65,密室で殺されると迷惑part3。
サラが「うーん、うーん」と唸っていると、ケイトがやってきた。
「げっ、ケイト。さては事件の噂を聞きつけてきたね」
「サラ。密室殺人事件を独り占めとはずるい」
アーク(ミィ)は呆れはてた。
「にゃあ(おまえたち、どれだけ密室殺人が好きなんだ!)」
ケイトはすでに、この密室を解き明かすための『鍵』を見つけだしていたようだ(密室だけに)。登場のときから得意げであり、サラもそこを敏感に感じ取り、『これはわたしの密室が横取りされる』という危機感を抱いている様子。
「はい、はい、ケイト。確かに名探偵の推理の前には、迷のほうの探偵が、あまりに見当ハズレの推理を披露する。お決まりの流れだものね。空気を読む迷探偵ケイト」
「その迷探偵とは、サラのほうでは? すでに見当はずれの推理を披露したのでは? きっとテグス糸を使ったものに違いない」
「なーんだって!」
さすがケイトなかなかに鋭い、とアークは感心した。
「にゃい(二人とも、あまりに下らないところで喧嘩を始めるなよ)」
サラは悔しそうに歯がみしてから言った。
「じゃケイト。あなたがもってきたトリックというものを聞いてあげよう。そしてその欠点を指摘してあげるからね」
「私が思うに、このトリックは、あまりに斬新かつ奇天烈かつ正真正銘の凄みに満ち溢れている」
サラがふっと笑う。
「ハードルのあげかたからして、これは爆死コース」
そしてケイトが推理を披露しようとした口を開いた。
瞬間。アークの脳内で、何かが『カチっ』という音がする。
次の刹那──視界がぐにゃりとなり。
アークは頭をふった。視界が定まったので見やると、サラが一人、椅子に腰かけて『安楽椅子探偵』を気取っている……そもそも目の前に現場があるのに。
アークはふと思う。
(まてよ。ケイトの姿がないぞ)
「にゃぁ(いま、ケイトがそこにいなかったか?)」
「ミィくん、どうしたの?」
「……にゃあ(いまケイトが来て、密室のトリックを披露しようとしていた気がしたが……気のせいだったのか。おかしな話だ)」
しばらくしてサラは、手元に〈呼び鈴〉を取り出す。この〈呼び鈴〉は、前回の〈課金ポケット〉で引いた星4アイテム。星4ながら優秀で、どこにでも手持ちの星5キャラ(ホムンクルス)を呼び出せる。サラの場合、手持ちはライラエルだけだ。
そのライラエルが現れて、すっかりトリックを解くのに飽きたサラが、事情を説明。
「助手ライラエル。君は、この密室トリックをどうみる?」
「わたくしが愚考いたしますに、まず初期状態が密室だったのか。これを確かめるべきではありませんか? 複数のかたが、この部屋は密室だったと証言しているのでしょうか?」
「えーと。一人だけだけだと?」
「でしたら、そのかたが犯人であり、『密室だ』という虚偽証言をしたうえで、施錠されていなかった扉、を破壊したのではないでしょうか?」
「あれ。この部屋の扉を破壊したのも、同一人物なんだっけ? これは当たりを引いた予感がする。ミィくん、確認しにいこう!」
アークはといえば、さっきから何かおかしいなぁ、とずっと引っかかってい。




