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50,宝物庫じゃんけんpart1。

 

 さくさくと王城を落とす。


 城内の衛兵や、王を守る〈ガーディアン〉の面々も、アークの天災魔術《血の海(レインド)》で戦闘不能状態になっていたのだから、当然の成り行き。

 勝利の歓声をあげる〈シグマ〉兵の面々。長らく進めてきた革命が成功し、感涙するリーダーのクローバー。


 一方、アークをジト目で見るサラ。


「ミィくん。ちょっと革命成功しちゃったけど?」


「にゃぁ(クエスト成功させて文句を言われる筋合いはないぞ)」


 とはいえアークも、これはやりすぎたなぁ、と反省はしているわけだ。しかしあのまま不毛な争いを続けさせ、無駄に人死にを出すのも耐えがたかった。

 では《血の海》で双方陣営ともに戦闘不能にすればよかったのか。ただ一応は〈シグマ〉側に雇われている身。時限的とはいえ友軍である〈シグマ〉兵を戦闘不能にするのも気乗りしなかったわけだ。


 クローバーがやってきて、まずサラと固い握手をかわしてから、アークを抱き上げて敬意を表してぎゅっとした。くしゃみを連発しながら。


「にゃぁ(なぜ猫ときたら、誰もが抱き付いてくるんだ)」


「サラさん、ミィさん。本当に、なんとお礼をいったらいいか。革命を成功することができたのは、〈名前はまだない〉のおかげです」


 サラは一考してから、勝ち馬に乗っておこうと思ったようで、笑顔でうなずく。


「〈名前はまだない〉は、正しい側の味方だからねっ!」


 その後。とくにやることもなくなった──王城を落とした感動にひたる要素もなかったので──サラとアークは、城内を適当に歩きまわる。


「ケイトとドーグはうまくやっているかなぁ。〈シグマ〉主力陣営は、この王城を奪還されないよう、さっそく守りを固め始めたみたいだけど。これって陽動役の〈シグマ〉拠点には援軍を送らないってことだよね。なら、騎士団側についている二人も大丈夫かぁ」


 やがて宝物庫に行きつく。資産は大いにこしたことはない。

 サラは宝物庫に入っていき、鞘から剣を引き抜いた。


「わたしたち、いい働きをしたんだから、ここの宝物庫から3割はもっていく権利、あるよね?」


「にゃぁ(かもな)」


「おい、お前たち! どこの隊だか知らないが、勝手に宝物庫に入るんじゃねぇ!」


 と、宝物庫の管理を任されているらしい〈シグマ〉兵が、外から横柄に注意してきた。


「あれ。わたしたちのこと、知らない? 君たちを勝利に導いた〈名前はまだない〉の一人と一匹」


「な、なに、あんたたちが……いやだからといって、宝物庫に無断で入っていいことにはならないぞ。ましてや、宝物を持っていくことなど──あんたたちへの報酬は、ちゃんと支払われるはずだ。だからここから出ていってもらおうか」


 その態度が不愉快だったようで、サラは首を横に振った。


「断る。わたしたちと〈シグマ〉の契約は、王城を落とした時点で終了したんだからね。さて君、まさかこちらのミィくん相手に、宝物庫をかけて戦おうっていうの?」


 アークがあくびすると、そのシグマ兵がすっかり警戒して退く。だが責任感が強いのか、ただの無謀なのか、逃げるようなことはしなかった。


「まて。これ以上、血を流すのは、お互いに不本意だろう?」


「んー。いや、わたしたちは血が流れる予定ないけど」


「こうしよう。宝物をかけて、その、あー、ジャンケンで勝負しようじゃないか」


 アークはその幼稚な提案に呆れたが、なぜかサラが不適に笑う。


「ほう。このわたしにジャンケンを挑もうと? いい度胸だねぇ」


 この謎の自信はどこからくるのだろう。

 相手側も、サラの意味のわからない自信にびびったようで、慌ててアークを指さしてきた。


「い、いや、おれがジャンケン勝負を挑むのは、そっちの『お方』だ!」


「…………いや、ミィくん、猫だけど」

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