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悪の幹部やってるけど変身ヒロイン(年上)に目を付けられているらしい  作者: 他津哉
第7話「変身ヒロイン達の合宿With悪の幹部」
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Chapter7-5


「じゃあ今夜はバーベキュー!! お肉食べ放題なの、ひかりん!?」


「ええ、断己くんと高野さんに感謝しなさい」


 律果は現金なもので完全復活している。こいつ本当にスタミナ無いのだろうかと疑問に思う断己だったが、それよりも別な懸念があった。それは自分の肩に留まった後すぐに飛び立った蛾の存在で嫌な予感しかしない。


「あの、先生……本当にやるんですか」


「え? やっぱり嫌かしら、準備は私も手伝うから」


「いえ、そうではなくてですね……今は夕暮れ時ですが準備の時間も考えると外は真っ暗になると思います」


「あっ……」


 そして洸も自分の近くに飛んでいた蝶や森から飛んでくるカナブンを見て断己の言わんとしていることを理解した。


「真っ暗でもいいよ、食べようよ~お肉~」


「話に聞いた事のある松坂牛……ゴクリ……」


 しかし現役ステプレ組の反応は違った。律果とメリアは目の前の高級食材を前に我を失っていた。ならばと残りの二人を見るが涼子は疲れて思考停止して任せると言って座り込んで花音は涼子の世話をしていた。




「何とかなったわね……」


「ええ、しかし凄いですね……まさかこんな風に使えるなんて」


 断己は目の前の洸に夢中だった。彼女は変身してヴェロチータつまり高校に通勤していた時のエメラルドグリーンの衣装になって空に両手を掲げていた。


「そ、その……あんまりジロジロ見ないで欲しい……かも」


「すいません、二度目なんですがその衣装は素晴らしいので、つい……」


 断己は病み上がりだった時と違って今は万全だ。この形態ヴェロチータはデータが少ないから興味津々だった。そして洸は二番目に布地の面積が少ない衣装を男にマジマジと見られる経験は初めてで単純に恥ずかしかった。


「そこイチャイチャしないでよPTA呼ぶわよ~、あ、こっちのサザエ良い感じね」


「こ、これが松坂牛……高野さん、次をお願いします」


 律果とメリアは差し入れの高級食材を焼いて食べるという行為を繰り返し、もはや食べる機械と化していた。


「先生すいません……私達だけ食べちゃって」


「出来れば交代したいんですけど、私たちじゃ風の結界で周囲を覆うなんて出来ませんから、すいません」


 そう言いながら涼子と花音の二人も野菜や肉をせっせと焼いて食べていた。洸は今回の食材を味わうどころか今は天に両手を掲げ即席の蚊帳と蚊取り線香のような仕事をしていた。結界を張って風向きを調整し虫が入ってこないようにしているのだ。


「ま……貧乏くじはいつものことね、後で少しでも貰えればいっか……」


「その心配は無用です洸先生、データ収集のお礼はさせて頂きますので大丈夫」


 断己はそう言うと撮影会のように構えていたデジカメやスマホをしまいノートPCも大事そうにしまうと準備を開始した。


「あ、断己の兄さんデータ収集も程々にして下さいよ、その辺りがいい具合に焼けてますんで食べて下さい」


「ああ歩、感謝する……これとこれとこれで……これは大丈夫なはずだ」


「断己の兄さん一体なにを?」


 そこで断己は歩たちの元に行くと焼きたての野菜や肉などを次々と紙皿に盛って行く。そして準備を整え結界を張っている洸の元に戻って来た。


「あれ? 断己くん、わざわざこっちで食べなくても私は一人でも大丈夫だから」


「はい、お待たせしました、あ~ん」


 一切の躊躇なく洸の口元に差し出された割り箸の先にはカボチャが有り断己は真顔だった。


「へ? えええええええええ!?」


 この状況に大混乱した洸だったが結界が乱れないのはさすがはベテラン戦士。しかし顔は真っ赤で人生二度目の男からの「あ~ん」が、こんなに早くやって来るとは思わず本人への破壊力は凄まじかった。


「先生は前にカボチャの煮付けを作ってくれましたので、カボチャは大丈夫かと思いますのでどうぞ、肉も脂身が少ない物を中心に選びました、マイタケやシイタケは皆に任せて来ましたよ」


 そして一方の断己はここ最近は二日に一回は一緒に夕食を共にしていたので洸の好き嫌いも把握していた。肉は脂身が多いのが嫌いだとか、きのこ類は苦手なものが多いなど無駄に高い記憶力で把握していた。


「え、いやいや、私、別に、お腹とか大丈夫……だし」


 しかしベストタイミングで洸の腹の音は大音量で鳴り出し真っ赤な顔はさらに羞恥で赤く染まった。それを見て断己はニヤリと笑うと得意になって話を続ける。


「食べ物を見て腹の虫が鳴くなら正直になるべきです、大丈夫です今回は新品の割り箸なので間接キスにはなりません」


「そ、そういう心配じゃなくて……うぅ、もう」


 洸の視線は目の前に差し出された箸と断己の顔を何度も往復して最後は覚悟決めたように口を開けてパクリと食べる。


「どうですか洸先生、お味の方は」


「凄くおしいですうううう!!」


 ヤケクソ気味で叫ぶが味なんてほとんど分からないテンションの洸だった。今、彼女の頭の中では羞恥と幸福の感情が二律背反していて人生で初めての経験はものすごく甘美なものとなっている。


「それは良かった……では次は、お肉ですヒレ肉は脂身も少ないと聞きますから苦手な先生でも大丈夫なはずです、どうぞ」


「ほ、ほんと? じゃあ遠慮なく、あ~ん……うん、これくらいなら、美味しい」


「そうですか、何か食べたい物があればリクエストして下さい」


 その言葉にドキッとしながらも人生で男にここまでされた事の無かった意外と乙女だった洸はコクリと頷くと、おずおずと食べたい物を言い出していた。




「で? あれ何ですか高野さん」


「い、いやぁ……こっちとしても断己の兄さんがあそこまでとは」


 断己と洸がはたから見たらイチャ付いてるようにしか見えない光景を五人は見せられていた。せっかくのバーベキューだからと洸が考えた案は自分が結界を展開して虫などを入らないようし結界の中央には自分の武器の一つステラ・シールドを鎮座させる事だった。


「そうなんですか、断己先輩ってやっぱり先生のこと」


「ひかりんにもついに春が……こっちとしては凄い複雑だけど」


 花音と律果がホタテのバター醬油焼きを食べながら複雑そうに話していた。一方で歩は事情を理解しているので、あれはあくまで研究対象に近付きたいだけなのだと理解していた。


「まあ、うちの主任はあんな感じで変わってるんで恋愛とかは違うかと」


「そうなんですか? 断己先輩って私達の学年でも凄い噂になってるんですよ」


 しかし自分達のボスの噂と言われれば気になるのは腹心として当然の心理で歩は思わず尋ねていた。


「そうなんすか、えっと氷見野さん……だったね、噂って何かな」


「はい、そのぉ……」


「私も聞いたぞ涼子、断己先輩は学園内で今話題になって洸先生を狙っているとクラスで宣言した話のことだな」


 歩は思った以上に誤解を広げやがってという言葉が口から出ないように必死に押し留めた。兄ならば涼しい顔して後で説教するのだが自分は違うのは修行不足なのかと少し自分を戒め話を続けた。


「そ、そう、断己の兄さんがね……お、そう言えば、あの真ん中に置いた盾って凄いっすよね……まさか電灯代わりに使うなんて」


 内心かなり焦っていて咄嗟に話題を変える歩だが同時にバーベキューが始まってから中央に鎮座している輝く盾の存在に触れた。


「ああ、あれは先生の『SSS』の一つですよ」


 エビの串焼きを苦戦している涼子が答えてくれた。食べ辛いのが玉に瑕と思いながらエビで油断していたせいかポロっと洸の秘密を漏らしてしまった。


「トリプルエス? 何かの略っすか?」


「ああ、Secreto(セクレト)Septem(セプテン)Stella(ステラ)の略で先生の『秘密の七つ星』っていう武器群の総称ですよ、エビ食べ辛い……」


「武器群で七つ星……つまり七つも武器が有るんですね?」


 歩の声のトーンが変わった。ERRORの諜報部が調べて確認していた武器の存在は六つ、七つ目が存在しているというのは新情報だ。


「え? あっ!? 私も名前しか知らないんで、アハハ~」


「そうっすか~、一応は自分も技術畑の人間なんで、ああいうの気になっちゃうんですよね~」


 とぼけるのはお互い様で両者とも愛想笑いを浮かべて話題を逸らすのに必死だが、そこに松坂牛をメリアと一緒に制覇していた律果が野菜を取りにやってきた。


「あのアエギ……じゃなくてステラ・シールドは常に光ってて暗い所だと電灯代わりにもなるんですよ~、ひかりんの武器って便利なの多いからね~」


「律果ちゃん、それ秘密だから!! 高野さんは先輩の関係者だから大丈夫だと思いますけど広めるのは……どうか」


 実は一番教えてはいけない人間側なのだが当然のように気付いていない花音たちは歩に内緒にしている経緯までもキッチリと話してしまった。


「なるほど、大丈夫ですよ咲野さん、お、ちょうどイカも焼けましたよ」


「あっ、すいません」


 その後も給仕をしながら四人を監視しつつ断己のサポートをしていく歩だが一つだけ彼の頭の中にある疑問が過った。


(あの二人、いつの間に飯を一緒に食べる仲に……まさかとは思うが本部や俺らに報告してない事が……いや、まさかな)


 そして歩は再び断己を見ると米国時代でも滅多に見せないような笑顔で洸に肉を食べさせているのを見て考えた。まさか敵に感情移入をしてないか、惚れたりなんかしてないだろうなという疑念が鎌首をもたげた。


「だって、あんだけ絵になってりゃ疑いますよ……断己の兄さん」




「ね、ね、断己くん私そろそろビールかワイン……」


「なに言ってるんですか、ダメですよ今日は、絶対ダメです」


 最初こそは緊張して真っ赤になっていた洸だったが今はすっかり慣れてサザエのつぼ焼きにビールが合うと言い出してから遂に酒を要求し始めた。そんな彼女を見て断己は問答無用でノーを突き付ける。


「え~、だってこんなにいいお肉有るのよ、少しくらい」


「甘えないで下さい律果のこと言えませんから、あと酒を飲んだら無防備になるんですから気を付けて下さいね、最終的に運ぶの俺なんで」


「え? もしかしてまた運んでくれるの~? やっさし~」


 茶化して次のお肉ちょうだいと完全に甘えたテンションになっている洸だが対する断己は当然と言った風に答えた。


「当たり前じゃないですか……今度はランプの赤肉ですね、はい、あ~ん」


「あ~ん……んむっ……赤身よね、やっぱり」


 洸に食べさせた後に自分も一口食べると程よい味わいが口の中に広がり断己も思わず舌鼓を打つ。ちなみにこの時点で二人は既に間接キスをしているのだが気付いていない。


「残りはテールか……脂身が多いので……どうします?」


「あっ、尻尾もあるんだ……それ、明日の朝か昼に使っちゃダメかしら」


「何に使うんですか」


「スープとかにすると美味しいのよ明日作ってあげる」


 それを聞いて明日の朝食が楽しみだと言うと謎の視線を感じて振り返ると歩がジト目で見ていた。一瞬考えた後に断己は気付いたのだ視線の意味に……。


「分かっているさ……歩」


「そうですよね、さすがは断己の兄さん」


 歩は安心していた。やはり全て演技で自分の杞憂だと、自分達の信じたトップは敵に黒い悪夢を見せる天才だ、これも作戦の一環なのだと安堵していた。だから断己の次の発言に歩は愕然とした。


「ああ、洸先生の料理は特別にお前の分も用意してもらえるように俺がしっかり頼んでおいてやるからな!!」


「すっかり籠絡されてんじゃねえぞ天才ポンコツ野郎!!」


 上司だとか過去の誓いとか他にも色々と有ったが、そんなこと関係なく歩の本能が叫ぶのを止める事ができなかった。

誤字報告などあれば是非とも報告をお願い致します。(感想ではなく誤字脱字報告でお願いします)


感想・ブクマ・評価などもお待ちしています。


この作品はカクヨムで先行して投稿しています。


下に他作品へのリンクが有りますのでよろしくお願いします。

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