43,台所のあれ。
こころよい晴れの日。
アークが庭先で日向ぼっこしていると、台所から斬撃音がし、家の壁が吹きとんだ。
同時に、サラの殺気と恐怖を感じ取る。
(なにごとだ!)
臨戦態勢で駆けつけたところ、サラが青ざめた顔で、アークを見やった。
「ミィくん、奴が、出た!」
「にゃあ(刺客か?)」
ここのところ、〈名前はまだない〉の立場は浮遊的。市民からの人気は依然として高く、それは良い。ただ冒険者ギルドのAランクパーティをボコったり、反政府組織〈シグマ〉に手を貸したり、そうかと思えば〈シグマ〉の一部の過激派が企んだテロを未然に阻止したりと、いろいろと活動的。つまるところ、友より敵が増えている気が、しないでもない。となれば、どこかの組織が〈名前はまだない〉を潰すため、サラの命を狙ってきても、おかしくはない。
などと思考したところ、アークの前を子犬サイズの『ゴから始まる虫』が横切った。
「にゃぁぁ(ぎゃぁあ、グロいのがなんか出てきた)!」
「ミィくん。あれが台所とかで見る奴なのは分かる。分かるけど──デカすぎじゃない? あんなに自己主張の激しいサイズだったっけ?」
「にゃあ(突然変異だ。きっとこの王都の地下に、闇の錬金術のアトリエがあるに違いない。あの巨大ゴーーーーキは、きっとそこで進化したものだ)」
「ああぁわたしに飛んできたあぁぁ!」
ショックのあまり気絶するサラ。
「にゃあ(サラ。お前の犠牲は無駄にはしないぞ。ここで奴を仕留める!)」
というのも、ゴからはじまる奴らを自宅で、一匹みたら3000匹は潜んでいると思えという。
だいたいあのサイズが3000もいたら、精神衛生上、よろしくない。
「にゃぁぁ(いくぞぉぉぉ! 燃えつきろぉぉぉ!)」
火炎魔術level10《災いの炎》。その広範囲への火炎攻撃は、周囲の物体を、魔法防御なども含めて焼き尽くす。瞬間火力は魔法金属ミスリルさえも溶かす威力。
ひとまずサラを風魔術で家の外に飛ばしてから、アークは渾身の《災いの炎》を叩きこんだ。
その日の午後。
アークを抱いたサラが、ケイトの自宅の玄関扉を叩く。
不機嫌そうな顔で出てきたケイトに、笑顔で言った。
「ケイト。ミィくんの火炎魔術で自宅が消し炭になったので、しばらくミィくんと泊めてね。迷惑じゃなければいいけど」
「………………とても迷惑」
「ありがとうっ! じゃ五泊ほどするねー」




