7,コツコツ実績をつむ。
どこの世の中も実績がないと良い仕事がまわってこない。
冒険者ギルドの低ランクパーティ〈名前ははまだない〉には、その実績がない。しかしサラは、思いがけぬコミュ力を発揮し、自力で案件を獲得してきた。
「墓場に出没するアンデッドの退治クエストを取ってきたよ」
猫のような生き物に転生してから、アークはあることに気付いていた。この生き物、嗅覚が無駄に鋭い。アンデッドの、とくに腐乱型などは臭くてたまらない。
「にゃぁ(パス)」
「さすがミィくん、やる気まんまんだね!」
意思疎通ができていない……
当然ながらサラは、もう一人の〈名前はまだない〉メンバーであるケイトも呼びにいく。
だがケイトは、「親戚の葬式だから無理」とのこと。
「そっか葬式なら仕方ないね。ところでケイト、親戚多いよね。このまえも葬式だったよね。大変だね」
「……にゃぁ(どう考えても、嘘だろ)」
サラの肩にのって、くだんの墓場に向かう。
西方山脈の向こう側。墓地とアンデッドは切ってもきれない縁。しかしたいていは聖魔法の封印が施されているもの。近くで闇魔法が使われたりすると、封印に傷が入り、アンデッドが目覚めだす。
「火葬にすればいいのにね」
「にゃぃ(宗教上の事情だろ。来たぞ、アンデッドたちが)」
人肉好きのアンデッドがわんさかやってくる。
ただの剣術スキルでは苦戦しそうなので、アークは聖魔法level5《浄化》を、サラのブロードソードにかけてやる。
「にゃあー(これで、アンデッドを浄化しながら斬ることができる。一撃必殺だ)」
「なんか剣が光っている! ミィくんの魔法だね? よし、いくぞ《層の速斬り》!」
剣術スキルlevel4《層の速斬り》。敵を斬るほどに速度が上がるので、大量の雑魚処理に便利。
そうやってサラがアンデッド相手に無双していると、突然、巨人のようなアンデッドが、地面を割って這い出ててきた。
サラが急ブレーキをかけて、アークのとなりまで戻ってくる。
「なんか、すごく大きいのが出た」
「にゃぁ(アンデッドキング。討伐難度が、ただのアンデッド千体分に跳ね上がる。この案件、こんなに強大な敵が出てくる話だったのか)」
「おかしいなぁ~。わたしに依頼をまわしてくれた人は、通常アンデッドしか出ない、と言ったのに。友達の冒険者パーティがまわしてくれたんだよ」
「……」
どうやら犠牲になること前提のクエストだったのでは、とアークは考える。
つまり、『弱小パーティを行かせてアンデッドキングに殺させることで、このクエストの報酬を高くしよう』という企み。
「にゃぁ(〈名前はまだない〉も安く見られたものだ)」
とアークが嘆いている横で、サラが無謀と勇気半々で跳びだす。
「ミィくん、ここは一気呵成に攻撃あるのみ!」
「にゃぃにやぃのにゃ(自殺行為だぞ。おれがいなければ、な。聖魔法level10《聖なる十字の槍》)」
上空が裂けて、白く輝く、塔のごとく大きな十字架が落ちてくる。聖魔法構築体ゆえに、いくらアンデッドの王でも、この直撃によって肉体を維持できるはずもない。
壮大に散るのを見届けてから、サラが剣を鞘におさめて、アークを抱き上げた。
「ミィくん、さすがだね!! 今夜はニシンを奢ってあげるからね!」
「にゃあ(そろそろ嫌がらせのレベルだぞ)」




