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39,治安維持part1。

 前回の反政府組織〈シグマ〉からの仕事完遂によって得た多額報酬で、〈名前はまだない〉はこっそりと大儲けした。あまりに〈シグマ〉から得た資産が大きすぎるため、


「まって。これって申告しないと脱税になるよね?? でも反政府組織から得た報酬を、どうやって申告するの?」


 などと、サラが悩みむほどに。

 とにかく総合的に言えば、サラは上機嫌だった。微々たる悩みには目をつむり、お祝いとしてご馳走を食べた帰り道。

 夜道にいきなり人が現れたかと思えば、右腕を切断され出血している。


「た、助けてくれぇぇ!!」


「あー。人のいいわたしは、血を流しながら助けてと言われると、無視できない。ミィくん、止血してあげて」


「にゃい」


 治癒魔術は会得していないが、激しい出血を止めるくらいはできる。とはいえすでに失われた血は輸血してやれないので、ここに来るまでに、この被害者がどれだけ血を流したかによって、寿命も決まってくるわけだが。


「で、あなたはどうしたの?」


 こうして月明かりのもと確認した限りでは、この被害者はだいぶ失血死に近いところまできている。

 それでも力を振り絞るようにして、


「こ、この先に、奴らが、まだ、おれの娘が、、、」


 ここで力尽きた。この男の娘が、まだ危険な場所にいる、ということだろうか。

 しかし王都の治安もいよいよここまでひどくなったかぁ、とアークは呆れながら思った。


「食後の運動がてら、少し様子を見てこようか」


 サラが、死んだ男が駆けてきたほうへと向かう。ここら一帯は、もともと貴族区画から遠いこともあって、そこまで治安は良くなかった。

 が、先へと進むたびに、荒れ具合が増していく。建物がどうというより、その区画が纏っている空気感が。どうにも、これは盗賊の根城のような。


 ふいに路地から、短剣を持った男が飛びかかってきた。


「この女はいただきだ!」


 という、なんとも分かりやすい宣言つきで。

 サラが表情を変えずに、その男の腹を切り裂く。最近、『命を取らないまでも決定的な一撃を与える』斬撃にも慣れてきたようだ。サラもまた、なんだかんだで腕を磨いている。


 サラは、斬りふした男を見やってから、困ったように言った。


「うーん。ミィくん。ここの治安悪化は、際立っているようだよ。こんなチンピラが巣食っているみたいだね。仕方ない。ボランティア精神で、ゴミ掃除をしてあげよう」


「にゃぁ(それで思い出したが、明日は燃えるゴミの日だぞ)」

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