17,悪の魔part1。
アークとしては。
つまり、転生体の三毛猫の身として、抜け毛は悩みどころ。
そしてサラにブラッシングを頼んでいるが、これが致命的にへたときている。
「にゃぁ(なぁサラ。もう少し丁寧にブラッシングしてはどうだ? 聞いているのか?)」
いつになくサラのブラッシングは下手すぎたが、何やら考え込んでいる様子。
「うん、気もそぞろでどうしたのか、と聞きたいのだね、ミィちゃん。実は、西方ズギ町から、悪魔が現れた、という話があってね。悪魔討伐クエストがきたんだよ」
「にゃぁ(それよりも、ブラッシングを乱暴にするな。三毛猫は繊細な生き物だぞ)」
「うんうん分かるよ、ミィくん。悪魔は、魔物なんかと比較にならない捕り物だよ。だけどこれを成せば、いよいよ〈名前はまだない〉パーティランクがSになる日も近い」
「……にゃい(おまえ、ドルイドに転職したらどうだ?)」
すっかりやる気になったサラは、クエスト受注のためギルドに向かい、アークは仕方ないので、自分でブラッシングすることにした。そのためにはまずブラシに浮遊魔法をかけるところら始める……。
帰宅するなりサラが言うには、
「さてミィくん。西方山脈をこえるとなると、これは長旅になるよ。ところで、わたしのパーティメンバーは、いまどこでなにをしているの?」
なにをしているのか。王都にはドーグだけでなく、ケイトまでいないという話。ケイトには先日、冒険者殺しを始末するとき、手を借りたものだが──なんと、あのときの一件で、バイト先をクビになっていたらしい。
アークはセルフブラッシングの手を止めた。
「にゃぁ(そうだったのか。悪いことをした。しかしだからといって、なぜ王都から消えているんだ?)」
「ミィくんが連れてきた魔法剣士のドーグくんだけどね。彼、いまは西方山脈の近くの監獄に収監されているそうだよ。驚きだね」
「にゃい(あまり驚きではないが。しかしあいつ、心をいれかえたと思っていたが、一体なにをしたんだ?)」
「罪状は、なんたら伯爵のなんたら宝石を盗んだとか──当人は冤罪を主張している」
「にゃぁ(なんたら、のなんだって?)」
サラは、ときおりパーティリーダーという立場に酔うことがあり、そのときはまったく愚かな決断をする。今回のような。
「よし、わがパーティメンバーが無実──当人が言うには──で捕まっている。これは助け出さないと、だよね!」
「にゃあ(おまえたち、たいして仲よくないだろ)」
「たとえ、たいして面識がなくても、わたしのパーティメンバーであることに変わりはないからね。そこでミィくん」
「にゃぁ(なんだ?)」
にっこりして、どこからともなく焼き魚を取り出した。
「ここはどうかひとつ。なんか、脱獄させるのに最適な魔術を使って」
「にゃあ(図々しさが増しているぞ)」




