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悪の幹部やってるけど変身ヒロイン(年上)に目を付けられているらしい  作者: 他津哉
第2話「ヒロインにお持ち帰りされた幹部」
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Chapter2-3


「咲野、どうしたの?」


「えっと、昨日の事で先生に相談が有りまして……」


 そこにいたのは自分の教え子だったが今は次の授業が迫っている時間帯で忙しく、それ所ではない洸は咄嗟に断っていた。


「あぁ、ごめん昼か部活の時でいい? 次、氷見野のクラスの授業の準備中なのよ~ごめんね」


「あっ、涼子ちゃんのクラスの……では、お昼に部室で大丈夫ですか?」


「ええ、他の子も揃いそう?」


「私が招集をかけておきます、特にメリアは落ち込んでて……」


 それを聞いて洸は軽く頷いてあえて流した。後でいくらでもアドバイスもしようと思って一番伝えたいことだけを言った。


「誰でも負ける事くらい有るわよ……だから気合入れなさい咲野さきの花音かのん!! ここが正念場よ!!」


「はいっ!! 失礼します」


 そして洸には教え子でもあり現役の十代目ステプレのリーダー、ステラ・フィオーレの後姿に、かつての親友が重なって見えた。


「リーダーは辛いわね……まとめる側になって初めて知ったわ、縁……」


 そして気分を入れ替え次の授業の教材と出席簿を持って職員室を出た。だが洸は完全に失念していた。先週いきなり理事長から捻じ込まれた転校生の個人情報の入ったファイルの存在と、それを読み込むことを忘れていた。




 そして正午、教員としての仕事はまだ終わらないが先に昼を取って約束も守らなくてはいけないと思い洸は急いで準備する。そう言えば最近は人とごはんを一緒に食べる機会が増えたと思っていると今朝の出来事を思い出していた。


「職場以外で男の人と話すなんて……何年振りだろ……」


 最近は自分でも酒癖が悪くて直そうとは思っていた矢先の出来事だった。馴染みのバーが閉まっていたから行きつけの定食屋に行き一人で飲んでいたら現れたのは新卒のリーマンみたいな年下の男の子だった。


「あ~いう初々しいのが良いのよね、数年したら目が死んで社畜になる前がね……」


 そんな下らない事を考えながらも朝から少女漫画顔負けの出来事に内心ウキウキしていると目的の場所に到着した。天文部と書かれた部屋にノックをして入ると中には四人の少女がいた。


「あっ、ひかり~ん遅いよ~」


「八重樫先生でしょ律果りっか? こんにちは、さっきぶりです先生」


 まず入って来て最初に声をかけて来たのは明るい茶髪の少女で名前を森野律果、そしてすぐにもう一人の凛々しい方の少女が注意していた。


「部室だから良いんだよ~涼子ちゃんは硬いんだから、カチカチよ」


「あんたは少しは硬くなりなさい律果、涼子も毎回悪いわね、そういえば今日は生徒会の方は良かったの?」


 もう既に昼食の菓子パンをモグモグ食べる律果を注意する黒髪を腰まで伸ばした少女は背筋を伸ばすとキリッと表情を変えて洸に直角90度の姿勢で礼をした。


「はい、この氷見野ひみの 涼子りょうこ、昨日の失態の報告をするまでは生徒会にも顔は出せませんので……」


「確かに……涼子は極端に硬いわね、あいつを思い出すわ……」


 かつての戦友を思い出すと同時に今朝の堅物の青年の事を洸は思い出していた。昨日の飲みの時と言い今朝の態度といい、どこか世間知らずだけど放っておけない感じは目の前の涼子と少し似ていると思ってしまう。


「アイツって誰なんですか先生?」


「昔馴染みよ、それと偶然の出会い……って咲野!! どうしたのよ……それ」


 先ほど朝に約束した咲野花音が横にいる少女の頭を撫でていた。その少女は体育座りでチラリと目を向けると生気の無い死んだような魚の目をして落ち込んでいた。


「私のせいだ、私が調子に乗って……私なんてどうせ」


「大丈夫だよメリア、昨日は私達全員が負けちゃったんだし、仕方ない……よ」


「あ~こりゃ重症ね……今は理事長の結界も有るからフランクに行きましょ? メリア、いいえステラ・リコルド?」


 それだけ言うと天文部の部室の雰囲気が変わった。完全に外界から離された不思議な空間となって落ち込んでいた少女、ステラ・リコルドことメリア=ソムニウムもやっと重い腰を上げて席に着いた。


「すいません、ドゥーエ先輩……でも私」


「負けたことグダグダ言っても仕方ない次勝つこと考えなさい!! そもそも過去に私が出た戦いだって三回有ったんだから今さら何言ってんの」


「でも先生……じゃなくて、ドゥーエ先輩あの黒い騎士は強過ぎます……」


「ええ、かなり強かったわ……あのまま長引いてたら私も奥の手を出す可能性があったくらいにはね」


 実は余裕そうに見えていた洸だったが内心焦っていた。あの黒い鎧と剣、何より圧倒的に強さが他の四天王とレベルが違い、倒そうとする気迫も段違いだった。


「それにしても今までの四天王と違って何か凄いセコイ手を使って来ませんでしたか今回の相手は」


「そうそう、狙撃とか爆撃とか後はこっちを騙そうとしたりブラフとか……」


 涼子ことステラ・アウローラが言うとパンを齧りながら律果ことプロメッサも同意していた。それは洸も気になる所で、だから落ち込んでいるリコルドに聞かなくてはならない。


「リコルド話し辛いかもしれないけど新しい四天王の話、何か知らない?」


「先生!! メリアはもうERRORとは関係無いんですよ!?」


「分かってるけど情報を一番持ってるのはリコルドよ、違う?」


 洸は過剰に反応する花音に対して窘めるように話すが彼女の顔には不満が出ていた。しかし、それを制し話し出したのはリコルド本人だった。


「いいよフィオーレ……でもドゥーエ、悪いけど情報は無いわ……まさか私が抜けてこんなに早く四天王が補充されるなんて、しかもあんなに強いなんて」


 リコルドが詳しいのも当然で彼女こそが前任の四天王『悪夢のストレーガ』だったからだ。彼女は今から二週間前にフィオーレこと咲野花音と友情を築きERRORを裏切りステプレとなった。


「ERRORのことなんて話さなくても良いんだよリコルド、私達はもう仲間なんですから!!」


「仲間だからよフィオーレ、私だって皆の役に立ちたい、だから戦闘も頑張ったのに……あんな情けない姿を……私なんて」


 そういうと体育座りに戻ってまたしても「の」の字を書き出してしまった。外国人なのに「の」を書いてしまうのは日本が長いからなのかは謎だ。


「ああ、先生じゃなくてドゥーエ先輩!! メリアさっきからこの調子で……」


「悪かったわよ……でも八方ふさがりか……今まで通りなら毎週一回だけ襲撃してくるんだけど、アイツ明らかに空気読まないし厄介そうなのよね」


 そう言って自分も昼用に買っておいたコンビニのツナサンドを食べ始める。やはり自分で作った方が美味しいと思いながら口を動かしていると律果が口を開いた。


「でも先生、先に戦っていたコングマンも今週二回目の襲撃だったよ~」


「ああ、そりゃアイツがそろそろ《《退場》》だからでしょ」


 洸のサラッと言った一言に四人の頭の上には疑問符が浮かんだようで顔を見合わせるとハモって声を上げていた。


「「「「退場?」」」」


「あ~、そうか……そこからか、退場ってのは、そのままの意味よコングマンなんだけどね私の経験から言ったらアイツそろそろ倒せそうなのよねぇ……」


 洸は次の卵サンドに手を伸ばして一緒にペットボトルのミルクティーを飲んでいた。今日は朝からキッチリした朝食を作ったので昼は手抜きだったりする。


「そりゃ確かに今回は行けそうでしたけど……」


「あ~違うのよ涼子、タイミング的に最初の敵を撃破するのはそろそろなのよ、あと四人とも近い内にパワーアップすると思うから準備しておきなさい」


「「「「えええええええっ!?」」」」


 四人の驚いた声が天文部の部室に響くと洸は自分にもこんな時代が有ったと感慨深くなっていた。

誤字報告などあれば是非とも報告をお願い致します。(感想ではなく誤字脱字報告でお願いします)


感想・ブクマ・評価などもお待ちしています。


この作品はカクヨムで先行して投稿しています。


下にカクヨムへのリンクが有りますのでよろしくお願いします。

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