30,うまい話にはpart1。
授賞式の翌々日、サラの自宅にケイトから手紙が届いた。ここのところ見かけないため、すっかり『失踪届』を出す気まんまんだったが。
「ふむふむ。ケイトは生きていたんだよ、ミィくん。てっきりどこそで息絶えていると思ったけども。良かった良かった。さすが〈名前はまだない〉のディフェンダー」
「にゃぁ(その仕事をしているのを見たことがないがな)」
便箋を読んでいたサラの目が、きらきらと輝きだす。
「ミィくん、聞いて! ケイトはいま、バカ稼ぎできるところで短気で働いているようだよ? ここで数日働くだけで、悪魔討伐に向かう旅費だけでなく、その後の〈名前はまだない〉活動も安定することは間違いない。さすがわが親友!」
「にゃい(まてまて。これは本当にケイトからの手紙なのか? 筆跡はあっているのか? おい、聞いているのか)」
まったくアークの鳴き声が通じないサラは、
「分かる分かるよ、ミィくん。これは凄く楽な仕事みたい。詳しくは書いてないけども。あのケイトが、『楽な仕事すぎて欠伸がでる』とまで言っているんだからね。ケイトいわく、今夜夜中の2時に、アダム通りとイヴ通りの角に向かえば、迎えがくるという話だよ」
「にゃぁ(おまえ、どう見ても怪しいだろ。胡散臭いだろ)」
金に目がくらんだサラは、もともと慎重ではないが、いよいよ慎重さの欠片もなくなった。さっそく指定時刻に、指定の場所へ向かう。猫は連れていけないというので、アークは留守番を言い渡された。もちろん心配になったアークは、こっそりと後をつけたが。
そうして指定時刻に一台の馬車が走ってきた。しかしこの馬車、御者がいない。と思いきや、影が動いて、ぼけっと立っていたサラを包み込んで誘拐。そして御者のいない馬車が、走っていってしまった。
アークは、(いまのは影の魔術か。系統的にはネクロマンサーの術だが……サラの奴、あっけなくさらわれるとは…情けない)と嘆きつつ、馬車を追いかけた。
だが肝心の馬車は、ある曲がり角の向こうにいき、その一瞬で消失してしまう。
「にゃぁ!(しまった。あの馬車自体が、影が作ったものだったか……)」
これは追跡に時間がかかりそうだ──
※※※
そしてサラはといえば、影に誘拐された瞬間、記憶を失い。
目覚めたときには、どこかの鉱山の坑道内で転がされていた。見上げると、疲れた様子のケイトが、しかし呆れた顔で見下ろしている。
「サラ……」
「あ、ケイト。ここはどこ? わたしたちの状況はどうなっているの??」
「どこかの闇の種族に誘拐されたあげく、鉱山労働のため奴隷にされている」
「うーん。これだから上手い話には裏がというのだ」
「……」




