46,同時進行クエストpart2。
というわけで〈名前はまだない〉は、双方の勢力につくことになった。
この不義理さ。
しかし〈名前はまだない〉の基本理念は、『弱者を助ける。あとは知らない』。となると『王都騎士団+冒険者ギルド』勢力も、反政府組織〈ギルド〉勢力も、間違いなく『弱者』ではない。となれば、義理を見せて進んで助けたりする必要もないわけだ。
ある意味では、サラのこの決定は──コイントスの失敗のせいとはいえ──〈名前はまだない〉の理念に見合っている。
そしてとくに異を唱える者がいないあたり、この少数精鋭パーティは、わりとよくサラを中心にまとっまっている、のかもしれない。
「はい。方針が決まったところで、どう戦力を分けるかだね。まずどう分けるか、だけど」
ケイトが発言する。
「戦力の分け方は、ミィさんと私たち、となる」
と、ドーグもその隣で、腕組みしてうなずいた。
「まぁ、当然だな。師匠が一人、じゃなく一匹いれば、片方の勢力助力は事足りる。逆に偏りすぎるくらいだぜ」
サラは不満そうな様子で反論した。
「え、なにそれ? 〈名前はまだない〉が、まるでミィくんで始まりミィくんで終わる、みたいなその感じ? ミィくんがいなとダメだ、みたいな弱気な態度、この私が許さないよ。というわけで、わたしはミィくんと行動するから、そっちはまぁ、適当に二人で組んで頑張って」
「それはずるい。私もミィさんと行動を共にしたい。生き残る確率が格段にあがる」
「そうだぜ、なんで師匠の一番弟子の俺じゃねえんだ!」
「はあ。まったく君たちは、はあ。あのね。わたし、ミィくんの飼い主だから。オーケイ?」
アークは、このなんとも低次元な争いを眺めていたが、いい加減にしろと、「にゃぁ」と言った。
ケイトが一番に反応して
「ミィさんが、何か言いたいみたい。私が通訳する」
「えー、ケイトのミィくん通訳、どこまで当てになるかなぁ。だいたい『通訳は信用できない』というのはいまや世界常識だよ?」
「……とにかく、聞く」
「にゃぁいあのにゃぁ(我々の戦力以前に、まずクエスト先の助力勢力を考えてみろ。『王都騎士団+冒険者ギルド』勢力に加勢した場合、敵となるのは『拠点の〈シグマ〉勢力』だ。『騎士団+ギルド』勢力は、これが〈シグマ〉の主力と思っているが、実際は『王城攻め』を成功させるための陽動たちに過ぎない。つまり〈シグマ〉の主力は王城攻めに向かっている。が、それでも王城の護りは固く、いくら〈シグマ〉主力でも、突破は高難易度コンテンツだろう)」
というアークの鳴き声を、ケイトが適格に通訳した。
サラがふむふむとうなずき、
「要約すると、『〈シグマ〉勢力に加勢して王城攻めするほうが大変だから、そっちに〈名前はまだない〉は主力を割くべき』と。じゃぁ、ミィくんはそっちとして、あと誰か連れていく?」
アークは跳躍して、サラの肩に乗った。思うに、これが最適な分け方だろう。そうであってほしいものだ、とも強く願うが、と。
サラが感動した様子で、アークをぎゅっと抱きしめた。
「ミィくん! やっぱり、いざというときは、わたしが一番だよね! 好感度99点なんて、信じてなかったよー!」
「にゃぁ(やめろ)」




