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43/79

43,台所のあれ。

 

 こころよい晴れの日。

 アークが庭先で日向ぼっこしていると、台所から斬撃音がし、家の壁が吹きとんだ。

 同時に、サラの殺気と恐怖を感じ取る。


(なにごとだ!)


 臨戦態勢で駆けつけたところ、サラが青ざめた顔で、アークを見やった。


「ミィくん、奴が、出た!」


「にゃあ(刺客か?)」


 ここのところ、〈名前はまだない〉の立場は浮遊的。市民からの人気は依然として高く、それは良い。ただ冒険者ギルドのAランクパーティをボコったり、反政府組織〈シグマ〉に手を貸したり、そうかと思えば〈シグマ〉の一部の過激派が企んだテロを未然に阻止したりと、いろいろと活動的。つまるところ、友より敵が増えている気が、しないでもない。となれば、どこかの組織が〈名前はまだない〉を潰すため、サラの命を狙ってきても、おかしくはない。


 などと思考したところ、アークの前を子犬サイズの『ゴから始まる虫』が横切った。


「にゃぁぁ(ぎゃぁあ、グロいのがなんか出てきた)!」


「ミィくん。あれが台所とかで見る奴なのは分かる。分かるけど──デカすぎじゃない? あんなに自己主張の激しいサイズだったっけ?」


「にゃあ(突然変異だ。きっとこの王都の地下に、闇の錬金術のアトリエがあるに違いない。あの巨大ゴーーーーキは、きっとそこで進化したものだ)」


「ああぁわたしに飛んできたあぁぁ!」


 ショックのあまり気絶するサラ。


「にゃあ(サラ。お前の犠牲は無駄にはしないぞ。ここで奴を仕留める!)」


 というのも、ゴからはじまる奴らを自宅で、一匹みたら3000匹は潜んでいると思えという。

 だいたいあのサイズが3000もいたら、精神衛生上、よろしくない。


「にゃぁぁ(いくぞぉぉぉ! 燃えつきろぉぉぉ!)」


 火炎魔術level10《災いの炎》。その広範囲への火炎攻撃は、周囲の物体を、魔法防御なども含めて焼き尽くす。瞬間火力は魔法金属ミスリルさえも溶かす威力。

 ひとまずサラを風魔術で家の外に飛ばしてから、アークは渾身の《災いの炎》を叩きこんだ。


 その日の午後。


 アークを抱いたサラが、ケイトの自宅の玄関扉を叩く。

 不機嫌そうな顔で出てきたケイトに、笑顔で言った。


「ケイト。ミィくんの火炎魔術で自宅が消し炭になったので、しばらくミィくんと泊めてね。迷惑じゃなければいいけど」


「………………とても迷惑」


「ありがとうっ! じゃ五泊ほどするねー」

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