#1 予期せぬスタート
はじめまして。しかおとこと申します。
初めて書いた作品なので、拙い文章だと思いますが、暇つぶしに読んでもらえれば幸いです。
6月18日(火)
それは帰りのホームルーム中に起こった。
大きな地震が起こり、次の瞬間には担任の教師と36人のクラスメイト達は、見渡す限りの草原にいた。
「えっ?何?」
「ここ何処だよ...」
「私達、教室にいたよね?」
「...えっ?」
突然の事にクラスメイト達が戸惑いの声を呟くが、多くの者は驚きで声も出ていない。
そんな中、担任の教師が言葉を発した。
「みんな落ち着いて聞いて下さい。私達は今、先程までいた教室ではなく、見ての通り草原にいます。考えられる原因は、私達がいた教室にダンジョンが出現し、そこにいた私達が巻き込まれた可能性です」
40代半ばと思われる女性教師は、落ち着いた声で考えられる可能性を述べた。
この世界にはダンジョンがある。約35年前突然世界中に出現したらしい。
それからは毎年10〜20個程新たに出現している。
ダンジョンの出現に巻き込まれた人は、ダンジョンに飲み込まれる。
飲み込まれた人は、大体は1階層にいるらしいが、稀にもっと深い階層にいる事もあるそうだ。
「ここがダンジョンの何階層なのかは分かりません。ですが、ここに居続けて救助を待つよりもあそこに見えている大きな木まで行く事を提案します」
クラスメイト達が教師の指差す先にある大きな木に視線を移す。
ダンジョン内のこういう屋外エリアには、どこまでも伸びているのでは?と思わせる程の巨木が1本あり、その中に上層への階段がある事は、探索者以外にも知られている。
「あっあれが有名な上層へ通じる階段がある巨木か?」
「なら、ここがもし1階層なら階段を昇れば外に出られるって事?」
「最悪ここが1階層じゃなくても、階段には魔物は入れないからここよりも安全に救助を待っていられる」
「ダンジョン内の階層の広さは、1辺が10kmの正方形って聞いた事があるから遠くてもその位って事だよな?」
「休憩を挟みながらなら、警戒しながらでも行けない距離じゃないか」
「時間は確か16時頃だったから、今の時期なら暗くなる前になんとか辿り着けるかもしれないな」
教師が落ち着いた声音で話している為か、生徒も落ち着きを持って状況を理解しようとしている様だ。
入学してから2ヶ月程だけど、この先生は当たりだったと思っている。
こんな状況でも生徒に落ち着きを与えられる教師はそうそういないだろう。しかも、教卓の前の席だから気付けたが、自分の震えを隠しながらなのだから尚更にそう思う。
「このクラスにも探索者をやっている人がいましたね?ここには、イスや机位しかありませんが、ここが1階層と仮定してあの木まで行く事は可能ですか?」
教師の質問を受け、探索者をやっている数名が相談を始めた。
「武器としては心許なさすぎるけど、盾代わりには使えるか?」
「そうだな。あの木を見た感じ距離は5km位か?運動部の奴らはいいけど、普段運動をやってない奴は持って行くのはキツいかもしれないな」
「なら、そういう奴を中心にして、イスを持てる奴らを周りに配置すればなんとかならないか?」
「そうだな。後は探索者をやっている俺達でフォロー出来ればなんとかなるか」
どうやら結論が出たらしい。
「先生、イスを持って5km歩く自信がない奴らを真ん中にして、イスを持てる奴らで周りを囲む形で進めばなんとかなると思います」
「分かりました。では、イスを持って移動できる人はイスを持って下さい。もし途中でキツくなれば、イスを置いて中に移動しても構わないので、協力をお願いします」
教師の声を受け、各々が自分の出来る事出来ない事を考えて行動に移す。
俺は毎朝ウォーキングをしていて体力には自信があるので、イスを持って移動した。
「春くーん」
近くに来てた幼馴染の白坂 唯佳が俺の袖を掴んで心配そうな顔を向けている。
「大丈夫。探索者をやっている奴らもフォローしてくれるだろうし心配いらないさ。それに来週には俺も誕生日になるし、そしたら一緒に探索者になるんだろ?その予行練習だと思えばどうって事はないさ。それに、唯佳も助けてくれるだろ?」
「うん。それは勿論だけどまだ、使った事ないから上手く出来るか不安で...」
「大丈夫。唯佳は器用だし上手く出来るさ」
「う、うん。頑張るね」
唯佳は、教材の入っている学校指定の肩下げカバンだけを持って、俺の隣に陣取った。
「おい白坂、カバンだけでそこは危ないぞ?」
近くにいた探索者をやっているクラスメイトの1人が唯佳に声を掛けてきた。
「三森くんありがとう。でも、私も先週探索者講習受けて探索者になったから大丈夫だよ。まだ、デビュー前だけど、ここなら大丈夫だから」
「そうか?それならいいけど」
声を掛けてきた三森 秀に俺の影から唯佳が答えた。
そんな唯佳の答えに三森は、忌々しげに俺を睨めつけ離れて行く。
「春くん、何かごめんね」
「何で唯佳が謝るんだよ」
「だって...」
「そうそう、唯佳っちは何も悪くないじゃん。気にしなくていいんだよ」
「ひゃぁぁー」
俺と唯佳の会話にクラスメイトの桃井 雛が割り込んで来た。後ろから唯佳の胸を揉みながら。
「雛ちゃん!?もう、急におっぱい揉まないでよーびっくりするんだよ?」
「だって〜これ気持ちいいんだも〜ん」
「も〜んじゃなーい!」
唯佳と桃井がそんなやり取りをしている時だった。
ガサガサガサッ
2人とは反対側から草を掻き分け近付いてくる音が聞こえ、咄嗟に持っていたイスを斜め下から振り上げた。
「ドンッ」
振り上げたイスが何かを打ち上げた。30cm程度の白いうさぎ、頭からは1本の角が生えている。
俺は落下してきたそのうさぎにイスを振り下ろし追撃。地面に叩き付けられたうさぎに更に何度か追撃を加えた。必死だった。
何度目かの追撃を加えた瞬間、うさぎはキラキラとした粒子に姿を変えた。後には小さな石が落ちていた。
【ステータスシステムを獲得しました。スキル ウォーキング、スキル サーチLv1、スキル 剣術Lv1を取得しました】
頭の中に機械音声の様なアナウンスが流れた。
「春くん!大丈夫?」
「黒木!大丈夫?」
じゃれ合っていた唯佳と桃井が心配して声を掛けてきた。
「ああ、なんとか大丈夫」
「「よかった~」」
「春斗!大丈夫か!?」
少し離れた所から五十嵐 陸人が声を掛けてきた。
「ああ、大丈夫。なんとか倒せた」
「そうか。よかった」
陸人はホッとした声を出した。高校に入ってから仲良くなった友人だが裏表のない気持ちのいい性格をしている。
「黒木!出しゃばってんじゃねえよ!お前は、俺が行くまで守りに徹していれば良かったんだよ!他の奴を危険に巻き込むな!」
一方三森の俺への当たりは強い。理由は簡単な事で。
「はあ~?三森何言ってんの?黒木は何も悪い事してないじゃん。唯佳っちにアピール出来なかったからって黒木に当たるとかダッサい事すんな!」
「ば、馬鹿!そんなんじゃねえよ!」
「バレバレだっつうの!」
そう。今桃井が言ったのが理由だ。本人は隠せてるつもりの様だが、周りから見れば、隠す気ないだろ?ってレベルで露骨に態度に出ている。
「そこまでにしろ。あんまり騒ぐと魔物を呼び寄せる事になるから、あまり大きな声で喋らないようにしてくれ」
探索者組の渡瀬 勇斗が注意を呼び掛ける。
「チッ行こうぜ。あの木までもう少しだ」
三森が面白くなさそうに先を急ごうと促す。
確かに大きな木はだいぶ近づいた様に見える。
「恐らくあと1km位だと思う。疲れているとは思うけど皆頑張ろう!」
渡瀬の残り1kmの声に疲れが見えていたクラスメイト達も元気が戻った様だ。
「ねえねえ、唯佳っちと黒木はパーティー組むん?」
「うん。来週春くんの誕生日があるから、そうしたら一緒にダンジョンに行こうって言ってるんだー」
「他のメンバーは?」
「今の所2人だけだよー」
「じゃあさ、アタシも入れてくんない?アタシも探索者になりたいんだけど、ギャル仲間はみんなイヤだって言うんだよね。でも、親がソロじゃダメだって言うし、だからお願い!」
「えっ?は、春くんどうする?」
「桃井は誕生日いつなんだ?」
「アタシはもう誕生日過ぎてるよ。親の許可が降りなくて講習受けれてないだけ」
「なら、俺は別に構わないよ。唯佳とも仲良さそうだしね」
「私も雛ちゃんならいいよ。でも、ダンジョンでおっぱい揉んじゃダメだからね!」
「ホント!?やった~ありがとう〜分かった。ダンジョンの外だけで我慢する」
「そ、そういう事じゃなーい!」
「黒木は誕生日来週の何曜日なん?」
「ん?水曜だよ」
「じゃあさ、その日に一緒に講習受けに行こうよ」
「ああ、いいぞ」
「決まり!」
そんな話をしていると、大きな木の下まで辿り着いた。
魔物には何度か襲われたものの、いずれもホーンラビットで、探索者組の奴らが倒していた。
階段を昇ると、学校のグラウンドで、そこには大勢の人が集まっていた。
名前:黒木 春斗
年齢:15歳 誕生日:6月26日
歩数:4,012歩
Lv:1
MP:18/18
力:12
耐久:11
敏捷:12
器用:12
魔力:10
運:76/100
スキル:ウォーキング、サーチLv1、剣術Lv1
※ ウォーキング
10万歩毎にスキルを1つ取得又は、既存スキルのスキルレベル1上昇
ストックがある内は、毎日投稿していきます。
宜しくお願いします。