ほのかいらっしゃい、黒木くん初めましてほのかの母、青山 涼子です。どうぞソファーへ」

「初めまして、ほのかさんとパーティーを組んでいる黒木 春斗です。本日はお忙しい中、急にお時間を取って頂きありがとうございます」

「娘からのお願いですから、気にしないで下さい。それにしても、ふふっそう、あなたが...」

「お、お母さん!?」

「はいはい。分かっていますよ」

「もう!」


 ん?何だろう今のやり取りは?


「あの、ほのかさんの友人として、普通に接して頂けると助かります」

「あら、そう?じゃあ、そうさせてもらうわね。ふふっ黒木くんも普通でいいわよ?って言っても年上相手だとそうも行かないわよね?」

「ハ、ハハ。どうしても敬語は残ってしまうかと思います」

「では、フランクに涼子さんって呼んで頂戴」

「分かりました。涼子さん」

「お母さん、距離の詰め方が早すぎませんか?」

「そんな事ないわよ?妬いてるのかしら?」

「なっ!?そ、そんな事ありません!」

「ふふっそう?」

「会長、そろそろ本題に」

「あら、そうだったわね。では、リペアの練習用に金属や壊れた革製の防具を買い取りたいとの事でしたね。ああ、仕事の話なのでお母さんモードは、一旦お休みね。」

「はい」

「金属の方は、練習用という事ですから、鉄をご用意させて頂こうかと考えていますが、如何でしょうか?金額は、10kgで1,000円でお譲りします」

「そんなに安くていいんですか?」

「ふふっ今回ご用意させて頂くのは、折れた剣や刀、槍等になります。中には欠けただけの物も含まれると思いますが、基本的には、世間では屑鉄扱いされる様な物になります。当社でもリペアを持っている社員は居りますが、ここの本社の工房に6名が在籍しているだけです。ですので、全国から買い取ったそういった物は本社に集められます。直して販売する物も当然ありますが、殆どはリペア職人の練習用になります。黒木くんは屑鉄の相場を知っているかしら?」

「いえ、全く知らないです」

「娘の友人だから騙したりはしないけど、素直過ぎると騙されちゃうわよ?」

「えっ?あっ!気を付けます」

「ふふっ他所では気を付けてね。話を戻しますが、現在の屑鉄の相場は1kg大体48円位です。10kgでも480円です。これを元に買取をさせて頂いているので、10kg1,000円でも、きちんと利益は出させて頂いているんですよ?」

「鉄ってそんなに安いんですね」

「あくまで、屑鉄の値段ですけどね」


 なるほど、新品とかならもっと高いんだろうな。


「それと革製品に関してですが、こちらは店頭で1kg500円で販売しておりますので、1kgからご注文承ります。10kg単位でご購入頂けるのであれば、ほのかのご友人という事も加味させて頂いて、10kg3,000円でご用意させて頂きます。正直、買取価格と同じ価格での販売になりますが、うちとしましては在庫処分出来るので赤字でないのであれば、ありがたいと言った所です。如何でしょうか?」

「こちらとしては、もっと高いと思っていたので助かります。ぜひ、この金額でお願いします」

「承知いたしました。では、こちらが契約書となります。内容をご確認の上、ご記入下さい」

「はい」


 内容に問題ない事を確認して、氏名、連絡先、住所、探索者カード番号を記入して、署名して涼子さんに渡した。


「はい。これで契約は完了しました。今、担当の者を呼んでいますので、少々お待ち下さい」

「分かりました」

「春斗くん、これでリペアの練習がやりやすくなりますね」

「ああ、今まではなかなか出来なかったからな」

「武器や防具に拘らなくても、壊れている物なら何でも直せるらしいから、壊れている物を見つけて練習する事も出来るそうよ?」

「勝手に直していい壊れてる物って捨ててある物くらいしか思い付かなくて、しかも、それでも不審者扱いされそうですし」

「そう言えばそうね。あの娘大丈夫かしら?」

「あとで確認しておきます」

「ええ、お願いね」

「はい」


 コンコン


「どうぞ」

「失礼致します。遅くなってしまい申し訳ありません」

「柏木さん、こちらに来て頂戴」

「はい」

「黒木くん、彼が担当の柏木です」

「黒木といいます。宜しくお願いします」

柏木かしわぎ とおるです。宜しくお願いします」

「注文は彼に連絡して下さい。契約書にも記載してあったと思いますが、代金は探索者カードの口座から毎月25日にご購入頂いた分だけ引き落とされるので、残高には気を付けておいてね?」

「分かりました」

「私は、あまり自分の席にいないので、名刺にある携帯番号に連絡をもらえると助かります」

「分かりました。これから宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくお願い致します」

「今日は買って行く?勿論、郵送で送らせてもらうわよ?」

「それじゃあ、鉄10kgと革製品10kgお願いします。あっ!あと、間違って祖母が手渡しで受け取らない様に、商品名には毎回重さも分かりやすく書いておいてもらえますか?」

「分かりました。その様に致します」


 無事契約も済み、練習材料の購入も済んだので、御暇おいとまする事にした。


「それでは、僕はこれで失礼します。今日はお時間頂きありがとうございました」

「今度はもっとゆっくりお話出来る様に、家の方に遊びに来て頂戴」

「はい。分かりました」

「では、春斗くん。帰りましょうか。お母さん、ありがとうございました」

「2人とも気を付けて帰るのよ?」

「「はい」」


 俺とほのかは挨拶をして部屋を出た。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お疲れ様でした会長」

「ふふっ疲れる様な事でもないわ。柏木君、彼の事よろしくね」

「はい。お任せ下さい。では、失礼します」


 ガチャッ


「彼がほのかちゃんの想い人...ですか」

「ええ、あなたの目にはどう写ったかしら?」

「礼儀正しく真面目な少年で好感が持てました。正直過ぎる様にも思えましたが、恋人や夫にするなら一概に悪い事とはなりません。ルックスはこう言ってはなんですが、良くも悪くも普通だと私は思いました。」

「そうね。ちゃんと見極めるには時間が短かったけど、私もあなたと同じ感想ね。ほのかの他にも、彼に好意を寄せている娘はいるらしいし、悪い人ではないのでしょう。ほのかはSランクになれると人物だから、みんなで支えて行くと言っていたわ」

「Sランクですか?それはまた、ほのかちゃんも凄い評価をしましたね」

「ふふっ好意で目が曇っていない事を祈るばかりね」

「そうですね。少し、協会内での評価など調べてみます」

「ええ、お願いね」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


青山 ほのか視点


「春斗くんは、歩かなくても良かったんですか?しかもバスで帰るにしても、この路線だと遠回りですし」

「1人でバスっていうのも寂しいだろ?今日は付き合ってもらったんだし、このくらいはさせてくれ」

「ふふっありがとうございます。そ、そういう気遣い出来る所、す、好きですよ」

「ハハッありがと」


 春斗くんは、今私が言った〝好き〟の意味をきっと理解していない。でも、今はそれでいい。抜け駆けする訳には行かないですもん。


 帰ったらみんなに今日の事を報告しましょう。今、好きと言ってしまった事も、じゃないと不公平ですよね?


 春斗くん。いつかみんなで一緒に、ちゃんと気持ちを伝えられるまで、あなたの事を支えて行きますね。

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