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19/79

19,これも人助け。


 西方監獄への道は思ったより長く、途中で日が暮れた。

 これはサラが迷ったせいでもある。当人いわく、


「分かれ道のせいだよ、すべては。右に行くべきか、左に行くべきか。それが問題」


 野宿かと思ったが、とっぷり暮れてから、旅人のための宿泊施設を見つける。

 サラは野宿せずに喜んでいたが、アークとしては、この手の宿泊施設は、ダニがいるから嫌いだった。


 そこの宿の食堂で遅い夕食を取っていると、30代くらいの若はげの男が声をかけてきた。もちろんサラに──そも三毛猫の身であるアークは、宿に泊まるだけでひと悶着があった。宿の主いわく、


「ここはペット禁止だよ」


 サラが、このミィくんはただのペットではなくパーティの大事な一員であることを熱弁すると、「マスコットならしかたないね」という、アークとしては微妙な着地点で許可されたわけだ。


 話をもどすと、この若はげの男が、パンをぱくついているサラに持ちかけたのは、


「あんた、だた者ではないね。おれには分かっているぜ」


「いやぁ、どうも。見る目があるね」


「にゃぁ(サラ。お前が食堂でも剣を装備しているから、目立っているだけだろ)」と、テーブルのしたで丸まっていたアークが言ったが、二人には無視された。


「そんなあんたに、頼みがあるんだ。実は、父親の遺品の指輪を、恐ろしい盗賊団に盗まれてしまったんだ。〈赤牛の盗賊団〉に」


「え、あの有名な盗賊団のこと? だけど王都騎士団と冒険者ギルドの共同作戦で壊滅させたはず──だけどこれが本当なら、〈名前はまだない〉がさらなる活躍を示すチャンスだね」


 アークは夕飯がわりに出されていたキャットフードをにらみながら言った。


「にゃい(またサブクエを受けている暇があったら、おれにまともな夕食をもってきたらどうだ?)」


 若はげの男の説明では、くだんの盗賊団は、この宿の近くで野営しているという。

 おかしな話だと思って行ってみると、実際は、ケチな盗賊が三人、小規模な野営をしているところだった。しかし、そこで焼いている鹿肉には、まだ夕食をとっていないアークには用がある。


 がっくりした様子で、サラが若はげの男に確認する。


「えーと。あなたのお父さんの遺品の指輪をとった盗賊団って、この人たち?」


「そうだ! あれは父が家宝として、おれに残してくれた大事な指輪! 是非とも取り返してくれ!」


「まぁ、これも人助けだよね」


 どうみても、このケチな盗賊たちは、かの〈赤牛の盗賊団〉の名をかたっていたにすぎない。

 実際、サラが向かい、


「ほら、人さまからものを盗むなんて、恥ずかしいことだよ。盗んだ指輪を返しなさい」


 と、平和的に解決しようとすると、三人の盗賊たちは武器を手にとり、


「なんだこの女は?」

「やっちまおうぜ!」

「痛い目をみやがれ!」


「うーん、仕方ない」


 サラは剣を鞘におさめたままま振るい、三秒でケチな盗賊たちを伸した。


「簡単すぎる仕事だった。けど人助けにはなったね。さ、お父さんの大事な指輪を見つけて」


「ありがとうございます! ……あーーー、なんだこれは? この指輪の宝石、模造品じゃねぇか! これじゃ、借金返済のたしにもならねぇ! クソ、金目のものをひとつも残せねぇとは、役にたたねぇ!」


 と、父の遺品の指輪を投げ捨てて、若はげの男は足早に立ち去ってしまった。

 どうやら、すっかり当てが外れたらしい。


 サラは指輪を拾い上げる。


「この宝石、模造品なの? すごく綺麗だけどね」


 アークは《識別眼》で見て、別のことに気付いた。


「にゃぁ(確かに宝石は偽物だが──それとは別に、魔法がかかっている指輪だな。つまりマジックアイテムだ。取っておいたがほうがいいが、どんな効能か分からない以上、指にははめるなよ)」


「もったいないから、アクセサリーとして指にはめておこう。ふふ、これでよし。どうミィくん、似合う?」


「……にゃあ(まぁ、いいか)」


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