第13話 「体育祭当日(前編)」
宿木の森が画面に映り出されて
ズームアップされ、上から下へと画面が
ゆっくりと向かい大木の洞の中には
マリモのように膨らみ上がった植物のクッションに
包丁葉っぱで包まれたベッドと葉っぱの布団を
掛けて眠っており、丁度起きる所らしい。
駒「スゥ〜……スゥ〜…スゥ〜………んんっ?
ふーーーん。はぁ〜!(背伸び)もう、朝かぁ。
……って事は、た、たたた体育祭が…がが
今日っ!?(裏返る)
急いで着替えないと!!」
そう言って植物のベッドから弾みながら
飛び降り着替え始めた。
首回りと半ズボンが深緑色、白い無地の体育着。
そして白ジャージには緑色と紺色の細い線が
入っており、襟と袖が紺色一色のジャージを
羽織った。
緊張気味な駒は、いつも通りの食卓へと向かうと
食卓には加工された木のテーブルの上に
バナナの葉っぱのような大きな葉が、
張り繕ってあった。
そこには、朝にも関わらず木霊の姿で
朝ご飯を作るお母さんと新聞読むお父さんが居た。
駒「まっ、ママ!パパ、おはよう♪
きょ……今日は、頑張って来るぅ!!(裏返る)」
緊張で声が上がっている事に気付いた父駒が、
励ましの言葉を口にした。
父駒「あはっはっ(笑)
そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。
これは駒1人で頑張る事じゃないんだし、
体育祭はクラス全員が団結して競う行事なんだから
駒は、胸を張って頑張れば良い♪」
ニコニコと微笑み掛けてから母駒も口を開く。
母駒「そうよ。
誰かが緊張していればその分、
本気で闘おうと取り組んでくれる仲間が居る。
スポーツが好き嫌いな人でも
この行事は、とっても良い経験になるわ♡
だから頑張りなさい、駒ちゃん」
と2人の励ましによってやる気が出て来たみたいだ。
駒「はあ♪うん。私、頑張って来るね!」
駒の顔色を伺ってから微笑みながら
鍋掴みに手を通してからこう語り掛けた。
母駒「うふふ♪その意気よ、駒ちゃん。
でも、気を引き締めるのは学校に着いてから!!
今は朝ご飯を楽しみましょう」
と言って鍋掴みで持って来たシチューポットを
テーブルに置き、蓋を開けた。
ポットから湯気が上がり、グツグツと煮込まれた
シチューを前にしてキラキラした目で
駒「食べるぅ〜♡♡♡」と声を上げた。
朝ご飯をしっかり食べて靴を履き始める駒に
母駒は一声掛けた。
「お昼頃には休憩スペースのテント前で集合よ!
迷子にならないようにね♪
もう〜ママ、私はそんなに子供じゃないよ(駒)
うふふ♪そうね。もう1人で出来るかしらね?
それじゃあ駒ちゃん、いってらっしゃい♡」
駒「うん。行ってきま〜す!!」
1年A組・・・
学校に着いた駒は、教室に荷物を置いて白ハチマキを
頭に付けてから手をニギニギしていた
駒の後ろから急に現れた友理が声を掛けて来た。
「駒ちゃん、おはよう♪
なんか気合い十分って感じだね〜!」
と勢いよく挨拶して来た事に驚き絶叫した。
駒「ぎゃあぁぁぁ!?!!!!」
その叫び声は、教室に居る生徒から注目され
教室の隅で落ち込む駒を必死に慰める。
友理「ご、ごめんね!!駒ちゃん?!
まさか、そんなに驚かれると思わなくてぇ〜(焦)
気合い入れてた所、声掛けちゃってごめんね。
……もうしないから、許してぇ!(涙)」
そんな騒がしいAクラスの教室に花梨と恋花が、
入って来て何々と言わんばかりな顔をして
駆け付けて来た。
一方、1年D組では・・・
放送「3年生の皆さんは、椅子を持って速やかに
校庭へ移動させて下さい。繰り返します!!」
と放送の声を背景に
教室に来たばかりの凛音と話し始めた。
芽亜「ちょっと〜リンりん!
4日も学校休んで、連絡も無いって
どういう事な・の?!(不機嫌)」
突如、始まった芽亜からの質問責めに
慌てて弁解した。
凛音「ご、ごめんなさい!
私〜その4日間、先輩方と
急遽山で自主練をしよって連絡がありましてぇ〜
それで…山の影響か電波が、
凄く不安定な場所だったから
メール無視した形になっちゃった……みたい。
本当にごめんなさい!!(汗)」
と誠心誠意、謝罪する姿を見て芽亜はこう言った。
「まっ☆
そういう事なら仕方ないけど。
朝からごめんね〜リンりん、
問い詰めるような事しちゃってさ♪
あっ、ううん。私が、全部悪いから(凛音)
いやいやリンりんは、全然悪くないよ!
悪いのは急に山に呼び出した[天野先輩達]だから☆
えっ?(凛音)
後で文句、行って来ようっと♪(怒り笑み)」
凛音「や、やめてぇ〜!!(汗)」
その2人の様子を扉に寄り掛かりながら見ていた
美夏は、教室に丁度入って来た雫に伝えた。
「お、おはよう…雪乃さん♪
凛音ちゃん、どうやら先輩方に誘われて
連絡が取れない所に居たみたいですよ。
何事もなくて良かったですよね?」
と美夏から話し掛けられた事に少し驚いた表情だった。
雫「そ、そうだったんですね(汗)
何もなくて安心しました♪」
美夏「はいっ!」
一方、2年蘭達と日向・・・
放送「繰り返します。
2年生の皆さんは、椅子を持って速やかに
校庭へ移動させて下さい!!」
椅子を持ちながら鼻歌を歌う蘭と
日差しに手をやる誠也の後ろに
明らかに気ダルそうにする日向の2人に話し掛ける。
蘭「もう〜体育祭の日だなんて信じられないな〜
去年までは、私達も1年生だったのに
ホントあっという間だね♪」
誠也「そうだなー」
と棒読み誠也の反応も気にせず蘭は話を進めていく。
蘭「あっ。そういえば、2人共!
夏休みの件なんだけど〜
いつもの合宿場所と合宿メニューと
少し追加して貰って訓練に入れてみたいんだけど、
後で確認してくれる?
無理そうだったら変えるけど〜
今回からは、友理ちゃんと雫ちゃんも混ぜて
2人の為に特別な訓練を取り入れて
きっと今よりもずっと良くなる筈なんだ♡
2人の実力を評価する事にはまだ抵抗あるけど、
確認しない訳にはいかないから。
それに最近、パルクールも頑張ってるみたいだしさ」
誠也「そうだなー……おっ、良いなソレ乗った!!
蘭、体育祭終わった後でも良いから
後で紅葉にもまた一声掛けてやってくれよ☆
意外と紅葉が居ると頼もしいんだよな〜♪」
とさっきまで興味無さそうな反応をしていた
誠也だったが、合宿と聞いた途端に元気になった。
日向(もう…そればっかりは懲り懲りだってば……(汗)
椅子をクラスごとに配置して水筒が無い事に
気付いた蘭は慌てて校舎へと戻る途中、
友理と出会った。
蘭「おはよう友理ちゃ〜ん!
今日の体育祭、お互い敵同士だけど頑張ろうね♪
んっ?敵同士…ってどういう事ですか?(友理)
あぁ〜えっと友理ちゃん達1年生は、
知らない情報だもんねっ!!
実はこの学校って〜高等部から
1年生はAクラスまで、私達2年からはSクラスまで
クラスが決まってるの♪
だから体育祭の競技ポイントが別々になっちゃうんだ。
……ってそんな話よりも私〜忘れ物したんだった。
急いで取りに行かないと!
また後でね〜」
友理「は〜〜〜い♪」
後ろ姿の蘭を見送るとニッコリと微笑んだ。
友理がAクラスの座席に椅子を置いて
すぐに遅れて椅子を持って来た駒と合流した。
保護者や近所の人達も集まり、
トラックの周りを取り囲むように
生徒達は中へと向かい整列して諸々の準備を終えて
いよいよ体育祭の始まりだっ!
まず最初の種目は、
1年生から3年生の100m走から。
第一走者:麟、第2走者:天音、第3走者:小雨
第4走者:美夏、第5走者:月傘
閻来「位置について、よ〜い…ドン!!」
合図と共に選手と歓声が上がり、
ゴールに向かって走って行く選手達。
そして、ゴールテープが切られた!
1位:麟、2位:美夏、3位:天音、4位:小雨、
5位:月傘となった。
2回目・・・
第一走者:沙鳥、第2走者:雫、
第3走者:百、第4走者:真昼、第5走者:欠席。
スタート地点で真っ先に足が絡まり転倒する真昼を
置いてあとの3人は、全力で走った!!
1位:沙鳥、2位:百、3位:雫、4位:真昼。
3回目・・・
第1走者:赤子、第2走者:駒、第3走者:欠席
第4走者:六花、第5走者:里子。
第2レーンの位置に着いた駒は、
周りをキョロキョロし出して顔が青ざめていた。
駒(や、やっぱり……どれだけ練習しても…
ひ、人に見られる舞台は苦手だ(汗)
「これが終わったら休憩。
これが終わったら休憩っ!」
ゔぅ〜………やっぱり無理ぃぃぃ(涙)
下を見ながら小刻みに震える駒を遠目に見ていた
友理は、気付いた。
閻来「……よ〜い、ドンッ!!」
という言葉と共にピストルを鳴らした。
反応が遅れながらもスタートした駒だったが
あっという間に最下位へとなり、
カーブを曲がり始めた時だった!
生徒席の外で駒と同じ速さで走っている
友理の姿があった。
走りながら応援する友理に他生徒の目線が向き、
笑い声が上がっていた。
駒「ゆ、友理さん…何してるんですか?!(焦)
私なんかの為に無駄な体力を使わないで下さい!!」
遠い筈の所からめちゃくちゃ大きな声で言った。
友理「無駄な体力なんかじゃないよ♪
走る前の準備運動的な感じで足を動かしてるだけ!
だから駒ちゃんは、気にしないでねぇ〜〜〜」
駒「そ、そんなの気にしま……!
(あっ、そうだ。
友理さんは私が緊張してる事に気付いて分かって
観客の人達の目線を逸らして私の心を和らげよう
としてくれたんだ。
この1週間半、友理さんが私にしてくれたように
私も………まだ諦めたくないっ!)
そう強く思い始めてから下振りだった手を
徐々に上へと上げて綺麗なフォームに持ち替えた。
すると格段に速さが変わり、最下位だった順位が、
2位へと上がりゴールしたのだった!!
1位:里子、2位:駒、3位:赤子、4位:六花
旗を持った先生が迎えてくれた。
駒「わ、私が……2位???(半信半疑)
今まで小中、最下位だった私が。
本当に2位なんですか先生?!」
先生「そうだよ。頑張ったな〜木之下っ!」
駒「あっ、うぅん…ありがとうございます(涙)」
一方・・・
友理「やった〜!!駒ちゃんが、勝った☆
これが特訓のせい……ううん。
駒ちゃんの努力の結晶だね♪うふふ」
と満足げに自分の座席へと戻ろうとした友理は、
2年生で走っている日向を見つけた。
友理「お〜〜〜い♪新條先輩、頑張れ〜!」
視界の隅で弾け飛ぶ友理を見た日向だったが
それよりも後ろに居る大柄な男に行き、
目を逸らし無視して3位となった。
スルーされた事を気にしてないのか、
顔から笑みが溢れてスキップして帰って行く友理。
そして、座席へ戻って来た時だった!!
3年生の100m走が始まった途端、
生徒席に居た全員が椅子から立ち上がって
大きな歓声が上がっていた。
その間、誠也は興味なさそうな顔で目を逸らし
蘭は憧れの眼差しで皆が注目する人を見ていた。
友理「なっ、何々一体…皆んなどうしたの?!」
と慌てて席を立ち、見える所に移動すると
そこには金髪とまではいかない
綺麗な薄黄色髪のハーフアップで後ろには
黒いリボンを付けており、
エメラルドキャッツアイのような瞳をした
完璧容姿の女神様に男女問わず、歓声を上げていた。
男子「四宮様、頑張って下さい!!
俺ら一生懸命、応援させて貰いますっ!
女子「四宮様は、いつ見てもお綺麗な方ですわ♪
皆んなの憧れの的は四宮様、一択です〜!!」
四宮は、応援してくれる皆んなに小さく手を振る。
男女「おおぉぉぉ!!キャーーー素敵♡♡♡」
そんな光景を見ていた友理は、
感動のあまりつい口に出していた。
友理「……っ!き、綺麗〜☆
あの人は、一体誰なんだろう?四宮…さん?」
思わず見惚れてしまった友理や他の皆んなも
座る事を忘れて退場するまで立ち上がっていた。
1位は勿論、四宮となり幕引きされたのであった。
100m走の選手達は、退場する際にトラックの中で
うずくまった雫を見て四宮が声を掛けようとした所
2年生の100mに居た瞳が声を掛けた。
瞳「どうしたの?
どこか具合でも悪いかな???」
雫が振り返るとそこには顔に四つ目の子が居たのだ。
四つ目の子は、目の大きさが小さく顔の形が
少し大きめの輪郭をしていた。
雫(あっ。
この人、2年生の四ノ原 瞳先輩だ(汗)
私なんかの為に、声を掛けてくれるなんて
優しい人だっ……なアレ?)
瞳に目線を向けた途端、視界がテレビの砂嵐のように
ブレ始めその場で倒れ込んでしまった。
瞳「あっ!
先生、至急担架をこちらに持って来て下さい。
体調が優れない生徒が居ますのでお願いします(焦)」
先生「は、はいっ!(汗)」
その様子を四宮は雫の事をじっと見つめながらも
渋々、退場して行った。
座席へと戻って来た駒と座ってすぐに立ち上がり、
友理とハイタッチを交わした。
「やったね☆
駒ちゃんの努力が、報われたんだよ!!」
駒「ありがとう♪
特訓に付き合ってくれた友理さんのお陰だよ」
うふふ♡(2人)
喜んでいると担架で、運ばれて行く雫の姿を
横目に通り過ぎて行った。
2年生席・・・
誠也が、席を離れてB組の席に座っている日向に
強めに話し掛けて来た。
「何してんだよ、日向!
やっとの思いで今年の体育祭で100m走取れた
だの言って来た割には3位って舐めてんのかよ?!(怒)
せっかく取れた種目で1位取れば、
良かったじゃんかっ!!」
と来て早々、誠也の第一声が文句であった。
日向「はぁ〜……何が?
それだけの為にここに来たって言いたいのか。
あぁ〜そうだよ!なんか文句、あんのかよ(誠也)
別に………ただ前にも言ったけどー
僕は、暑いのが苦手だ。
こんな所で無駄な体力を使いたくないって
いつも言ってるだろ」
目を点にさせながら誠也を見上げる。
誠也「だ・か・ら・な!!
それが回りくどいって言ってんだよ(怒)
体を動かすのが苦手だの暑いのが苦手だの
そういう事、気にしてっからいつまで経っても……」
と誠也が言って来る言葉に対してる冷たく言った。
日向「僕の事を分かってくれる奴はたった1人だけだ!
誠也でも鈴木さんでもない……[アイツ]しか居ない。
僕を悪く言っても構わないだが、
間違っても[アイツ]だけの事までも悪く言うなら
お前でも許さない(怒)」
日向は静かに怒った顔で誠也を睨み付けるが、
キョトン顔の誠也には分からなかった。
誠也「んっ?それ〜誰の事だよ???
俺は、流石に日向の知り合いまでは知らねぇぞ。
聞いた所でお前は、黙るんだからよ」
そう言葉を返すと痺れを切らした日向は、
誠也から顔を逸らした。
日向「・・・何でもない」
誠也「はぁ?!
急に意味分かんねぇ話題、言うなよな。
何でもないって言ってるだろ(日向)
うーんって……あぁ〜!
日向と話してる間に次の競技、始まんじゃねぇか。
自分の競技に遅刻するとか蘭に怒られる!?(汗)」
と言い、慌てて入場門の方へ爆速で走った!
そんな誠也の焦り声すら聞いていない
日向はジャージを深く被り、目元を暗くさせていた。
瞳「・・・」
二人三脚では・・・
放送テントの下で小さな少年が大きなマイクに
向かって種目説明をしていた。
翔「今年からルールを少し変えて
100m走と同じ長さのトラックを使って
スタート地点から10m離れた距離まで片方が走り、
2箇所目の所でペアが結び、ゴールするまでが
競技となります!
それから3組ずつで行い、
クラスごとによって男女混合にもなり得る種目
となりますので皆さん、怪我なく頑張って下さい!!」
放送委員の声掛けと共に二人三脚に出場する選手
が、レーンの上に立った。
第1走者:恋花、第2走者:風香、第3走者:芽亜。
志童「位置について、よーい…ドン」
と明らかに棒読みの志童の事など気にせず、
二人三脚の選手達は、スタートした!
先陣切って走っているのは二足歩行の恋花、
その後ろをしっかりガードしながら走る芽亜、
足の速さだけなら自信のある風香。
と、かなり接戦になりながらも
2箇所目にはほぼ同時に着いた恋花と芽亜だった!
そして恋花のペアは明であり、芽亜は凛音だった。
芽亜「リンりん、焦らずポジティブな思考で
集中して行くよ♪集中、集中☆」
凛音「えぇ、任せなさい!!」
一方お隣では・・・
明「ほら恋花、早く結びなさいよ(怒)
こんな事も出来ないなんて
あなたもまだまだ、お子ちゃまなのかしら?
ぷっぷ〜(笑)」
恋花「うっさい!
明が、急かすから練習通りにいかないんじゃない。
どうしてくれるのよ(怒)
そんなんだから最近、髪がハネてんじゃないの?」
明「なっ、寝癖の話なんて今関係ないでしょ!
アンタなんかより毛量は、少ない方だわ(焦)」
恋花「私は、多くてもハネないけどな〜
あれあれ???おかしいな明・ちゃ・んっ♪」
明「うるさいわよっ!」
芽亜・凛音(何の話だよ?!(怒)
双方喧嘩と呆れる仲良しの2グループを置いて
目元が隠れた赤髪の風香と一つ目の晃太郎が、
先にスタートしていた。
4人「あっ!しまった(汗)」
と焦らず2グループ、
二足の足を先に結び上げたのは芽亜達だった!!
「ヤリィ〜☆」という芽亜の喜ばしい声をあげて
慎重に歩いてから走り出した瞬間に
恋花達も遅れてスタート。
すると最初から尋常な速さで走って来た2人は、
かなりの勢いで芽亜と凛音に追い越して来た!
芽亜「うそぉ〜〜〜あ、あの子達………
喧嘩しながら走ってるんだけど?!」
明「もっと早く足を動かしなさいよ恋花っ!
練習の時は、もっとこう動かしてたじゃない」
恋花「ふん!!
これよりも早くやったら明が、
転んじゃうんじゃないかって手加減してただけ。
ホントに良いのね?
良いわよっ!どうせ、遅いんだし(明)
あぁーん?
そこまで言うならやってやろうじゃないの」
と真ん中の足同士が3回目に着いた途端、
足が倍速になったように加速し
最初の明でも戸惑いながらも徐々に慣れ始めて
最後は息ぴったりで足の上げ下げを繰り返した。
その様子を間近で走りながら見ていた凛音も
思わず、口に出して言ってしまった。
凛音「す、凄いわね。
あの2人……見くびっていたわ(汗)」
芽亜「ねぇ〜凄いね☆
でもリンりん、私達だって
まだ負けてないよ!
チグハグな仲良しとゆるふわな仲良しとじゃ、
訳が違うんだから♪」
凛音「うふ。
そうね〜
所で………[ゆるふわな仲良し]って
初耳なんだけど、どういう意味かしら?」
芽亜「あはは〜リンりん、たまに天然だよね。
まぁでも特に理由は無いかな☆
今考えた事だから♪」
そして現在の1位ペア・・・
風香が不安そうな顔をして晃太郎を
見つめて言った。
「晃太郎くん、あともう少しだから
頑張って水筒ちゃんと飲んで来れた?」
晃太郎「う、うーん。
の、飲んで来たわ……飲んで来たんだけど〜
ちょっと緊張のあまり飲み過ぎちゃったかも(汗)
だからその〜…もう少しで地面がぬかるみます。
足を休めないで下さい!!」
風香「ええぇぇぇ〜!?嘘っ!
じゃあ…徐々に地面がぬかるんでるのは、
気のせいじゃ……ないっ?!わっ!」
晃太郎「風香さん!!」
言ってる側からぬかるみに足を取られてしまい、
前へと転倒してしまった。
間一髪で風香の腕を掴んでいた晃太郎だったが、
恋花と明が息を合わせてぬかるんだ場所を
ジャンプで回避するコンビネーションで風が舞う!
その風に更に前のめりになった晃太郎、
地面スレスレで耐え続けていた。
風香を引き始めた頃に芽亜と凛音が
勢いよく直進して来た為、
2人に晃太郎が声を掛けて止めようとしたが
もうぬかるんだ場所にハマっていたのだった!!
凛音「何ですかコレ?!
こんなにぬかるんだ場所があるのに
100m走の時は無かった筈ですが(汗)」
芽亜「何これ、めっちゃ気持ち悪っ!」
という芽亜の失言を聞いてしまった晃太郎は、
矢印が背中に刺さって風香の腕を掴んでいた
手を緩ませて四つん這いになった風香の背中に
体重を預けたのであった。
風香「えっ、ちょ…ちょっと晃太郎くん?!
どうしたの?ねぇ、しっかりしてよ〜!」
と2グループは、ぬかるみにハマり阿鼻叫喚しながら
恋花達はゴールしたのだった!!
2年生では、蘭と誠也ペアで走り転ぶ事なく
無事ゴール出来たが2位という結果となったのだ。
棒引き・・・
1年生の学年種目でもある棒引きへと移り、
友理達Aクラス対芽亜達Dクラスの対決となった。
このクラスが唯一、白熱し過ぎて延長戦にまで
発展した試合!
先生「では、3回戦目の試合を始めます。
位置について、よ〜い……ドンッ!!」
その合図に率先して恋花がこの試合で身に付いた
達人のように棒を引き、持ち帰るという技を
生み出した。
開始早々に3つも持ち帰り、あと12本となった!
駒が取る棒に2試合連続、必ず凛音が取り返す事が
多かった。
そして、今もっ!!
駒「ふにゅ〜〜〜だ、ダメですぅぅぅ。
引く力だけは、弱いんです私ぃ〜(バツ目)」
凛音(うーーーん(汗)
な、なんか段々取り返すごとに
この子が可哀想にぃ〜………
ですが、この体育祭では競う勝負でして〜
だからごめんなさいっ!)
そう思いながら力強く取り上げた凛音は、
持ち帰る途中で棒ごとくっ付いていた駒に気付く。
凛音「なっ、何してるんですか?!
危ないわよっ!降りなさい(焦)」
駒「止めて下さいぃぃぃ〜!!!!!!(泣)」
※駒は、人型フォルムでも軽すぎた体重である。
すると少し離れた距離から
恋花1人 対 4人とカチ合っている所で
花梨に指示を飛ばす!
恋花「か、花梨〜……コノハちゃんを頼んだよ(汗)
私も行きたい所なんだけど〜
たった今、大変になったから」
花梨「うんっ!!任せて♪」
そう言って花梨はその場から軽めにジャンプした。
自分で生み出した水を足に掛けてヒレが現れ、
凛音が運ぶ棒の上にシーソーのように振り下ろす。
その衝撃で吹っ飛んだ駒が目から涙が溢れて
駒「うそぉぉぉ〜!?!!!!」
と言って空高く放り出された。
地面を強く踏み込み、高く飛び上がった
友理によって駒を抱き抱える事に成功した!
友理「はぁ〜良かった、駒ちゃんが無事で♪」
駒「友理さん………
どこが無事なのか、教えてくれます?!(怒)
何なら友理さんも一度、体験しますか!?」
友理「えっ?あはは……えっと〜(汗)」
バタバタ暴れる駒の愚痴をしばらく聞いていると
1人で引っ張り続けていた
恋花から男のような呻き声と共に
遠い所から友理の場所まで棒を投げ付けた。
恋花「オラアァァァーーー!!!!!!
友理ちゃん!あとは、頼んだよ♪」
友理「あっ、うん。任せて♪」
駒「えっ?!」
座り込んでしまった駒の肩から手を離し、
すぐに恋花が飛ばして来た棒の高さまでジャンプし
片手で受け止めたのだ。
友理「よいしょっ♪はぁ〜…疲れたぁ(汗)
流石に3試合連続でこれは、キツいかもぉ〜」
駒「いやいやいや!!
普通、かた…片手で受け止めきれませんから(焦)」
友理「んんっ?」
その後、ゴール付近で待つ友理と駒。
恋花と花梨は、積極的に棒を奪い合う事に
専念したのだが結果は、
2本差でD組の勝ちとなり友理達A組は敗れた。
棒引き後・・・
凛音と芽亜は体育着が汚れた為、
一度校舎へ戻り着替え直そうと戻ろうとした所で
例の「天野先輩達」と鉢合わせた。
天野「あっ。凛音ちゃ〜ん、お疲れ♪
二人三脚の種目が終わって
すぐに棒引きがあるなんて大変でしたでしょう。
替えの体操着、私持っていますが
貸しましょうか?」
凛音「いえいえ、わざわざ天野先輩の体操着を
貸して貰う訳にはいきませんよ(汗)
予備の体操着はありますし稲倉先輩も
バックの中、慌てて漁らなくて大丈夫ですから!?
お昼前には戻って来なくちゃ行けないので
とりあえず芽亜さん、急いで校舎へ戻りましょう!
芽亜、どうしまっ………」
と凛音が言い掛けた途端、
芽亜はその場から動かずあの事を口にしたのだ。
芽亜「天野先輩達に1つ、言わせて下さい!!
あら?何かしら♪(天野)
[リンりん]を無断で
どこかに連れて行かないで下さいっ!」
凛音「えっ、あ…ちょっと芽亜さん!!(恥)」
3人の先輩は、目が点になりながら顔を見合わす。
すると天野先輩がクスクスと笑い出し、
2人も釣られて笑っていた。
芽亜「なっ、何笑ってるんですか?!
私は、真剣な話をしてるんです!
連絡の出来ない所に連れてって
こっちは超心配したんだから」
天野「うふふ♪
ごめんなさいね。笑うつもりは無かったのだけど
メダカちゃんが真面目に言ってても
私達の前で[あだ名]で呼ばないで頂戴……(笑)」
芽亜「別に良いでしょう。
リンりんは、リンりんなんだから!!」
凛音「そこは、はっきり言わない所です芽亜!
あぁ〜もう。これからどう接すれば………(汗)」
と焦っていると麻上が親指をグッと突き出して
遊び感覚の笑みでこちらを見つめた。
凛音「麻上先輩までっ?!」
芽亜「そういう事なので
これからも気を付けて下さい、天野先輩!!」
そう言って凛音の手を引っ張って行く際に
天野「リンりんちゃ〜ん☆」
とからかった声で言ってきた。
凛音「忘れて下さい、先輩っ!」
2人は、校舎へと戻っている間に
3年生の学年種目「騎馬戦」が始まり、
校庭に出て来る時には種目は終わっていた。
放送「先にゴールした青組の勝利です!!」
と午前の種目が終わった為、
生徒は昼食の時間へと入ったのだった。