Chapter8-1
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バーベキューの後に断己は部下の歩に呼び出され今は彼の宿泊している部屋に来ていた。もちろん防音済みの部屋だ。
「なにか言いたい事は有りますかね断己の兄さん」
「特に問題は無いと思うが……あるか?」
「問題だらけっすよね!! 明らかに敵に心を許し過ぎてますよね」
そう言われてもポカーンとする断己、彼の中ではこの数週間は色んな意味で充実していた。今まで生きてきた中で五本の指に入る体験だった。
「気を許しているか……それは違う、既に倒す算段が付いたから後の利用する手段を考えて行動しているだけさ」
断己はこの時には既に洸を利用して新たな事業を展開するという明後日の方向に思考が向いていた。やはり天才の考えることは分からない。
「何ですかその考えてるようで悪の幹部が高確率で負けるような算段は……だいたい負けるんすよ、そのパターン」
「まあ聞け歩、確かに洸先生ことステラ・ドゥーエは強い、今の俺じゃ普通に戦って彼女に勝つことは難しい」
二度の実戦と彼女に協力してもらって直接したデータ収集で分かったことは現在のSKⅡの戦力では彼女には勝てないというシミュレーション結果だった。
「いや不可能ですよ……彼女に手加減された攻撃でSKⅡの鎧は中破したんすよ、あなたが復元して俺が調整を施した現状で完璧なアレが一撃なんすよ」
「だろうな、だから俺は彼女そのものを調べた……彼女の装備や能力、つまり外面に隙が無いのなら彼女の内面を攻めるべきとな」
それを聞いた瞬間、歩には目の前の17歳の少年が末恐ろしく見えた。今までの断己の行動を見て一つの可能性に思い至ったからだ。
「そうか……断己の兄さんはハニトラを仕掛ける気なんですね!?」
「ハニトラ、ああハニートラップの略か……それは違う、そもそも今までのどこに恋愛要素が有った?」
しかし歩の予想は外れていた。断己の考えは想像の斜め上に行くのが基本だ。それに長年付き合っているのに気付かないのは焦っているからなのだが本人はまるで気付いていなかった。
「え? だって明らかに……向こうもその気なんじゃ」
「違う、あの人は確かに人が良くて単純だが十年以上も戦って来た経験豊富な戦士であり同時に成熟した精神を持つ大人の女性だ、隙だらけに振る舞っているのも俺の正体に気付いていないからだ」
実際は歩の方が正しいのだが無駄に自信の有る断己の勘違いのせいで歩は気圧されていた。勘違いとは得てしてこのような会話の行き違いで起こってしまうものだ。
「じゃあハニトラじゃないなら何するんですか」
「具体的には後で話すが定番の搦め手だ……彼女は俺の極秘のリサーチによると生徒の部屋に食事を作りに行ったり看病もしたりする世話焼きな面が確認されている」
「そ、そんな情報……一体どこで」
全部ただの実体験である、断己が実際にやってもらった事を話しているだけなのだが歩は知らない。
「それは追って報告書に上げる、他にも外食をしながら話を聞いたり時には自分の悩みも交えて生徒から話を聞き出すなど教育者としても中々な人物なんだよ」
ただのデートの感想を話しているだけなので歩は当然知らない。なぜなら報告書は上がっていないからだ。
「すごい……どうやってそんな情報を引き出したんすか」
「引き出したというよりも近くで監視をした……そして彼女の行動や言動を解析し得た結果は……」
◆
一方、断己が歩と話が有ると言って合宿所を出てすぐにステプレ五人も集合し、とある場所に来ていた。
「洸先生……ここって」
「ここは歴代のステプレが使ってる修行場所よ」
洸が案内した先は巨大な空間だった。広さは平均的な学校の体育館二つ分といった所で、いつでも使えるように整備されているのが分かる演習場だった。
「合宿所の地下にこんな施設が有るなんて……」
「凄い……ERRORもジムや幹部専用の施設などが有ったが同等か、それ以上だ」
このライトアップされた広大な施設は何と地下に存在している。古臭い合宿所は仮の姿で地下の演習場を隠すためのカモフラージュだった。
「断己くんは凄くいい子だけど部外者だし、あんた達の変身衣装まで調べるとか言い出しかねないから変身での戦闘訓練は基本ここで夜のみ行います」
「でも先輩なら問題無いんじゃ……」
「いいえ断己くんが調べるのは私の体だけでいいの!! それに生徒同士が間違い起こしたら引率の私の責任にもなるからね」
花音の意見に涼子も断己にここまで隠す必要は有るのかと疑問を呈しているが洸はあくまで強硬な姿勢と自らの欲望を隠さなかった。二十代も半ばを過ぎると色々と図々しくなってしまうのだ。
「前半に隠し切れて無いひかりんの欲望が漏れてるけど私は賛成かな~、実際のとこ男子に見られるのはね」
「ふむ、しかし断己先輩は男だが付き合いやすいタイプだから問題無いと思うが」
それに対して残りのメンバーは意外にもイケメン漁りが趣味なのに断己には興味を抱かない律果と逆に話していると妙に馬が合うメリアが意見を言っていたが、これは両戦士の特性によるものだった。
「メリア~、断己先輩と知り合ってから昔のメリアに戻ってます、女の子らしい喋り方に戻った方が」
「花音、でも私はこっちの方が喋りやすいんだ」
花音とメリアはいつもの二人の空間を作り出しているが今日は合宿だから無駄話はさせないように素早く洸が止めると合宿本番を開始した。
「じゃあ全員、まずは変身と名乗りの練習開始!!」
「「「「はいっ!!」」」」
四人はそれぞれの口上を叫び変身して、今度は変身を解除をして隠れる。そして、また変身するを繰り返した。
「ステラチャージ……願いを込めて咲き誇る……ステラ・フィオーレ!!」
「ステラチャージ、青き星々と極光の輝き、ステラ・アウローラ!!」
「ステラチャージ!! 誓いと結束の強さ!! ステラ・プロメッサ!!」
「ステラチャージ、想いを刻んで取り戻す、ステラ・リコルド……」
それを五セット終わらせると四人は一斉に倒れ込む。実は変身一回するごとに凄まじい星信力を必要としている。星信力とは読んで字のごとく星を信じる事で無限の力を引き出せる力と言われていてステプレの力の源だ。
「まだまだ遅い!! あと三秒は縮められるから、あとフィオーレはパンチラ気にしてないで足をもっと広げなさい!!」
「で、でも……」
「パンツ気にしてたら変身後の隙を突かれる場合もあるの!! あれは私が十六歳の頃ね……あの頃はまだ――――」
そして特訓の度に話される過去の戦いの話を興味津々に聞くのはメリアだけで他の三人は既に三回以上は聞いているから辟易していた。
「ま~た始まったわよ、ひかりんの全盛期の話……」
「でも休憩出来るから聞いておこう」
律果と涼子は床に突っ伏しながら聞き流す作戦に出た。しかし過去の戦いについて話している洸は気付いていない。彼女は意外と周りが見えなくなってしまう視野の狭さが弱点だったりする。断己が前回うまく逃げ切れたのもこういう迂闊な所が有ったからだった。
「そう、ですね……でも下着は……」
「大丈夫だよカノちゃん女捨てる必要無いよ……ひかりんみたいになるよ~」
そして光が五分弱メリアに話し終えると満足したのか再び特訓が始まる。ちなみにこの特訓は意外と理にかなっていて教師になってから洸が考えた特訓メニューだ。
「休憩は終わったかしら三人とも? 私みたいに強くならなくてもいいけど確実に次も負けるわよ……それでも良いなら可愛らしく戦ってなさい」
「「「うっ……」」」
これは腐っても生死を賭けた戦いだと十代目の面々はメリア以外は分かっていない。幸いにして今まで歴代のステプレに死者はいない。しかし負傷者は出ている。それが原因で引退した者もいた。
「可愛いだけの変身ヒロインなんて、この戦いにはお呼びじゃないのよ」
洸の冷たい言葉が演習場に響いた。
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