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Y・Hファイル  作者: 白百合リーフ
林堂 友理サイド
17/29

第17話 「怪奇研究部の夏合宿(中編)」

友理達は、合宿1日目を終えて

天守(てんもり)村から柄谷町(からやちょう)、唯一の旅館へと辿り着いた。

そこはレトロモダンな建物で4階建ての旅館だった。

瑠璃屋旅館・・・

女将「ようこそ瑠璃屋(るりや)旅館へお越し頂き、

ありがとうございます♪

私はこの旅館の女将の仁恵(きみえ)と申します。

お部屋のご説明につきましては、

あちらに居る八城(やしろ)が当館のご案内を致します。

皆様のお荷物は、そのままで結構ですので

どうぞお上がり下さいませ」

と女将が八城に振り、静かにお辞儀をしてから

階段の方へ手で記した。

八城「こちらでございます、皆様」


部屋に向かう前にお風呂の場所や

大広間での朝食の場所など館内の説明をし終えた所、

帰り際の廊下で中庭に咲いていた青い花について

雫が尋ねた。

「八城さん、少し質問しても宜しいですか?

何でしょうか?(八城)

先程の館内の説明の際で

ずっと気になっていた事なんですが〜………

なぜ、この旅館の中庭にだけ

青い花一面に咲いているのですか?

この旅館のシンボルであるならば、

もう少し目立つ場所に置くべきものかと

思ったのですが……」

八城「そうですね。

お部屋に飾れば、旅館のシンボルとして

強調されるでしょう。

それでも私達は屋内に飾るのではなく、

敢えて中庭という場所で咲かせている事に

意味があるのです。

敢えて…なんですか???(雫)

はい♪

何故なら、この旅館を作った本当の訳とは

全て[天狗様]の為でもあるのです!

なにっ!?アンタ、会った事があるのか?(誠也)

いえ、私はたった一度だけお会いした身ですので

天狗様の所在までは存じ上げれませんが。

そ、そっか。なんか〜すみません(誠也)

構いませんよ♪

あの方は、とても素敵な方です。

[今ある命を大事に]というお言葉に救われたのが

我々、旅館スタッフなのです。

そんな天狗様に助けられた御恩を忘れない為に

この柄谷町で旅館を開く事が出来ました!!

[あの方]は他の誰かの命を救う為だけに力を使い、

[四大妖怪]という身分のお陰もあって

平和な世界へ変えようと日々、ご尽力なされています。

もう7年も会っていませんが、

この町での犯罪件数が年々減っているのも

全て[天狗様]のお陰なのです!

[ネモフィラ]の花を育てているのは、

[天狗様]に昔、あなた様に助けられた者達ですと

お伝えする為なのです」


雫「そ、そう…でしたか(汗)

そんな事も知らずに失礼な事を言ってしまい、

申し訳ございません」

八城「うふふ。良いのです!

よくお客様から同じ質問をされますので

どうか、お気になさらないで下さい」

雫「あ……ありがとう…ございます(焦)」

と質問に受け答え終えた所で

予約した2つの部屋の前に辿り着いたのだ。

八城「皆様、長々と館内のご説明に

お付き合い下さり、誠にありがとうございます。

かなりお疲れになられている事でしょうし、

夕食までお部屋でごゆっくりお(くつろ)ぎ下さいませ♪」

と八城は部屋の前から立ち去り、

話が終わってすぐ男子部屋へと

誠也が飛び込んで行った。


友理と雫も先に入室した後に紅葉が、

蘭にだけこっそりと伝えた。

紅葉「それでは蘭さん、私はこの旅館に留まる間だけ

お仕事する時間ですので

予約したお部屋は、3人で好きに使って下さいね♪」

蘭「あぁ〜そういえば、紅葉さんって

巫女さんのお仕事と旅館のお仕事を

掛け持ちしてるって前に話してたもんね!!

働くのも良いけど、

今は夏だからあんまり頑張り過ぎちゃ駄目だよ?

紅葉さん」

紅葉「えぇ、お気遣い感謝致します♪

それでは明日の9時頃に旅館前で集合しましょう。

あっ、ちゃんと水着は持参して来ましたか?」

蘭「勿論だよ!

だって私、海は初めてなんだもん♪

物凄く楽しみにしてたんだから。

(まぁ〜……[強化訓練]の為だから

あんまり、ゆっくり出来ないんだけどね(汗)

分かった!!9時だね♡紅葉さんもお疲れ〜」

と蘭の呼び掛けに紅葉は手を振り、

階段を下りながらスタッフルームへと向かった。


部屋で寛ぐ蘭達は、今日の事について話し始める。

蘭「うーん、はぁ〜………

とりあえず合宿1日目は、何とかなったね(汗)

紅葉さん、去年よりも張り切って

本気で私達に掛かって来た事だし、

安心して[強化訓練]に励めそう♪

2人は、今日どうだった?」

雫「そうですね。

去年もやられていた先輩達と比べれば

私の訓練は、地味そのものでしたから。

先輩方が少し羨ましいです(沈む顔)」

突然、そんな事を言い出す雫に友理は、反対した。

友理「いやいやいや!!

あんな迫力ある訓練を羨ましがる事ないよ(汗)

雪乃さんは、ガッツリ戦闘タイプって

訳じゃないんだから無理にぃ〜……」

雫「で、ですが(焦)」

蘭「そうそう♪

そんなに気にしなくて良いんだよ、雫ちゃん。

今は、自分の限界値を見定める為の小手調べだもの。

探っていく内に自分の事をより一層、

理解を深められる機会なんて早々ない事なのよ!

それに私達は、今後に関わるお仕事を

これから沢山こなさなきゃいけない。

その為の[強化訓練]なんだから!!

気にしないの♡」

雫「うーん……そうでしょうか(汗)」


聞いても悩み果てる雫に友理は、ある事を提案した。

友理「絶対、そうだよ雪乃さん!!

無理に先の事まで進んで考えてたら

それはそれで…雪乃さんがまた道を外しちゃうよ。

……っ!(雫)

だからさ、この合宿期間中だけじゃなくて

1ヶ月…ううん。

期限なしの[願掛け]を今から決めない?

願掛け???(蘭)

うん☆

それぞれの目標や目的、ゴールがあった方が

次に進むモチベーションにも繋がるでしょう!

無理に前へ突き進んだらまた悩むんじゃないかな?

目的達成するまでは次に進んじゃ駄目ってルールで

終わったら、その先に進んでよしって事で

またやり取りしようよ!!」

蘭「良いわね〜それ♡

じゃあ私も後輩の考えを尊重して

一緒にやろうかしら。

えっ?鈴木先輩もですか……?(雫)

えぇ〜なんか楽しそうじゃない♪」

友理「はあ☆

そういえば、鈴木先輩ってRiin(リイン)交換しましたっけ?

友理ちゃんとはして〜………ないわね(蘭)

今、交換しませんか?(焦)」

蘭「えぇ、良いわよ。ちょっと待ってね♪」

と持って来た黒い横長バックの中を探している所で

雫にキラキラした目で訴えた。

友理「雪乃さんもどうかな?どうかな???

一緒にやった方が結構、楽しいと思うんだ!」


雫「うーん………願…掛けですか。

(そういえば、私の目的って[式神様]を見つけて

旅に同行する為だけに動いてきた。

それってただ私の願いを一方的に押し付けている

だけで私自身の気持ちじゃない。

[式神様]を今すぐ見つけるだけじゃ駄目(焦)

私は、少しでも[式神様]の力になれるよう

強くなりたくてこの部活に入ったんだった!

ただ闇雲に探すだけじゃ意味が無い…だから)

やる。私も願掛け……一緒にやりたい!!」

とその答えを聞いた友理は、

やけに嬉しそうな顔をしてこう言った。

友理「ほ、ホント!?良かった♪

じゃあ私達3人の秘密って事で決めよっか。

そうすれば、誰かが道を外れた時とか諦めかけた時に

お互いに支え合えるようにさっ!」

蘭「えぇ、そうしましょう。

私達3人の…約束ですよ♪

誠也達には内緒で、ねっ?」

雫「……う、うん(笑)」

と3人はワクワクした顔で

それぞれの目標をこっそりと教え合い、笑った。


8月3日・・・

瑠璃屋旅館の朝食を食べ終えてから

すぐに柄谷町を出発した一同は、

隣町の妖怪ゲートまでバスで向かった。

前に花梨達と買い物したあの深沢市に

もう一度、行ける事が分かってから窓際に座っていた

友理がワクワクしながら雫に話し掛けた!

友理「はあ♪海だ、海☆綺麗だね〜雪乃さん。

私、バス乗ったのこれで2回目なんだよ!!

乗り物って便利だね〜♪」

雫「えっ、それ本気で言ってますか?

うん!嘘なんて吐かないよ(友理)

私達、仁川市やその他の市の方々は〜

隣町に出掛ける際は、近くのコンビニ感覚並みに

バスを使いますよ?

地域的に仁川市はまだ行き届いていませんが、

帰りだけは妖怪ゲートを使って帰れますから

それで〜………

へっ?そうなの???(友理)

はい。

ですから林堂さんは〜お引越しの際、

どのようにしてこちらに来られたのですか?」

友理「……えぇっ!!

そ、それは〜その…………(恥)

と…徒歩です。

歩いて遥々、仁川市まで来ました♪」

とそんな事を聞いた雫・蘭・日向・紅葉が、

ハトが豆鉄砲をくらったような顔をしながら

声を揃えてこう言った。

4人「はぁ?!(汗)」

誠也「ニヒヒッ!だよな☆(笑)

俺も〜今の学校に通う為にわざわざ仁川市まで

徒歩で来たんだぜ♪

似た者同士は、意外とすぐ近くに居る!!」

日向「そこ自慢じゃないし、一緒にするな(汗)」

紅葉「はぁ〜……誠也さん並みの問題児が、

ここにも居るだなんて信じられない。

あなた達、馬鹿なの?(真顔)」

2人「馬鹿じゃない(ねぇ)よ〜!

運転手「あの〜後ろの座席のお客様、

ここはバスの中なのでお話の際は

もう少し声のボリュームを下げて頂けませんか?」

一同「あっ。す…すみません(汗)」


深沢市のショッピング前へ到着・・・

バスが出発するまで蘭だけがひたすら謝り続け、

ショッピングモール近辺の証明写真の隣にある

紫色のサークルに囲われた不思議な装置を見つけた。

その装置に3人ずつ入り、

すぐに烏羽浜(からすばはま)の海の目に転移されていたのだ。

友理「うわ〜!?

海がこんな近くにあるなんて妖怪ゲートって凄い☆

さっきまで私達、ショッピングモール周辺に

居たよね?!凄い便利な装置だね♪」

雫「よ、良かった……ですね。林堂さん(汗)」

と目を輝かせながら海へ向かう友理のフードを

掴んで止めた。

紅葉「待ちなさい。

私達は、こんな目立つ場所で訓練するつもりは

無いわ!!

えっ?じゃあ…どこでやるんですか???(友理)

あっちよ」

と紅葉が、そっと砂浜の向こう側に手をやった。

友理「あっちぃ〜………って洞窟!?」

紅葉「さぁ、とりあえず先へ進みましょう♪

この合宿の為に助っ人を呼んでおいたから」

と後を付いて行く4人の後ろの方に居た雫だけは、

まだ紅葉に疑いの目を向けながら歩いた。


洞窟にしばらく入ってゴツゴツとした足場を

歩きながら話し始めた。

蘭「流石〜紅葉さんだね!

下調べもちゃんと済んでらっしゃる♪」

紅葉「去年、あなた方に頼んだのが

間違いだったので事前に下見して正解でしたね」

蘭「ゔぅ〜その節は、ごめんなさい!!

今更、言い訳にしか聞こえないと思うけど

始めたばかりの部活のお仕事もあって

上手く回らなくて失敗続きだったから(バツ目)

折角、紅葉さんを誘えたのにぃ〜

修行場所とか泊まる宿の確保まで手が回らなくて

その時は、本当にごめんね(汗)」

紅葉「まぁ〜それも仕方ない事ね。

当時のあなた達の連携と比べたら

今が大分マシになった事が分かって清々するわ♪」

蘭「あはは………それは良かったよ〜

(相変わらず日向くんと違って毒が鋭過ぎる。

でもまぁ〜

これが案外、誠也の為にも効果があると思って

紅葉さんを誘ったんだよね私☆

もう誠也にはこれ以上、無茶して欲しくないもの)」

と紅葉が蘭の方をチラッとだけ見た所で

後ろから怒鳴るように被せたきた。

誠也「さっきから聞いていれば、何だよ(怒)

その態度っ!!

去年から言いたい放題、ぐちぐち言いやがって。

日向よりタチ悪いじゃねぇかよ?!

蘭(あれ?

もしかしてあまり変わってないかも(汗)

後で見てろよ!

今日の訓練、パパッと終わらせてやっからな」

紅葉「………そう♪

そのくらいのやる気があるなら

今日は、早く終われるかもね。

(今は……)」

と愛想笑いを浮かべている内に洞窟を抜け、

反対側から来る眩しい光に包まれた。

すると、烏羽浜の青い海と違って

洞窟を抜けた先には色鮮やかな青い海が、

広がっていたのだ!!


蘭「はあ♪綺麗な場所〜☆

紅葉さん、ありがとう♡

これも人目を避けてでの訓練の為よ(紅葉)

それでもお礼はさせて♪

それじゃあ皆んな、目的地に着いた事だし

早速だけど着替えよっか!」

誠也「おぉよ♪」

数分後・・・

男子組が、先に着替え終えてから

砂浜でちょこんと座る日向。


その隣を立つ誠也は半裸で意外と筋肉質、

紺色ベースに明るい青の模様入りの膝丈の海パンで

日向は、白で黒の模様が入った膝丈の海パンに

パステルグリーン色のラッシュガードのチャックを

上げずに羽織っていた。


誠也「……ったく(汗)折角の夏なんだしぃ〜

この時ぐらい、上着脱いだらどうなんだよ!!

そんなの僕の勝手だろう。第一………(日向)

せいっ♪」

日向「あっ!?」

と隙を突かれてラッシュガードを取り上げられ、

一般的な肌色より白めだった。

誠也「別に良いだろう☆

脱いだ所で俺ら、男なんだぜ♪

それとも何かぁ〜?

裸姿、見られるのが恥ずかしいってか(笑)」

と調子に乗り始めた誠也に顔を向け、

怪物のように目を赤く光らせ静かにこう言った。

日向「こっちは、ただ日焼けしたくないだけで

……それだけの理由で何が悪い?

言ってみろ!!(怒)」

誠也「えっ、いや〜!?

そんなに怒るなんて思わなかったんだ。

なぁ〜?ちょっと機嫌、直してくれよ(汗)」

日向「だったら、早く返しやがれ(怒)」

と言った次の瞬間、キレ始めた日向が問答無用で

誠也を追い掛け始めたのだ。

日向「なぜ、逃げる!(怒)」

誠也「お前の顔が怖過ぎるからだろぉ〜!!(焦)」

と少しの間だけ砂浜を走り回って騒いでいると

先に着替え終えた蘭と紅葉が駆け付けた。


蘭は上下クロスホルダーの黒の水着で

脇腹辺りと下腹辺りにもクロスした蜘蛛モチーフに

ミニ三つ編みおさげの髪型をしている。

紅葉の水着は赤色なフリルビキニに

下は青磁(せいじ)色のパレオを履いており、

ロングポニーテールから輪っか状にした髪型。


蘭「ちょ、ちょっとちょっと何してるの?!(汗)

まだ砂浜で走っちゃ駄目だよ!」

紅葉「いえ、蘭さん。

走ってるんじゃなくて何か訳ありで

追い掛け回されてるみたいよ」

蘭「えっ?そうなの!?」

と話してる所に誠也が、ラッシュガードを捨て

蘭達の目の前へ飛び込んで来た。

誠也「はぁ……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……

し、死ぬかと思ったぜ(汗)

サンキュー、蘭」

蘭「何がっ!?(焦)

ねぇ〜誠也、大丈夫そう???」

と聞いている所に放り捨てられてラッシュガードを

羽織り、こっちに近寄って来た。

誠也「ひぃっ!(恐怖)」

蘭「日向くん、さっき何で誠也を追い掛けてたの?

また何か、やらかしちゃった感じ???」

日向「・・・。

いえ、僕に殴り掛かろうとして来たので

逃げてただけですよ♪」

と爽やかな笑顔を浮かべている日向の顔を見て

誠也は、更に顔を青ざめた。

紅葉(どう考えてもさっき追い掛けてたのは、

あなたよね?

まぁ〜結果的に誠也さんが何かやらかしたって

事だけは、真実でしょうけど。

問題は〜………)

蘭「そっか♪

ごめんね、日向くん。

誠也と2人きりになる嫌だったよね!

私から誠也に後で言っとくね♡」

誠也「そ、そりゃあ無いぜぇ〜!!(涙)」

紅葉(簡単に信じちゃう蘭さんにも

非はあるんだけど。

本当にこのチーム、大丈夫かしら?)

とそんな事を思っている所で着替え終わった

2人とも合流した。


雫は、真っ白なワンピース付きで

飾としてアイスラベンダー色の小さめのリボン付き。

上下分かれた水着で下には白レースを付け、

ポニーテールにしていた。

友理は、上下フリルで下から上に掛けて

シアン色のグラデーションが引き立つ水着。

サイドテールの髪型をしている。


蘭「あら♪

2人共、よく似合ってるわよ!」

友理「ありがとうございます☆

でも鈴木先輩と紅葉先輩も凄くお似合いですよ♪」

紅葉「うふ。それは、どうも」

蘭「えへへ♡」

と少し話した所で軽く準備運動をし、

海を泳ぎ楽しそうな4人と別れ

日向は、ひと足先にパラソルの下へと戻ると

そこには雫が居た。

コバルトブルーのラッシュガードを羽織り、

遠い海の向こう側を眺めている。

雫「・・・」

日向「・・・。

もう泳ぎは、済んだんですか?

コクリ(雫)

なら、どうして〜……人気の無い所でも

ハット帽を被ってるんです?

来ないとはいえ一応、念の為です(雫)

そうですか。

その足に付いているミサンガは、何です?

昨日までの鈴木さん達には

そんな物、付いていなかったと思いますが」


雫の利き足首(右)に

オレンジ色と緑色のミサンガが付いていて

蘭は利き足の反対の足首(左)に付けており、

青色と紫色のミサンガで

友理が緑色と黄色のミサンガで右手首に

付けられていた。


雫「これは、昨日〜………(汗)

(そうだ!

3人で願掛けした約束として身に付けたもの…

なんて先輩に言っちゃ駄目でしたね。

えっと〜どう言えば、よろしいでしょう?)

な、夏休みの思い出として残せる物で

ミサンガにしてみました。

林堂さんが、提案してくれたんですよ♪(汗)」

日向「そうですか。

まぁ〜良い思い出になるかは、さておき………

楽しいですか?」

雫「・・・。

皆さんには内緒にして欲しいのですが〜……

私個人の意見としては正直、楽しくはないです」

日向「ですよねぇ〜」

シーーーン・・・・・・

と2人揃ってジト目になりながら空を見つめていた。

するといつの間にか砂浜に上がっていた紅葉が、

海でまだ遊んでいる人達に声掛けした。

紅葉「それじゃあ、そろそろ上がりましょうか。

今回の強化訓練についてご説明します」

2人「は〜い♪」

誠也「イェイ☆」

日向「(はぁ〜………帰りたい)

とりあえず紅葉の所へ行きましょうか、雪乃さん」

と聞いて雫は、コクリと頷きながら

日向の後ろを付いて行った。


紅葉は、色々な所を指で刺しながら

こう説明し始めた。

紅葉「それでは、今回の訓練内容を言います。

向こう岸側からとある助っ人を呼んでいるので

その方を迎え撃つ事が目標です。

迎え撃つ?そんなの簡単じゃね???(誠也)

ですから……話は、最後まで聞いて下さい(怒)

あなた達には同じ条件を3つ与えます!!

条件…ですか?(雫)

まず、その条件をよく覚えておいて下さい。

破れは[即刻退場]とみなします!

嘘だろっ!?(誠也)

いや、普通だからな?(日向)

1つ:あなた達のフィールドを砂浜限定とする。

2つ:攻撃方法は、遠距離近距離どちらも可能。

3つ:対象を砂浜に近付けさせない事。

あとルールとして海に落ちれば、退場とします!!

4つ目、あんじゃねぇかよ?!(誠也)

うわぁ〜こっちも凄いハンデねぇ(蘭)

去年、受けた3人には遠距離型の技術について

敢えて基本的な事をお教えしました。

今年のお2人は少しイレギュラーですが〜

どちらも遠距離型な事もあり対象を遠くし、

どう攻略するかがカギとなって来ます。

それでは、あなた方の相手を今お呼びしますね」

蘭と雫「お呼び、どうやって(ですか)?」

と紅葉が両手を口元まで近付けてから

一気に前へ押し出すし、[竜巻!]と言って

砂浜から少し離れた所で水を絡み付かせた。

そして竜巻を起こした海中に居た者が

突如として地震のような揺れと共に浮上し、

大きな波が立ったのだ。

???「うばあぁぁぁぁぁ〜!!!!!!

もう酷いじゃないかぁ、紅葉ぃ。

こうしないとあなたの凄さが伝わらないわ(紅葉)

うーーーん。そういう事ならぁ、良いけどさぁ。

早速だけどぉ、もう始めても良いんだよねぇ?」

と巨大な体に響き渡る声、そして昼間にも関わらず

妖怪化した妖怪がそこには居た。


紅葉「彼は、見ての通り[海坊主]で

今回の試練の対象でございます♪

見れば分かる!けど、なんかデカくね?!(誠也)

えぇ、どうやら彼も[天狗の修行]によって

[全長12m]に強化されたようですね♪」

誠也「普通の3mの海坊主なら、まだ知ってるけど

4倍の12mは、知らねぇよ!!

どちら様って感想しかでねぇわ(汗)」

日向「・・・(ジト目)」

雫「と、というより〜(焦)

まだ夜でもないのに妖怪化しているのは、

どういう事でしょうか!?」

と焦り散らかす雫に紅葉は、こう伝えた。

紅葉「それは海坊主と私が〜……同じ天狗組であり、

[天狗の修行]を受けているからかと思われます」

蘭「お…恐るべし、天狗様(汗)」

友理「もう!先輩達だけで納得しないで下さい!!

さっきから言ってる[天狗の修行]って

一体、何なんですか???」

蘭「あぁ〜そっか!

私達、市民からすると知らない情報だもんね。

それじゃあ紅葉さんの代わりに

私が説明してあげる♪

(まぁ〜こっちも教えて貰ったんだけどね(照)

[天狗の修行]っていうのはね、簡単に言えば〜

基礎的能力値をより効果的に上げる方法があって

それを[天狗組]つまり天狗様の眷属の人達だけが、

使える秘伝の技なんだってさ♪」


友理「えっ?あ、んっ???うーーーん。

分からないっ!!(涙)」

と考える事を辞めた友理に対して要約して貰った。

雫「要するに妖力や妖術、

体に多大な影響を与える方法があるって事ですよね」

紅葉「そうね〜

ただ使える者が、天狗の眷属だけとは限らないわ。

えっ?そうなの?!(蘭)

えぇ。これは妖怪として常識であり、

誰しもが日常的に使えるもの。

妖力が少ない人でも基礎的能力を向上させる方法が

あるのだから全世界に広めるべき取り組みだわ!

現にあの[河童]ですら、出来るんだから」

と目を逸らしながら言うと蘭が反応した。

蘭「えっ!志童くんがっ!?

それが、本当に誰でも出来る事だったら

確かに凄い事かもしれないね☆

私もやってみたい!!

(きっと、キツいんだろうけど(汗)」


紅葉「それと昼間でも妖怪になれる方法としては

体内にある妖力を両分させ、

片方の妖力だけを使う技法です。

2つの妖力を2:8の割合で切り分け

それからもう片方の妖力を使わず蓄え続けるのです。

自由に複合化する事だって可能になります。

夜間になって活性化する妖力にも簡単に耐えられ、

妖怪化を防ぐ事も出来るわ。

そしてその2つの妖力が合わされば

通常よりも技の幅も広がり、

相手に手の内を見せずに終える事だって可能です♪

そんなに難しくは、ないでしょう?」

と紅葉と蘭達の間に風が通り過ぎてから即答した。

蘭「いや相当、難しいと思いますよ。紅葉さん(汗)」

日向「僕でさえ、4つに分けて限界なのに

2つに絞るのはそう簡単じゃないんだよ。

言っても無駄だと思うけど……」


友理「妖怪って奥が深いね、雪乃さん☆」

雫「そうですね!」

と目を見開いてキラキラした眼差しを向け、

興味津々な雫の顔を見て紅葉は提案した。

紅葉「では♪

あなた達にもう1つ、課題を伝えておきます。

今日入れて残りの2日間で妖怪化を抑制し、

耐えられた者にだけ[天狗の修行]を

約束、致しましょう」

3人「えっ!い、い良いの(か)?!

まぁ、出来ればの話ですけどね(紅葉)

や…やる(やります)!!」

蘭と誠也、控えめに雫が食い気味に言い、

その様子に残りの2人は少々引いていた。


話が盛り上がっている所で海に佇みながら

不貞腐(ふてく)する海坊主が割って入ってきた。

海坊主「あの〜…きっちりとした説明はありがたい

んだけど、そろそろ始めてくれないかな?」

紅葉「あっ。

皆んなにやる気を出して貰おうと

餌でおびき寄せていたら、

本来の目的を忘れる所だったわ!」

海坊主「ガビーーーン。

今日だけやけに(わたし)の扱い酷くないぃ?!」

※彼は、お爺さんです。

紅葉「さぁ(汗)

皆んな張り切って頑張りましょう!!」

と言ってゆっくりと浮上し、傍観席へと移った。


海坊主VS特別部隊・・・

先程の件もあり、やる気に満ち溢れた顔をする

誠也の心を読んだ日向。

日向「今、1人でどう戦おうか考えただろ」

誠也「はぁ?!ち、ちげぇし(焦)

協力って難しいな〜って思っただけで

別に1人で戦おうだなんて微塵も考えてねぇよ」

日向「もろに言ってると思うが……(汗)」

蘭「誠也、これは1人の戦いじゃないの。

ちゃんとこの5人で役割分担をして

攻略しなきゃ駄目でしょ!

とにかく私は、蜘蛛の巣のネットを作って

海坊主の攻撃を受け止めぇ〜………んっ?

そ、そうよ!!

ここはビーチ、糸を固定した所で引っ掛けても

風で吹き飛ぶじゃない!?

だとしたら、別の手立てを〜今から考えても(汗)」

とここで友理がある事を思い付き、

雫に耳打ちをし何かを伝えた。

誠也「……で、どうすんだよ!!

このままグダグダしてるとあの巨大な海坊主に

攻撃されて全員、戦闘不能になっちまうぞ(焦)」

日向「落ち着け、焦った所で何も出ない。

いつも通りの陣形を崩されないよりまだマシな方だ」

誠也「でもよっ!!」

と作戦をどうこう話していると3人も

ようやく雫の妖気のドームに気が付いたようで

1人で集中していた。

ひたすらドームを広げる事で頭がいっぱいな所に

恐れていた海坊主のターンがやって来てしまった!

海面から重い手を一気に浮上させ、

大きな波を作り出し砂浜に居る5人を襲った。

友理「あっ!

皆さん、見て下さい。海坊主が攻撃を?!」

誠也「……っ!?やべぇぞ。

海坊主の奴、この砂浜ごと呑み込むつもりだ(汗)

とりあえずあの攻撃を避ける為にも

まずは蘭、日向、俺に掴まれぇ!!」

蘭「えっ?でも〜………」

と困惑する蘭に誠也は「良いから早く」と言って

蘭の腕を掴み、日向の体に手を通し固定して

すぐに空高く飛び上がったのだ。


一方地上に残された友理は、

急いでパラソルを畳みつつ雫に来るよう言った。

友理「雪乃さん、こっち。こっちまで来れる!?」

雫「大丈夫、そこまでなら!はぁ…はぁ………

これからどうするんですか?(汗)」

友理「良いから良いから♪

雪乃さんは海坊主の解析、出来た?」

雫「うん。

言われた通り、海坊主の弱点を解析して見たけど

全身が見えていないせいか上手く出来なかったです」

友理「そっか!!

でも全身が、見えれば分かるんだよね?

それは、勿論(雫)

良かった♪それなら、大丈夫そうだね。

じゃあ行こっか☆」

と言って雫の肩に手を回し寄せて付けてから

パラソルをもう片方の手で持ち地面を蹴った。

誠也とまではいかないが、かなり高く飛び上がり

波が来るのを待っていると隣では騒いでいた。

蘭「い、いやあぁぁぁぁぁ〜!!!!!!(涙)

高いぃぃ、高いよぉ〜〜〜?!」

日向「棒倒しの時も思ったけど誠也、化け物だな」

誠也「これくらい普通…ってお前が言うな!?

あぁ〜!蘭、あんまり暴れんなよ!!(汗)

波が収まるまでじっと〜……」

片手で軽々と蘭の腕を持っているが、

ほぼぶら下がっている状態なので大パニック。

蘭「いやぁぁぁ、降ろしてぇ!怖いぃ(泣)

ねぇ、まだなの!?まだ波は………きゃあぁぁぁ」

日向「誠也、鈴木さんの持ち方〜

もう少しどうにかならないのか?」

誠也「うーん???こう、か」

と言ってひょいっと持ち上げて片手で

お姫様だっこしている状態。

先程よりもマシな大勢になったものの

誠也の顔が近過ぎる為、蘭は徐々に赤面していく

一方であった。

蘭「……えっ。えぇ?!ちょ、ちょっと(焦)」

誠也「んっ?駄目だったか???」

蘭「だ、駄目じゃ…ないけど……そ、その〜(恥)」

誠也「んんっ?」

日向(この2人、思いのほか変にすれ違うよな〜

こんな感じで本当に上手く行くのか?(呆)


変な空気へ持って行った日向がうざそうな顔をする

一方、さっきまで立っていた砂浜が

わずか数秒で呑み込まれていく光景を

目の当たりにした2人は、驚愕していた。

友理「うそ…あんな一瞬で陸が飲み込まれた?!

これが[天狗の修行]の成果なのかな?」

雫「想像以上の威力ですね(汗)

まるで、あの街で暴れ出した大入道の時みたい……

大入道???それ、どんな妖怪♪(友理)

ハッ!こ、こっちの話です!?

今のは忘れて下さい(焦)」

友理「う、うん?」

と喋りながら徐々に降下する友理達は、

持って来たパラソルを開き落下速度を落とした。

雫「その為の物だったのですね。

えっ、あぁ〜……うーん。そうだよ☆(友理)

んんっ???」

と雫が友理の顔を覗き込み地面に辿り着く瞬間、

海坊主が再び動き出したのだ。

振り上げた手を水に叩き付け、

飛んだ水飛沫を球体にし誠也達に向けて放った!!

友理「先輩達、避けてぇーーー!」

誠也「んっ?……っ!?やべっ(汗)」

と大砲で撃ったような速さで飛んで来た攻撃に対し、

手も足も出せない誠也に気付き、

妖力で作り出した縄を使って

水飛沫の球体を数発、ギリギリで防いだのだ!!

誠也「………へっ???」

と伸びて来た黒い紐の先を誠也が目で辿って見ると

地面の砂を強く踏み込みながら

海坊主の攻撃を必死に防ぐ友理が居た。


友理「ゆ、雪乃さん!今の内に反撃を……(汗)」

雫「分かってます、もう少し待って下さい」

と今さっき始めたにも関わらず、

チャージを半分まで準備し終えた所で

すぐに妖術を発動させた。

雫「行きます、火炎球(かえんきゅう)!!」

と言って大きめの銀色の炎色と濃い紫色のオーラを

纏った人魂を5発、海坊主に放った!

海坊主の目が一瞬驚いたような表情を見せながら

わざと火炎球を喰らい受けたのだ。

白い煙が一気に広がり海が揺れ、

敢えて喰らった海坊主に驚きを隠せないでいた。

雫「えっ???どういう事でしょうか?!(動揺)」

やっと着地できた3人とも合流し、海へと近寄った。

誠也「すげぇな!?今の攻撃、なんだよ☆

お前、見かけによらず妖力多いのか?」

雫「い…いえ、少ない筈……です(困惑)」

と手をワイパーのように左右に揺らしながら

訳も分からず雫は、その場で縮こまってしまった。

誠也「おぉーい(焦)どうしたんだよ!?」


しょんぼりと落ち込む雫を見て

傍観していた紅葉が、雫の事を高く評価した。

紅葉「ほぉ〜良い素質だ。

昨日のアレを見ていれば一目瞭然(いちもくりょうぜん)だったが、

どうやら普通の一つ目ではない。

あの短時間で非常に濃密度の高い妖術を撃てるとは

流石、神の力ねぇ♪

それが例え、神の入れ知恵だろうとな(笑)

(海坊主をキレ気味に見つめる)

きっと彼の事だ。心配はしないが、

そんな事で倒れているんじゃ組から外される。

その意味、あなたなら分かるでしょう?」

という目力に白煙の中、

海坊主は冷や汗をかいていた。

海坊主「(………い、良いとこ見せんと紅葉から

上の者に伝えられそうで怖いわぁ(汗)

だが、彼女の意見が正しいのもまた事実。

今の世代、彼らのように組織を持たむ者達にとって

戦闘とは楽しむものだと思われがちだが、

現実では[死と隣り合わせ]である事を

自覚して貰う為にも私はここに居るのかもしれん。

それなら、私も本気で掛かってやろう(キリッ)

うわあぁぁぁぁ……ハッ!」

と白煙を自ら払い除け、

海にいくつもの波を作り出し晴れていながらも

小規模な強風が巻き起こる。

紅葉「ふむ(笑)」

と歯を見せてニヤける紅葉。


風に煽られたせいか友理は

先程の攻撃を受け流す事が出来ず、

下に居る3人へと落としてしまった。

友理「はっ!皆んな、避けて?!」

と急いで3人に避けるよう伝えると

退屈そうな誠也が上を向いてこう言った。

誠也「おいおい♪

ちゃんと俺らを受け止めたんだから

最後まで受け流せよな〜

まぁ(笑)

あの紐で何か出来る事かって言ったら

少ないもんな」

友理「酷い!?」

「俺に任せとけ☆」と誠也が言ってから

もう一度、地面を力強く蹴り上げ

空高く打ち上がった所で手足に妖力を巡らせ

黒く染める。

染まった手足を駆使し、

水飛沫の攻撃を機動力を活かしながら

一回だけで海へと全弾跳ね返す事に成功したのだ。

友理「おぉ〜凄い!!真似できないけど……(汗)」

誠也「似た者同士だからきっと出来るぜ☆多分」

日向「だから一緒にするな!」


そんな微笑ましい光景を目の当たりにした

蘭は、後ろの方でぺちゃんこ座りしながら

徐々に強い劣等感へと駆られていった。

蘭(凄いな〜皆んな♡

相手の攻撃を簡単に跳ね返せて

力も凄いある誠也が、羨ましい♪

日向くんの能力も戦闘向きで役立つ事ばかり

たま〜にストレートだけど言ってる事は正しいし、

雫ちゃんと友理ちゃんが特別部隊に入って来た事は

何よりも嬉しかった。

だけど………私は、この部活で何をして来たの?

皆んなと違って出来る事が限られ、

持てる(すべ)を元から持ち合わせていない(涙)

まさか紅葉さんに昨日の事で分かっちゃったのかな。

私の持てるスペックを封じたらどう動くか、

そんなのやらなくても私には分かる。

だって、ただの役立たずな部長なんだもん。

私が戦闘向きじゃない事ぐらい

誠也や日向くんにも理解されている事だけど、

私が言い出した事なのに……

2人に頼り切ってばかりの自分が嫌いだった!!)


その様子を見兼ねた紅葉が、

時間を掛けて楽しんでいる人達と蘭を見て

うんざりしたのか5人に向かって助言する。

紅葉「あなた達、強化訓練を何だと思っているの?

これは遊びでも練習でもない。

1回の行動で感動したり、浮かれていれば

死が近付き戦場では悪いお荷物として印象付けられ

最前線に立つ権利すら与えてくれない!

戦いの場では感情を殺し、

常に今がどういう状況なのか把握する事、

戦いが終わるまで決して

安心も油断も隙も相手に与えるな。

それが戦場よ!!

私達から見ればあなた達はまだまだ未熟者だし、

軍や組を持たない組織は生き残れない世界。

特別部隊を続けたければ、

それぞれ特別部隊で抱く正義の心を貫きなさい!

今は標的の事だけを考え、仲間と協力する。

それが[1つのチーム]でしょう!!

分かったかしら?」


真剣な話を紅葉から聞いた5人は

しばらく沈黙する中、最初に喋り出したのは

紛れもなく誠也だった。

誠也「ふん(笑)

んな事、今更聞いた所でとっくに知ってるっうの!

紅葉に言われなくとも速攻で片付けてやるさ☆

(俺は………今まで勝つ事だけを考えて戦って来た。

負けられない戦いを背負ってるからこそ、

守りたい一心で焦ってた時期が懐かしい(笑)

だけど俺は、蘭と約束したんだ。

[必ず強くなる]って!!

だから…どんなに相手が強い格上だろうと

俺は何度でもめげずに挑み続け

いつか[アイツ]に絶対、勝つんだ。

いや、勝たなきゃいけないんだ!)

と強く思いながら座ったままの蘭を見つめる。


続いて口を開いたのは日向だったが、

主張している言動が異なりつつもこう宣言した。

日向「そんなの…この部活に入った時から

とっくに覚悟は決めている。

だから変わらず、僕らは前へ進み続けるさ!!

たまにはマシな事、言うじゃねぇか日向☆(誠也)

うるさい。

(とは言ったものの……

僕は、このチームで本当に役立てているだろうか?

大口を叩いておいて[あの時]みたいに

また進めない時が、きっと来る筈だ)」


フラッシュバック・・・

どこかの商店街のシャッターに

なぜか黒い紐で拘束された日向、

今とは全く性格が異なる気弱な中学生で

怯えた様子で目の前の出来事を

ただ見る事しか出来なかった。

その目の前に広がっていたのは、

ヤンキーの大量の群れと1人戦い続ける大柄の男

との喧嘩の光景だった。

それからしばらく経ち、片付け終わった大柄の男に

駆け付けた当時の閻魔騎士によって

誤った容疑を掛けられ、大柄の男は連れてかれて

しまったのだ。


色んな事が目の前で起き過ぎたせいか

状況が呑み込めないで居た日向は、

大雨が降り始める中で拘束具が解かれた。

日向「………佐賀くん(撃沈)」

雨でずぶ濡れになった髪に片目が隠れ、

涙を必死に堪える目をしていた。


フラッシュバック終了・・・


日向(今思えば、[アイツ]が何したっていうんだ!!

捕まった理由も[アイツ]があの後、

どうなったのかどういう罰を受けたのかすらも

分からないっていうのにぃ(悔)

自分だけがあの場に取り残され、

騒ぎ立て……暴れた奴にだけ罰が下される。

そんな事、分かってた!

分かってた筈なのに止められなかったんだ。

だから[アイツ]と同じ過ちを繰り返さない為にも

今まで誠也を必死で止めて来た………

だけど、力を求める誠也には四大妖怪と戦う事で

得られるものが多かったから都合が良過ぎた。

志童と戦う度に[あいつ]は、

あんなにも楽しそうな顔で笑って

僕がどんな想いで止めている事かも知らずに………

下手したら、[アイツ]よりも悲惨な末路を

辿る可能性だってある……!!

でも今は前よりもそんな事を考えられる程の余裕が、

無くなってきた。

なぜなら[昔の自分と重ねて]しまった人が、

今僕の近くに居るからだ。

それでも僕は、この部活に[特別部隊]という

居場所に誘ってくれた鈴木さんのお陰で

今ここに居る。

僕自身の使命を全うするまではこの身がある限り

僕の身近な人がこれ以上、犯罪者にならない為にも)

とラッシュガードの胸元辺りを強く握り締めながら

誠也と雫を見つめた。


日向に対してだけ紅葉が、

ゴミを見るかのように見下す顔をしており

何を考えているのかすらも分からず日向を見続けた。

しばらくしてようやく紅葉は、期待の眼差しで

2人を視野に入れた。

友理「・・・」

雫「・・・。

(先程の日野寺先輩の話にあった戦場での話。

正直、私自身はどこの所属かも分かりませんが

大事なのは[今がどういう状況なのか、

常に冷静に周りを把握する事]!!

私の課題である[状況把握]を駆使しなければ、

この試練の攻略の手立てが無い!

私が海坊主さんの全身を捉えられれば、

打開できる筈。

だって私には頼れる仲間が、居るから♪)

あの誠也さんっ!

少しお聞きしたい事があります。

俺の事、先輩呼びする事はないんか?(誠也)

先輩の力なら海坊主さんが居る所まで

飛ばせますか?」

誠也「無視かよ!?

ま、まぁ〜届かんでもないがぁ………

そんな事して何が出来んだよ?」

雫「相手の姿が全身捉えられれば

海坊主さんの弱点、私には分かるんです!!」

と強い眼差しで誠也に訴えた。

誠也「へぇ〜そうなんだな。

だけどよ、全身ってなると1回…じゃ無理だし

2回か???うーーーん(汗)

いや、そもそもこの距離で全身かぁ〜……

改めて考えるとあそこまで飛ばせるか?」

と3回くらいカク付いたポーズを取る誠也。


雫「何かご不満でもありましたでしょうか?

距離的には可能なんですよね」

誠也「あ、あぁ〜

それは多分、平気だと思うんだけど(焦)

うん。な、なぁ〜どうすれば良いと思う日向」

こっそりと日向に耳打ちする

誠也にいつものようにツッコミ気味に言った。

日向「こっちに振るな!(汗)

そういう事は、自分の口で説明するんだ」

誠也「だ、だよな……いつも悪いな日向(焦)

えっと〜………だな。

俺のあの攻撃ってさ1発1発チャージが無い分、

すぐに撃てるは撃てるんだけどな?

その力を使うと体力の消費が激しいっうか〜

それなりに欠点があるんだよ。

欠点…ですか???(雫)

その〜俺、実は最大で4発しか撃てないんだ!!」

とここに来て衝撃の告白をする誠也だった。

2人「・・・」

友理「少なっ!?」

誠也「昨日、妖力切れ起こした奴に

言われたかねぇよ!(キレ気味)」

雫「…よ、予想外の返答ですね。

S級クラスの方は無限に使用、出来るとばかり

思い込んでいました(汗)」

誠也「言っとくが、誰しも限度ってもんが

あっからな!

あと雫、そういう立ち回りがしたいのなら

撃てる回数とか射程距離とか

良い情報を事細かくちゃんと把握する事も

視野に入れた方が良いぞ。

長年、やってる俺からのアドバイスだ☆」

雫「……っ!」

日向「長年って去年、始めたばっかりの部活

なんだけどなー(ジト目)」

とそっぽ向きながら本人に視線を送った。

誠也「そういうのは、言わなくて良いんだよ!!

こういう時こそ、本当の事をきちんと言った方が

結構、効き目があるんだぞ☆」

日向「ふーーーん。で?」

誠也「で、じゃねぇよ!

俺の今の話、聞いてたよな?!

聞いてねぇとは言わせねぇぞ、日向ァァァ(怒)」


軽く話を受け流す日向とキレ散らかす誠也、

一方で誠也に言われた一言に動揺が隠せないでいた。

雫(そう…でした。

私に今足りないのは[仲間を動かす力]も

そうですが、もっと基礎的な必要なものは

この[チームの情報]!!

個性や能力、フィールドの状況、

何に強くて何に弱いのか把握する事が、

山程ある(汗)

そんな役目、私に出来るの???

簡単な事すら出来ない私が、指揮する資格なんて

それに目立つ役割に自分が出しゃばる

必要は………私には…無い)

と再び自分の愚かさに気付いてしまった

雫は、皆んなから少し離れた所で

再び落ち込む事となった。

遠目から見ていた誠也が、雫の事を刺しながら

慌てて日向に弁明する。

誠也「えっ!俺、悪くないよな!?(焦)

折角、俺がまともなアドバイスしたっていうのに

落ち込まれるとこっちも困るぞ!(涙)」

日向「はぁ……そうじゃないとも言えるし、

そうでもあるとも言える。

どっちだよ!!(誠也)

とにかくお前は、海坊主までどう飛ばすか

考える事に集中しろ!

僕は〜雪乃さんを励ましに行く。

やる気を損ねたら相手の弱点が何なのか分からない。

そっちは頼む(誠也)

そういえば、鈴木さんは………って???」

と日向が言い掛けた目線の先では

ペシャンコ座りをしていた蘭が立ち上がっており、

その瞳には光が差し込み驚いた表情で

こちらを見つめていた。


蘭「そうか。

(そうだったんだ!!

今、私が考える事は2人を(ねた)む事じゃなくて

私に何が出来るのかちゃんと考える事だわ☆

相手の強大さを熟知し立ち向かわないといけない、

私1人で全部考え込まなくて良いんだ。

だって私には……皆んなが側に居るから☆

私に出来て雫ちゃんには出来ない事なんて沢山ある!

そんなの全部、頭の中で考えたり悩んだりして

ぶつかるのは当然の事なんだよ、雫ちゃん!!

でもそれは、この1年で2人とずっと一緒に居た

私にしか出来ない役目がある良いじゃない♪

その事を雫ちゃんが、教え…ううん。

私に気付かせてくれた☆

今なら、自分の役割がはっきりと分かる!

どうして今まで気付かなかったんだろう。

私の武器は、情報収集とか援護だけじゃない!!

2人を……この4人を支えられる[リーダー]として

出来る事があるわ☆

そうと決まれば、雫ちゃんにも手伝って貰わないと)

………鈴木さん???(日向)

ごめんね、遅くなって♪

早く蹴りを着けないとだよね。

誠也っ!1発、1発だけ海坊主に飛ばして

飛距離だけ分かれば良いから!!」

と蘭は立ち上がり、雫の方へ走りながら

誠也に指示を出した。

誠也「お…おぉ?(汗)わ、分かった!

(まぁ〜あの蘭が、動き出したんだ。

そんじゃ俺も積極的に攻めて行きますか☆)

おい、日向。

ちょっとお前に頼みたい事があるんだけど、

良いか?

だったら、手短に頼む。余裕が…無くなる(日向)

オッケー(笑)

んじゃあ俺が攻撃する時は、

日向も加勢して欲しい事と切り替わりの件込みで

あと力尽きた時に俺が海に居たら助けてくれよな☆」

日向「それ……カッコ付けて言う事なのか?(汗)

というよりまた鈴木さんに心配掛けるんじゃ………

平気だよ、アレくらい☆夜までに回復すっから(誠也)

まぁ……誠也の体について心配してる訳じゃない

けど、頼まれたからにはやるよ。

あぁ〜あと少し遅れる可能性もある事だけは、

先に伝えておく」

と日向は保険を掛けつつも承諾したのだった。

誠也「ニヒッ(笑)

それでこそ俺ら、特別部隊の戦闘員だ!!」

と親指を突き出し笑いながら手を暗く染めあげた。


一方・・・

蘭は落ち込む雫と慰める為に向かった

友理と一緒に雫を説得した。

蘭「ねぇ雫ちゃん!

昨日の夜、課題について相談してくれたじゃない?

うぅ…は、はい(雫)

私と雫ちゃんの悩みが、

今ここでやるべき場面だと思うんだよね♪

えっ……今からですか!?(雫)

うん!!」

雫「で、でも…私がこの特別部隊で

指揮する程の知識や情報も何1つ分からなくて

皆さんの事、知らないから

私には向いていないんです!(汗)

さっき先輩に言われて………分かりましたから(涙)」

と地面の砂を握り締めた途端、

誠也の渾身の力が海坊主の波のカーテンにより防がれ

接触したような大きな音が鳴り響く。

誠也「うわぁ!!ヤッバァ?!」

と言った次の瞬間、水の破壊光線により

誠也は後ろの崖に衝突したのだ!

海坊主の攻撃を直に受けた誠也を心配した蘭が

思わず駆け寄ってしまい、海坊主の視覚に入った。

蘭「誠也っ!誠也、大丈夫?!(焦)」


海坊主が続けて攻撃して来る事を

察知した友理が再び、雫の説得を試みる。

友理「鈴木先輩っ!!

ねぇ雪乃さんも手伝おう。

私達も一緒に海坊主と戦わないと

この場に居る全員がやられちゃうよっ!

無理だよ。私は………本当に…(雫)

これから先、この5人で活動する為には

皆んなで1つの事に向き合って行くの。

この試練、絶対に乗り越えないといけない!!

だから……私に出来る事なんて何も…(雫)

あるよ、可能性ならいっぱいある!

雪乃さんの[状況把握]は、

[チーム全体を指揮する役目]だけじゃない。

もっとこう………皆んなには分からない、

雪乃さんにしか知り得ない情報を元に

仲間を補助する事だって出来るんだよ!!」

雫「……っ!

どうして林堂さんが、そう言い切れるの?」

友理「えっ?だって勿体ないじゃん☆

せっかく良いスキル持ってるんだからさ、

使わないだけ損だよ〜♪」

と笑顔で返す友理に勇気付けられた

雫の目に光が差し込んだ。

雫「・・・う…うん(涙)

私、やってみる☆

皆んなの役に立てるなら挑戦したい!!」

友理「はあ♪うん、何事も挑戦……だよ☆」


説得に成功した直後、海坊主にロックオンされ

水の破壊光線で2人を狙い撃ち、

大きな声を上げながら目にも留まらぬ速さで

海坊主の攻撃が向かう!

誠也「………はあぁぁぁぁぁーーーハッ!!」

と誠也は瞬時に立ち上がり、

水の破壊光線に押されていたものの

気合いで何とか跳ね返し海坊主の頬を掠めた。


心配で駆け寄って来た蘭に対して

誠也は、今の思いを語った。

蘭「誠也、大丈夫!?無理しなくて良いよ(焦)

少し休んだ方が良いんじゃない?」

誠也「はぁ……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……

んまぁ〜休みたいのは山々だけどよ蘭、

こんな所で休んだら男じゃねぇ!

確かに…普通の妖怪と違って強化された

相手と戦うっつう馬鹿なんて居ねぇけどよ(汗)

あいにく俺らは、そういう仕事をしてるんだ。

逃げる事しか出来ない奴と違ってな(片目閉じ)

……なんて綺麗ごと言ってる俺ですら

心の底では今すぐ逃げたい気持ちでいっぱいだ。

どんなに強い奴でも誰かを守る為の力と

自分自身で逃げる為の力とかしか考えてない

どうしようもない馬鹿な俺でも

今この瞬間だけ力を振り絞ってこそのバトル、

そういう正義の気持ちが最後は勝つんだ!!

ここで休んでぶっ倒れるよりも

俺達で勝つ為の秘策を考えて

例えそれが訓練でも本番でも意識が

ぶっ飛ぶまで戦うって俺は決めたんだ。

それが俺達、特別部隊だっ!(笑)」

と苦し笑いを見せながら蘭の頭に触れ

すれ違い際に「俺は最後まで戦うぜ、蘭☆」

そう言って皆んなの元へと走って行った。

蘭「………うふ♪しょうがないな〜もう(嬉)」

と手首を優しく握って少し照れている様子でいた。


気を取り直して蘭は後ろを振り返ってから

目の前の事に集中し、2人に指示を促した。

蘭「友理ちゃんは、日向くんの援護を

雫ちゃんは海坊主の分析だったよね!!

動かせるか分からないけど、それは私達に任せて☆」

2人「は、はい…(汗)」

と言われてすぐにある事を思い出した友理は、

手を上げて蘭へと発言する。

友理「あの私〜援護と攻撃、どちらも出来ます。

それに紅葉先輩から言われた課題がありますので

むしろ、やらせて欲しいです!

………分かったわ。じゃあお願い(蘭)

はい!!と言いたい所なんですが〜

新條先輩って今どこに居ますか?

さっきから見当たらなくてぇ……(汗)」

蘭「あら〜友理ちゃんには分からない?

ちゃんと隣に居るじゃない♪」

友理「えっ?またまた〜(半笑い)」

と冗談半分で隣を振り向くと

日向が、必死に何か集中している様子だった。

友理「へっ?

な、何で!?さっきまで居なかったじゃん!(汗)」

日向「・・・(呆れ顔)

見えてるなら準備して下さい。それだけです」

友理「はい?!

これって私がおかしいの!?

ねぇどういう事、ちゃんと説明して下さい(焦)」

蘭「ありゃりゃ〜…(苦笑い)」

とここで雫がある事に気付き、蘭に小声で伝えた。

雫「今のって[ステルス]……ですよね?

意図的に発動してる時は視界には映らず、

隠密行動が可能。

また妖力を使用した際には姿が見えてしまう

デメリットそれが、新條先輩の能力ですね」

蘭「正解、雫ちゃんだけだよ〜

自力で答えに辿り着いた人♪」

雫「えっ、私だけってあの人はまだ何ですか?!」

と思わず雫は大きな声で言ってしまい、

誠也がこちらをチラッとだけ振り向いて

睨み付けていた。

蘭「うふふ〜そういう事かな♡(小声)

………じゃあ皆んな、行くよ!!」

4人「おぉ(〜)!」


海坊主VS特別部隊2・・・

掛け声と共にまず動いたのは誠也だった。

砂浜を少し歩いた所で蹴り上げ

誠也が両脚を暗くし、妖力を集中させてから

海を駆けるかのように海坊主へと素早く近寄る。

次に動いたのが友理と日向ペアで

友理がパラソルの持ち手に妖力で作り出した紐を

括り付けコマ回しの要領で飛ばし、

空中での日向の足場としてサポートする事に。

海坊主の攻撃を翻弄(ほんろう)する誠也と

それを補助する日向達の連携が試される!!

一方蘭は、雫が落ち着いて出来るように

糸のドームを傘の骨組みのように使い

傘の生地部分には濃い水色のシールドを通し、

周りの音を一切遮断したのだ。

雫「……っ!あ、ありがとうございます(汗)」

蘭「良いの♪

雫ちゃんには自分の役目を全うして

貰う為の空間だもの。

これぐらいは、部長としてさせて☆

それじゃあチャンスは一度きり、

これを逃せば私達の切り札である

誠也の体力が限界を迎える。

非常に重大な役だけど雫ちゃんを信じているわ♡」

雫「はいっ!

私、皆んなの役に立てるよう頑張ります!!」

蘭「その意気だよ〜……うふ♪じゃあね」

と軽く手を振ってすぐに2人の援護へと回った。

雫は目を光らせ髪がフワフワ動き出し、

妖力を自分の体に纏わせ準備が整った。


海坊主の大きな手が海に叩き付けられ、

水飛沫の攻撃を軽々と避けて見せる誠也だったが

実際は、膨大な妖力の持ち主でもある誠也ですら

消耗が激しい為、あまり使いたくない所で大苦戦!

ひとまずタイミングを見計らう為に

誠也は一度、距離を取る事を決めた。

誠也「スイッチだ、日向!!

少し時間を稼いでくれ。もう一度、立て直す」

日向「それは良いけど。

この戦いを長引かせるとなると

持って10分が限界だ!(汗)」

誠也「あぁ、分かってる!!」

と言って日向が攻撃として切り替わり、

パラソルの足場を一時的に離れ

手に集中していた妖力を少しずつ解放しながらも

海坊主の攻撃から避けた先に

傘の足場へと乗り移る事をひたすら繰り返す。


誠也(クッソ〜………

俺や日向の妖力がもう時期、底を尽きそうだ(汗)

どうする!切り札である俺の力も残り2発、

最後の1発までは残して行きてぇけど

海坊主の全長12mなんて1発だけで出来る方法

なんてどうすれば、良いんだよ(焦)


どうこう考えていると蘭が誠也にこう伝えた。

蘭「誠也、一度砂浜に戻って来て頂戴!!

けど、それじゃあ日向が……(誠也)

それは友理ちゃんが引き受けてくれたから平気よ。

それよりもタイムリミットが近いんでしょ!

変に妖力を使い過ぎたら、まずいからお願い」

誠也「くっ!

日向、3分だ。3分後にまたスイッチするぞ」

日向「・・・(笑)分かった。

だけど行動する時は、事前に言ってくれると助かる」

誠也「おぉよ!!任せとけ(笑)」

そう言って誠也は砂浜からかなり離れていた所、

誠也のジャンプ力のお陰もあり

陸へと無事に辿り着いたのだ。


誠也「それで良い案は、思い付いたのか?

海坊主の射程距離はざっと300m。

あんなに離れた距離だと行けはすると思うけど

力が分散しちまう(汗)

俺の妖力も半分以下でまともに動くのは、

避けたいんだ」

蘭「それならさっき考えた案があるんだけど〜

試してみる?

良いね良いね♪その話、乗った(誠也)

うふ♪じゃあ決まり。

もう2人には話を済ませているわ!

作戦は海坊主の弱点からだけど、

私達がそれまでやれる事は〜…………」

誠也「ニヒッ!!オッケェ☆

んじゃ俺は、攻撃を跳ね返し蹴る係だな。

バトンを上手く回してくれよ蘭(笑)」

蘭「健闘を祈るわ、誠也♪

友理ちゃん、さっき伝えた通りに傘を手元に。

日向くんは引き続き攻撃を無理せず戻って来て」

2人「了解!」

と言って持ち手に括り付けた傘を引っ張り、

手元に届いてすぐ友理はガンブレラとして

武器を変え、横移動しながら砂浜を走り

足を強く踏み込みようやく攻撃を仕掛け始めた。

友理「白銀炎舞(しろがねえんぶ)!!」

と言い、ガンブレラの石突の部分を上空に円を描き

海坊主の頭上に人魂の雨が降り注いだ。


海坊主(ふん。

確かに先程の一つ目と打って変わって

妖力の質が違うようだが、それがどうした?

そんな攻撃……私には効かんぞ!)

と目をかっぴらきながら後ろへと後退りすると

その行動パターンを読んでいた日向が、

海坊主の背後を取りガンブレラの上に股がり

開いた状態で風のように乗りこなしていた。

妖術の数は友理より劣るが、

いくら大きい海坊主でも食らう事は避けたかった。

海坊主(……くっ!仕方あるまい(汗)

一度、海中へ潜り浮上する時に

先制攻撃を仕掛けてやるわい)

正面からの友理の攻撃と背後からの日向の攻撃を

避ける為に海中へ深く潜って行った。

頭上の攻撃をしばらく乱射し続け少し傾けた後に

ガンブレラと日向の回収作業をする友理。


そして上からでも分かる大きな影が近付いて来ており

潜った場所より60m離れた所で浮上した。

すると海坊主が海から出てすぐ視界に入ったのは、

目の前に現れる事を心待ちにしていた

ニヤけた顔の誠也で海坊主の目に映っていたのだ。

誠也「ハッ!!(笑)

予定よりあと10m届かずじまいだったけど、

240mならそんな距離、どうって事ねぇな☆

……どんなに強かろうがデカがろうが関係ない!

あるのは、仲間との連携だけだっつうの。

行くぜ☆さっき即興で考えた俺の新技、

その名も〜………[波動パンチ]!!」

と先程より濃く染まった手を水切りの要領で

カーブを描くように拳を正面に突き出した!

海には荒々しい波と風が吹いたのと同時に

海坊主を貫通させるぐらいの威力で吹っ飛ばす。


そして雫を除いたメンバー達は、

誠也の攻撃の威力よりも技の名前に対して

反応した。

友理と蘭「へっ?

い、今…なんて言った(の)???」

日向「ネーミングセンスだけは論外なんだよなー」

肩と足を小刻みに揺らす誠也は、息切れをしていた。

誠也「しっ、失礼だ……な日向………は(汗)

ちゃんと…ばっちり考えてこうなった…つうの。

暇なのかっ!?(日向)

はぁ…はぁ……はぁ…はぁ…はぁ……はぁ…はぁ」

ゆっくりと座り込みあぐらをかきながら

砂浜に大粒の汗が落ちていく。

蘭「誠也〜(焦)

やっぱり無理しないで休んだ方が………」

誠也「いっ、やぁ〜

辛ぇのには変わりぃねぇけどよ(汗)

ようやく[図体デカ野郎]の弱点をやっと掴んだんだ。

最後まで……うっ(汗)やらせてくれよ」

と苦しそうな表情を浮かべる誠也の顔を

ただ見る事しか出来ない蘭が悩み掛けた途端、

水を刺すかのように海坊主が仕掛けてきた。


水の破壊光線を先に放ち、水飛沫の攻撃を

チャージし終える所で友理のガンブレラで

皆んなを守るも耐久が低く破れる寸前だったのだ。

友理「あっ、このままじゃ…押される?!

どうしよう(汗)

(こんな状況で動ける人が限られるし、

かと言ってここから動くのも難しい。

でも動かないと壊れて皆んなを巻き添えに(焦)

雪乃さんのシールドは防音性と攻撃無効の時間が、

残り少ないから雪乃さんも回収しないとだけど

……でも…でも〜(涙)」

と悩み果てていた友理に小声でこう伝えた。

蘭「友理ちゃん、次の攻撃で私達は二手に

分かれるわ。

その間に海坊主の隙を作りに行く!!

それまで友理ちゃんには悪いのだけど、

オトリになってくれないかな?

オトリ!?私が……ですか!(友理)

………うん(決死の覚悟)

私達が分かれた後に自分のシールドを展開させて

くれるだけで良いの。

そんなに時間を掛けるつもりはないから(汗)

私達を信じて欲しいの」

友理「…分かりました、やってみます!!

それなら先輩に雪乃さ……」

グラグラグラグラグラ・・・

地面が揺れ出し、最大出力の海坊主の攻撃が

今解き放たれようとしていた。

蘭「じゃあ頼んだよ、友理ちゃん!」

友理「あっ、待って(汗)」

と友理が言った時には遅く

2人の先輩は飛び上がり、誠也を担ぐ蘭と日向で

二手に分かれていると先程の攻撃が

雫のシールドに直撃し割れてしまったのだ。

友理「雪乃さーーーん(焦)」

雫「………ハッ!!

(その瞬間、まるで時が止まったかのように

目の前の光景に対して[死]を覚悟しました)」

バッと持ち上げられる感覚から気が付くと

砂浜上空に私は居た。

そう、あんな短い時間の中で雫を救い上げてくれた

日向と一緒に。

雫「あっ……あり…が(焦)」

日向「間に合って良かったです。

すみません、気付くのが遅れてしまって(汗)」

雫「い、いえ別に……良いんです(照)

あと海坊主の件で解析が終わりましたので

その結果を聞いて貰えないでしょうか?」

日向「・・・良いですよ(汗)

ですが、それは僕ではなく鈴木さんに伝えて下さい」

雫「は、はいっ!えっ?」


砂浜へと降り立った2人だが足を着いた途端、

急に日向が居座ってしまった。

雫「新條先輩、どうしたんですか?!

(あっ、足が………私を助けたせいで怪我を(汗)」

と左足を負傷している事に気付いてしまった雫、

それでも雫の事をフォローする日向。

日向「いや、まだ足なだけマシな方だよ。

これがもし魂より近い場所に当たっていたら

今よりもっと妖力を失っていた可能性が、

あるからね(汗)」

雫「でも、それじゃあ作戦が……(涙)」

日向「大丈夫。

あくまで僕は2人目のオトリに過ぎないからね。

えっ?でもそんな話、聞いた事…(雫)

さっき決めた事だから知らないのは、当然だよ」

雫「そう…なんですね。それなら良かったです♪」

と日向が微笑んですぐ海へと視線をズラした。


砂浜に降り立ったもう1グループは、

完全復活ではないが誠也と蘭が海坊主の攻撃を

素早く対応していた。

蘭は大きな虫網のような糸を作り出し、

4つの球体を綺麗に救い上げハンマー投げの要領で

少し回した所で3つを手放したのだ!!

誠也は海坊主の近くまで接近し終えた所で

蘭の使い捨ての3つの球の内1発を太ももで受け流し

別の方向へと飛ばしてすぐにもう2発を

海坊主の目の前へと蹴り落とす。

水飛沫が下から上へと大きく飛び上がり、

視界を阻んでいる内に誠也は、海坊主の背後を取り

球体をリフティングのように足を器用に使い、

背中を狙う所で海坊主に勘づかれ危機的状況とはいえ

この機を逃さまいと思い込んだ誠也が、

大きな手を伸ばされる前に無理にでも蹴った瞬間!

ずっと回し続けていた蘭の手元にある

もう1発の攻撃が海坊主の腹と横腹にまで炸裂し、

球体が破裂したのだった。

海坊主「……うぐっ!!(汗)

お前らあぁぁぁ〜〜〜!!!!!!」

と白煙の中から海坊主の叫び声が聞こえた事を

最後に誠也が白煙の向こう側から突如として現れ

「怪撃!」と言った所で海坊主に攻撃が命中し、

巨大な体を覆い尽くす程の大爆発を引き起こした。


波が次第に揺ら揺らと自然に揺れ始めた所で

傍観していた紅葉から拍手が上がった。

紅葉「おめでとう、去年よりは良くなったじゃない?

あなた達♪

(だけど、想像以上に時間が掛かり過ぎね。

タイムアタックにした方が良かったかしら)」

蘭「えっ!

ほ、本当に私達が勝ったの?

今でも信じられないよ(汗)

あんなに大きかった海坊主も跡形もなく…って

まさか、消滅させてないわよね?!」

紅葉「平気よ。

あなた達にも記憶が残っているなら

冥界へは行っていないわ」

蘭「よ、良かったぁ〜」

とホッとした所で誰かさんの情けない声が、

海から聞こえてきた。

誠也「お〜い………誰かぁ…助けて……くれぇ〜

おぼぼぉ…ブクブク(泡)」

蘭「ぎゃあぁぁ!?誠也ーっ!(焦)」

日向「ふん。僕が、行きますよ」

そう言って海へと飛び込み途中まで泳ぎ、

既に溺れている誠也の腕を取り肩に回した。

誠也「遅ぇよ、日向。約束、忘れたのかよ(汗)

仕方ないだろう。途中、足が飛んだんだから(日向)

うげっ、そういう事あんまり言うなよなぁ〜」

日向「ならここでお前を置いて旅館に…………

あぁ〜悪かったってぇぇぇ?!(誠也)

よろしい。で、帰りは旅館まで歩けそうか?」

誠也「あぁ〜……それは無理、頼むわぁ(汗)」

日向「はいはい(ニコニコ)」


砂浜では海坊主に勝った事に対して

友理は、雫を抱き締めながらこう言った。

「やったね、雪乃さん!!

私達、勝ったんだ。勝ったんだよ(嬉)

やった〜☆」

雫「……っ!うふふ♪

(こんな私でもお役に立てるなんて嘘みたい♡)」

と驚いた表情を浮かべていたが、

次第に嬉しい気持ちが込み上がって来たのだ。


友理(こうして私達は見事、巨大な海坊主に

勝ったのでした♪

その後、2人が砂浜に戻って来た所、

オンブされた誠也先輩に向かって

なぜか鈴木先輩が背中を叩いて怒っていました)

蘭「もう、こんなに無茶して!!

動けなくなったらどうもこうもないでしょ。

誠也の馬鹿、あの時カッコ付けるから(プンプン)」

誠也「イタタタ…蘭、今はマジで勘弁(汗)

めちゃくちゃ体に響くっから。

日向も日向だ。早く逃げてくれよ!

自業自得じゃないか?(冷めた目の日向)

はぁ?!イタタタ……分かった。分かったから

今はやめてくれえぇぇぇ〜!!(涙)」

一生、口をムッとさせながら

誠也の背中をボカボカ叩きまくる蘭であった。




おまけ・・・

特別部隊の5人が、砂浜を去った後の事。

紅葉だけが残り横たわる海坊主を見て瞬きをした後に

全然、心配してなさそうな顔でこう言った。

紅葉「ねぇ大丈夫そう、海坊主?」

海坊主「………なぁ〜?

紅葉から見て私は、今どう見えてる(汗)」

と響き渡る声ではなく

普通の男性の声で淡々と喋っている。

紅葉「どうって〜……指人形サイズだけど?」

チーーーン・・・

海坊主「うーん、やはりか。

あの者達にちと戦場とは、何なのか知らしめる為に

集中し過ぎたせいかの。

妖力切れを起こしたのは、久しぶりじゃな(汗)」

紅葉「そう、なら帰るわよ。

話、聞いてた?!私は動けんとっ!!(海坊主)

うふふ♪冗談よ。

指人形サイズなら、私でも運べるわ」

海坊主「当たり前だっ!

はぁ〜…紅葉さんよ、家まで送ってくれんか?」

紅葉「良いわよ♪

あなたの家、私知らないから案内してよね」

海坊主「あぁ〜それなら深沢市の隣にある

四谷市の裏山なら紅葉さんでも分かりやしょう」

紅葉「何で海坊主のあなたが海じゃなくて

山に住んでるのよ(汗)」

海坊主「そこなら敷地が広く、

体のサイズ的に私でも入れる場所だからな。

ふーん、あなたも苦労してるのね(紅葉)

いやいや私と比べたら紅葉さんの方が、

大変でしょうに」

紅葉「そうね(即答)」

海坊主(そこは、頷かないで貰えます?

冗談で言ったんだがな(汗)

紅葉「何か……言ったかしら???(怒り笑顔)」

海坊主「なっ、何でもありませーーーん!!(焦)」

皆様に分かりやすく気楽に読めるお話を描く為にも

時間を掛けて、これからも描いて行きたいと思います。

大変勝手ながら投稿頻度がバラバラな私ですが、

皆様に暖かく見守ってくれると嬉しいですm(._.)m

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