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つぶらな瞳が見つめてきます

「して、アルマ殿はなぜこんなところに? 拝見した限りではアルマ殿は魔女であろう? しかも凄腕とお見受けした」


 互いに夕食を済ませたタイミングで、クローが改まった様子で訊ねてくる。


「そんなことはないよ。試験に落ちて魔法学校を退学になったばかりだし」


 クローの可愛らしい見た目に、私はぽろっと事情を話してしまう。

 いくら助けた相手とはいえ、本来なら会ってすぐの信用できるかわからない相手に言うべき事ではないのだろう。


 しかし、クローの顔は小型犬そのもの。しかも、つぶらな瞳でこちらを見つめてくるのだ。

 とりつくろうことを考える前に、言葉が出てしまうのも致し方ない。


「なんと! ワームを一撃で葬れるほどの実力がおありなのに。その魔法学校とやらは、よほど了見が狭いのですな」

「了見が狭い……。ふふふ。そう、かも。確かにあそこは偏見ばっかりだったのかも──」


 私はクローの言葉に、思わず笑ってしまう。魔法学校の了見が狭いと言ってくれたクローの言葉。その言葉で、どこかにあった胸のつかえが少し、とれたようなそんな気さえした。


「ふふ──。はぁーあっ。うん、久しぶりに笑った。それにしてもクローって言葉づかいが変わってる。コボルト族は皆そうなの?」

「拙者は特に、まつろうものを失った武の民ゆえ。コボルトも色々ですな」

「色々」

「うむ。色々ですとも。さて、それでなのですが、アルマ殿はどちらか行く宛などは?」


 たぶんクロー本人はニヒルな笑みのつもりであろう表情。しかしそれも、ただただ可愛らしかった。


「うーん。具体的にはないんだよね。とりあえず、魔力泉のある場所を探そうかなって。書きかけのグリモワールを完成させたいから。それに──了見が狭い人たちを、見返したい……かも」


 クローの笑みにまた、ぽろっと言葉がこぼれる。

 それは自分でもはっきりと意識していなかった思い。しかし言葉にすることで、それが心の底からの私の望みなのだと、自覚してしまう。


 ──ああ。私は見返したいのか。私を退学にした教導役の魔女たちを。私を馬鹿にし続けてきたカサンドラたちを。


 クローはそのつぶらな瞳を私に向けて、さらりと伝えてくる。


「ではどうですかな。拙者と一緒に迷宮都市へ行きませんか?」


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