Chapter8-4
「いい加減にしなさい二人とも、断己くんも確かに体力も有るけど生身で戦うとか冗談じゃ済まないのよ」
洸が腰に手を当てて断己を見上げるが全く動揺しておらず不敵な笑みを浮かべたまま一歩も引かず逆に口を開いていた。
「でしょうね、なのでハンデを下さい……武器は無しで、それから自動防御も外せるなら外して下さい」
「いやいや武器無しでも……それに女神の加護を外すのは私以外は……」
「そうですか難しいなら結構です」(女神だと……まさか本当に神秘的な力が根源なのか……しかも権限を持っているのは洸先生のみ、いい情報だ)
断己としては例の自動防御などの仕組みを少しでも引き出す事が出来ればいいと思ったが思わぬ収穫だった。そして洸が口を開こうとした時、予想外の人物から声が上がった。
「面白い……断己先輩に聞きたい、私はダメなのか」
「ああ、お前は強いからなメリア、違うか今はリコルドか」
それはステラ・リコルドに変身したメリアだった。彼女だけは断己の思惑を何となく理解したようで洸に進言していた。
「そちらで大丈夫です断己先輩……なら私は賛成ですドゥーエ先輩」
「いやいやメリアじゃなくてリコルド、それはダメよ、絶対にダメ」
それに賛成するようにフィオーレの花音も止めるが断己と他のステプレ三人は納得してプロメッサ・アウローラ両名は既に臨戦態勢に入っていた。
「じゃあ断己先輩のきれいな顔が少し不細工になっても恨まないでね~」
「武器は無しの徒手空拳でも私だってバカにされたままじゃ終われない!!」
プロメッサは腕をポキポキと鳴らしアウローラは断己をキッと睨み付ける。実はステプレに変身すると星信力を多大に要求されるため本来の性格が強く表に出る。
この場合プロメッサの律果は内に秘めた情熱が現れ好戦的に、アウローラの涼子は生真面目さが反転して怒りで我を忘れその分パワーに変換されるといった具合だ。
「ああっ、もう断己くんも……仕方ない、危ないと思ったら絶対に私が止めるから、それと二人とも加護は切らないけど星神力は抑えて戦いなさい!!」
「「はいっ!!」」
「じゃあ最初はどっちだ? さすがに二人同時は厳しい」
散々煽っておきながらいざとなると冷静な断己だった。実はこの中で一番の小心者で今まで生き残れたのはこの性格のお陰でもある。
「なら私が行かせて頂きます断己先輩!!」
アウローラが叫んだ後、一瞬で断己の視界から消え次の瞬間には背後に現れ蹴りの体勢に入っていた。
「取った!!」
攻撃が決まるのを確信したアウローラの叫び声が山々に響き渡った。
◆
「ぐあっ、くっ……」
アウローラの一撃は断己の右側面から繰り出され腹を強かに蹴り上げる。さすが星を守る少女の一撃に鎧の補助もない断己はアッサリ吹き飛ばされ草原を転がされる。
「どうしたんですか先輩? メリアは確かに強いけど私達はメリアを倒して仲間にしたんです!! 弱いなんて言わせない!!」
「ぐっ、そうか……確かに強い、威力だけ、ならな……」
断己は何とか立ち上がり涼子を見た。自分の予想は間違っていなかった……やはり予想通りだったと自信から確信へと変わっていた。
「嘘でしょ、何で立ち上がってるのよ」
「どうして普通の人が……」
律果と花音も驚愕していた。手加減はしたしステプレ同士の視点では動きは遅く見えているが常人に目視は出来ないはずだ。
「……リコルド、今の動きを見ないで分かったの、断己くんのこと」
「はい、先輩は……恐らく格闘技や戦闘のプロです」
「達人とかそういう系? なら……私たちの天敵じゃない」
そう、ステプレは強い。ある女神の加護が与えられ力も星への祈りと信じる力さえ有れば無限にパワーアップ出来るというトンデモ能力が加護として与えられている。しかし選ばれる者は普通の少女の場合がほとんどだ。
「律果も涼子も強いと思う……私も最後は三人の思いと心の強さに惹かれた……だから三人みたいになりたいと思って、ステプレになれた」
つい一月前の出来事で今でもメリアことステラ・リコルドは三人に感謝している。自分の心の闇を暴き救い出してくれた三人のことは大事な親友だと思っている。
「それですぐに分かったのねリコルドには三人に欠けているものが」
「私達に欠けているものって一体なんですか先生、リコルド」
「フィオーレ、プロメッサも見ておきなさい、目の前のあれが今のあなた達に足りてない心・技・体の最後の一つ、技よ!!」
洸が言ったと同時に繰り出したアウローラの蹴りが今度は避けられた。さらに反対の足で回し蹴りを出すが断己は腕でガードし受け流していた。
「わざ……ですか」
「そう、つまり技量……三人の心の強さは私も保証してあげる、だけど戦い方や戦術眼は圧倒的に低い、前回スターダストナイト二世に遅れを取った原因はそれよ」
そしてそれを証明するようにボロボロになりながらも完全に動きを捉えた断己が足を掴んで投げ飛ばし倒れたアウローラの首にチョークを決めていた。
「か、かはっ……ぐっ、なっ、んで」
「意識が朦朧として力が出せないだろう、いくら力が強くて加護が有っても人間なら必ず弱点は有る、酸欠とかな」
そして完全に絞め落とそうとした断己の腕の拘束が無理やり外された。
「そこまでよ断己くん……もう、止めて」
「あ、すいません、やり過ぎました」
「けほっ、はぁ、はぁ……」
洸に解放されたアウローラは変身が解け涼子の姿に戻ってしまい最後には倒れ込むという無様な姿を晒していた。
「まさかサブミッションで変身ヒロイン絞め落とすとか洒落にならないわ」
「これも小手先の技です、だが涼子も強い、最初の蹴りも止める気でしたがアッサリ蹴り飛ばされました」
洸が呆れたように断己を見るが、実際は断己の方も鎧の補助無しでは厳しいと思い知らされていた。装備の力に頼っていたのは自分もだと実感していた。
「よく言う、一発目も自ら後ろに飛んでギリギリ急所は避けていたろ断己先輩」
「それくらいの小細工は最低限だリコルド……それで俺とやるか律果」
「うっ、その涼子みたいに抱き付かれたりするのは私……」
サブミッション、具体的にはチョークで締め落とした断己だったから背後から抱き着く形にはなっていた。ちなみに当人には邪な狙いは全くない。
「違う倒し方も考えていたが」
「い・や・よ!! 絶対に変な方法でしょ、何かそういうセコイ所とか例の敵に似てない、ひかり~ん」
やはり無駄に鋭い律果だったが戦闘意欲が完全に無くなって自ら変身を解いていた。
「卑怯と捉えるか戦術と捉えるかは個人の感想だ」
「でも課題は分かったんじゃないか三人とも」
「メリア~、私あんな技使えませんよ~」
リコルドが三人を見て言うと真っ先にフィオーレが泣きついていた。涼子は俯いて律果は座り込んで空を見上げて完全に負け犬ムーブだった。
「花音には私が教えるから、そう二人きりで……ふふっ」
「洸先生、あれはあれでマズいのでは?」
二人のただならぬ雰囲気と残りのメンバーの意気消沈振りに敵なのに本気で心配している断己に対して洸は吐き捨てるように言う。
「さあ、勝手にやればいいのよ、むしろ君が明らかにした弱点を克服できるのなら構わないわ」
「意外とスパルタですね、今日が最終日なのに良いんですか」
合宿は三泊四日だが明日の午前中にはここを出て家に送るだけなので実質的に今日が最終日となっている。
「きっかけは与えた、あとは三人次第よ……大事なことは力に頼ることでは無く力を知り気付くことよ」
「っ!? いい、言葉ですね……昔、自分も似た言葉を聞きました」
断己はその言葉をよく知っていた。かつて自分が幼い頃に尊敬していた人物に言われた言葉で今も胸に刻んでいる。
「私も他人の受け売りよ……さ~て、じゃあ調子に乗ってる断己くんには、先生がプライベートレッスンしてあ・げ・る」
「いやいや、洸先生の相手は無理なので」
にじり寄る洸に対して過去最大の危機感を持つ断己の予想は正しく結果は見えている。洸の笑みの中に凶暴な何かが見えた瞬間、自分の運命は決まったと確信した。
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