47,買い占めめ。
それぞれの助力勢力に合流する前に、やっておくことがあった。
この〈名前はまだない〉メンバーには誰一人、回復魔術を使えるものがいない。そこでポーションの所持が大事になるが、普段は滅多に使わないので、こういう重要事に限って、『手持ちが足りない』となる。
〈名前はまだない〉ギルド支部には立派な物資保管室がある──ところでこの支部はもとは郵便ギルドのものだった──。が、この保管室はほぼ空っぽで、猫缶だけが妙にある。これは〈名前はまだない〉に助けられた市民が依頼料とは別に、『猫ちゃんにあげてください』と贈ってくれたもので、猫缶屋でも開けるくらいの量。
一方、肝心のポーションは、通常版が5個、ハイポーションが3個という、高難易度クエストに挑む前にしては、どうにも心もとない。
そこでケイトが、みなの考えを代弁。
「なぜ〈名前はまだない〉は資金潤沢なのに、こんなに物資が偏っている?」
「へっ。ポーションなんぞ、おれはいらねぇぜ」とドーグ。
「にゃぁ(石橋を叩いて進め)」
サラが納得のいかない顔になった。
「え? するとこれからポーションを買いにいくの? なんだか、かっこがつかないなぁ」
とはいえ必要な買い物なので、さくさくと済まそうと、近隣のアイテムを販売している店を巡回するも、どこもポーションは売り切れ中。この品不足の謎は何かと問い合わせてみると、気のよさそうな店員いわく、
「数日前、王都騎士団のほうから回復アイテムは在庫すべてを買い取らせてもらうと、そう言われては断れませんからね」
さっきまでポーションめぐりに消極的だったサラが、これには大激怒。
「買占めだ! 許せない! 王都騎士団は、わたしを敵にまわしたぞ!」
「これから王都騎士団の助力もするから、敵ではない」とケイトが冷ややかに言う。
サラが不服そうな顔でケイトを見返してから、アークに頼んだ。
「ではミィくん。錬金術を会得してポーション作って」
「にゃい(バカを言うな。だが──仕方ない。少し待っていろ)」
アークは浮遊魔術で飛び──これをやると王都にはじめてきたものは、王都の猫は空を飛ぶらしい、という間違った思い込みとともに故郷に帰ることなる──向かった先は、王都騎士団の後方支援部隊。これから〈シグマ〉拠点に攻め入る主力を支えるための準備が進んでおり、当然ながら買い占められたポーションも、ここに大量にある。
「にゃぁ(在庫目録によるとノーマルポーションが1000個だと? そんなに必要ないだろ)」
50個ほど異空間収納して、再度王都の空をひとっ飛び──「ママ、猫が空を飛んでいるよ」という子供に指さされながら、サラたちのもとに戻る。ぶんどってきたポーション類を取り出す。
「さすがミィくん、無からポーションを生み出すのもお手の物」
「にゃあ(少し違うがな)」




