Chapter8-2
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秘密結社の幹部の朝は早い……などという事は無く基本的に自由だ。そもそも秘密結社ERRORやカバー会社のNASOTOカンパニーは本部こそ日本に有るが仕事の形態は各ラボに一任されておりフレックス制などバラバラで日本では割と先進的な企業スタイルを採用している。
「つまり平たく言えば自由なんです……」
「それが言い訳かしら断己くん」
夜剱断己、十七歳は寝坊していた。日本に来てから寝坊の連続だったのは目の前の自分の担任にして宿敵のせいだと声を大にして言いたい。しかし教師モードの洸は妙に小うるさいので抵抗はしない、彼は学習したのだ。
「申し訳……ありませんでした」
「うんうん、じゃあ私達は外を軽く走ってくるから朝ごはん食べてから来なさい」
「いえ、別に朝食くらい――――「ダメよ朝ごはんは食べなきゃダメ、ほらスープもちゃんと作ってあるから、ゆ~っくり来なさい、良いわね?」
断己が渋々うなずくと洸は満足したようで外に出て行った。その背を見送ると断己は昨晩の歩との話を思い出していた。
――――昨晩
「では、もう一度お尋ねしますよ断己の兄さん、本当にあなたの天才的な発想と頭脳によって導き出された結論がそれなんすね」
「ああ、彼女は、いやステラ・ドゥーエは優し過ぎるのが弱点だ」
断己の確信をもって言った言葉は目の前の側近には伝わらず、むしろ疑惑の目を向けられてしまう結果になっていた。
「は、はあ……確かに無駄に褒めてましたね」
「納得いかないか? 彼女は割と自分勝手で一見すると横暴に見えるが実は違うのは先ほど話した通りだ」
偶然とはいえ自分が世話になったのだから断己からすれば当然の答えなのだが他人からは違和感しかない。それは側近である歩も同様で少し目を離した隙に二人が急接近して親密になっているという前提を知らないから当然だった。
「まあ自分の生徒に世話を焼くのが教師という職業ですが彼女の場合は熱心なのは聞きましたよ、それが優しさと考えるなら分かりますが……う~ん」
「ああ、付け込む隙はそこだけだ……だから彼女の生徒を人質に取ればいい、そうすれば彼女は無力化出来る」
何の気なしに断己が放った一言はあまりに衝撃的だった。しかし冷静に考えてみれば当然の言葉でもあった。
「は? え?」
「既に俺のクラスの数名をピックアップしているから適当に拉致して――――」
「ストップ、スト~ップ、断己の兄さんって、あの八重樫洸いやステラ・ドゥーエのこと気に入ってますよね!? 好きなんじゃないんですか!?」
今までの言動などから断己が八重樫洸に好意を抱いているのは確実だ。それは幼い頃、彼がアメリカに来た時から知っている歩だからこそ分かる。ゆえに断己の解答が理解不能だった。
「人物としては好感が持てる、それに接してみて悪い人間ではない……だからサクッと無力化して共同事業の展開を……」
「なんでそんなに共同事業をしたいんですか!?」
「それは……洸先生はステプレを辞めたがっているからだ、この間のデートの時に言ってたからな」
断己は相談を受けた時に思ったことは一つだった。目の前の女性は敵ではあるが苦しんでいる。そして普通の人間に戻りたがっていると認識した。
「なるほど、デート……デートぉ!? デートってあのデートですか!? 断己の兄さんがデート!?」
「はぁ……やれやれ何を言っているんだ歩、デートとは男女で遊ぶことだろ? 俺は向こうでも女性の知り合いが、ほぼ居ないから苦労した」
実際は洸に連れ回されただけなのだが断己の最後の意地でそこは話さなかった。妙な所でプライドが高いのも彼の特徴だ。
「いやいやいや、色々待てや天才幹部、四天王のSKⅡ様!!」
「歩、コードネームを敵地に等しい外部で大声で叫ぶのは……ふぅ、いただけないな少しは冷静になれ」
それを言われて歩は冷静になろうとしたが難しかった。ある意味で幼馴染にも等しい目の前の仕えるべき男には毎回驚かされるが今日はいつも以上に驚かされた。
「色々と聞きたいんですけど一つだけ……勝てるんですよね」
「ああ、勝率はほぼ百パーセントだ」
「その《《ほぼ》》っての止めてくれませんか」
「歩、物事に百パーセントなど有り得ない、しかし俺の中では成功を確信している、次こそは俺達が勝つぞ歩」
――――現在(合宿所)
そんな事を昨晩は話していた。断己は約束された牛のテールスープを飲んで目を覚ましながら一言呟いた。
「うまい……毎朝作ってもらいたい……」
何気なく放った独り言は誰にも聞かれていなかったのが幸いだった。間違いなく騒動が起きていたに違いない。しかし今の彼は一人で歩は既に本部へ戻っていた。
「歩がしっかり動けば今度こそ、お終いだステラ・ドゥーエ……」
断己がゆっくりと昼食を食べて作戦成功を確信していた頃、洸の率いるステプレ達は過酷な特訓をしていた。
◆
「体力作りは一日にしてならず!! ちょうど断己くんも居ないし山の中だから変身していいわよ」
「え? 良いんですか先生……」
律果や涼子が不満声を上げながら変身する。メリアは何も言わず変身し最後に残ったのは困惑しているのは花音だが彼女も迷った後に変身した。
「昨日と言ってることが違うじゃん、ひかり~ん」
「状況が変われば臨機応変に対応よ……それに昨日は高野さんが居たから、断己くんと違って四人の正体を知らない人間の前で迂闊なことは出来ないの」
「ふつ~に良い人だったから大丈夫じゃないの」
律果の言葉に頷きながらもアッサリと否定すると洸は呆れたように律果の頭をコツンと小突きながら理由を話し出した。
「そうね、でも答えは否よ、あなた達の正体を知ってしまった事が敵側にバレたら狙われる、ちなみに私の両親とか親戚も敵組織から狙われたからね」
「なるほど、それで先生や家族の方が……」
涼子の言いかけた話は洸の今の生活環境にも関わって来る。彼女の両親や妹などが離れて暮らしいているのは彼女の正体がバレたことに大きく関わっているからだ。
「ええ、十三年もやってると正体バレて公然の秘密になって最後は自らカミングアウト……もう新任の頃なんて一番大変だったのよ取材とか」
「あ、それ小学生の頃のニュースで見たこと有ります、変身してましたね」
「しょ、小学生……そっか新卒ですぐだから五年前か……」
花音の何気無い一言が洸の精神をズタズタにした。アラサーには年齢の話よりもダメージが大きいのは時間経過を感じさせる話だから覚えておこう。
「ドゥーエ先輩どうしたんだ」
「何でもないわ……ただ時間って残酷って思っただけよ、じゃあ特訓開始よ内容は私に攻撃を当てる事……スタート!!」
そして洸と四人の戦いが始まった。この合宿所の裏山一帯には結界が張られているので悪しき心を持つ者は侵入できず弾き出されるので実はこの場所では変身は自由だったりする。
(ま、教えたら律果と涼子あたりは変身で何でも解決するから……それじゃダメなのよ、新フォームが特化型や武器依存なら良かったんだけどね)
洸は考えていた。彼女達の新しい力は過去の経験から見るに基本の形態を強くした形態だから純粋な強さを求められる。つまり彼女たち自身が強くならなければ使いこなすのは不可能だと判断したのだ。
「変身さえ出来れば当てるくらい!!」
「決めさせてもらいます先輩!!」
中・長距離を得意とするアウローラとリコルドの弓とライフルが洸の行く手を遮るが余裕で避けると大して進攻を止められず逆に間合いを詰められる。
「甘いよひかりん、ステラ・リボン!!」
「私もステラ・ステッキ!!」
そこに割って入るのはプロメッサとフィオーレで彼女たちも武器を構えて突撃してくるも一撃を入れられず軽く避けられる。
「はぁ、こんなんじゃ私の引退はまだまだ先ね……四人とも気合入れて来なさい、そんなんじゃアイツに勝てないわよ!!」
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