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ある日ダンジョン出現に巻き込まれた  作者: 鹿野
1章 学校ダンジョン
14/129

#14 可憐のお願い

 7月13日(土)~7月14日(日)


源 可憐視点

 

 私が専属として担当しているパーティーの子たちが転移陣で帰って来たのが見える。


 最初に上司から専属に付くようにと言われた時は、新人の子達に専属なんてと思った。


 しかも上司がその子達のスキルを知りたいからという個人的な好奇心を満たす為と聞き頭を抱えたくなった。


 お世話になっている上司からの指示だし、仕方ないと思い上司と別部署のもう1人の上司と一緒に話を聞いた。


 パーティーメンバー4人のスキルを聞いて、私は驚愕した。

 それは私だけでなく、上司達も同じだった様だ。別部署の上司はパーティーメンバーの1人の父親なのに詳細は知らなかったらしい。


 彼らは、同じ市内に新しく出来たダンジョンを主戦場にするらしく、私は翌日付で急遽移動する事になった。


 緊張するから砕けた感じで接して欲しいと言われ、仕事上の言葉遣いではなく普段の口調で接する事にした。


 リーダーを押し付けられた男の子とお嬢様然とした女の子からはさん付けだったが、他2人の女の子からは、可憐ちゃんや可憐姉と呼ばれ、可愛い弟や妹が出来た様な気になった。


 私が新しい職場に移った日からダンジョンに潜った彼らは、いきなり多くのドロップアイテムを持ち帰ってきた。


 3時間程度の探索で100個以上の魔石を持って帰ってきたのだ。普通は50個位なので、単純に倍の討伐数だ。


 ドロップアイテムの数にはもっと驚いた。

 普通は討伐数の3割程、なのに彼らは5割程も持ち帰った。


 これには、彼らも驚いたらしいが理由ははっきりとは分からないとの事だった。


 更にメンバーの娘のスキル効果で、レアドロップの数は尋常ではなかった。

 普通は討伐数の1%程度と言われているのに、その娘のスキル効果で討伐数の1割もあるのだ。

 換金額は、普通のパーティーの数倍に達した。


 彼らは日を追う毎に討伐数を増やして行き、1週間も経たずにレベルアップまでしてしまった。

 普通は25日前後でレベルアップする事が多い。


 勿論、例外的に早くレベルアップする人もいるが、それはソロだったり、2人組だったりといった少人数のパーティーの話である。


 驚異的なペースで成長する彼らに、私は非常識な頼み事をしてみる事にした。


「みんなおかえり。いい顔してるわね」

「可憐ちゃんただいまー」

「可憐姉ただいま〜。狩りまくってテストで溜まったストレス発散できた~!」

「かれんさんただいま戻りました」

「可憐さんただいまです」

「ああ~そういえばテスト明け初ダンジョンだったわね」

「そう!そうなんよ!それなのに午前中は移動に時間掛かっちゃったから、だから午後は気持ちよかったよ~」

「ふふっ良かったわね。取り敢えず、換金しちゃいましょうか」

「はーい」


 唯佳ちゃんがカウンターの上にドロップアイテムを出して行く。

 ん?ちょっと多くない?

 午後からは初めて5階層を探索すると聞いていた。


 彼らのレベルだと1体1体倒すのに時間が掛かるだろうから、討伐数は減るだろうと予想していた。でもこの量は...


「じゃあ、ちょっと時間もらうわね」


 断りを入れて数を数えて行く。


「お待たせ。まず、極小魔石が512個、通常ドロップが鉄砲草が101個、ホワイトアントが32個、オオシロアリタケが112個、レアドロップが鉄砲草が22個、ホワイトアントが8個、合計で166,100円ね」


 やっぱり彼らの過去最多に近い討伐数だ。

 でも少し違和感がある。


「何だか通常ドロップとレアドロップの割合が、いつもと比べて合ってない様な気がするんだけど」

「あ~それね~いつもは割りかし同じ種類の魔物を纏めて狩ってるんだけど、今日は勢い任せに種類を気にせず狩ってたの〜そしたらそうなっちゃったんよ~」

「どうやら、レア率固定は種類に関係なく、10体目に倒した魔物の時に発動するみたいですね」

「て事は、換金額の高いレアドロップを狙う事も?」

「出来ますね。まあ、面倒いんで余程じゃないとやらないと思いますけどね」

「効率悪くなっちゃうもんねー」

「数を数えながらその魔物を探しながらとか面倒くてストレス溜まりそうでイヤ〜」

「ふふっうちのパーティーには、向かないやり方ですね」

「確かにそんな感じがするわね」


 確かにこの子達向きのやり方ではないかもしれない。色々と検証しながらやっている様だけど、それはパーティーの安全性と成長して行く為にやっているだけで、やらなくていいならやりたくはなさそうだもんね。


 換金も終わり、そろそろ雑談も終わりそうなので、私はお願いを切り出す事にした。


「みんなに1つお願いがあるんだけど」

「ん?何ですか?」

「みんなは明日もダンジョンに潜るのでしょ?」

「はい。その予定ですよ」

「私明日はお休みなんだけど、みんなに付いて行かせてもらえないかしら?パーティーに入れてくれる必要はないし、自衛以外で手を出すつもりもないわ。みんながどんな風に探索しているのかが知りたいの。勿論、換金額の分配も必要ないわ」


 非常識なお願いなのは分かっている。こんなお願いはするべきじゃない事も分かっている。

 でも私は、彼らがどういう風に探索しているのかを知っておきたい、専属として彼らを的確にサポートする為にこの目で見ておきたい。

 今ならまだ自衛出来る。でも、これ以上先に彼らが行ってしまえば、自衛すら出来なくなって彼らの探索に付いて行けなくなってしまうかもしれない。

 だからそうなる前に一緒に行きたい。


「いいですけど、可憐さんって戦えるんですか?」

「ええ、高校生の頃に探索者をしていたの。レベルは28よ。」

「おー!可憐ちゃん強いんだねー」

「アタシ達より全然レベル上じゃ~ん」

「でも、換金したお金を分けなくていいんですか?」

「ええ、私の我が儘に付き合ってもらうんだものいらないわ」

「まあ、戦えるなら俺はいいですよ」

「ありがとう。足を引っ張らない様に頑張るわね」

「明日は可憐ちゃんと一緒かー楽しみだねー」

「ね〜」

「では、明日は宜しくお願いしますね。かれんさん」

「こちらこそよろしくね」

「じゃあ、俺達は帰りますね」

「はい。気を付けて帰ってね」

「可憐ちゃんバイバーイ」

「可憐姉また明日〜」

「かれんさんお先に失礼します」


 みんなが帰り、私の仕事も終わった。

 でも、今日はまだやる事がある。


 ここのダンジョンの5階層まで行って転移陣を使えるようにしておかないといけない。

 じゃないと、いきなり足を引っ張る事になってしまう。


 魔物との接敵が少なければ、2時間もあれば戻って来られるだろう。

 多かった場合は、今日中に帰れるかな~


 10年もブランクはあるけど、5階層の入口に行く位は問題ないだろう。


 そうして2時間後、無事に転移陣で戻って来る事が出来た。


 残業で遅くなった日と同じ様にお風呂に入って、コンビニ弁当と缶酎ハイで夕飯を済ませベッドに入った。


 翌朝目が冷めた私は、朝食を済ませ身支度を整えて家を出た。

 久しぶりに袖を通した防具は少し胸の辺りが苦しいけど、なんとか着る事が出来てホッとした。


「可憐さんおはようございます」

「可憐姉おっはよ~」

「可憐ちゃんおはようー」

「かれんさんおはようございます」

「みんなおはよう。今日はよろしくね」

「「「は~い」」」

「はい。宜しくお願いします」


 私の代理の海野さんが怪訝そうな顔をしていたがウィンクしておいた。


「あれ?そういえば、可憐姉ってここの転移陣使えるの?」

「5階層なら使えるわよ。昨日の内に5階層まで行ってきたから」

「えっ?昨日1日で5階層まで行ったんですか?」

「走って行けば、戦闘さえ避けられればそんなに時間は掛からないわよ。まあ、防具を持って来てなかったから、どうしようか迷いはしたけどね」

「可憐さん防具なしで5階層まで行ったんですか?俺達には無茶しないように言うのにですか?」


 春斗くんにジト目で見られてしまった。


「ア、アハハ気を付けます」

「クスクス以外ですね。しっかりもののお姉さんだと思ってましたけど、意外と無鉄砲な所もあるんですね」


 その後、5階層に降り探索を開始した。


「今日はオオシロアリタケを中心に狩りをしつつ、気分転換に偶に鉄砲草を狩ろうか?」

「オッケ〜」

「分かりました。では、行きましょうか。ウィンドアーマー」


 ほのかちゃんが魔法を全員に掛けて行く。


「わっ浮いた!」

「可憐姉、後ろにある壁を蹴って飛ぶ感じで進むと速いよ。方向転換も横の壁を蹴る感じでやるとやりやすいからね」

「わ、分かったわ」

「慣れるまでは大変かもですが、ゆっくり行くので頑張って下さい」

「う、うん」


 その後、なんとか移動方法に少し慣れて来た。それまでにも彼らは魔物を倒していたけど、とても適正階層よりも3つも下の階層で戦っているとは思えなかった。


 移動しながら聞いた話だと、昨日初めてまともに魔物の攻撃を被弾したらしく、あれでも回避の練習の為にいつもよりも時間を掛けて倒しているらしい。


 私が移動に慣れて来たので、移動スピードを少し上げて探索を進める事になった。


 彼らが狩りと表現する理由が分かってきた。

 春斗くんのサーチで魔物を見つけて直行し、見つけ次第、春斗くんと雛ちゃんが突っ込み、ほのかちゃんが魔法を放つ。


 鉄砲草は3人全員が一撃で倒し、ホワイトアントも一撃で倒せる事が多いように感じる。

 1番手数の掛かるオオシロアリタケですら大体は2回で、掛かっても3回で倒してしまう。


 ドロップアイテムは唯佳ちゃんが触った瞬間、空間収納に納められ、直ぐ様次の魔物に襲い掛かる。


 移動はほのかちゃんの魔法のお陰で、普通に走るよりも速い。今日は私の為に抑えてくれているだろうから、いつもはもっと速いのだろう。


 実際に魔物に襲い掛かる時の春斗くんと雛ちゃんは、スピードを更に上げているしね。


 それを休憩もトイレと水分補給の為に1時間に1回5分程しか取らないで続けている。


 昼休憩を挟んで、午後も同じ様に彼らの言う狩りが続けられた。


 時偶ときたま、戦闘後に反省会をしながら次の戦闘から少しづつ、だけど普通のパーティーからしたら凄い速さで改善して行く。

 攻撃を被弾したらすぐに唯佳ちゃんが回復して行く。

 回復量が多いみたいで、回復速度も凄く速い。


 雛ちゃんは時折、忍術の影縛りも使いながら上下左右前後と縦横無尽に動き回り相手を翻弄し、春斗くんは纏雷を温存しながら戦う余裕すらある。


 結局今日の討伐数は、私という足枷がありながら、午前中248体、午後537体にもなった。


 彼らは明日にでも、6階層に行くかもしれない。

 何せ彼らは全員、今日レベルアップしたのだから。


 名前:黒木くろき 春斗はると 所属:クローバー

 年齢:16歳 誕生日:6月26日

 歩数:420,638歩

 Lv:2⇒3

 MP:25/25⇒30/30

 力:20⇒30

 耐久:20⇒29

 敏捷:21⇒30

 器用:21⇒28

 魔力:13⇒17

 運:76/100

 スキル:ウォーキング、サーチLv3、剣術Lv3、纏雷、リペアLv1、鑑定

 ※ウォーキング

 10万歩毎にスキルを1つ取得又は、既存スキルのスキルレベル1上昇


 名前:白坂しらさか 唯佳ゆいか 所属:クローバー

 年齢:16歳 誕生日:6月14日

 Lv:2⇒3

 MP:35/35(105/105)⇒44/44(132/132)

 力:11⇒16

 耐久:13⇒19

 敏捷:12⇒17

 器用:22⇒31

 魔力:23(69)⇒33(99)

 運:77/100

 スキル:女神の祝福、光魔法Lv1、MP回復速度2倍、空間収納

 ※女神の祝福効果

 魔力3倍、MP3倍


 名前:桃井ももい ひな

 年齢:16歳 誕生日:5月5日

 Lv:2⇒3

 MP:23/23⇒32/32

 力:19⇒27

 耐久:15⇒21

 敏捷:21⇒31

 器用:20⇒27

 魔力:14⇒19

 運:93/100

 スキル:レア率固定、剣術Lv2⇒3、忍術Lv1

 ※レア率固定効果

 ドロップアイテムのレア率がパーティーで倒した魔物の数の1割で固定される


 名前:青山あおやま ほのか 所属:クローバー

 年齢:16歳 誕生日:7月1日

 Lv:2⇒3

 MP:35/35⇒43/43

 力:11⇒16

 耐久:12⇒16

 敏捷:12⇒17

 器用:15⇒19

 魔力:26⇒36

 運:69/100

 スキル:創造魔法、MP回復速度2倍、火水土風属性、消費MP半減

 ※創造魔法

 ・イメージした魔法を所持属性に限り創る事が出来る。

 ・最大消費MPは、イメージした時に自動で設定され、それ以上にはMPを込められない。

 ・最大消費MP以内であれば、自由に調整出来る。

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