Chapter7-4
すいません一日間違えて予約投稿してました
「えっと……夜剱くん、こちらの方お知り合いかしら」
「部下です……歩なんでお前が、そもそもラボはお前らに――――「断己くん、たとえ部下の人でも目上にその口の利き方はダメよ」
いきなり注意されるのは理解出来ないと理知的に反論する断己に対して礼儀や挨拶に無駄に厳しい洸は一歩も退かず伊達に教師はやっていないと見せ付けた。実はこういう所が男に敬遠されるのだが本人は気付いていなかったりする。
「いえ、ですがっ!?」
「断己くん、これからお世話になるんだから気持ち良く、よろしくお願いしますって言いましょう、ね?」
断己は一瞬考えた。ここで駄々をこねたら自分と歩の正体がバレるリスクが高いと、決して洸に言われたから謝る訳では無いが意地を張って本来の目的が達成できなければ意味が無い。
「ぐっ……よろしくお願いします」
「はい、よく出来ました、えらいえらい」
なぜか必要以上に頭を撫でられるが自然と悪い気がしない断己だったが一番驚いたのは歩で洸が横で改めて挨拶するのを見ながら思わず本音が出ていた。
「うっわ……断己の兄さん完全に飼いならされてる」
「何か言ったか歩」
「いえいえ何も、今回は会長が合宿なんて初めてだからと俺を派遣したんすよ」
歩の言葉で天文部のメンバーにも過保護だと笑われたが何とかボロは出さずに済んだ。一行は合宿所に入ると、そのまま部屋に入り荷物を置くと合宿は始まった。
◆
「はい、基本は体力、走り込みよ……じゃあ取り合えず山をぐるっと回るコース行くわよ!!」
全員がジャージに着替えると洸の号令で軽いジョギングになった。断己はステプレではないから必要無いと言われたが折角だから立候補して付き合うことにした。
「はぁ、はぁ、はぁ……つ、疲れた」
「うっ……み、水ぅ~」
「こんなスポコン……流行らない、から」
花音、涼子、律果の三人は一周しただけでバテていた。それもそのはずでステプレになるまで三人は普通の少女だったから当然だ。
「ふっ、まあ、こんなのものか」
「そうだな……軽く汗を流した程度だな」
一方で明らかに元気な二人、それは断己とメリアだった。しかし考えてみれば当然で二人は元と今とはいえ共に四天王だ。
「やっぱり二人とも体力有るわね……メリアは戦って分かってたし断己くんは私を運んだりしてたから予想はついてたけど」
「だがドゥーエ先輩、三人は天文部に入る前は別な部活に入っていたのでは、花音は料理研究会だと聞きましたが二人は……」
メリアの問に断己も不思議に思っていた。集めた情報で涼子は中学まで弓道部に、律果も数ヵ月前までは新体操部にそれぞれ所属していたからだ。
「学内で聞いた話だと意外にも律果は新体操部で退部するまではエースだったとか」
「い、意外って……どういう、意味、ですかぁ、先輩」
「ああ、普段から菓子ばっか食べてるし運動と関係するイメージが無いからな」
それに初戦で戦った時も油断して中距離から攻撃をしていたのを断己は覚えていた。あの時に近接戦闘をしなかった涼子と律果を真っ先に潰したのだ。
「ああ、確かに今の律果ちゃんなら……勘違いしちゃう人、多い、かもしれません」
そこで息切れしながら花音が話したことは意外だった。彼女、森野律果はそもそもスポーツ特待生で中学時代は新体操でそこそこ名の知れた選手だったそうだ。
「オリンピック候補の次の次くらいに強かったのよね律果」
「来年の候補の人が一位で私が三位だった時が有っただけよ涼子、あんただって弓道で全国出たんでしょ?」
そこでさらに聞いた話だと涼子に関して言えば今でも弓を嗜んでいるらしく週に三回は同情に通っているそうだ。
「でも私は予選落ちみたいなものだから……律果よりも成績的にも悪いし」
そんな二人の会話を聞いて余計に断己は混乱した。横で水分補給しているメリアも同様だったみたいで二人は疑問を口にしていた。
「だからこそ分からない、二人は花音と違って基礎体力は有るはずだ、律果は現役を離れて数ヵ月、涼子に至っては今もやっているんだろ」
「確かに断己先輩の言う通り二人とも変身後なら私達と体力の違いが有るようには思えなかった」
それに対する二人の答えは意外なもので断己もメリアも驚く結果となった。
「私は元々スタミナ無かったのよ部活で筋トレも走り込みもやってたけど体力付かなくて……それが公式で負けた原因、しかも数ヵ月やらなきゃ嫌でも落ちるわ」
「私は弓道でそこまで体力は使わないし、小さい頃からやってて今でも筋力や集中力、あと忍耐力なんかも重要ですけどスタミナ系統は鍛えてなくても慣れれば意外と何とかなるんです」
つまり二人の言い分としては律果の場合は基本的にスタミナが足りないし鍛えても効果が無かった。涼子の場合は鍛えなくても何とかなっていたという話だが断己は解せなかった。
「だが、あらゆる面で体力は消耗するし体力が切れれば集中力に忍耐力も落ちるんじゃないのか」
これは断己が米国で幹部になるまでに訓練を通して学んだことで最後にものを言うのは体力・スタミナで、それだけで乗り切った局面も一度や二度では無かった。そんな経験則に基づく考えでもあった。
「断己くんの言う通りよ、律果の場合はジョギングが嫌いなだけだし、涼子は単純に本気で持久力や体力を使わずに手を抜いてるからでしょ……違う?」
洸が軽くストレッチしながら言うと図星で二人とも静かになってしまい気まずい沈黙が広がる。ちなみに洸はまったく気付いていないようで次の特訓の準備を始めている有様だった。
「ま、まあ……先生もメリア達も、それくらいで次の特訓は、何をするんですか」
花音が不穏な空気を察知してすぐに話題を変えるのは空気読みの才能が有るリーダーに相応しい能力だと密かに感心する断己だった。その日は昼休憩を取った後は夕方近くまで特訓は続いた。
◆
「つ~か~れ~た~」
「私もクタクタ……」
結局、断己は五人に付き合って全メニューをこなした。感想としては生温いというのが印象で、それはメリアも同じだったようだ。二人は疲労感こそ有ったが心地良いもので余裕すら有ったからだ。
「律果も花音も、もうすぐ合宿所だから頑張って」
「ひかり~ん、何で今日は一回も変身させてくれないのよ~、変身しちゃえば余裕なのにさ~」
「それは夕食の時に話すわ、ほら行くわよ」
その三人の後を断己と花音、メリアが続くが合宿所の前では歩が待機していた。隣の保養所で俺達を監視しているはずでステラ・ドゥーエつまりは洸の戦闘を記録し分析すると昼に聞いていた。
「何でこっち来てんだ歩」
「ええ、それが……会長がこれ送って来たから多分そういうことかと」
よく見ると歩の横には発泡スチロールの箱が数十個とダンボール箱も二つ置かれていた。何かと問う前に歩が中身を見せてくれたが断己の想定外のものだった。
「食材……だと」
「はい、ちなみに俺も食べた事ないような高級な肉とか魚介類に、さらに保養所にはバーベキューセットまで置いてありました……レジャー用の」
意図は理解した、いや普通の人間でも言わんことは理解できるはずだし自分の考えを語るまでもなく周りの全員の顔を見れば分かった。
「父さん……今回のこれは合宿であって旅行じゃないんだぞ」
「えっと、高野さん……これって、よろしいんですか?」
さすがの洸もこの状況は予想外だった。合宿所は基本は無人で他の使用している部活が居れば共同で料理など、よくある場合だと飯盒でカレーなどが定番だが今回は天文部以外使用していないので洸がスタミナ料理を準備していた。
「たぶん大丈夫ですよ八重樫先生と他の皆さんも、どうせなら肉とか魚は俺と断己の兄さんでやりますんで」
「いえいえ、でも、さすがにそれは……」
そう言ってチラリと洸は断己を見た。こうなると自分だけが反対しても無意味だと悟るが断己にはある懸念が有った。
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