31,うまい話にはpart2。
前世のころ、追跡魔術はとくに鍛錬していなかった。
魔術もlevel7をこえれば、魔術改変スキルも身につき、自分なりに各魔術をカスタマイズ可能となる。だが前世では田舎の村を出る機会もなかったので、追跡系を進化させる必要性も薄かったわけだ。
そんなこんなで、アークがサラの行方を突き止めるのに2日かかった。
アークとしては、
(拉致られてから2日も経過したのだし、サラも成長した。ゆえに自力脱出していてもおかしくはないがなぁ)
という期待もあった。
が、ある地下遺跡跡地で、どこかの闇の種族──たくさんありすぎるので固有名称が不明──に、採掘現場で働かされている姿を、目撃するに至った。
「にゃあ(まぁ、こんなものか)」
猫に転生して良かったことは──さしてないが、少なくとも、潜入時にいちいち魔術を使わずとも、目立たない。敵側の見張りなどに、猫嫌いがいると話は変わるが。
槍を持った闇種族の見張りが一体、アークを見つけるなり、
「畜生。猫が入り込みやがったぞ。おれは小動物が嫌いなんだ、殺してやる!」
「にゃあ(猫を敬えパンチ)!」
拳闘スキルlevel2《破打》で、その見張りを粉砕。
その後、しくしくと泣きながら採掘作業中のサラのもとまで向かう。奴隷用の鎖につながれているのが、なんとも憐れだ。しかもこの鎖、魔術装甲済みのようで、魔力のない者は破壊不可。
「にゃい(しっかりしろ、助けにきたぞ)」
「あ、ミィくん~。労働は疲れる。もうやだ」
「にゃぁ(おまえ、それは微妙に勘違いされる発言だろ。奴隷のように強制労働されるのが辛い、と誤解のない発言をしろ)」
「よく分からないけど、何かまた小言を言われた? とにかく、助けてミィくん」
サラ一人を助け出すのは簡単そうだが、ここには他にも拉致された市民たちが多く、やはり魔術鎖でつながれ、何かを採掘させられていた。
そもそもこの地下遺跡自体が、入口がカモフラージュされていたし、王国側も把握していないことは間違いない。
「にゃあ(何を採掘させられているんだ?)」
「指のたこが、潰れ、た」
「……」
「そういえばケイトもどこかにいるよミィくん。ここで奴隷労働されている人たちを、全員助け出さないと。だけど気をつけて。敵の闇種族、鞭を振るうことしか能がないのは雑魚ばかりだけど。そういった連中を指揮っているシャーマンタイプは、かなりの魔術の使い手だよ。この魔術装甲の鎖も、そいつがカスタマイズしたもののようだし。じゃミィくん、わたしは他のみんなにこっそりと、逃げ出す準備をするように言ってまわるから。闇のシャーマン退治は、よろしく」
「……にゃあ(釈然としないが、仕方ない)」




