表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Y・Hファイル  作者: 白百合リーフ
林堂 友理サイド
18/29

第18話 「怪奇研究部の夏合宿(後編)」

瑠璃屋旅館へと帰って来た6人は、

先に友理達が温泉へ入り終え部屋に戻って居た。

男子組は、温泉の真っ最中であった。

女子部屋・・・

蘭「うーーーん……あぁ〜(背伸び)

良い湯だった♪

去年知ったばかりの旅館とはいえ、

有名な温泉があるとついつい試しちゃうんだよね〜

ごめんね、私の我儘に付き合わせちゃって(汗)」

と蘭の目線の先には2人がのぼせ上がっており、

仰向けになっていた友理が口を開く。

友理「だ…大丈夫、ですよ???(グルグル目)

私がぁ〜のぼせたのが早かっただけで………

もう少しマシな言い訳は出来ないのです?(紅葉)

えっ、あ…うーんと私達がわるっ……」

紅葉「却下!!

こんな些細な言い訳を考えるよりも

今日の午前から夕方に掛けて

ずっと砂浜で動き回ってたあなた達は、

お互いにマッサージし合う義務があります!」

友理「り、理不尽だぁ〜(涙)」

とうつ伏せに倒れていた雫が体を起こし、

紅葉の言葉を分かりやすく解釈した。

雫「まぁまぁ…ここは、大人しく従いましょう。

日野寺先輩の言う通り私達は砂浜を走る事は、

足腰を鍛えながらいつも以上に動き周りましたし

海坊主さんと長期戦を繰り広げたのですから

しっかりマッサージしないと明日には

きっと思うように歩けなくなっちゃいますよ」

友理「そうなのぉ〜???

じゃあ〜お願いするよ、雪乃さーん(涙目)」

とうつ伏せになった友理は快く引き受け、

雫がマッサージをし始める。


紅葉「海坊主の試練では

全員、砂浜で動いたり走ったり出来るよう

フィールドを縮小(しゅくしょう)させました。

が、少し誤算だったのは〜

それ程、砂浜を走れていない人も居たから

合宿中にまた走って貰わなくてわね(ジト目)

ギクッ!(友理と雫)

足腰を鍛える為に砂浜でのトレーニングを行い、

かつ旅館の温泉に入れば十分な効果が見られるわ。

普段から砂浜をきちんと走っていれば

良り良い形にもっと仕上げられるのですが、

贅沢は言っていられませんね。

毎日、コツコツとランニングをしているなら

上出来でしょうけど♪

それから砂浜トレーニングをやる際は、

体にかなりの負荷が掛かるようなので

やり過ぎには注意が必要です。

夜までにしっかりと休息を取れる事を

約束してくれるなら許可しますが!!」

蘭「うん、良いよ♪」

2人「ウソ!?(汗)」


蘭「いつも私達が知らない情報まで

教えてくれてありがと〜紅葉さん♪」

紅葉「私は、あくまで参加させて頂いている身です。

これくらい教えて当然ですよ、蘭さん。

それに………この合宿も

そろそろ終わりを告げる頃合いですから」

蘭「うん、そうだね。

明日の夜でこの合宿も終わり…か、

ねぇ〜紅葉さん!

明日のお昼前くらいに

皆んなで自主練しようと思ってるんですが〜

もし時間が空いてたらでいいので

一緒にやりませんか?」

紅葉「今の所、予定は入っていないから

多分、行けると思うわ」

蘭「やったー!!

そうと決まれば2人共、

明日の朝は少し早めに起きて

すぐにでもランニングしに行こうね♪」

雫「はい、私も賛成です!」

友理「えぇ〜今日、色んな事があったのに

まだ動くんですか先輩っ?!

もっちろん☆(蘭)

そ、そんなぁ〜……(涙)」

紅葉「当たり前ですよ!!

試練はやり遂げたとはいえ、

海坊主を倒すまでかなりの時間を掛けて

やっとの思いで倒せた事。

ルールとしてタイムアタックにしなかった

私のミスでもありますが、

こういう点を指摘されたくなければ

相手と同等な位に登り詰め

かつ冷静に相手の行動パターンを見極める所から

課題は、まだ山積みなんですよ!」

友理「うへぇ〜………

これじゃあ試練を受けた意味が無いよぉ!!

大丈夫です林堂さん、私達が付いていますから(雫)

うっ、うぐっ!ありがとうぉ〜(涙)」


友理を励ました所で雫は、蘭にこう尋ねた。

雫「あ、そういえば〜……

鈴木先輩、誠也さんの具合はどうなのですか?

あれから2人とは、特に会えていませんし

どこか痛そうな反応をしていましたが(汗)」

蘭「あぁ〜誠也なら、平気だよ。

体調が悪いとかどこか痛めた訳じゃないの♪

アレって単なる「筋肉痛」だから。

体内の妖力を一定の場所に留めた為であって

血流を止めているのと同じ原理なの。

言い忘れちゃってごめんなさいね」

雫「あ、いえ…そんなそんな!!(焦)」

だから4発しか撃てないのね(紅葉)

でも……誠也さんの事ですから

まだまだ撃てる気がすると思うのは、

私だけでしょうか?」

紅葉「それも確かにそうね。

今の誠也さんのままだと負担が大き過ぎて

無理かもしれない………けれど。

あなた達は、[四大妖怪の試練]と呼ばれるものを

ご存知ですか?」

蘭「四大妖怪の試練???」

雫「それって…どういうもの何でしょうか?」

紅葉「四大妖怪の皆様からそれぞれ1つ出される

お題、詳細は私も知りませんが

[進化の高みへと導かれし真なる力を授かる]

という伝説があるとか無いとか」

友理「へぇ〜!

そんな凄いものがあるんですか、紅葉先輩!?

でも[四大妖怪]に出会ったら駄目なんじゃ?」

紅葉「あくまで、そういう噂ですがね(汗)

勿論…勝手にテリトリー内に許可無く入るのは

他方面に喧嘩を売るくらいNGよ!!」

蘭「なるほど……なるほど。

とりあえず本当か、どうか分からなくても

誠也なら、そういうの好きそう!

後で教えておこうかな♪」

と何だか嬉しそうな顔をする蘭は、

メモ帳に書きながらどこかワクワクしていた。


男湯・・・・・・

更衣室にあるベンチの上で

うつ伏せになりながら乗っかっている誠也は、

今だに1人で動けないで居た。

誠也「くっそ〜……風呂、入ったら

筋肉痛が更に酷くなったぜぇ(涙)

分かってた事だけど、前から筋肉痛が日に日に

悪化してるような…気がする。

本当に………どうしたものかね〜ってぇ・・・。

てか、早く降りやがれ日向っ!!(怒)」

と言うのも現在進行形で誠也の体を椅子代わりに

使って本に夢中の日向は気付いていなかった。

日向「・・・☆(キラキラ目)」

誠也「何読んだら、そんな顔すんだよ!?

気色悪りぃわっ!

いいから早く降りろ、俺を部屋に連れてけよ(怒)」

ジタバタと動き散らかす誠也に微動だにせず、

そのまま最後まで本を読み切ったのだ。

日向「へぇ〜☆

この話、意外と面白いかも。

シリーズ化されてる話みたいだし、

夏休み中に図書館にでも行って読もうかな♪

あっ、ついでに誠也も行こうよ☆

はぁ?!(誠也)

去年と同じような事しないようにちゃんと図書館で。

あんなに鈴木さんが合宿期間中に

誠也の為にわざわざレポートの宿題、

手伝ってくれたのに忘れるやつがあるかねぇ〜」

誠也「うっせぇ!!(プィッ)

大体、俺らは特別部隊として腕を磨く為に

ここに居るんだろう。

うん、それはそうだね(日向)

……っていうのによ、蘭の奴〜

アレもやれコレもやれって聞かったんだ!

宿題とかは訓練が終わった後でやれば良いのによ」

日向「とか言っておいて………

去年は、1ミリもレポートに手を付けないから

鈴木さんと一緒に付きっきりで見てたっていうのに

お前は〜…あの後、脱走したじゃないか(汗)」

誠也「ふん、俺の知ったこっちゃねぇよ。

俺は別に手伝ってくれ、なんか頼んでぇ……」

と言い掛けた所で日向が背中をバシバシと

叩き続け、誠也を黙らせた。

誠也「イテェイテェ!!

おい!馬鹿、そこ酷い所だから今すぐやめろ。

ふ、ふざけんなぁぁぁー!!!!!!(涙)」

日向「ふん。

(こっちの気持ちを知らないで………)」


8月4日・・・

友理「はぁ〜……まだ眠たいよ(涙)

二度寝して良い〜???

良いね☆じゃあおやす………」

と布団を強く引っ張った雫が、

素早く友理の下に敷いた。

雫「駄目ですよ、林堂さん(汗)

私達は自主練するって

昨日の夜、約束したじゃないですか!」

友理「まだ眠い〜少しくらい休ませてよ〜」

と言いながら布団に顔を埋めると

同時に部屋の扉をノックされた。

雫「女将さんかな?は〜い!!」


扉を開けるとそこには女将ではなく、

ハーフアップの後ろ髪に黒色のバンスグリップを

私服姿の紅葉が待っていた。

紅葉「皆さん、おはようございます♪

夜は、ぐっすりと寝られましたか?

は、はい。おかげさまで!(雫)

少し皆さんにお伝えしたい事がありまして。

……いいかしら?

どうしたんですか???(蘭)

実は〜今日の夜…急遽、出掛ける用事が

入ってしまって友人がどうしてもと聞かなくて。

せっかく昨日、皆さんから誘って下さった

というのに本当に……申し訳ないです(汗)」

と言いながら紅葉は誠心誠意、謝罪をする。

その姿を見た蘭は、驚きながら笑顔でこう言った。

蘭「紅葉さん………うふ♪

お気遣い、ありがとうございます。

わざわざ伝えに来てくれて私、嬉しかったです♡」

紅葉「嬉しい???

あなた方から誘ってくれたというのに

怒らないのですか?

そう簡単に納得して頂けるものなのでしょうか?」

と不安そうな紅葉の顔を見て

友理は、こう会話をし始めたのだ。

友理「だって〜

用事が入っちゃった事には変わらないし、

急遽、入った予定にどうこう言った所で

私達が口を挟む事じゃありませんから♪

紅葉さんが優先したい方に行けば、

きっと良いと思いますよ!」


紅葉「そういう……ものなんでしょうか?」

雫「少なくとも………私達にとっては、

これが普通の事だと認識しています。

私は所属する組や軍を持たない妖怪なので

詳しくは知りませんが、

組織の環境下でそれぞれ対応が違うのかと」

蘭「そうそう♪

だから紅葉さんが、

そこまで気にする程じゃないんだよ!!

直接、伝えに来てくれただけでも

私達からしたら物凄く有り難い事だし

紅葉さんが、行きたい方に出向けば絶対良いよ♪」

紅葉「あっ……はい、分かりました。

あなた方に誘われて私はとっても嬉しいです♪

それでは私の用事も夕方頃には

済んでいるかと思います。

ですので皆さん、それまでの間は

自主練…程々に頑張って下さいね♡

夜に動けなくなっても知りませんから」

蘭「うん、後で誠也達にも伝えておくね!

ありがとう。それじゃあ……(紅葉)

いってらっしゃい!!うふふ♪」

女子部屋を出た所で紅葉は、

扉を背にし目元を暗くさせながら

紅葉の口元が少しニヤけた。


柄谷町上空をしばらく飛行し、

待ち合わせ場所である広々とした空き地を

上から探していると柄谷町の中に

一際目立つ空き地を見つけた。

その空き地に置いてある土管に誰かが座っており、

マリンブルーのローブで身を包み

紅葉は友人の証言と同じな為、

その人の目の前へと降り立ったのだ。

???「・・・?」

紅葉「私の知り合いに街案内をして欲しいと

頼み込んだのは、あなたで合っているかしら?」

ローブの人の前にいざ立って見ると

地面スレスレに付きそうな丈の長さとフードで

髪や顔は少し見切れており、

唯一見えるのは宝石のような青紫色の瞳と

ニッコリと不気味に笑う口元だけだった。

???「……っ!うふふ♪いかにも。

初めまして私の事は、[飾梨(かざり)]と呼んで下さい。

見知らぬ、お相手さん」

紅葉「飾梨さんね、私は紅葉。んっ?

あら?今あなたは何を見ているのかな(飾梨)

飾梨さん、[あなた]そのローブ………」

と紅葉が言い掛けた途端、何かを悟った飾梨が

口元に人差し指を添えながらこう言った。

飾梨「シーッ……うふ♪

紅葉ちゃんって案外見かけによらず、鋭いのね。

興味深いですね、とっても♡」

紅葉「それ…どういう意味(睨み付ける)

まぁ、良いわ。どこまで案内すれば良いの?

最初に言っておくけど、県外の案内はお断りするわ。

私は、そんなにあなたのように暇じゃないから」

飾梨「そうね……この街の全部って言いたいけれど

私もここにあまり長居する訳にはいかない

精々、この街の近辺だけで十分だわ。

次の機会にでもあなたのお友達とも

ご一緒にして、ねっ♪」

紅葉「はぁ………分かりました(汗)

けれど、あの子達よりも

もっと面白い人達に会わせてあげる!

その約束は、しっかりと覚えておきます。

ですが…それとコレとは話が別、

街案内をする代わりに飾梨さんには

[この国のルール]を覚えて下さい。

案内は、それからです!!

この私に……ルールですって?(飾梨)

ごちゃごちゃ言ってないでちゃんと聞きなさい。


その1:

外から訪れた者は、

この国のルールに反してはいけない。

その2:

一般人に危害を加えてはならない。

その3:

強者に試合を申し込んではいけない。

その4:

許可無く入る施設には罰則が与えられる。

その5:

[四大妖怪様]を見つけ次第、直ちに逃げなさい!


多過ぎませんこ…と?(飾梨)

こういう基礎的なルールは常識の範囲内です。

全く……そんな事も知らずに1人で来たの?」

飾梨「そうね、私もまだまだ半人前だもの。

この国にだって1人で行く決まりだから

今は地道に行くしか方法がありませんので♪

んんっ?(紅葉)

それより[四大妖怪]とは何です???

それがあなたの言う[強者]というものですの?

えぇ、そうよ(汗)他に何があるっていうの(紅葉)

うふふ♡

私はルールに縛られず誰の目にも止まらぬ速さで

時空をも揺るがす力でねじ伏せ、

自由にお仕事を遂行するだけの事。

そんなルール、私が切り刻んであげるから

心配は無用です♪紅葉ちゃん♡」

紅葉「(・・・)」


目元を暗くさせた紅葉を

よそに飾梨は、自分の強さを見せつける為に

辺りを見回した所、通りすがりの深藍(ふかきあい)色の髪をした

男性を見つけると飾梨は肌色だった指先が黒く染まり

即座に伸ばした紫色の爪で男の頭上から

襲い掛かったのです!!

男性「うわあぁぁぁ〜やめてくれぇ?!(汗)」

と情けない声を上げた男は同時に

飾梨の攻撃を間一髪で避け切り、

住宅街のブロック塀へと衝突し砂煙が舞う。

飾梨「……っ!

(今の動きは何?!私の攻撃が避けられた?

でも、私の〜あの動きは………

完全に男の[視覚外]だった筈。

なのに…どうして(焦)」

紅葉「ちょっと!!ちょっと!

言った側から破るんじゃありませんよ、飾梨さん(汗)

[一般人]に危害を加えたら危ないでしょ」


飾梨「えっ、一般人???

(だって今頃あの男は[冥土]に送り込まれる筈、

なのに簡単に避けられた。

普通の一般人で私の攻撃に対応できる方なんて

……ってあれ?)」

と飾梨が後ろを振り向いた時には男性は居らず、

しかもぶつかった筈のブロック塀ですら

元通りになっていたのだ。

飾梨(うそ…嘘よ!?(汗)

まさか、あの一瞬で[幻影]を……っ!!

それに[この女]だって私には到底、辿り着けない

精密さに優れた妖力を完全に封じ込める技術、

この目で目の当たりにする日が来るなんて…ね(汗)

完全に[本物の人間]のような妖怪としての気配をも

消して見分けが付かない程の存在が目の前には居る。

恐ろしいわ、この私ですら想像するだけで(寒気)

だから………そんな彼女ですら、

私の攻撃を目で追えない訳がない!

私が…その化けの皮を剥いで証明してやる(怒)


紅葉「さぁ、あまり長居する暇が無いんだから

早く行きましょう飾梨さん」

飾梨「えぇ、私が冥土の土産に逝かせてあげる」

と紅葉が背中を向けた途端、

飾梨は小声で呟いてからすぐさま伸ばしたままの爪で

再び襲い掛かるも紅葉は避ける事もせず、

太ももまであった髪が一瞬にして

背中に届くくらいの長さでバッサリと切られたのだ。

飾梨「なっ、なん…でぇ……???(焦)」

紅葉「どうしたんですか、飾梨さん?

まさか、さっき動き過ぎた反動で

体がびっくりして立ち眩みでも起こしたの?!

さぁ落ち着くまでしばらく空き地で休みましょう。

で、でも時間が無いって…さっき(焦る飾梨)

いいえ。

今は、そんな事言ってられないわ!

外国と違って私達の国とは気温が違い過ぎるから

……きっと立ち眩みね。木陰へ移動しましょ(汗)」

と木陰に連れられるまま飾梨は移動し、居座った。

飾梨「え、えぇ???(動揺)

(どうして…どうして[この女]は避けなかったの!?

ねぇ、髪は女にとって鏡じゃないの?

あなたには………そんなに大切なものじゃなくても

私には……私は〜…なんて事を(溢れる涙)

ごめんなさい、本当に………ごめんなさい」

と心から謝りながら泣き崩れる飾梨を

紅葉は何も言わずに抱き寄せ、

彼女にこう言い聞かせた。

紅葉「大丈夫……大丈夫よ♪

少しじっとしておけば、すぐに楽になるからね

飾梨さん(笑)」

と言って飾梨から目を逸らす。


2人からそう遠くない住宅街の庭の中で

先程の男性が息を潜ませていた。

勘づかれていない事を確認した男は、

わしゃわしゃと自分の髪を元通りにさせ

こう口にした。

志童「さてと、これで彼女からの疑いの目は

こちら向く事になるが〜……

果たして、どうしたものか(片目を閉じる)

これで天狗の野暮用は済ませた

あとは、好きにするが()い紅葉。

その代わり俺は、速やかに帰らせて貰う…(笑)」

と口元を緩ませながら

誰かに目で合図をするかのように去って行った。


空き地で留まり続けて30分後に

2人は羽田(ふだ)市・仁川市・三多田(みただ)市・川瀬(かわせ)

加賀江(かがえ)市の順に回って行った。

5つの市の中で一番端っこにある

加賀江市には最大規模の図書館へと足を運び、

飾梨も興味津々で居た。

そんな楽しい街案内の時間もあっという間で

空はすっかりとオレンジ色の夕焼けとなり、

別れる時が来たのだ。


飾梨「紅葉ちゃん、今日はどうもありがとう♪

今まで来た街と比べたら

中々、良い街でとっても楽しかったわ。

あぁ〜ぁ…[師匠]がケチじゃなかったら

1日とは言わずにスケジュール、

ちゃんと組めたのにぃ!!」

紅葉「師匠???

飾梨さんに[師匠]が、居るの?」

飾梨「そう、そうなの!

私達の中では[暗黙の了解]があるんだけど〜

紅葉ちゃんなら教えても良いよね☆

それ、ある意味ルールじゃないの(ジト目の紅葉)

えっ?あ〜…ルールってこれか〜♪

はぁ……それで何を教えてくれるの?(紅葉)

あ、そうそう!!

私ってこう見えてまだ[見習いの身]だからさ、

友達とか知り合いの作り方がよく分からなくて〜

だから今日の街案内が紅葉ちゃんで良かった♪

それでね、ずっと考えてたんだけど私の友達作り

一緒に手伝ってくれないかな〜って☆

私の友達になったからには私の秘密ぜ〜んぶ、

次また会う時に1つずつ教えてあげるね!約束♪」

紅葉「ちょっと…それ本当に大丈夫でしょうね(汗)

それが本当に[暗黙のルール]なら

破ったらあなたは………処分じゃ済まされないわ」

飾梨「んっ?

もしかして〜私の事……心配してくれるの?」

紅葉「口に出しちゃいけない制度なんて

どこの世界も共通して知れ渡っている事じゃない」

飾梨「う〜ん、そっか。

コレが[普通の反応]ってやつなのかな〜♪

うふふ♡

私もまだまだだわ。ルールかぁ〜………うん。

益々、気に入ったよ紅葉ちゃん!

私の……[親友]になって☆」

紅葉「・・・。

飾梨さんは、もう少し頭の良い方だと

思っていましたが、今のではっきり分かりました。

………えっ?(飾梨)

あなた、向いてないわよ……友達作り。

今まで1ミリも携わって来なかった事を

そう簡単に出来て堪らないわよ!!

あと最初からあなたは、馴れ馴れしいのよ」

飾梨「えぇ〜じゃあ…どうしたら良いの?」

と振り子のような涙を流しながら

紅葉は、続けてこう言う。

「もう!

焦ったいわね、本当に欲しいものを手に入れたい

ならすぐに凹んでは駄目よ(汗)

もっとこう、そうね……では、こうしましょう☆

へっ???(涙目の飾梨)

飾梨さんとまたお会いする機会があればの話ですが、

私の知り合いと友達になれたらクリアで良いわ♪

そ、それってぇ〜…紅葉さんもですか☆

えっ、えぇ?別に良いけど」

飾梨「やった!!

本当になってくれるのですね、とっても嬉しいわ♪」

紅葉「そ…そんなに嬉しい事かしら?

勿論ですわ♡紅葉ちゃん☆(飾梨)

えぇー(ドン引き)

はいはい、分かりました。

この事もよく覚えておいてあげるわ(汗)

で、次はどこへ行くのかちゃんと決めたのよね?」

飾梨「えぇ、[青森県]という場所に行きますわ。

青森?遠いわね(紅葉)

いえいえ、そんな事ないですよ!

何ってたって私達には[飛行]が可能なんですから

東京から青森までは片道1時間で着きますよ♪

そう?確かに飛行は、便利なものよね(紅葉)

はいっ!

では、私は世界一周の旅を会えたら

必ずまた戻って来ますから。

絶対に☆」

紅葉「えぇ、その時はまたよろしく。

それじゃあね……飾梨さん♪」

飾梨「は〜い♡」

と飾梨は、仁川市内から去って行ったのだ。


その姿を見届けた紅葉は、

少し心配そうな目で空を見上げてこう言った。

紅葉「私は……何をしているのでしょうか?

あの子は、いずれ警戒しなければならない

対象になり得るやもしれないというのに。

仲を深め、友達となった私は………果たして

彼女を[殺める]事が出来るの???

いえ、これは…彼女を騙し初めた時から

決めていた事、決して最後まで曲げてはならない。

じゃないと折角……河童が手伝ってくれた意味が

無くなってしまう(焦)」

夕暮れ時の空を背景に紅葉は、迷いを覚えた。


瑠璃屋旅館・・・

悩み果てながらも旅館に帰って来た紅葉は、

扉を開けた先に女将の仁恵が待ち構えており、

沈んだ声で言葉を交わした。

紅葉「ただいま……女将さん」

仁恵「おかえりなさい、紅葉ちゃん♪

今日は遅かったわね。

えぇ、知り合いの頼まれたごとにちょっと(紅葉)

あらあら、大丈夫?」

紅葉「はい…平気です♪(空元気)

所で、女将さんこれから鈴木様方をお借りして

平谷山(ひらややま)へお連れしたいのですが、

よろしいでしょうか?」

仁恵「えぇ、その話なら昼間に聞いているわ。

八瀬様にマッサージをした際、

新條様から聞いております♡」

紅葉「マッサージ???

あぁ〜昨日の筋肉痛をほぐしてくれたのですね。

それなら問題なく誠也さんも

無事…参加、出来そうです♪(一礼)

それでは、私はそろそろ行く時間なので

これで………(苦笑い)」

仁恵「あっ、少し待って紅葉ちゃん」

と言われ紅葉が女将の横を通り過ぎた所で

振り返ると頭にキスをされた。

紅葉「えっ?」

仁恵「努力する事はとても良い事ではありますが、

同時に頑張り過ぎるのはよくありません。

笑顔で隠していても私には全てお見通しですよ?

帰って来たばかりの人に労働を強要するのと

同じようにやってはならない。

紅葉ちゃん……妖怪は[1つの魂]であり、

[たった1つの体]しか無いのですから

[自分]という存在を忘れてはいけませんよ。

そう、私は[天狗様]から教わりました♪

ですので…山に行かれる際は、

しっかりと休息を取ってからお行きなさい。

は、はい(点目の紅葉)

うふふふ♡」


30分後・・・

女子部屋の扉を紅葉がノックする。

蘭「は〜いって紅葉さん、その何だか朝より印象が

かわ………ってその髪、どうしたんですか?!(焦)」

紅葉「あぁ〜コレ?(汗)

友人と少し街を出歩いていたら、

急に街が騒がしくて何だろうって思って行ったら

街の方々が喧嘩をしていて

その仲裁をした時にちょっとね(焦)」

蘭「そ、そうだったんですか!?

私達の知らない所で紅葉さん、大変でしたね!

紅葉「ここに至るまで

しばし…休憩のお時間を取っていたので

皆さんの下に来るまでは、

予定の時間より遅くなってしまいましたが(汗)」

蘭「そっか?!

もう…こんな時間なんだもんね!!

ちょっと待ってて誠也、起こしに行って来る♪」

紅葉「は、はぁ………?どうぞ」

蘭「えへへ♡」

と言いながら男子部屋へと入って行った

蘭を見て紅葉は、蘭達の部屋で待つ事にした。

中に入ると2人が向かい合うよう座っており

テーブルいっぱいに教科書やノートを広げていた。


雫「あっ、日野寺先輩……こんばんは。

おかえりなさい(友理)

ただいま(紅葉)

すみません(汗)今すぐに片付けますね!」

紅葉「そうですか?

お2人は今の今まで何して過ごされましたか?」

雫「えっと〜

先輩方と自主練に少し参加した後、

夜までにレポートを半分終わらせようと

勉強していた所です」

友理「うんうんうんうん☆」

紅葉「そうでしたか、お疲れ様ですね」

3人「・・・チーン」

友理「んっ???(汗)」

と話す事が無くなった3人は静まり返り、

紅葉はお構いなしにお茶を(すす)った。

数分後、女子部屋の扉が勢いよくバタンと開き

物凄くご機嫌になった蘭が帰って来たのだ。

蘭「おっまたせ〜☆

準備はもう出来たから紅葉さん、行こう!!」

誠也「ゔぅ………(顔面蒼白)」

日向「はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……はぁ(汗)」

何故か疲れ果てている日向と

蘭によって取り押さえられた誠也が、

口から泡を吹いていた。

紅葉「あの短時間でどうしたらそうなるのよ(汗)

音は蘭さんが遮断してたとはいえ、

騒がしかったですよ」

2人「えっ?!」

蘭「えぇ〜…そうなの?(焦)

じゃあ私の怒鳴り声まで聞こえちゃった?!

それは、知らないわ(即答する紅葉)

うっそぉ!?

うそ……(紅葉)

ムッ(恥)紅葉さーーーん!!!!!!(涙)」


夜の8時頃、柄谷町の裏山にて・・・

5人「はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……はぁ……

だらしないですね、皆さん(ジト目な紅葉)

そんな事………言われても〜(友理)」

と言いながら段々とイラ付き始めた

誠也が先陣を切り、あと3人も続いて歩く。

まだまだ突き進む4人を見て

紅葉と友理が、こう口を開いた。

紅葉「はいはい。

皆さん、ここですよ〜どこまで行くんですか?」

友理「皆んな〜〜〜!(両手を振る」

誠也「はぁ?!

全然まだ感、出すなよな!!全くぅ〜(汗)」


やっと着いた事に安堵した蘭は少し気を抜いた途端、

妖怪になってしまったのだ。

しかし、前に見た時は夕暮れ時だった事もあり

2日も妖怪になっていない影響で

抑え付けていた妖力が一気に解放された。

完全な姿に変わっている為、

蘭の顔には髪の生え際から目を通り顎先までいく

蜘蛛の糸のような模様が浮き彫りになっていた。

蘭「あっ、しまった(焦)」

紅葉「うふふ♡

そう簡単に[妖怪化]を防げていたら

誰も苦労しないわ。

さぁ残りの3人も精々、抗ってみなさい♪」

日向(あっ、ちゃっかり見破られてる(汗)

 ↑

※自主練中に動き過ぎて気力が途切れた人。


誠也「……くっ!蘭まで落ちたか。

任せろ、俺が蘭の分まで頑張ってやるからな!!

私、死んでないからね!?脱落だから!(蘭)

いや、死んだら誰も覚えてないと思いますよ(日向)

うーん、それはそれで…悲しいよ〜(涙目な蘭)

まぁっ!俺は、まだ余裕があるぜ。うんうん♪」

日向「あ、そう(呆)」

友理「そういえば雪乃さんも〜

いつもなら妖怪になってても

おかしくない時間にも関わらず、

やけに口数が少ないなって思ってたけど〜

[あの為]だったんだね♪

凄いじゃん☆」

雫「林堂さんが言うと嫌味にしか聞こえません。

集中したいので少し黙ってて下さい」

友理「えっ!酷いよ、雪乃さーん(涙)」

紅葉「こら、そこ!!

喜怒哀楽の激しい皆さん…すみませんが、

私が着いたと言っただけで

ここはゴールではなく[始まり]……なのですよ。

始まり???(友理)

ふっふふ♪

今までの試練は

早朝もしくはお昼頃に掛けてでしたが

今回の試練は夜、ズバリ[肝試し]の試練を

ここに開催したいと思います(ニコニコ)」


蘭「えっ、ここここで?!(焦)

嫌だ嫌だ嫌だ!!1人は絶対に嫌っ!

誰が1人と言いました。2人一組でやりますよ(紅葉)

え、そうなの?!

じゃあじゃあ誠也、一緒にやろう!!(上目遣い)」

誠也「げっ………ふ、ふーん(焦)

でもなぁ、蘭?!

去年も俺ら2人で組んだんだからよ〜

今年くらいは、日向と組まないか?

どうして???(蘭)

だ、だだだってよ(汗)

引き続き同じペアだと俺ら成長したか

よく分からないし……

肝試しって案外、力試しみたいな要素もある!

だから…ここは別にしないか、なぁ〜?」

蘭「うーん、でもさ誠也。

あっちはもう決まっちゃったみたいだよ?」

誠也「あはは……そうなのか〜(汗)

それは残念………ってはぁ?!!!!!」

と目線を蘭から日向に移すと雫と一緒に居た。

余った友理は紅葉が入り、

必然的に蘭と組む事になっていたのだ。

誠也「日向、お前…何でもう組んでんだよ!

去年は余って仕方なく紅葉と組んでた癖に

雫と組む時には何の躊躇も無いんかっ?!

俺の身が持たない事もセットに考えてみろよ(焦)

この勝負、絶対に勝ち取らなきゃいけないんだ」

と小声で言う誠也に対して日向は舌をべーと見せ

ジト目でこちらを見つめている。

日向(それは、お前の話であって

僕は既に脱落してるんだ。もう関係ないね)

誠也(くっそ〜!!

アイツ、去年の事……知っててあの態度かよ(怒)

肝試し終わったらアイツの首締めてやる)


紅葉「物騒だこと。

それじゃあルールを説明するわ♪

この平谷山(ひらややま)の最上階にある古いお寺に

3つの鈴を置いて来ました。

その鈴を鳴らしながら先に下山できた

グループの勝ちとします!

ふ〜ん、意外と簡単じゃねぇ?(誠也)

まぁ…簡単と言ったら簡単ですが、

鈴のあるお寺までの道のりには

まず海坊主と同様に招集した人達が行手を阻むわ♪

地獄じゃねぇか!?(焦る誠也)

そのくらいあなた達を信用してるって事、

それからあの鈴には特殊な効果がありまして

鳴らす事で初めてその効果が発揮されるわ。

特殊な効果……ですか???(雫)

えぇ、それは山の奥地に入れば

お分かりになられるかと思いますが、

今回の試練で招集した人達は(みな)

私と私の友人の協力の下、

計24名程、待ち構えている予定です♡」

蘭「えぇ〜!?!!!!

わた…私、棄権しても良いかしら(青ざめる)」

誠也「言い訳ないだろうーーー!!」

日向「………僕も棄権しようかな(諦)」

そんな紅葉の話を聞いていた友理は

やる気に満ち溢れたワクワク顔で

こちらを見つめており、

雫は何かに集中しながら髪が揺らいでいた。

だらしない2人に紅葉は、あっさりと受け流す。

「はいはい。

あなた達の個人的な感想は、ひとまず置いといて。

鈴は簡単に言えば、

あなた達を守ってくれる盾であり、

とても重要な選択となる事でしょう!

その盾にはペア意外の対象を寄せ付けない

いわば、[妖怪除け]という貴重な品です。

これはアタリ・ハズレの激しい繊細な鈴なので

良い盾が欲しければ、それは早い者勝ち

お互いの価値観が合えば上手くいく筈だわ♪

へぇ〜楽しそう☆(友理)

コホン。

という事でお寺に着くまでの間、

待ち構えている妖怪に攻撃するのはアリ、

相手の姿を捉えて隠れながら進むのも良し

それも1つの作戦なので。

あとはお寺までの道のりは[運次第]、

精々……お2人で仲良く頑張って下さいね♪

それでは、[肝試し]へいってらっしゃい!!」

と言って3組は、古いお寺を目指して

3つのコースへと分かれた。


Aコース:友理と紅葉ペア・・・

友理達の現在地は、スタート地点から

すぐにある分かれ道を右に次の分かれ道も右に

更に次の道は左とジグザグに進んで行った。

ほぼ会話する事なく確実に進んで行く所で

ずっと腕を後ろに組みながら友理の隣を歩く

紅葉が、こう口を開いたのです。

「一応、言っておきますが友理さん………

私はペアとして成立させる為であって

友理さんがこの3日間で得た成果を

よく観察する為でもあります!

あくまで私は、余り者と組んでいるだけで

手助けやお手伝いするつもりも

更々無いので1人で頑張って下さい」

友理「あはは……分かってますよ?

(余り者ってぇ〜言い方(汗)

じゃ、じゃあお手伝い関係なく

少し質問…して良いんですか???」

紅葉「辺りを警戒しながら聞けるのであれば、

私は構いませんけど。

あなたが真面目に取り組んでくれるなら」

友理「はいっ!それなら安心して下さい。

私、人並みに真似る事が得意なので

雪乃さんの妖気ドームを模倣し、

やっと余裕が出て来ましたから」

紅葉「サラッと凄い事、言ってません(汗)

あなたの能力ってもしかして……[模倣]???」

友理「そーうなんでしょうか?

でも確かに[模倣]が能力だとすると〜

自分でも納得です!!

私、器用な事には特に自信がありますから♪

ふーん。そう、凄いのね(紅葉)

んっ???」

と何かに勘付いたような顔をする紅葉は、

適当な返事を返しこの話は終わった。


友理「それじゃあ次の質問☆

紅葉先輩は、[四大妖怪]の1つである

[天狗組]に所属しているんですよね!

でしたら、なぜ組織にシマとかテリトリーが

決まっているのでしょうか?」

紅葉「そうね、それは〜………

私も詳しくは知らないけれど、

仲間から聞いた話だけど[四大妖怪様]が

単純に不仲な可能性があるとか。

私もある意味、[天狗様]の側近でもあるけれど

確かに[四大妖怪様]、直々に訪れた試しは

一度も無かったわ」

友理「へぇ〜……って主人の側近に付いてるって

紅葉先輩、一体…何者なんですか?!」

紅葉「うふふ♪

私は秘書的な立ち位置とはいえ、

幹部からは、[天狗様と似たような力]ねって

よく言われていたかしら。懐かしいわ♪」

友理「なんか凄そう!

(あれ?

紅葉先輩って確か合宿の初日に風を操ってたから

もしかして………先輩の正体って[かまいたち]!?

でも、[かまいたち]って確か〜……(汗)」

紅葉「所で友理さんは、シマやテリトリーの話を

どこの誰からお聞きしましたか?

えっ、友人からですが〜どうしてですか?(友理)

その情報は、組織に入っている人だけが知り得る

いわば[個人情報]なの。

だからその子が、[四大妖怪]の説明の一環として

思わず口を滑らした事なら良いのだけど〜……

慌てている…そんな様子は、見受けられたかしら?

うん(友理)

本当に?

うん!(友理)

本当の本当に???

はいっ!?(友理)

なら、良いわ。疑ってごめんなさい」

友理「(び…くりしたぁぁぁ〜!!)

じゃ、じゃあ次の話に………っ!?」

と話が1段落した所で

妖気ドームに侵入して来た妖怪の気配を察知し、

友理は戦闘態勢へ入る。

紅葉「それじゃあ今度は、友理さんの番ね♪

しっかりと拝見させて頂きます」

友理「はいっ!それでは、行きます!!」

と言って誠也の攻撃を模倣し、

手は黒く染まる訳も無く素手で

空気を収縮した波動パンチを仕掛け、

妖怪を吹き飛ばす。

すぐに接近戦へと持ち込み相手の懐に侵入し、

首に大打撃を浴びせ蹴り飛ばした!


一方、Bコース:誠也と蘭ペア・・・

スタートした所から10mぐらいしか

離れていない所に2人はまだ居た。

蘭「ねぇ、誠也……待ってよ(汗)

もう少しゆっくり行かない???

お寺までまだ距離は離れてるし、

皆んなだってそんなすぐに着く訳じゃない

んだから…ねぇ?」

誠也「・・・」

と涙目になりながら蜘蛛の足を上手く使って

誠也と歩幅を合わせながら腕にしがみ付いていた。

誠也(………頼むから今は離れてくれ(汗)

蘭、少しで良いから腕の力抑えて抑えて!!

か…顔が近過ぎて妖力の抑えが効かなくなる)

蘭(えっと〜……全部、聞こえちゃってるよ誠也。

で、でも邪魔しちゃったのは

私が近寄り過ぎただけ…だよね?(ドキドキ)

 ↑

※能力:テレパシー

と思いながら蘭は力を緩め、

ポール一個分くらいの距離を取った。

蘭「ごめんね、気付かなくて(照)」

誠也「んっ???

(早めに力を緩めてくれて有り難いけど、

何で分かったんだ?

そりゃお互い顔が近かったから

恥ずかしくなって気付いた。

でも、なんか変に距離を置かれた気がする(汗)

俺……ただ単に気を利かせてくれたのかな?

だったら俺が何とか蘭をエスコートしないと!

よ、よし(汗)

………えっ?!(赤面の蘭)

蘭の言う通り、必ずしも一番手に行く事は

ねぇって事で俺は蘭の意見に賛成だぜ☆

歩幅は任せた!!

(まぁ、俺的には日向や友理達よりも

前に行って一番を取りたい所だけど)」

蘭「もう…誠也らしくない事、言うと思ったら

やっぱり良い感じの雰囲気の中で

本心を隠してるじゃない。

何年、誠也と一緒に居ると思ってるの?」

誠也「・・・。

ああぁぁぁーーーーー!?!!!!

わっ、忘れてた(汗)

蘭の能力…テレパシーな事っ!

今更、気付いたの?!(蘭)

じゃ……じゃあ俺が、

さっき心の中で言ってた事は!!

全部、筒抜けだったよ♪(テヘペロ顔の蘭)

はっ!恥ずかし過ぎんだろぉぉぉ!!!!!!」

と誠也が叫んですぐ2人の背後には

謎の足が見えており、止まっていた。


一方、Cコース:日向と雫・・・

この2人はあの2組の中でダントツに早く

分かれ道、4つ目を過ぎ去り

お寺までの道のりである小さな池の目印は、

地図の半分の所に居た。

妖怪と一度も遭遇していないグループで

ここまで日向と一言も会話すらしていなかった為、

勇気を出して雫は気になった事を尋ねてみる。

「あ、あの……どうして鈴木先輩達と組まないで

私とペアになったのですか?

私なんかより…林堂さんとだって………

組めたと思いますし!!

あの3人と比べたら私は何の取り柄もない……(焦)

んっ?き、聞いていますか新條先輩?」

という雫の言葉に無反応だった日向は、

別の事で何か考えていた。


海坊主戦の時の事を思い返し、

歩きながら考えをまとめる事に専念したのだ。

日向(昨日の海坊主との戦い、

雪乃さん自身も言う通り妖力は少ないものの

尋常じゃない妖力の質量や操作…それに

初めて使ったような素振りがなければ、

昔から使い慣れている可能性が高い。

一つ目だから言って片付けられる問題では

無くなってきたし、あの攻撃に当たった

海坊主も馬鹿だとは思うが………(汗)

はっ、ハアァ……バックション!!!(海坊主)

優れた素質と恵まれた環境で取得したものなのか

何にせよ、妖気ドームの範囲に入った

妖怪に取り憑く事も。妖怪だからそうなんだけど。

うーん(汗)

流石に僕1人で考えるような事じゃないし、

むしろ嬉しい事だ。

だったら一体…誰から教えられたものだろうか?

直接、本人に聞いてみる事も出来そうだが

今はそんな場合じゃない。

一旦、この考えは保留にしよう!)

と考えがまとまった所、雫に呼び止められた。


雫「新條先輩、先程の話…聞いていましたか?

……えっ、なに?何か言ってたの???(日向)

そ、その〜[肝試し]…の事で聞いたのですが。

ごめん、少し考え事をしていて……それで(日向)

どうして私なんかとペアを組んでくれたのですか?

勿論、1人は余りますが〜…(焦)

先輩達とだってペアは組めた筈です。

ですから、教えて下さい!!

私と組んで……本当に楽しいですか?(寂)」

日向「そ、それは〜………(ひきつった顔)

雪乃さんの方が多分、マシだと思ったから…かな。

マシ???何がです?(雫)

うーーーん。鈴木さんには内緒なんですが〜

鈴木さんって実は、怖い系が意外と苦手らしくて

その上、かなり叫ぶらしくてね。

急に叫ばれると落ち着いて静かに進まないからさ

きっと今頃、誠也が大変な目に……(汗)」


一方・・・

蘭「きゃあぁぁぁーーーーー!!!!!!

来ないで…来ないでよーーー!!(涙)」

誠也「んぐっ!」

ほぼ蘭が1人で独走状態で

恐怖のあまり蘭は誠也の首を

腕で締め上げている事も知らずに

突っ走って行く。

その2人の後ろには四足歩行で這いつくばりながら

凄まじいスピードで追い掛けて来る山姥(やまんば)

追われていたのだ。


日向「ほらね、鈴木さんとは〜

なるべくペアにはなりたくなくてね(汗)」

雫「なっ、なるほど〜………(点目)

変に気を遣わせちゃってすまない(日向)

あっ、いえ!!

それなら私も同じような選択をすると思います。

そっか、気を悪くしたなら謝るよ(日向)

いえいえ。

新條先輩のお気持ちを知らず、

私の思い過ごしで問いただしてしまって

こちらこそ、すみませんでした(汗)

じゃ、お互い様って事でこの話は終わろう(日向)

はいっ!あっ。

新條先輩、あの後ろにある大きな木に

妖怪が待ち伏せて居ます。

少し遠回りにはなりますが、

こちらの道へ行きましょう!」

日向「あぁ、分かったよ。

それにしても雪乃さんは、凄いですね♪

……えっ?(雫)

妖気ドームと妖怪化を抑制する力を

2つ同時に維持するなんて」

雫「・・・い、いえ私は…まだまだです(汗)

妖怪化を維持する事は初めてなので

どうすればお手軽に操れるように慣れるかは、

まだ手探りですがね(焦)」

日向「いやいや、それは異次元の話であって

僕らが気にするような事じゃないよ。

そ、それも…そうですが〜(雫)

それに妖怪、誰しも最初から出来る天才なんて

この世に誰も居ないと思いますよ。

[四大妖怪]の天狗と河童だって

最初から完璧に出来て当たり前って訳じゃないと

思うし、そうじゃなかったとしても

僕は……到底、思えない。

妖怪にとって当たり前に出来て当然な事だとしても

それは[自分の力を過信し過ぎてる]奴らの話、

大体、そんな重要な事………

紅葉がすんなりと話を通すとは思えない!!

今まで天狗組にしか知られていなかった情報を

無闇に話して良い訳がない。

紅葉は本当に教えるかどうかも定かじゃないのに。

……っ!(雫)

仮に雪乃さんが、[天狗の修行]を通過できて

力を制御できるくらいの成長を遂げられるなら

話は別だけど…そんな不確かで得体の知れないものを

信じてまで君は、雪乃さんは………

そこまでして何がしたいの?」


雫「……っ!あ、えっと………それは〜(焦)」

と言葉を詰まらせた途端、

雫は一つ目の姿へと変わってしまったのだ。

目元を暗くさせた日向の腰ぐらいまで

低くなった雫は、もじもじしながら

ノースリーブの浴衣ドレスへ変異し、

日向から目を逸らす。

日向「……っ!(汗)

すみません、少し言い過ぎました。

やっぱり本音は自分の中だけに隠した方が、

相手を傷付けずに済む筈なのに………(惜しむ)

馬鹿な[アイツ]の教えに

耳を傾けるんじゃなかった」

と日向は目を少し潤ませるような表情を

浮かべていた。

そんな顔を見た雫は、こう口を開いた。

雫「い、良いと……思いますよ♪

教えて貰った事が悪い事じゃなければ、

その人の教えを曲げちゃ駄目です!!

それに新條先輩にとって大切な人なら

それで良いじゃないですか、ね?」

日向「・・・大切な…人ねぇ。

[アイツ]は、とある事情で暴力沙汰に巻き込まれて

あれから一度も会えていないんです。

………えっ?どうしてそんな事に???(雫)

分からない。

ただ最近、[アイツ]は意外にも

身近な場所に居て少しは安心したけど(悲しげ)

昔のように会って話す事も

視界にすら映らなくなったんです。

よっぽど僕に会いたくない…みたいでさ(暗く)」

雫「そ、それは……!!」

日向「いいんです。

僕も[アイツ]とは、今じゃ会いたくもないからね」

と俯きながら目元を暗くさせる中、

微かに唇が震えていた。


雫は手を差し伸ばそうとしたが、

[あの時]の恐怖感を思い出し手を引っ込めようとした

所でこう考え始める。

雫(だ、駄目。

関係の無い私が言った所で

私は、そんなに新條先輩と親しくもない。

赤の他人が入れば最後、

更に悲しませてしまう事に………(焦)

でも、このまま悲しんでるのに

手の届く所にその人が居るなら私は会わせたい。

こんな事で放って置いたらやがて駄目になる。

私も泣いているだけじゃ何も解決しないし、

誰の力にも慣れないもどかしさも沢山の感情に

押し潰される時もあった。

けど、今は林堂さんのお陰できちんと前を向ける!

だから……私はっ!!

新條先輩だけには絶対、後悔して欲しくない。

私のような苦い経験から背中を押してあげなきゃ)

と合宿の初日の事と海坊主戦の時の事を思い返し、

引っ込めようとした手を

再度、日向の肩へと触れたのだ。


雫「新條先輩は、このままその人と会わないで

終わって良いとそう思っているんですか?

会わなくなった理由を……直接、本人の口から

聞く事もしないで立ち去るんですかっ!

その人と昔、何があったのか私には分からない。

私はもう、[あの日の夜]から

ずっと後悔したまま1人で生きて来ました。

どれだけ1人で考えても答えには辿り着けない、

その時の光景がまだ頭から離れない

苦しみは、私にも痛い程…分かります。

それでも私はある人が………[式神様]が、

手を差し伸べてくれたように

暗かった視界が今では鮮明に見える事、

その時に誓ったんです!!

どれだけ後悔した所で過去には戻れないし、

取り返す事だって出来ない。

それでもその人が今どこで何をしていたのか

相手の事を思ったり考えたり、

どんなに受け入れ難い真実でも

全部、受け留めるしか方法は無いんです!!

だから……だか…らぁ(涙)

新條先輩もその方と

ちゃんと正面から向き合って下さい!」

と雫の強い言葉に肩をビクッとさせた。


日向「……っ!

(僕は、[あの時]からとっくに後悔していた。

アイツと出会えたのは、嘘じゃないかって

本当の事を受け入れるのが凄く怖かった。

もう会う事も無いと思ってた…けど、

僕の気持ちは鈴木さんや誠也にすら

悟られなかった事を雪乃さんは、気付いてくれた。

いや、気付かせてくれた(涙)

[アイツ]と過ごした事よりも[あの時]の光景、

頭の中でだけしか振り返れない。

そのくらい僕自身もショックで立ち直れなくてぇ、

何回も幸せだったあの頃の時間しか思い返せなくて

そんな自分が悔しかったんだ!!)

………新條…先輩???(雫)

ハハッ(笑)……雪乃さん、ありがとう。

やっと自分の気持ちに素直になれたよ」

今まで見た事も無い日向の笑顔に思わず、

雫がドキッとしたのだ。

雫「……っ!(ドクンドクン)」


一方、友理と紅葉ペアは・・・

一番乗りにお寺に辿り着いた友理達は、

ここまで来るのに連戦続きだったというのに

汗1つかいておらず、余裕で立っていた。

友理の周りには妖力の残留が濃い霧のように

残っており、友理は背中を向けている様子だ。

紅葉「(凄い………あんな長時間も戦い続けた

というのにピンピンしているわ?!

それに妖怪の位置はランダム配置だった筈、

どうしてこんなにも集まっていたのかしら?

他の妖怪の妖力が残留しているとはいえ、

友理さんの体内からは1ミリも漏れておらず

相手の的確な弱点を狙い、気絶させた。

繊細で高度な技術……なるほど。

予想はしていたけれど、そういう事ね♪)

お疲れ様、友理さんと言いたい所だけど

下山するまでが、本題よ☆

そもそも今回の試練は………」

と紅葉の言葉を聞きながら

友理は手をニギニギとさせ表情は見えないが、

自分の手を見て「ふん」と口が笑い

鈴の置いてある寺まで近寄った。

そこには3つの鈴が置いており、

その中で一番ボロボロの鈴を友理が選んだのだ。

友理「・・・うふ♪

じゃあ私、コレにする☆

ボロボロになるまで使ってたって事は、

絶対に良い効果が有りそう♪」

と笑顔で金魚を見せる子供のように友理は喜び、

そんな顔を見た紅葉は、思わず無表情になっていた。


紅葉「さぁ、早くこのお寺から出て使って見れば?

アタリかハズレかどうか、まだ分からないわよ」

友理「そっか〜♡

使ってみないと分からないもんね!!

それじゃあ行こう、紅葉先輩☆

げ・ざ・ん♪げ〜ざん♪んふふ(鼻歌)」

と友理が鈴に括り付けてあった紐を持ち歩きながら

階段の方へ歩いて行く友理の背中を見て

不機嫌そうにこう呟いた。

紅葉「……面白くありませんね、あなたは(ムスッ)」

お寺の敷地から出た所で

友理は、腕を小刻みに揺らしながら

鈴を鳴らした。

するとその鈴からは、風鈴のような音色が鳴り

淡い青色のオーラを三重に放ち続けて

2人の気配だけが山から消え、

来た道を折り返し始めたのだった。


一方、日向と雫ペアは・・・

友理達とすれ違いで来た2人は、

お寺の階段を登りつつ鈴のある所に近付いた。

2人は顔を見合わせてから鈴へと目線を送り、

残りの2つである[真新しい鈴]と[古びた鈴]が

そこにはあったのです。

日向「どうしますか?

僕はそういうのは、得意じゃないので

雪乃さんが自由に選んで下さい」

雫「うーん(汗)

でも日野寺先輩、[肝試し]を始める前に

こんな事…言ってませんでしたっけ?


回想・・・


あなた達を守ってくれる盾であり、

とても重要な選択となる事でしょう!

その盾はペア意外の対象を寄せ付けない

いわば、[妖怪除け]という貴重な品です。

これはアタリ・ハズレの激しい繊細な鈴なので

良い盾が欲しければ、それは早い者勝ち

[お互いの価値観]が合えば上手くいく筈だわ♪


回想終了・・・


確かにそんな事を紅葉が言ってた気がする(日向)

……あっ。それでは、こうしませんか?

お互いにコレが良いと指差しするのは♪

うーん、それが手っ取り早いだろう(日向)

やった!!(嬉)

じゃあ………いっせーの〜せっ!」

と2人同時に古びた鈴を指差し、揃っていたのだ。

雫「はあ♪良かった…です☆(安堵)

あとは何の効果があるか、ですね!!

このお寺の敷地の外に出ない限りだと

結界の影響で効果が発揮できないみたいです(汗)」

日向「そっか、じゃあ敷地から出れば

効果が見れるんですね。

では、なるべく早めに離れましょうか!

んっ?どうしてですか???(雫)

見ての通り、鈴は3つの内どこかのグループが

既に取っていて僕らも取ったって事は〜?」

雫「もう1グループと鉢合わせるかもしれない。

そうですね?

うーん、奪われる心配は無いと思うけど。

一応…念の為ね。そろそろ………(日向)

はいっ!分かりました」

と急いで敷地を出て寺から少し離れた所で

立ち止まり雫が鈴を揺らすと

水滴が水に落ちような音色が1回だけ聞こえるだけ

で特に効果は見られず、2人は疑問に思った。


雫「あれ?どうしてでしょうか???(汗)

何も起きませんね。

盾ならドーム上のものが見えると思うけど(日向)

ま、まさか[ハズレ]でしょうか?!

す…すみません。すみません!!(焦)」

日向「落ち着いて雪乃さん、

この鈴を選んだのは僕も同じです。

1人で責任を抱え込まなくて良いんですよ?」

雫「そ……そうでしょうか?(汗)

では、選んだからには

最後まで持って行かなきゃ…ですよね」

と露骨にしょんぼりする雫と並走するように

歩き始めてすぐに日向は違和感を覚えた。

日向「んっ?

(待てよ。さっき立ち止まって効果は、

分からなかったなら…この鈴の効果って……)

雪乃さん、もしかしたらその鈴っ!

盾ではあるけど盾じゃなくて

少なくとも[ハズレ枠]じゃないと思いますよ。

えっ???(雫)

だって[ペアの僕ら]には、

きっと有利な効果があると思うのです。

それが仮に合ってるとしたら何でしょうか?(雫)

多分、僕らの[足音]が消えたんじゃないかな。

足音が…ですか???(雫)

うん、ほらさっきまで目には見えなかったものが

見えるようになっています。

下を見て下さい♪

どんな効果か当ててみるまでは、

見えない使用で効果は

発揮される仕組みなのかもしれません」

雫「なるほど?!

そこまでの観察眼は私にはありませんでした。

ありがとうございます、新條先輩のお陰です♪」

と雫が試しに歩いてみると

地面との間に見えない板のよう膜があり、

水色の水紋が振動していた。

雫「わぁ〜☆本当です!?

凄いですね、少し歩いただけなのに!!」

日向「いえ……大した事はないよ。

鈴の効果の為とはいえ、立ち止まった事で

効果が見えづらくなってる可能性を

視野に入れただけです」

雫「それだけでも凄いと思いますよ。

私、尊敬しますっ!

大袈裟だねぇ〜(困惑気味の日向)

うふふ♪」

日向「さぁ、鈴は取った事だし

今度はのんびり山を降りましょうか」

雫「はいっ!」

と2組目も下山し始めたのだった。


一方、誠也と蘭ペアは・・・

クタクタのヘトヘト状態で何とか寺に辿り着き

2人は、背中合わせで上がった息を整わせていた。

誠也「はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……はぁ………

し…死ぬかと思ったぜ、蘭(汗)」

蘭「ご、ごめんね誠也。

逃げるのに必死で全然、気付かなくて(焦)」

誠也「わっ…分かってる……って、

それよりも俺は蘭の方向音痴さに

若干、引いてるよ(汗)

べ…べ別に良いでしょ。怖かったんだから(蘭)

何回、地図の外…までほっつき歩いた

と思ってるんだ。

一生マップが、おかしかったんだからな?!」

蘭「うぅ〜(恥)だ、だってぇ〜………(涙)」

と赤くさせた顔を両手で覆い尽くす。

誠也「うわっ!?

泣くなよ、蘭(焦)俺が悪かったって〜!!」

と休憩も一段落した所で

2人は、寺に1つだけ残った鈴を見つめた。


2人「……へっ???

ええぇぇぇぇぇーーーーー!?!!!!(蘭)

嘘おぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!(誠也)」

蘭「私達、いつの間にか

最下位になっちゃったの〜〜〜?!

………誠也、本当にごめんね。

私がゆっくり行こうとか言うから……

私が方向音痴だから…だからぁ〜(涙)」

誠也「泣くなって言ってるだろう。

俺が付いてる限り、蘭を1人置いて

どこかへ行ったりしねぇって昔、約束したろう(照)」

蘭「うぅ……覚えてない(涙)」

シーーーン・・・

カッコ良く決めた筈がまさかの覚えてないと言う

一言に誠也は唖然とする。

そして徐々に顔が真っ赤になっていったのだ。

蘭「んっ?どう…したの誠也???

なんか顔が真っ赤だよ」

と涙を拭いながら蘭がそう尋ねると

さっきの話を無かった事にして鈴をバッと取った。

誠也「なっ、何でもねぇよ!!(恥)

は…はや早く鈴の効果、試すぞ」

蘭「う、うん?(←分かってない)」


[真新しい鈴]を鳴らしてみるが、

何の変哲もないただの鈴の音であり

2人は色々と試してみたが何も起きなかった。

誠也「んんっ???

まっ、まさかコレが俗に言う[ハズレ枠]か!?

普通に[ハズレ]で良いでしょ?!(蘭)

……と言っても一応、盾になり得るものだろう。

だったら、何とかなるんじゃねぇか?」

蘭「まぁ…確かに〜って

ねぇ〜誠也、さっきまでこんな紙あったっけ?」

と言いながら真新しい鈴の下辺りに

小さな紙がポツンと置かれていた。

誠也「んっ?いや、無かったと思うけど???

まぁ!とりあえず中身、開けて見ようぜ☆」

蘭「えぇ〜見るの?!なんか怖くない?

さっきまで無かったものを無闇に………(汗)」

と不安がる蘭の顔を見て

誠也は、瞬時に紙を取り上げ黙々と読んでいった。

蘭「ちょっ、ちょっと誠也っ!?

大丈夫そう?なんか変な怪文書じゃないよね?!」

と聞いた所で誠也の目の色が変わった。

誠也「……っ!

ねぇ、大丈夫なの誠也?………誠也???(蘭)

んっ?あぁ〜悪い。

意外と高度な事、書かれてて

蘭が取らなくて良かったなぁ〜ハハッ(焦り笑い)」

蘭「あ、そうだったんだね。

誠也がよっぽど高度って言うんだから

結構、大変な事…任されちゃったんだよね。

だったら私が口出しするのも悪いから

何も言わないでおくよ」

誠也「お、おぉ〜サンキュー蘭(汗)

さてと……そろそろ行くぞ。

今度は、あんまり叫ぶなよ?手がブレるから!!」

蘭「うん♪」


誠也は鈴をランタンのように前へ突き出し、

それでも怖がる蘭は誠也の掴みながら

キョロキョロと辺りを見回す。

風や何かが通り過ぎるように木々が揺れる音、

カチカチとチェーンの音が鳴る度に

ビクンとするものの誠也を邪魔するまいと

動きだけで留めていた。

誠也(あと、どのくらいで山から降りれるんだ?

流石にこれは想像してたよりキツイな(汗)

蘭も驚かないように頑張ってる事なんだし、

これくらいでへばってたら駄目だよな)

そう考えていると誠也の顔をふと覗き込んだ。

蘭「誠也、顔色…悪いけど大丈夫そう?

山ならあと20分くらいで着くと思うから

焦らなくても平気だよ?」

誠也「お、おぁ〜ありがとな!

(やっべ……筒抜けだった(焦)

いや俺が心配してるのはそこじゃなくて

………ってあと20分っ!?)

うわっ?!急に大声、出さないでよ(涙目な蘭)

わ、悪りぃ蘭…てかテレパシー切ってくれた方が

俺も蘭もお互いの為になるんだし、切っても……」

蘭「えっ、嫌だよ?!(焦)」

と即行で却下された。

誠也「はぁ!?

俺だけ心の声、ダダ漏れで

蘭は聞こえねぇって不公平だろ!!」

蘭「不公平じゃないもん。

そういう能力だから仕方ないでしょ!

(それに〜……誠也の声が聞けるだけで

私は安心するの(照)

なんて誠也に言ったら絶対、子供扱いされる。

切ったら周りの音が全部筒抜けになっちゃうよ(涙)」

誠也「なぁ、頼むよ蘭!!

ちょっとの間だけで良いからオフにしてくれ。

駄目なものは、駄目っ!(蘭)

何でだよ?!別に減るもんじゃねぇーんだし」

蘭「いっや!!絶対に嫌なの(涙)」

と言い放った途端、

恐ろしい風が2人に襲い掛かったのです。

蘭「きゃあぁぁぁーーー!?!!!!(涙)

やっぱり無理いぃぃぃ」

誠也「うわぁ?!くっ、苦し(汗)」

と誠也の努力が一気にパーになる瞬間だった。

結局…蘭に再度、首を締め上げられながら

山の中を8本の足で爆走するのであった。


山を下山し終えた2組はようやく合流し、

誠也達を待っていた。

友理「雪乃さん、おつか………あっ(察)

ムムッ…何ですか?(不機嫌な雫)

いや、お疲れ様。お互い大変だったね〜って。

そうですね(拗ねる雫)

ホントにごめんなさいだから(焦)」

と友理は、一つ目になった雫の周りを回りながら

ひたすら謝っていた。

その様子を見る2人は若干、引いているようだ。

紅葉「これは〜……どういう状態かしら???

さ、さぁ(日向)

あなたもとりあえずお疲れ様、日向さん。

昼間に妖怪になったというのに

夜になってあたかも妖怪化していない事を

私に隠し通せる程の実力が、

あなたにあったかしら?」

日向「いや、全然。

嘘を付いた所で紅葉に

隠し通す事なんて不可能だという事は、

僕自身もよ〜く分かっていますよ。

それより、どうでした林堂さんは?」

紅葉「えぇ……あなた達の言う通り、

確かに興味深かったわ。

体内の妖力のブレや戦いぶりを見たけれど、

あの力が今後、どうなるかは私にも想像が付かない。

私視点から言える事はただ1つ、

[特別部隊には無くてはならない存在♪]

とまで言っても良いかもしれないわ。

日向「(無くてはならない存在ねぇ………)

そういえば、紅葉達と誠也達の鈴の効果って

違ったりするの?」

紅葉「えぇ、1つずつ良い効果でもあり

悪い効果もあるけど結果的には重要なものとかね。

日向さん達のは、[防音]で盾の範囲内に入っている

2人の音を無くす効果。

友理さんが選んだ鈴は[気配消し]で

これが3つの中で1番の[大アタリ枠]であり、

最初にお寺に着くのが友理さんじゃなければ

結果がもっと面白かったというのに。

面白いって〜あのねぇ(呆れる日向)

そして最後に誠也さん達は[真新しい鈴]、

想像は付くと思うけど〜

アレだけは中身が空っぽなの。

空っぽ……ですか???(雫)

そう、[何も入っていない場所に

あるものを入れれば、魔法のように成立する方法]

まぁ、その代償として体に過大なる負荷が掛かる

けどね。

それが何かあなた達に分かるかしら?」

日向「魔法のような?一体、何を……???」


紅葉「それは♪」

と紅葉が言い掛けた所、友理が割り込んで来て

淡々と説明した。

友理「そもそもこの鈴の名前は[妖封鈴(ようふうりん)]

いわゆる[妖力を鈴の中に一時的に封じ込め

馴染ませて盾のように使ったり、

妖力の足りない人に至急される物。

ある意味、天狗組には無くてはならない象徴の核]

長年、愛用して来たからこそ

壊れた鈴と古い鈴をどう活用するか

見てみたかったから……ですよね、紅葉先輩♪」

と笑顔で言う友理に対して

苛立ちを覚えながらニコニコと接する紅葉は

渋々、礼を言った。

紅葉「あ〜そうですか。

ご説明、どうもありがとうございます友理?(怒)

知識が付いて私も…嬉しいです(イライラ)」

友理「は〜い♪」

2人「……っ!

(なんか一気に凍り付くような寒気が来たけど、

あれ…完全に怒って(ます)るな)」

紅葉「んんっ???

何かしら、私の顔に何か付いていますか?

あっ、いや……ただこう(日向)

何か…(強め)顔に付いていますか???

何でもないです(焦る日向)

はぁ………本当に面白くないわね」

と前に腕を組みながらご機嫌斜めであった。


会話を一通り終えた所で

蘭達の姿が、みるみる内に見えて来たのだ。

蘭は少し目をグルグルと回しながら

後ろの4本足を上げて尻餅を着くように座り込む。

蘭「はぁ…はぁ……肝試しは、もう懲り懲りぃ(涙)

山の夜道なんて危険、極まりないんだから

この試練、今年限りでやめよう紅葉さ〜ん」

と頼み込むが紅葉は先程の苛立ちようが

嘘のようにキラキラとした顔付きで一言。

紅葉「こ〜んな楽しい試練、辞める訳…無いわ♪」

蘭「そ、そんなぁ〜!!

嫌だ嫌だ、もう絶対にいっやあぁぁぁ〜(泣)」

雫「鈴木先輩、大丈夫ですか?」

と優しい声で雫が問い掛けると

蘭が顔をバッと上げた所で

肝試しを始める前とは異なる

可愛らしい容姿の雫を見てメロメロになった。

蘭「えっ!かっ、可愛い♡

一つ目妖怪ってこんなに可愛いかったっけ?!

雫ちゃんなの?

そ、そうですが〜???(雫)

えぇ〜!!お願い雫ちゃん。

朝も昼も夜も365日、

ずっと同じ姿で居てくれないかな?

先輩からのお願い、聞いてくれるわよね☆」

雫「えっ?ええぇぇぇーーー!!!!!!

さ、流石に365日も妖怪化の力を耐え凌ぐ事は

非現実的に論理的に出来ませんから!(汗)

だ…誰か助けて下さ〜い(バツ目)」

日向「はぁ……なんか久しぶりに

鈴木さんがシスコンスイッチ発動しちゃったよ。

………って誠也は、いつまで隠れてるのさ?

いい加減…出て来てこの場を納めてくれる。

今は夜だし、あんまりうるさいと街の人に迷惑が

掛かるからやめに……」

誠也「俺に頼むな?!

勝手に蘭が自発的に発動させたんだ。

俺がそんな事の為に出しゃばれるかよっ!!」

日向「あ〜ぁ、はいはい。

そういうのいいから

誠也の個人的な感想は、聞いてないよ。

とにかく前線に立った方が僕はお勧めするよ〜♪」

誠也「前線って俺をこんな小規模な事に

首を突っ込まされて堪るかよ(汗)

あと、俺の話を聞けっ!

お前が妖怪化した時におんなじ事したら

反抗する癖にいい気になってんじゃねぇよ?!」

日向「だって……今は、

僕の番じゃないから良いもんね♪(笑顔)」

誠也「この野郎ぉぉぉ(怒)」

と言いながら茂みの後ろに隠れる誠也を

日向が頭を鷲掴み、引っ張った。

誠也「取れる!?

頭、取れる取れるって…イテテテェ(焦)

うわっ!!」

と茂みから引っ張り出された誠也は、

前に居る日向を押し倒す形で

2人はピッタリと重なったのだ。


その光景を見た雫が、蘭を素早く跳ね除け

2人の元へと近寄ってこう言った。

雫「大丈夫ですか?……新條先輩と〜………

んっ?!だ、誰ですかーーーっ!?(汗)」

と雫が近くで叫ぶと体を前のめりにしながら

ゆっくりと立ち上がり雫の驚いた顔を見つめる。


目の前には全身黒い肌で覆われた半裸の鬼で

青い瞳の面積と比べて瞳孔が大きく開いており

鬼の目と化し、口は鋭い牙、

頭には真っ黒な角が2本も生えていた。

下半身はバルーンのように膨らんだ

紺色のハーレムパンツを履いて

お腹回りと太もも辺りにフサフサの毛並の装飾を

首にはゴツめの数珠のような

首飾りもぶら下げていたのだ。


誠也「んっ?何だよ。

俺の姿を見て驚いたのか?

え、えっと〜……どちら様ですか???(雫)

はぁ?!俺は、せいっ!

いや、この姿の時は[八瀬童子]って言う

名前で名乗った方が良さそうだな。

俺らがまだ初対面の時、

雫が自分で言ってただろう!!」

雫「あ、いえ…実物だけは見た事が無かっただけで

頭の整理が追い付いていない(汗)

[鬼]……なんですね、[八瀬童子]と言う名前は」

誠也「あぁ〜そうだな。

そもそも名前は知っといて中身を知らねぇ奴は

ボチボチいた感じだったわ〜(汗)

ちなみに一応、言っておくが日向も鬼な事は

名前から見れば分かるよな?

はい、それは勿論です♪(雫)

慣れてる筈なのに…なんか俺だけショック、デカ。

ほら紅葉〜肝試しも俺も終わったんだし、

そろそろ旅館に帰ろうぜ。

クタクタのヘトヘトだっつうの!

つうーか、何で俺達しか疲れてねぇんだよ!?」

日向「僕は、雪乃さんのドームのお陰で〜」

紅葉「私は、友理に任せただけなので〜」

誠也「お前らなぁ!!(怒)

紅葉「とにかくこれで全部の試練が終わったんです

戻りましょうか。

3日間及び妖怪化の影響も妖力共に見るからに

ブレのなかった友理しか残っていない事ですし、

ここで話すのは流石に無理そうね。

友理、瑠璃屋旅館に戻ったら少し時間を頂戴。

あ、はいっ!(友理)

さぁ……あなた達は明日の朝に帰るんですから

部屋に戻って一通りの荷物を仕舞いなさい」

誠也「うげっ!!

そういえば、忘れてたぁ〜(焦)

日向〜俺の荷物の仕分け頼むから手伝ってくれよ」

日向「それは良いけど、仁川市に戻ったら

ちゃんとレポート…やろうな?(怒)」

誠也「うっ!は、はい………」

蘭「そうじゃん誠也は〜!!

さっきのテレパシーオフにする話、

レポートの時は使うから覚悟してよね♪」

誠也「そ、そんな〜……(青ざめる顔)」

日向「日頃の行い…だからな、八瀬童子?」

誠也「おまっ!

こういう時だけ調子に乗るのやめろよな?!

あと、旅館に帰ったら締めてやる(怒)」

紅葉「いい加減、やめなさいな……恥ずかしい。

仁川市に帰る前に砂浜ダッシュ、7回!!」

誠也「は、はあぁぁぁーーーーー?!!!!!」


その夜・・・

瑠璃屋旅館の屋根上に3体の妖怪の姿が見られた。

赤茶色の長い髪の着物のような女性と

白髪で縦巻きロングの毛先が灰色の女性や

人並みの大きさで海坊主の姿がそこにはあった。

海坊主「そろそろ動き出しそうだな。

お前達、各々の街へ帰っても

決して警戒を緩めるな!!

天狗様に助けられたこの命、尽きるまで

私達がお支えするのです。

良いな……かまいたち、閻羅閻羅(えんらえんら)

2人「ハッ!!」

と海坊主がそう言った途端、

夜空には流れ星が通り過ぎて行ったのだ。

3人が空に見惚れていると旅館から見て

右側の方にある高くて大きな木のてっぺんに

誰かが乗っていた。

謎の黒い影が、こちらを見つめている様子で。


これは………始まりに過ぎない。

妖怪の街は、国をも揺るがす脅威に

まだ誰も知る由も無かったのだから。

これから大きな真実と明らかになり得る

攻防戦が繰り広げられようとも知らずに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ