21,手あたり次第part2。
盗賊団拠点へ移動中。
盗賊団拠点へ移動中。
盗賊団拠点へ移動中。
〈赤牛の盗賊団〉の拠点は、ひとつの村を形成していた。その様子を、地形的に見下ろせる場所から確認しながら、サラが難しい顔で指摘する。
「ねぇミィくん。さすがに相手が盗賊とわかっていても、いきなり討伐にかかるのは気が引けるよね」
「にゃぁ(見てみろ)」
言葉はたいして伝わらないが身振りは伝達可能。アークが前右脚で示した先には、死体の山を台車で運ぶ盗賊員たちがいた。その行先には大穴があいており、そこに次々と死体を投げ落としていく。
どうにも死体の数が多すぎる。そこでアークは、気づいた。この村が〈赤牛の盗賊団〉が建設したものではなく、つい数日中に征服した小村だったのだろう。
「にゃい(当たり前といえば、当たり前か。相手は盗賊だからな。自分たちで村を建造したりはしないだろう)」
「これで容赦はしなくて済みそうだよ。村人には申し訳ないけども」
「にゃぁ(いや、まだ村人全員が犠牲となったわけでもないようだぞ。死体は男ばかりだ。女子供はどこかで生かされているかもしれない。人身売買は盗賊のお手の物だろう)」
「よしミィくん。どっちが多くの盗賊を殺せるか、競争しよう」
時おり、この『飼い主』はサイコパス発想をするものだ、とアークは素朴に思った。
サラの要請で、アークは村の反対側まで移動。別行動のサラと、村をはさむ格好になった。
そこから村の中央を目指す。その道中、アークは盗賊員たちをできるだけ隠密に仕留めていくことにした。猫として、身軽に跳び、簡単に遮蔽物の裏に隠れることができる。たとえ見つかっても、野良猫が迷い込んだ程度で済み──
「見ろ、猫だ」
と、村の中を巡回していた盗賊二人組に発見された。このときアークは、村の反対からスタートしているサラの様子をうかがっていたので、まわりへの警戒が怠っていたのだ。
「にゃあ~」
と無害に鳴いてみたところ。
「おれは猫が嫌いなんだ。町にいたころも野良猫を見かけたら、絶対に殺していたぜ。バカな生き物だ」
と片方が、もう片方に言うと、
「へぇ、おれは嫌いじゃないぜ。猫の肉は美味いからな~」
「よし、殺しちまおうぜ。ほーれ、猫ちゃん、おいでー」
短剣を抜いて、にやにや笑いながら手招きする盗賊二人。
アークはやはり「にゃあ~」と無害に鳴いてから、てくてくと近づいた。
そして向こうが短剣を振り下ろす前に跳躍。
拳闘スキルlevel2《瞬拳》。
空間を跳ぶ猫パンチで、一人目の盗賊の頭部を粉砕。
仰天しているもう一方の胸部にも、《瞬拳》を叩き込み、その息の根を止めた。
「にゃぁ(猫を代表して、否、小動物を代表して、貴様らには天誅をくだしたのだ)」
さて。この二体の死体を、浮遊魔術で近くの茂みまで移動する。村の内部に耳を傾けるも、盗賊たちのバカ笑いなどは聞こえるが、戦闘音や、警戒の声は聞こえてこない。これはアークのいまの殺しも発見されておらず、同時にサラもまだ、見つかっていないということだ。
サラは剣術スキルだけでなく、いくつかの隠密スキルも身につけたので、それが功を奏しているらしい。と思いきや、いきなり剣戟の音が轟いてきた。さらに仲間を呼ぶ盗賊たちの叫び声も。
「にゃぁ(やはり見つかったか。まぁこれだけもったのだから、サラにしてはよくやったほう)」
アークは手早くいくことにし、自身に浮遊魔術をかけて、村上空を移動。視認した限りの盗賊たちへ、誘導式の《火炎弾》を発射していく。




