25,ごーごーpart2。
監獄内は理路整然とした造りとなっており、迷いたくても迷わない。そのせいで看守たちがぞろぞろと前方からやってくる。
回避できないので、死なない程度に撃破していくしかない。サラだと加減を間違えそうなので、アークは率先して拳闘スキルlevel1《拳嵐》連打の連打。それをサラが何を勘違いしたか。
「ミィくん、今日は燃えてるねぇ。やる気に満ち溢れている!」
「にゃぁ(おまえの剣術スキルがまだ未熟なため、『みねうち』をできるか心配なだけだ)」
せっかく手加減しているというのに、向こうは向こうでいらぬ誤解をしだす。つまりアークが──この謎の侵入してきた三毛猫が、看守たちを皆殺しにするつもりだ、という。
「うわぁぁぁ! 逃げろぉぉ! わけのわからん猫が、おれたちを皆殺しにする気だぁぁあ!!」
「猫に殺されるぅぅぅ!!」
「化け猫に殺されるぅぅぅ!!」
「にゃぁぁ(おい、誰一人、人死にを出していないだろ!! それと誰が化け猫だ! 転生猫といえ)」
と訴えてみたが、いまだサラにさえ通じない「にゃぁ」が、看守たちに伝わるはずもない。
そうして進むと、監獄内の広場のようなところに出た。周囲には囚人の入れられた房があり、そのなかのひとつに、ドーグの姿もあった。
「おお師匠! オレを助けにきてくれたのですか!」
「にゃい(仕方なしに、だが)」
すっかり怯えていた看守たちだが、ここで謎の勢いを取り戻し、「ジャック」コールをしだす。このジャックが何者かといえば、有象無象の看守たちを押しのけて前に出てきた、巨躯の看守。その体格にみあった巨大な戦斧を肩にかついでいる。ジョブでいえば、〈バーバリアン〉あたりか。戦斧スキルをかなり極めていることは、アークの《識別眼》で分かる。
「どこの不届きものだ、この監獄に攻めてくるとは!? だが、ここまでだ! おれさま、首斬り看守長ジャックさまが、おまえらを殺してくれる!! そして、まずはおまえだ、化け猫!」
サラが素朴に呟いた。
「看守に斬首刑する権利なんてないと思うけど?」
「にゃぁい(脱獄した囚人の首を刎ねているのだろ。確かに、頭は弱そうだが、戦闘力は高そうだ。武器ももたぬ囚人では、ドーグでも歯が立たぬだろう。まぁいずれにせよ、)」
アークは跳び、拳闘スキルlevel8《鋼弾》と、火炎魔術level5《炎の流》を同時発動。オリジナルの火炎拳闘スキル《鋼火弾》として、首斬り看守長の腹に叩き込んだ。
「にゃぁ(誰が化け猫だ)」
「ぐぁぁぁああああああ!!!」
「そ、そんなジャックが!」
「首斬り看守長が負けたぞ!」
「これはもうダメだ! みんな化け猫に殺されるぅぅぅ!!」
逃げ惑う看守たちを回避しながら、サラがドーグの監房の扉を破壊して、外に出した。
ドーグは、「おお、さすがオレのパーティリーダー様だ!」と大袈裟に感謝しつつ、外に出る。途中、装備品の魔剣を武器庫から回収し、監獄の外へとそそくさ出た。
「リーダー、師匠。この借りは必ずやお返しする!」とドーグ。
「じゃ、さっそく返してね。これから悪魔討伐しにいくから」とサラ。
「あ、悪魔だど! あ、それは無理だ。魔物ならいくらでも倒すが、悪魔だけは無理だ。すまない。えー、腹が痛いので、早退させてもらう! では師匠、またいずれ!」
監獄脱獄時に盗み出した馬に飛び乗って、東の果てへと駆けていく弟子のドーグ。
いやあれは弟子なのか、とアークは地味に自問した。
同じく走り去るドーグをジト目で見送ったサラが、
「ミィくん、ドーグくん、クビにしていい?」
「……にゃぁ(好きにしろ)」
結局のところ、〈三毛猫ミィ〉の悪名だけが広まっただけに終わった。
何が重要になるか分からないもので、この一件が、〈名前はまだない〉の今後に大きくかかわってくるわけだが。




